前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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原作4巻
その力はまるで◯役のように


 草薙宅で寝んねした翌日。すなわち土曜日。

 

 一番早く目を覚ました僕は、朝の4時から料理の仕込みを始める。

 これは2年前に居候してた頃からの癖で、この家にいる間の料理担当は僕だ。

 ご飯を炊いて、ワカメと豆腐のお味噌汁を作り、昨日買って来て置いた鯖に軽く塩を振ってからペーパータオルでよく水気を取る。

 それをみんなで起きてくるまで冷蔵庫で寝かせる準備をしたら、次は洗濯と掃除をする。

 

 時刻は朝の5時半。この辺になると一郎お爺ちゃんも起きてきて、家事を手伝ってくれる。次が護堂。朝から走り込みをする彼は、6時には目を覚ますのだ。

 

「おはよ……相変わらず美殊は早いな」

「寝つきが良いからね……恵那さんと祐理さんも一緒か」

「おはよー師匠」

「おはようございます、美殊様」

 

 巫女二柱も早起きするタイプ。恵那さんは山籠もり中は日が昇れば目を覚まし、朝からその日食べる山菜を集めたりする生活で慣れているし、祐理さんも祐理さんで媛巫女としての修行なりで朝早くから活動する習性がある。

 朝の6時起きはむしろ遅いぐらいで、よほど熟睡出来たのだろう。若者はたくさん寝るのが仕事だ。朝の炊事なんて、僕のようなアラフィフに任せておけばいい。

 

「時間も早いし……せっかくだから、全員で護堂と一緒にランニングにでも行こうか」

「ランニング……以前の私では無理でしたが、この体なら護堂さんの走り込みにもついて行けるんですね!」

「そりゃそうだよ。むしろ体力や筋力だけで言えば、今の祐理さんは熊さんや虎さんより遥かに上。権能無し呪力無しでも、アフリカ象と力比べが可能だよ」

 

 呪力で身体能力を強化したら数千馬力、数万馬力で、怪力の権能があれば百万馬力以上だ。大地母神化前の祐理さんが握力15キロしかなかったことを考慮したら、とんでもない超強化だ。

 ……むしろ良く制御出来てるな? 情事中は力一杯抱きしめているので、護堂以外が祐理さんと致したら死ぬんじゃないだろうか?

 僕も偶に護堂の指を逆方向に曲げかけているらしいから。

 

 愚にもつかない思考はさておき。

 

 全員でジャージに着替えて、護堂と一緒にレッツゴーだ。

 走るのに邪魔なのか、恵那さんと祐理さんは後ろで髪の毛を括っている。

 ……改めて観察してみると、二人ともかなり毛が長い。腰当たりまで伸ばしたスーパーロングと言うのは、手入れも大変な筈だ。

 そんな僕の視線に気づいたのか、祐理さんはどうされましたかと問うて来た。

 

「いやぁ、二人とも走っている時に髪の毛がブランブランしているのを見ていたら、手入れの面倒そうな髪だなーと思って」

「大変……と言えば確かに大変です。シャンプーやトリートメント代はかかりますし、美容院には高頻度で行く必要がありますし、座る際には気を付けないと何処かに引っ掛かりますし……ですが山籠もりの多かった恵那さんに比べたら、私の悩みはそこまでだと思います」

「らしいけれど、恵那さんとしてはどうなの?」

「ん~、どうだろ? 恵那の場合、切るのも面倒くさくて伸ばしてるところがあるから。木に絡まったりして危ないと思う事もあったけれど、慣れたらそんな事も無くなっていったから、そこまで大変とは感じ無かったかも?」

「そんな感じなんだ」

 

 はえ~と僕は感心する。一時期は僕も御へそに届く長さまで伸ばしていたが、邪魔臭くなってバッサリカットした事がある。

 そんな僕からすれば、きっちりと手入れしている二人──恵那さんは若干怪しいが──にへぇボタンを押してしまいそうになる。

 

「師匠はあんまり伸ばさないよね。スーパーロングとかにしないの?」

「幽世で母様と暮らしていた頃には、女の子らしくしなさいとか言われて伸ばしてたよ。でも一人暮らしを始めてから、家事とかする時に邪魔になって……それでショートヘアーにしたんだけど……」

「そうなのか? 俺が始めて美殊に会った時には、ロングヘアまで伸ばしていたよな?」

「ショートヘアーがあまり似合わなくて……それで二年ほど使って伸ばしたんだ」

 

