前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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夢の世界でボンバーウーマン

 発情し肉欲に溺れて、上の空で護堂を求めていた恵那さん達をどうにか少年の化身で助けた後。まずは汚れてしまった体をお風呂で綺麗にしてから、僕は即席で作成した儀式術を用いて祐理さんと精神感応の波長を合わせ、精神だけの世界を構築した。見た目は東京をそっくりそのまま模してある。

 そんな世界でグーと体を伸ばして、皇居の天守閣跡から明治神宮の方面に視線を向ける。

 

「あと3分でスタートか」

 

 スタートとは、この仮想空間での模擬戦のことだ。

 見た目は本物の東京と変わらない街で、違いと言えば東京から外は漆黒の闇に覆われていることと、生物が一切存在しないことだ。

 そんな場所で護堂含む三人の権能試験を行おうと言う話になったのだが、恵那さんがそれなら模擬戦でやろうよと言い出した。

 恵那さんとしては大地母神化した今の強さが実際どんなものなのか、試してみたいらしい。祐理さんも戦いなどは行った事が無いので、練習でも良いから実際の戦闘がどんなものなのか体験してみるのも悪くない。

 

 護堂も二人がそうしたいなら、別に良いんじゃないかと賛成してくれた。喧嘩や殺し合いなんて好みではない護堂だが、試合そのものは好きなのだ。野球をやっていた影響かも知れない。

 では模擬戦! と言っても、チーム分けが必要になる。

 

 話し合いも特になく、僕VSみんなになった。四人の中で、単純に強さだけで言えば僕が一番上。そんな僕がチームを組んだら、つまらないみたいな理由でハブにされた……悲しい。僕は寂しがりなんだぞ? この模擬戦が終わったら、あとで護堂にヨシヨシして貰うのだ。うん、そうしよう。

 ……おかしいな? 前以上に、僕の護堂依存が進んでいる気がする。頭お花畑か? でも護堂にハグされたり、頭撫でられたら嬉しいし、心の底からほわほわするのだ。オキシトシンやドーパミンが大量に分泌されているのかもしれない。こういう部分は、神も人間も仕組みが変わらない。

 

 寂しい気持ちはさておいて、模擬戦となれば僕も容赦はしない。恵那さんや祐理さんが満足できるように、僕も普通にかなり本気でやるつもりだ。

 

 二手に分かれた僕たちは、それぞれ別々のスタート地点についた。

 僕がスタート地点に選んだのは皇居。向こうは明治神宮。

 

 ルールは至ってシンプルで、護堂たちが僕を倒せば勝ち。逆に僕は護堂たちを倒せば勝ち。単純明快な遊びだ。

 精神世界とは言え、現実と同じ能力に僕らは調整されている。宇宙兵器も当然再現されていて、東京ドームに多脚要塞を待機させてある。

 

 だがそれらを使うのは、終盤になってからだ。初手から爆撃ボンバーウーマンになるつもりはない。あくまでもこれは、祐理さん達の権能試験も兼ねている。そこで初手からいつもの宇宙兵器ブッパなど、何のために模擬戦をするのか意味が分からなくなる。

 とはいえ手抜きはあれなので、皇居内でしっかりと仕込みは済ませてある。手持ちのトランクケース──小型の核兵器を封入したそれを、宮内庁の建物に置いてきた。

 迂闊にもここに飛び込んでくるようであれば、離脱と同時に起爆するつもりだ。

 

 時計を確認。開始時刻まであと10秒──3,2,1……0秒。

 

「さあこ──いぃ!!」

 

 僕は咄嗟に前に跳躍。天守閣跡から飛び出して、大奥跡の草地に着地。後ろを振り返ったら、狼──フェンリルが僕のいた場所を踏みつぶしていた。

 

「『強風』の化身による空間跳躍攻撃。初手から殺す気で大変よろしぃ……ね!!」

 

 草薙劔を引き抜き、上から大上段の唐竹割を落としてきた恵那さんの斬撃を受け止める。

 砕ける大地、爆ぜる地面。僕を中心に草地が消し飛び、直径200mほどのクレーターが完成。

 現実でこれをしたら、僕らは立派なテロリストだ。それで咎められることはないだろうが、護堂はかなり気にしそう。

 

