前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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デレデレ女神の攻略法

各勢力の思惑はさておいて。

 

 そんなことを露も知らない護堂は、いつも通りの日常生活を送る。美殊が転入してきて高校でも振り回されるかと戦々恐々としていたが、意外と女神は大人しかった。たぶん私口調でいる間は、お嬢様でいるつもりだと護堂は睨んでいる。

 それ以外では特に変わった事もない。いきなりまつろわぬ神が出現することも、いきなり神獣が東京に現れたりもしない。実に平和な日々だ。

 

 ただ美殊との性訓練は行っていて、土曜日の晩は二人して頭がクラクラするまで貪りあっている。これも平和と言えば平和なのだろうが、時折ふと護堂は冷静になってしまうことがある。

 

(俺はとんでもないことをしているんじゃないか?)

 

 世間一般の男子高校生は、彼女がいたとしても毎週のようにこんなことをしないだろうと考えてしまう。のだが、今のうちから美殊のタントラを乗り越えられるようになっておかないと、将来困る気がするのでやらざるを得ない。

 今日は金曜日で、明日は学校が休日の土曜日だ。

 

 つまり明日はまた美殊との訓練ではある。それに向かって英気を養わないといけないのだが、護堂はクラスメイトらと一緒に、放課後遊びに出かけていた。同級生との遊びも、護堂が好ましいと感じる普通には必要なのだ。

 女子生徒らには美殊さんを放っておいていいのなんて言われたりもしたが、何も四六時中共にいるわけではない。美殊は美殊で忙しく、今日は名古屋で19時から呪術に関する講演会があるらしく出かけて行った。

 

 なので普通の男子高校生らしく、護堂は男女混合でボウリングをしたりカラオケをしたりと遊ぶ。

 その拍子に女子生徒の一人が足を滑らせてこけかけたので、護堂はとっさにそれを受け止めた。周りは全く反応しきれていなかったが、もはや護堂にとっては常人がこけるかもしれない程度の速度はなんてこともない。

 なにせ不意打ち気味に死角から矢が飛んできたりとか、反応が万分の一秒遅れるだけで胴体から頭が取れてしまうような剣戟に晒されるのだ。いやでも反応速度は向上していく。

 

 とは言えとっさの行動なので、手が女子生徒の胸に触れてしまった。おっとまずいなと護堂は思い、向こうも接触したことに気が付いてバッと胸を庇った。

 

「すまん。急な行動だったから……悪い」

「う、ううん。別にただの事故だから」

 

 護堂は本当に悪い事したなと頭を掻き、女の子は恥ずかしかったのか顔をカァッと紅潮させる。なんとも微妙な間が流れるが──

 

「草薙ぃい!! お、おま……なんてうら……なんて破廉恥なことをしてるんだ!」

「お前、今羨ましいとか言おうとしてなかったか? それの方がよっぽど……それは指摘しないでおくよ。しかし破廉恥か……そうだよな。今のは、普通破廉恥だよな」

「なんだお前その余裕な態度は! む、胸だぞ! 同級生の胸に触っておきながら、なんでそんなに余裕なんだ貴様!!」

「なんでって言われてもな……あと胸とか連呼するな」

 

 なぜ余裕なのかと言われても、ちょっと触れたぐらいでドキドキしていたら、どこぞの女神の誘惑に耐えられないからだと護堂は口に出して言いたい。

 彼女と出会ってから2年以上経つが、神殺しになって以降──美殊が護堂に堕とされてからと言うもの、大地母神らしい無自覚な淫乱ぷりに巻き込まれてきたのだ。胸の一つや二つ、もはや慣れてしまった。

 

違うよ護堂。胸は最初から二つあるんだから、一つじゃないよ……と言いたいけれど、大地母神界隈では胸が二つ以上あることもある。例えばエフェソスのアルテミス像なんて──

 

 変な幻聴が聞こえた気もするが、ともかく護堂は慣れてしまったのだ。美殊との正式なお付き合いを始めてからは訓練のこともあり、なおさら慣れは加速した。

 しかしそれを口にするのもあれなので、美殊譲りの沈黙は金で押し通そうとしたが──

 