 ちなみに今はセミロングまでカットしてある。このぐらいの長さが女の子っぽさもありつつ、手入れもしやすい。

 そんな他愛ない話をしながら僕らは根津から皇居に向かってランニングだ──時速70キロぐらいで。

 全員人外の肉体なので、明らかに二足歩行の生物が出して良い速度ではない。祐理さんなんて全力で走れるのが嬉しいのか、思いっきり腕を振って楽しそうだ。

 

 ……そして、その度にけっこうたわわな実りが揺れている。ゆっさゆっさだ。ちなみに恵那さんもゆっさゆっさだ。僕も同じように、どたぷんしている。六つの山が大地を駈けると書いたら詩的だが、端的に事実を述べるならおっぱいが揺れているだけだ。

 もしも僕らが普通の速度で走っていれば、けっこう注目されたかもしれない。でも普通じゃない速度で爆走しているので、まず誰かに見られることもない。

 横の護堂を見れば、そんな僕らに視線を──あ、やばい。護堂の息が切れかけている。

 

「お、王様大丈夫? ……大丈夫じゃなさそう! 顔色が白くなって来てるよ!!」

「だい、じょうぶだ……ちょっとペースが……早すぎるだけだ」

「祐理さん速度落として! 護堂がチアノーゼに成っちゃう!」

「わ、分かりました!」

 

 スピードを30キロまで落としたら、護堂の呼吸も少しマシになった。神と神殺しは、神の方が素の身体能力などは高い。僕らが6割から7割ぐらいの速度を出すと、護堂にとっては全力疾走に近い速度になる。

 それでも無理矢理合わせてくれようとしたが、体にとって無茶だったらしい。

 

「これは……ぜぇ……鍛え方を変えなきゃ駄目だな。まさかここまで……はぁ……差があるとは」

「いつもみたいに、体力の有無が勝敗を変えるわけじゃないとかは出てこないんだ」

「強さと違って、体力の多さは根性の有無に繋がるからな。基礎部分を蔑ろにしたら、流石に勝てないだろ……それに、あれだ。今日の晩にする予定の訓練。あれは体力だけが、俺の命を支える頼みの綱だ。美殊と祐理と恵那。三人同時相手にする以上は、もっと体力を付けないといけない」

「王様……」

「護堂さん……」

「……なんか感動的な空気だけど、護堂を追い詰めるのは僕らだからね?」

 

 ちょっとしたハプニングがありつつも、全員で30分ほど──42.195㎞を走り、家に帰れば朝食だ。

 僕の手作り料理をみんなで堪能しつつ、ああそうだと僕は伝えておく。

 

「三人は今日のお昼に予定とかある?」

「俺はないな」

「恵那も特にないよ」

「私は七雄のお役目がありますが……どうされたのですか?」

「今日の晩までに、全員の権能を確かめておきたくて。特に恵那さんと祐理さんの権能次第では、それに対応したサポートアイテムも作成しておきたいんだ」

「いつものやつか……」

「いつものやつだよ…………で、どうかな?」

「特にやる事もないから、俺は別にいいぞ」

「どんな権能なのか知っておきたいから、恵那は参加するよ!」

「美殊様に仕える巫女として、お役目を全うさせて頂きます」

 

 全員問題ないようなので、朝食を食べたら早速検証の時間だ。僕らがふふふとしていたら、真正面に座っていた静花さんと一郎お爺ちゃんは漫画の話みたいだねと朗らかに笑っていた。

 

「何をするのか詳細は問わないけれど、あまり危ないことをしたらいけないよ。特に護堂はね。彼女達は君が娶った、大切な奥さんなんだ。傷つけるようなことをしたら駄目だ」

「分かってるよ爺ちゃん……むしろ俺の方が、いつも美殊にタコ殴りにされてるから」

「え~、お兄ちゃん背も高くて筋肉もあるのに、良いようにされてるの? それは男の子としてどうなんだろ」

「凡神の僕に転がされているようじゃ、護堂もまだまだだねぇ~」

「……お前が凡神なことに、俺は納得していないからな」

 

 護堂は納得いってなさそうな顔だったが、僕なんて凡神も凡神、平凡な神様だ。護堂には盟約を使わない僕ぐらい、あっさり倒せるようになって欲しい。

 全員で手早く食器を片付けたら、さっそく七尾の御社──僕の寝室に転移する。

 