「狼で視線を逸らしてから、頭上からの不意打ち。セオリー通りの一手は、セオリーを知る相手には通じない──いよ!!」

 

 手首を脱力させて、僕と鍔迫り合いをしようとしていた恵那さんを崩す。空中で縦回転させられた彼女は、無理やり僕の盾にされる。

 何に対する盾かと言えば、護堂の投石に対する防御だ。フェンリルの上からこちらを狙撃しようとしていた護堂は、恵那さんで射線軸が塞がれたことに気が付いて停止。

 

 それでも動きは止まらないのか、別方向に石を投げつける。そんなことをすれば当然体勢が崩れてるので──僕は舌打ち。

 護堂の背後に転移して、心臓狙いで突き刺しに行く。

 

「羽持てる我を畏れよ!!」

 

 それより先に、護堂が神速の世界に入りフェンリルの上から転がって下に落ちていく。

 僕はそれを追撃せず、東京タワーの展望台まで転移。

 あまり使うつもりも無かったが、こうなった以上は仕方がない。皇居を視線に入れると同時に、待機時間の間に仕込んでおいた核爆弾を起爆させる。

 

「た~まやー」

 

 歴史ある建造物が、大爆発と共に消滅する。国際指名手配を確実に喰らうテロリズムだが、ここは夢の世界なので問題なし。仮に現実でやったとしても、神殺しのすることなのでお咎めは特にない。

 僕は襲撃を仕掛けてきた二人が、爆発を逃れたかどうか確認するために眼で確かめてみるが──反応なし。

 

「これは祐理さんの権能──吉祥天の権能に、精神感応を組み合わせたのか……やるねぇ」

 

 吉祥天とは、古くはヴィシュヌ神の奥さんであるラクシュミーと呼ばれた大地母神の事だ。奈良時代に金光明最勝王経が中国から伝わったことを切っ掛けに、日本国でも信仰として取り込まれた女神。

 毘沙門天の妻としての地位を得た吉祥天は、吉祥悔過と呼ばれる国家安寧と安泰を願う国家儀礼の本尊としての地位も獲得している。

 かの女神がそれだけの地位を得たのは、職能が幸運と繁栄、豊穣に特化しているからだ。彼女の前で罪を懺悔すれば許され、明日から幸運な日々が始まる。それが吉祥天の神としての在り方だ。

 

 祐理さんが吉祥天として発現させたのは、この国家繁栄と守護の権能。広域を己の街として認識し、そこに暮らすものに幸運を与えたり作物を実らせる都市運営の力。

 長期的に見れば非常に強力な権能ではあるが、戦闘にはあまり向かない……点を、どうやら精神感応と組み合わせる事で克服したようだ。

 

「精神感応だけであればカバーできない広範囲ジャミングを、吉祥天で都市や国を己であると自己認識し、強固かつ範囲拡大させたのか……それでいいぞー」

 

 組み合わせによる強化は馬鹿に出来ない。これをされたことで、僕は目視以外で三人を見つける手段が乏しくなった。無理矢理出力を上げたらどうにかなるだろうが、それをすると今度は僕が発見されてしまう。

 ……さぁさぁ、鬼ごっこは僕の得意分野だ。どうしてやろうか。最初は真正面から受けてあげようなんて考えていたが、そちらがここまで本気で来るなら僕もその流儀に則ってあげないと。

 

 

 

 

 

「あいつ……皇居諸共爆破するとか、やることが出鱈目過ぎるだろ」

「ここが夢の世界だから、遠慮なく爆破……したんじゃないんだろうな。師匠の性格からしたら、現実でも必要なら爆破するよね」

「……するだろうな。容赦なく」

 

 恵那と護堂は、皇居爆破から辛くも逃れていた。どうにか脱出できたのは、祐理の導きがあったからだ。美殊が転移で逃げると同時に、彼女から二人に連絡が入った。

 そこにいるとまずいので、全力で離れてくださいと。

 