「なんか……草薙くん少し変わったよね」

「俺が変わった?」

「うん。何と言うか……余裕がある? どっしりと構えた大木みたいな雰囲気がする」

「あ、なんとなく分かる! 正直入学当初の草薙て地味なイケメン臭が漂ってたのに、ゴールデンウィークが終わった辺りから、なんかちょっと華やかみたいな?」

「なんだよ、その華やかって。良く分からない表現だな」

 

 華やかだと言われても、護堂は自分のことを地味な人間だと思っている。美殊には素材は悪くないんだから、こうした方が格好いいよと言われて眉を整えられたりされているが、それでも自分がイケメンかと言われたらハテナしか浮かばない。

 そんな意味を籠めて何言ってるんだよと否定したが、その生徒はなんて表現すれば正しいんだろと頭を捻り、あ、あれだ! とようやく思いついたらしい。

 

「うちの兄貴が彼女を家に連れ込んで脱童貞してさ。それ以降、なんか我心に余裕ありみたいなムカつく感じになって。草薙はなんかそれに似てる。美殊さんで捨てた?」

「ぶっ!」

 

 護堂は少し吹いてしまう。噴き出した護堂を見て、全員護堂を凝視する。この反応、まさかお前……そんな疑わしい眼だ。

 

「草薙……お前……もう勇者になって…………」

「2年前から慕われていて、ゴールデンウィークに……辻褄はあうね」

「待て待て、それは誤解だ。美殊とはそこまで行ってない」

「そこまで? なんか含みのある言い方だね……怪しいな」

 

 否定する護堂を見て、全員がさらに疑わしい眼を向ける。それをきっちりと否定したいが、行くところまで行ってないのは美殊の体質があるからだけ。それさえなければ、とうに女子生徒が言うように捨ててしまっている気はすると護堂も同意している。

 そんな自分の心の動きを追って、ふと護堂もおや? と違和感を持つ。なるほど、確かに言われてみれば少し変わった気がするなと。

 美殊の返事を貰う前であれば、もっと狼狽していた。なのに、今は多少狼狽えたところはあるが、割と自然に受け答えしている。

 

 その原因を考えてみたら、思い当たる節がないわけでもない。GW前までは必死で美殊の無自覚なお誘いに耐えていた。抱いたら己の身すら焼くタントラへの脅威を本能が感じ取っていたのと、美殊の返事を貰うまではそんなことをしてはならないと決めていたから。

 

 要するに護堂はずっと蓋をしていたのだ。美殊との日々で成長するはずだった、草薙家の男児らしい女性方面の手腕。経験は積んでいたのに、無理に抑圧していたせいでそれらにはずっと枷が付けられていた。

 しかし美殊側から色よい返事が返ってきた事で、それらを無理に押さえつける必要が無くなった。

 それともう一つ。恵那に渡した少年の加護。美殊らが席を外していた間たっぷりと恵那に口づけした護堂だが、その時の自分は普段とはかなり違ったと自覚している。その瞬間まで付けられていた枷が外れたことを喜ぶ狼のように、恵那の唇を護堂の側から奪い去り、少女の体に女であることを刻み込んだ。

 

 ……もしも一連のこれを美殊が聞けば、こう評することだろう。

 

「少年の化身は上限解放なんだ……経験値は溜まっていたのに、護堂がBキャンセルし続けていたせいで進化してなかっただけなんだ……」

 

 祖父一郎のようにはならないと決めて、女性関連からは一歩引いたところにいた護堂。しかし女神が来て以来、自然と経験を積む機会は多くなった。

 しかし諸事情でそれらの経験値は溜まる一方で、護堂の成長には使われず貯蓄され続けた。だが美殊の返事と少年の化身により一気に解放されて──

 

(これが俺本来の姿……なのか?)