「いつも通り幽世(向こう)に行くのか?」

「ううん、今日は少し趣向を変えてみる予定……まずは権能のチェックからだ。全員神力を入れてから24時間以上経つから、もう定着してると思う。何か自分の中に、力とか感じるかな?」

「少し待ってね………………」

 

 二柱とも目を閉じて、瞑想するような姿勢を取る──ようなではなく、そのものか。

 媛巫女の修行はけっこう過酷だ。幼少期から親元を離れ、霊山の奥にある委員会所有の御寺でみっちり訓練漬けにされることもある。

 その手の経験が豊富な二人がする瞑想は、僕のようなお気楽なんちゃって瞑想とは別物。集中し、己の内面に深く潜っていく作業だ。

 待っている間、僕は術式を構築して練る錬るしておく。

 

 空中に浮かぶ複数の0と1を見て、護堂は不思議そうに尋ねてきた。

 

「それは何してるんだ?」

「趣向を変えるって言ったでしょ? それの準備だよ」

「言ってたな……具体的には何をするんだ?」

「祐理さんが大地母神になったことで、精神感応の出力が増大してる筈だから……ここを弄って……僕の精神感応と同調させて、一時的に精神の世界を創ろうと思ってね。ものすごくざっくりと言えば、四人で共有可能な明晰夢だよ」

 

 本物と変わらない夢の世界でなら、権能の実験も行いやすい。幾ら壊したところで空想に過ぎないのだから、全員全力で力を行使しても問題ない。

 その趣旨を説明したところ、幽世に行くよりも安全そうだなと護堂は納得していた。

 そうこうしてる内に二柱の瞑想も終わったのか、ゆっくりと目を見開く。

 

「──うん。感じるよ。おじいちゃまを降ろした時の感覚に近いけれど、もっと別の何か。恵那とは違うのに、これも恵那の一部だと感じる力。温かいのに冷たくて、凍えそうなぐらい冷えているのに、でも芯から熱を感じるよ」

「私もです。四つの力が私の中で根付いていて──大きな力……広大であやふやで不確かなのに、人の身では過ぎたる力。大地母神と化したこの身でなければ、瞬く間に肉体が崩壊するであろう、神と羅刹の君だけが使う事を赦される、絶大なうねりを感じ取れます」

「……それが権能だよ。どうやら定着しているようだね……使い方やどんな能力なのかは、自分で確認できる?」

「それは……難しいかも。頭の中に聖句は浮かんでくるし、どう使えばいいのかもある程度は分かるけれど、詳細までは……掴みにくい」

「私も同じです。もう少し時間が経てば、おのずと完全に己の手足になる感覚はありますが、まだそこまでの領域には経っていない……と思います」

「権能の発動は出来るけれど、完全な開放や掌握には至らない。ようやく定着したばかりだから、そんなもんだよね~……なら掌握を早められるように、護堂と同じように僕がお手伝いしようかな」

「そんなことできるんだ……王様の御役に早く立ちたいし、ならお願いしようかな」

 

 恵那さんはよほど護堂のことが好きなんだねぇ……その気合を応えるためにも、僕は全力で支援するぜ!

 と意気込んだところ、待ってください恵那さん! と祐理さんが声を荒げる。

 

「美殊様の支援となると、また何かしらの罠が潜んでいる可能性があります! まずは詳細をじっくりと伺い、それから考えても遅くはありません!」

「え~、祐理は考え過ぎだよ。幾ら師匠でも、こんな真面目な場面でそんなことするわけないでしょ。ね?」

「当たり前じゃないか! 祐理さんは僕をなんだと思ってるのさ?」

「……非常に気楽な方です……念のために伺っておきます。支援とは、どのようなことですか?」

「口づけして、僕の神力を混ぜ強制的に覚醒させる。ついでに解析もして、どんな権能なのか詳細仕様書の作成だよ」

「へー口づけ……師匠と口づけ!? それって、あれだよね。タントラで無理やり発情させられて──」

「結果的にそうなるね。だから寝室を選んだんだよ。ここなら二人が淫らな姿を見せても、見るのは僕と護堂だけだからね」

 

 えっへんと胸を張ったら、二柱とも嘘だ……みたいな表情をしている。助けを求めるように護堂の方に顔を向けるけれど、護堂は横に首を振っていた。

 これが悪戯であれば護堂も止めるだろうが、今後の方針や戦力調査として必要な行為だ。護堂もそれを理解しているので、諦めてくれと態度で示している。

 

「あ、朝からその、発情して、お、王様が欲しくなるのは……恵那としては勘弁して欲しいなーとか思ったり……」

「……どうして美殊様が絡むと、ふしだらな行為が当然のように選択肢に上がるのですか……うう……」

「ふしだらな大母と笑ってくれていいよ~」

「その発言には、流石に御仕置だな」

 

 はは! と笑ったら、護堂からこめかみをグリグリされた。おおう、護堂ったら朝からじょうねつて──けっこう痛い!!