 美殊の性格を考慮すれば、爆撃が飛んでくると護堂は読んだ。奴はそういうことを躊躇なくすると護堂は知っている。鳳の化身を維持したまま、恵那を連れて府中市の東京競馬場方面へと全力で逃げた。

 フェンリルも逃げようとしたが、1秒の差で間に合わず美殊の核に巻き込まれてリタイア。護堂の後方で、悲しい鳴き声を上げて体が爆散していた。

 

『御二人とも大丈夫ですか!?」

「祐理が事前に警告してくれたから、何とか生きてるよ……祐理の方こそ大丈夫か? あいつの事だから、まずはそっちを狙って殺しに行きそうだが」

 

 祐理はスタート地点である明治神宮から、バフォメットの権能を使い転移術で地下鉄に移動している。美殊の核爆撃を考慮するならば、地上にいるよりかはまだ安全だからだ。

 ヴォバンが持っていたバフォメットの神力は、魔術神が綴る魔導書としての在り方。それを持つ祐理に発現したのは、自らを魔導図書館──禁書目録とする権能だ。

 一度目にした魔導書、魔術書に記載された内容を複製し、己の記憶に転写。目視したならば、初めて見る魔術の類ですら解析し、己の術式として脳に書き綴る。それらを必要に応じて引出、自らの術として行使する。

 あくまでも自らの術とするだけであり、制御などは祐理の魔導力任せの権能。もしもこれが護堂に渡っていたら、そこまでの脅威とはならなかった。

 

 だが、現在の祐理は美殊と同じく魔女の源流たる大地母神。人間時代でもかなりの素養を持っていた祐理だが、そこから数段階は能力が引き上げられている。

 バフォメットの権能と組み合わされば、祐理は魔道神の域に足を踏み入れる。新たな術の作成・発展は美殊の方が上だが、既存の術に関しては祐理も負けてはいない。

 

 そんな祐理は護堂チームの眼であり耳。同時に対美殊の要でもある。彼女が潰されたら、広域ジャミングが無くなり護堂側は常に捕捉されるようになる。

 

 そうなれば詰みだ。美殊は遠慮なく東京ドームに置いてある多脚要塞から地対地飽和爆撃を行い、恵那と護堂が死ぬまで姿を見せず延々とミサイルと砲弾を降り注がせる。

 もしかしたら、ニュークリアクラスターも飛んでくるかもしれない。あれを使われたら、護堂側の対抗手段は『余次元の劔』しかない。

 

 しかしそれをすると、仮想空間であるこの東京都ごと壊滅する。つまり自分たちも巻き込まれて一巻の終わりだ。

 

「師匠がどこにいるか分かる?」

『いえ……東京タワーに転移したところまでは追えたのですが、そこから一歩も動いていないんです。普通であれば籠城を選んだと考えたいのですが、美殊様の場合絶対に違うと思うんです』

「美殊の思考回路だと……たぶん祐理に捕捉されているのに気づいて、デコイを置いて逃げたんじゃないか? もしも俺たちが東京タワーに乗り込んだら、今度こそさっきの地雷で爆殺される気がするな」

「そうなるとあれだよね。この模擬戦は、本気の師匠……真正面から戦っても強いのに、不意打ちと離脱を遠慮なく繰り返す、誉れのない強者を相手にしなきゃいけないことになるんだね! ……嫌だなぁ……どこから狙ってくるのか、全然分からないなんて……」

 

 全員で溜息をつく。本気の美殊とは、誉れもへったくれもないゲリラ戦法の使い手だ。どこに潜んでいるのか不明なまま、罠を仕掛け殺し間を形成し、獲物が飛び込んだところを躊躇なく潰しに行く。

 祐理が見失った以上、どこで何をしているのか。それこそ各地に先ほどの核を仕掛けて、護堂らが飛び込むのを待ち構えているかもしれない。

 ともかくどんな手を打ってくるのか分からないのが、熊野美殊の恐ろしい点だ。最悪東京全域を爆破し始めてもおかしくはない。

 

『護堂さんの手助けになるよう、嵐を呼んでおきます……風よ吹いて! 雨よ来て!! 私は風を呼び、水を集め、雷を集める。灼熱の風も凍れる風も私の元に!! 大地に住まう者らに恵みを与えたもう!』