 

 果たしてこの変化が良い事なのか、それとも悪い事なのか護堂には判別が付かない。今まで通りに生きるだけであれば不要な変化だが、美殊を相手に異性として本気で向き合うのであれば必要な変化だ。

 なのでこっそりと、静花に護堂は内心で謝っておく。爺ちゃんみたいになるつもりはないが、それとは別でろくでなしになる必要があるからすまんと。

 そうでなければ、あの女神には負けてしまうから。

 

 

 

 

 

 そんな一幕があった放課後は終わり、日が昇れば土曜日だ。今日は晩だけでなく、美殊が昼間もデートしたいと言うので護堂は付き合う事にした。

 今日は遠出をすると言う事で、待ち合わせ場所は七雄神社だ。転移術で移動できる美殊に来て貰う方が手っ取り早く、当初は彼女もその予定だった。しかし護堂から迎えに行くよと伝えてあるので、大人しく美殊は神社で待っている事だろう。

 

(いつまでも迎えにこさせるじゃ、なんか駄目な気がするからな)

 

 それにこちらから迎えに行くと、結構面白い物が見れるのでそれ目的で護堂の方から神社に向かっているのもある。

 護堂が到着した時には、ボウタイブラウスにフレアデニム、コンフォートサンダルを履いた美殊が鳥居に寄りかかって待っていた。明らかにそわそわした動きをしていて、手鏡を手に前髪を気にしている。

 護堂はまだ階段を上がっている途中で距離があるのだが、気配で勘づいたのだろう。護堂の方に顔を向けた美殊の顔が、一気にパァッ! と輝くかのような笑顔になる。ついでにちょっとだけ頭上に点在していた雲が、全てどこかに消えてしまう。天空神の機嫌が最高潮に達した事で、晴天と呼べる空になった。

 

 五月も中旬から下旬へと切り替わり、昼頃はそれなりに気温も高くなるのだが、人間が過ごしやすい快適な風が吹く。歩いたことで体温の上がった護堂を冷ますような、心地よい風だ。まるで大気そのものが、護堂を包み込むかのように祝福している。

 ……まるで、ではなくそのまま祝福だ。主神級の神格──それも力としては天空と大地を併せ持つ二柱分の女神が、待ち人が来た事を喜んでいるのだ。万物万象はその意を汲み取り、実現させてしまう。

 護堂が七雄神社の200段ある階段全て登りきる前に、美殊が自分から階段を落ちるように降りてくる。普通ならこけたりするかもしれない危ない速度が出ているが、女神の足取りに迷いはない。

 仮にこの階段が断崖絶壁でも、美殊の技量であればよく舗装されている路面を歩くのと同義。謙遜すれども武神は武神。人間の基準など遥かに逸脱している。

 

 そのまま護堂の胸に向かって、彼より小さい女神が飛び込んでいく。普通なら勢いよく飛ばされるかもしれないが、衝突時の衝撃操作ぐらいは美殊にとって造作もない。羽毛が肌に飛んできた程度の衝撃を護堂が受け止めれば、美殊は顔を埋めて匂いを嗅いでいた。

 それを見ながら、相も変わらずこの女神様の愛情表現は過剰だなと護堂は内心笑う。そうこうしている内に美殊が顔を上げて──

 

「おはよう、護堂。来るのが遅れてるから、ちょっと心配したよ」

「電車が遅延してたからな。途中から弓を使ったよ」

「そうなの? 普段は権能なんて危ない危ない言ってるのに、移動に使うなんて珍しいね」

「危ないと思ってる事には変わりないぞ。でも遅れたら、美殊と遊ぶ時間が減るだろ? それはなんだか勿体ないと思ってな」

「だから信条は捨てて、シャールンガを?」

「ああ。そのおかげで、こうして予定よりちょっとだけの遅れで会えたんだ。たしか権能は十徳ナイフだったか? 要は使い方次第だとか言ってたのは美殊だしな。俺も少しは、その使い方を実践してみたんだよ」

 

 それにと護堂は言葉を続けながら、胸に密着したままの美殊を少し担ぎ上げる。彼女の尻に手を置きながら、保持する事も忘れない。

 

「遊ぶ時間だけじゃなくて、こうする時間も減ってしまうからな」

「いきなり力強く抱きしめるなんて、護堂も遊び人になっちゃたね〜」

「あいにくだが、遊び人ではないな。俺が遊ぶ相手となると、美殊か……恵那ぐらいしかいない」

「もう……草薙家の男はみんなこうだったんだろうなぁ」

 