 

「ともかく! 二人が実戦で護堂を御助けするためにも、戦力の把握や権能の即時掌握は必須事項! 生きて全員で老衰するためにも、ここはグッと堪えて欲しい! ……それに一つ、二人が発情しても元に戻す方法もあるんだ」

「そうなのか?」

「そうなの。それには護堂の援助が不可欠だけどね……恵那さんに初めて少年の加護を与えた時、僕のタントラがダメージ扱いになって発動条件を満たしたでしょ? あれと同じで、二人にはタントラで発情して貰う。そうなれば加護の条件が満たされて、護堂が無理やりリセットさせられるようになるんだ」

 

 僕の発言に対して、一同がお~その手があったかと納得してくれた。この手の仕様に対する悪用は、僕の十八番だぜ!

 

「納得してくれたところで……さっそく頂くね」

「お手柔らかにお願いする……ね?」

 

 恵那さんの唇を奪い、僕の神力で四つの権能を強制的にたたき起こす。更にじっくりねっとりと舌を侵入させて、ベロを合わせながら解析を進める。

 その間恵那さんの体がビクビクし、一気に首まで赤くなる。それでも手を──舌を休めず恵那さんを攻めていたら、手足に強い力が入った。

 これは……まさかベロチューだけで果てちゃったのか? そこまで深くは無さそうなので、甘イキと言うやつかもしれない。

 

 甘イキをしても僕が解析のためにし続けていたら、相当体が堪えるのか恵那さんの体がとんでもない震え方をし始めた。

 足は指がキュッと折り曲げられて、腰はそわそわ動いている。ごめんね、恵那さん。もうちょっとで終わるから。

 ……ぷはぁと口を離した時には、恵那さんは少し白目を剥きながら体に残る余韻で身悶えしていた。

 

「おうしゃま……たしゅけ……て」

「あ、ああ。俺はここにいるからな、恵那……よく頑張ったな」

 

 猫なで声になっている恵那さんを、護堂が救助しに行く。護堂がよく耐えたと頭を撫でたら、それだけでもう一回果てていた。

 ……やっぱすげぇぜ僕のタントラ! ちょっとキスをするだけで、女の子が骨抜きになっちまうんだぜ!

 ……どこの誰だよ、インドの神話体系に男女のまぐわいを追加したやつ。一神教みたいに禁止にしておけよ。おかげで僕も制御できない、危険すぎる体質になってるじゃないか。

 

 恵那さんについては護堂に任せて、お次は祐理さんだ。

 

 ……大変だぁ! きっちりと解析は出来たけれど、恵那さん以上にすごい発情してる! 人様には絶対御見せできないぐらいに、痴態を晒しちゃってる!!

 

「ご、護堂! 少年の加護で二人を治してあげて!!」

「………………無理だ」

「…………え?」

「二人が大地母神化したせいかな。少年の化身が使えるほどのダメージを負っていると、権能が判断していない」

「……つまり?」

「…………普通に慰めるしかない」

「……え~」

「え~じゃない! とにかくこのままだと二人が可哀そうだから、慰めるぞ。お前も手伝え!!」

「りょ、了解!」

 

 護堂は諦めて服を脱ぎ、既に生まれたままの状態になっている二柱に特攻を仕掛ける。

 僕もサポートに回り、とにかく全力を尽くして二柱の大地母神を鎮めにかかる。

 ……ある程度の頑張りを見せたところで、ようやく少年の化身が発動可能に。

 恵那さん祐理さんをそれで無理やり沈静化させる。

 護堂が口づけで加護を与えるのを見ながら、僕は天井を見上げて黄昏る。

 

「……最近思うんだよね。僕、もしも男性で産まれていたら、この世の女性を食い荒らしまくってたんじゃないかなーって」

 

 NTR竿役とか種付けおじさんの適性が高い大地母神ってなんだよ。そんな風に思ってしまう朝からの一幕だった。

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