 

 ヴォバンが使っていた頃は『疾風怒濤(シュトルム・ウント・ドランク)』と呼ばれた権能を、祐理は自らの力として行使する。

 侯爵が使う時には攻撃的な権能として専ら雷撃と風撃が使用されていたが、祐理が使うのは雨──水としての側面が強い。

 空が急激に雷雲に覆われて、滝のような雨が東京に降り注ぐ。それらは護堂を濡らしたりはせず、複数の雨粒が集まって大きな水龍となる。

 それだけでは終わらない。祐理は更に助けとなるように、自らの分霊を護堂の傍に作り出す。

 

『開け冥界の門。母なる大地の姉にして冥界の女王、畏るべきエレシュキガルの版図へと下り、私は今こそ死を迎える。竜蛇の冥王イナンナの復活に刮目せよ!!』

 

 精神感応の応用技である、幽体離脱。それを更に応用して、自らの霊魂を分霊とし、イナンナの権能で黒い竜に変化させた。

 護堂らの眼前のレース場に、突如として体長30mほどの黒い鱗に覆われたドラゴンが出現する。

 

 ヴォバンがイナンナ──イシュタルとも呼ばれるシュメールの大地母神を殺害して奪い取ったのは、イナンナの冥界下りに関する神力。

 姉であるエレシュキガルが支配する冥界すら奪わんと地下へと堕ちていくが、七つの門を潜る度に力を少しずつ奪われ、冥界の女王の前に辿り着いた時には無力な女性になっていた。

 そこから紆余曲折の末に復活し、イナンナは再び地上へと舞い戻る。

 

 これは豊穣の女神の化身である蛇が冬には地下で死んだように冬眠し、春には目覚めて復活する有様をモチーフとした逸話。この神力を手にした祐理は、自らの霊魂を竜蛇に変身させる権能を得た。

 これと幽体離脱による分霊を組み合わせることで、元の肉体を動かしつつ、ドラゴン形態での戦闘も可能とする。

 祐理なりに考えた、権能を利用した戦闘術だ。

 

「お待たせしました護堂さん」

「それがイナンナのドラゴンモードか。事前には聞いていたが、かなり大きいな」

「祐理が直接戦えるようになるなんて、なんだか感慨深いね」

 

 ともかく、これで護堂側の戦力は整った。護堂は祐理から大黒天と熊野夫須美に関する知識を貰い、『黄金の剣』の準備も済ませてある。

 空には雷雲があり、山羊の化身──民衆の意志を束ねるか、近くに一定以上の雷があるとき発動可能な化身の準備も済ませた。

 美殊から以前貰った指輪には呪力を籠めると発電し、山羊の化身をいつでも発動可能とさせる魔術具。それを使っても良いのだが、祐理が呼んでくれた雷雲の方が呪力を一切使わない分お手軽だ。

 

 それに祐理が美殊の代わりに精神感応の繋げてくれているので、彼女の魔導力を借りてペレの言霊もいつでも使える。

 さぁてどこから来ると護堂らは警戒し──

 

「あ……ま、まずいです護堂さん!! ()()がやられました!?」

「なに!!」

「もう見つかったの!!?」

「本体の私がやられたなら、広域阻害が──」

「──駄目だよ祐理さん。監視カメラに映る場所にいたら」

 

 祐理が言葉を言い切る前に──黒竜の首が稲妻により断ち切られた。

 放電する救世の神刀(草薙劔)を持つ美殊が、一刀両断にして見せたのだ。

 黒竜の祐理は不死の力を持つが、そんな竜蛇を殺し贄とするのが最後の王と救世の神刀。不死性ごと叩き斬ったのか、祐理は復活せず砂となり消滅した。

 

 その結果を見終わる前に──

 

「我は告げる。生ある物は全て平等である。あらゆる意味、あらゆる形を我は等しく火の糧としよう。焔の煉獄、その一太刀を刮目してみよ!!」

「我は神弓となりて大いなる輝きの主を導かん!!」

 