 呆れたよなどと美殊は言うが、その瞳は細められて護堂を見つめている。細目からは僅かに蒼い光量が漏れ出ていて、美殊の心情を映し出すかのように燦然と輝いている。

 護堂がさりげなく周囲に目をやれば、少し枯れ気味だった植物などが急激に緑を得て復活していく。大地の女神の神気が充てられて、力を取り戻しているのだ。

 これが護堂の密かな楽しみ──こちらから出向くと、ひたすら嬉しそうな美殊が見られるだ。学校ではお嬢様の皮を被っているし、駅などの待ち合わせではまずこの表情などは出てこない。

 そっち方面に疎い護堂でも、これが恋する乙女の表情なのだろうかと思う顔をする──そうじゃなくても、美殊はテンションが上がると護堂に対して心の底から嬉しくて楽しいと語るような笑顔になるが。

 

 それから美殊の転移で霞ヶ浦までお邪魔することに。今日の目的はナマズ釣りだ。なぜナマズ? と護堂は疑問に思ったが、突飛な行動は美殊の特権だ。それにやってみたら案外面白く、護堂は美殊にレクチャーされながらナマズとの対決を楽しむ。

 その間の美殊と言えば──

 

「霞ヶ浦は元々は海で、古東京湾と呼ばれていたんだ。それが現在の姿になるのは江戸時代の利根川の東遷事業が原因で──」

 

 と明日から使える豆知識を披露する。その声はすごく音が高い。普段から聞き取りやすい明瞭な声ではあるが、それを更に洗練させたかのような音。あえて表現するなら猫撫で声の『言霊』。

 声にははっきりと喜色が出ていて、初対面が聞いても護堂に対して気がありまくるのが理解可能な声色だ。会話できるだけでも楽しいと言わんばかりに、その声は弾んでいた。

 釣りの最中は動きの邪魔になるだろうからと距離を離しているが、大地も大気も二人の妨げにならないように気を使っている。会話の邪魔にならないように、されど護堂が不快な思いをしないで済むようにちょっとしたそよ風が吹く程度。

 ナマズを一匹釣って帰れば、美殊が術で泥を吐かせてすぐに捌いてしまう。今夜の飯はナマズかと、護堂はどんな味なんだろうなと思いを馳せた。

 

 護堂も手伝って調理を済ませて、中々美味いナマズを食べ終えたら今夜の本番だ。まずはいつも通りシャワーを浴びる。

 初めての頃を思えば、随分と自分も慣れた物だと護堂は自嘲する。神殺しになった直後に、護堂の本能を騙すためと言って一緒にお風呂に入ったりした。その時には護堂の雄がバキバキになったりして恥ずかしさに死にそうになったものだが、今はバキバキになってもそんなもんだよと受け入れられてしまう。

 バキバキになった草薙カリバーを握られたら同じく恥ずかしさで死にそうになったが、今はそんなもんだよなと受け入れられてしまう。

 

 あの頃はやられっぱなしだったが、今では違うのだ。

 

「ひゃ~~~~~!!」

 

 護堂に手で全身を洗われて、美殊は悲鳴を上げていた。悲鳴をあげてはいるが、逃げようとはしない。抵抗を多少はしているが、その力は本来の美殊からすれば非常に弱弱しい。

 権能や呪力が無くとも神の肉体──それも鋼の武神でもある美殊の腕力は人間とは違う。護堂もリミッターが外れやすくなったことで常時火事場の馬鹿力を発揮できるが、それでも美殊と腕力を比べたら人間の子供と熊を比べるようなもの。普通なら簡単に抵抗できるのに、美殊は護堂にされるがままだった。

 身悶えし震える美殊を見て護堂のカリバーはますます鋭き力を蓄えるが、それはご愛嬌。

 

 そんなお清めの時間が終われば、美殊の攻略戦だ。先に布団で待っておいてと言われたので、護堂は寝転がって待つことに。

 すると襖が開いて、美殊が登場する。その姿を見て護堂はおや? と気づいた。普段は長襦袢のような白寝巻が多いのだが、今日は少し変わった姿をしている。

 

「それは……ネグリジェか?」

「これ? ネグリジェじゃなくてベビードールだよ。イタリアに行った時に、買ってみたんだ」

「ああ、それでか。ルクレチアさんが着用していたやつに、やたらと似てると思ったからさ」

「同じメーカー製だからね」

 

 ジャージに白シャツ姿の護堂の傍に、スススと美殊が近づいてくる。護堂がそんな美殊に目をやれば、やたらと丈の短い裾からは真っ白な太ももが良く見える。神の肉体には皺も黒子もシミもない。

 それを護堂が撫でると、美殊の体が一瞬だけビクンと跳ねる。風呂場で護堂に全身を探られた余熱がまだ体に残っているのか、それだけで、あ……と小さな声が美殊から漏れる。

 

 護堂の手は止まらない。シルクや絹のような手触りの良い肌を弄れば、美殊の息は徐々に荒くなっていく。耳たぶを唇で軽く挟めばくぐもった声をあげ、首を舌でチョロチョロと舐めたら良い反応をする。

 

(こうしてみていると、普通に女の子なんだよな)

 

 美殊には前世は男だとカミングアウトされた護堂だが、こうした艶めかしい反応を見ていると可愛らしい女の子にしか見えない。神として生まれてから20年は経つので護堂よりも年上なのだが、護堂に攻められるとまるで同年代か年下の子のような挙動をする。

 それがなおさら愛しくて、護堂は攻める手を緩めない……と言うよりも緩められない。

 

「積極的だね」

「美殊が可愛いからな。つい虐めたくなるんだ」

「やっぱり護堂は遊び人だよ……このベビードールにも驚いてくれるかと思ってたのに、平然としてるんだから」

 

 なんて不貞腐れるようなことを言う美殊だが、漏れる吐息などは色がついたままだ。その言葉に対して、実は結構驚いているよと護堂は内心で返す。

 普段とは違う姿にドキリとはしたのだ。少し捲れたらへそまで見えたり、腋や肩……どころか、上から覗きこんだら胸の先端にある桜色がチラチラ見え隠れする意匠にカリバーも強く反応した。

 

 しかしながら、それを表には出さない。なぜなら美殊相手にほんの少しでも狼狽したり臆せば、その瞬間に盤上をひっくり返されるからだ。彼女の攻撃能力は護堂の遥か上を行く。ここで防御に回ってしまったら、今度は護堂の方が攻め滅ぼされる。

 これは要するに攻城戦なのだ。美殊と言う巨大な城を攻め落とす闘い。少しでも気を緩めるわけにはいかない。

 

 そうしてじっくりねっとり攻めていれば、美殊の中でタントラが眼を覚ます。途端に護堂の全身に、強大な負荷がかかる。呪力を高めて防御しつつ、とにかく美殊の攻略を続ける。

 はぁはぁと息を荒くする美殊を相手に、護堂は果敢に攻め入る。とにかく守勢に回ってはならない。常に攻勢一択。それが対美殊の攻略法だ。

 

(自由奔放さやトリッキーな行動。それに騙されるな。美殊の強大さと攻撃能力に惑わされそうになるが、防御能力において美殊はそこまで強くない)

 

 考えてみれば当たり前の話。彼女は常にイニシアチブを握りながら戦う戦法を得意とする塩試合の達人。常時対応策を産み出し、事前にあの手この手を用意して手札を切るスタイル。そんな行動を取るようになったのは、己がアドリブが苦手だと認めているから。

 そしてもう一つ。一見突拍子もない行動に出る事が多いが、その行動には必ず何かしらの理屈が伴っている。

 護堂を誘惑していたのは、本当は護堂のことが好きだったから。好きな相手を誘惑する地母神の傾向が強く出ていただけ。学校に来たのは護堂と青春をしたいから。ベビードールにしても、護堂を喜ばせたいと願ったからだろう。

 

 それらの理屈をきっちりと読み取り、こうだろうなと受け入れてしまう。その上で美殊にイニシアチブを握らせないように、全力で立ち回る。これが対美殊の戦法なのだ。

 

(そうだ。美殊は言ってたじゃないか。屈服させろと。それはつまり……美殊にお前は俺の女だと思い知らせればいい)

 

 だから手を緩めない。何があろうとも、美殊の前で動揺してはならない。美殊の帯刀が赦されるほどの度量と気概を持つ男なのだと、態度や実力で示せ。

 攻撃能力は護堂の1000000倍はあるだろう女神だが、防御面はそこまでだ。

 

 ……この日。美殊は最後にはタントラに膨大な呪力を注いで逆転したが、それまではねちっこく苛められて鳴かされたとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

おまけ・美殊視点版

 

 今日は護堂から来てくれるらしいので、僕は社から出て鳥居の傍で待つことにする。やることもないので手鏡で前髪の様子を見ていたら、階段の下からよく知る気配がした。

 そちらを見たら、やはり護堂だった。階段を登りきらせるのも悪いので、僕の方から降りて向かう事にする。階段は昇るより降りる方が実は辛いなんて言うけれど、それはもっと長い階段の場合。200段ぐらいなら、降りる方がずっと楽だ。

 

 護堂の傍に着いたので、あいさつついでに軽いハグをしておく。おー、今日も旦那の胸板は程よい分厚さですな。

 そうしていたら僕に会うために、弓の力を使ってくれたと言うじゃないか。嬉しい事を言ってくれる。御返しにちょっとだけスマイルをあげよう。僕の笑顔は護堂相手には0円だぜ!

 

 今日の目的地は霞ヶ浦でナマズ釣り。なぜナマズなのかと言われたら、あの魚が滋養強壮に良いからだ。タンパク質とビタミンが豊富に含まれていて、薬膳の世界ではスタミナ食として有名。

 今晩のことを考えたら、護堂にはたっぷりと精を付けておいてもらいたい。それが僕の目的だ。

 これがもっと未来ならスマホなりで待ち時間を潰せるだろうが、生憎とまだ日本ではスマホが流行っていない。早く来てくれリンゴ社!

 なので僕は暇つぶしとして、霞ヶ浦の歴史を喋る事に。これで護堂の暇も紛れてくれたら良いのだが……

 

 一匹家に持って帰れば調理だ。捌いて蒲焼にしてしまう。蒲焼に使うタレは、僕が栽培した大豆などをふんだんに使った醤油を使用。せっかく護堂が食べてくれるんだから、市販品で済ませるのは勿体ない。

 それを食べ終えればようやく特訓なのだ……が。

 

「ひゃ~~~~~!!」

 

 護堂がなんか積極的だった。全身を撫でられて、僕は思わずぬぁー! となってしまう。しかし前回洗ってみたらどうと提案したのは僕なので、されるがままになるしかない。ぐぬぬ……なんて順応が早いんだ……あ、そこもっと触って──

 

 このまま負けっぱなしだと癪なので、僕は護堂を驚かせようととある衣装を身に纏い出陣。ちょっとお腹辺りがまだジンジンするけど、鎮まるまで待っていられるか!!

 

 ……おかしい。護堂の手が緩まらない。なんだか女の子がしちゃいけない顔を僕はしているような気もするが、前世男だし良いってことにならない? 駄目?

 

 あ、手を離さないで。もっと触れて──

 

 な、なんとか逆転したけれど……これ、ひょっとして僕は予想よりもっとすごい早さで堕とされてしまうのでは? 数年は見据えていたけれど、1年以内とか。ま、まさかね……




一人称だと描写されない美殊の護堂に対する態度の数々

原作護堂の本能:まだだ……まだ抱くには早い。今抱いたらぬるま湯に浸ってしまう。それでは牙が鈍る。俺の相手は俺より強い神々だ。まだ鈍るわけにはいかないんだ

本作護堂の本能:神々はつよ……つよ(アーサー王やメルカルトやアテナが問答無用で爆殺されるのを見て)ほんまか? いや、神々は強敵の筈……もういいや。考えるの止めよ

みこっさん
攻撃能力:つよつよ
防御能力:(攻撃面に比べると)よわよわ
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