 恵那が天叢雲を手に走り出し、護堂も石に神力を籠める。

 恵那が唱えたのは祝融の聖句。火神が持つ殲滅の焔であり、数十キロの範囲を焼き尽くすことすら可能な破壊の権能だ。

 それを太刀一本分に凝縮し、万物万象を両断する赤熱の剣とする。それが恵那に発現した祝融の権能であり、まともに当たれば美殊の鋼体すら切断して見せる。

 

 その上現在の恵那は、軍神でもあるカーリーを使い大地母神化した存在。近接の才能値は大幅に増しており、現時点でも一流を超え超一流の領域に指が触れている。

 その剣技はサルバトーレ・ドニに近いもので、美殊ですらそう簡単には無視できない技量だ。

 

 ……だから彼女はまともに相手をしない。祐理の首を斬ったら、即座に転移で離脱した。

 

「くそ!! あいつ逃げに関しては判断が早過ぎる!!」

「これってまずいよね! 向こうは恵那と王様を捕捉してるのに、こっちは師匠を見失っちゃった!」

「間違いなく爆撃してくるぞ!! 逃げろ!!?」

 

 祐理()が潰された以上、一か所に留まるのは不利だ。これが権能や魔術による爆撃なら戦士の化身で防御出来るが、宇宙兵器相手だと心許ない。

 恵那は護堂の傍に行き、逃げようとしたところで──それを踏んでしまった。

 

「え──」

 

 転移と同時に、美殊が置いていった視えない核地雷群。それらが一斉起爆して、府中市ごと恵那を消し飛ばした。

 むろん近くにいた護堂も巻き込まれるが、かろうじて雄牛の化身とウルヴルの大量召喚で凌ぎ切る。

 ……それで終わりではない。レーダー役の祐理がいなければ、護堂の居場所は丸裸なのだ。

 

 ──装填(セット)急急如律令(オーダー)

 

 美殊の爆撃が始まる。次から次へと降り注ぐ爆薬と弾薬の雨。護堂は鳳の化身で東京を走り抜けるが、尋常ではない破壊の権化が進路を塞ぎ、護堂を殺さんと迫り続ける。

 爆破、爆破、爆破──東京が火の海に呑みこまれ、ランドマークも高層ビルも全てを瓦礫の山に変えていく。

 

 そうして走り続けていれば、いずれは護堂の神速も停止する。長時間の使用による負荷だ。

 護堂の足が鈍り、そこに核爆撃が叩き込まれる。

 

「おおおおおお!!!!」

 

 雄牛の化身と駱駝の化身の同時運用。心臓の痛みを根性で凌ぎ、蹲りながらも耐えきろうとする。

 ……がごんと音がした。護堂が防御するのであれば、それごと貫いて殺すだけと言わんばかりに、ニュークリアクラスターが飛んできた。

 ばら撒かれる小型核の礫。総計1万発を超える核弾頭が護堂に襲い掛かり──肉片すら残さず消し炭に変える。

 

 だがそこで終わりではない。雄羊の化身が発動し、瓦礫すら残っていない東京に護堂を復活させる。

 

「あの……アホ……模擬戦で夢の世界だからって……東京丸ごと更地に変えやがって……」

 

 見渡す限り地平線になった東京を見て、護堂は呆れてしまった。宇宙兵器が真価を発揮すれば、現実でもこの光景が見れてしまうから。

 

 そんな護堂の前に、ようやく美殊が姿を見せる。見せると言うか、護堂の背後から草薙劔を突き刺しての御登場だ。

 思わず血反吐を口から吐き出す護堂だが、彼はこの瞬間を待っていた。こちらが爆撃でも生きていると知れば、彼女の性格上必ず不意打ちで止めを刺しに来ると考えていたから。

 

 歯を食いしばり、駱駝と神弓を使ってどうにか意識を繋ぎとめる。狙うのはカウンターだ。振り向きざまに首を蹴りぬこうとしたが──不発。

 美殊は神刀を差すと同時に、神速+転移で離脱していた。一切の油断なく、確実に抹殺する。

 呪詛を置き土産とし、再び遠距離からの爆撃に移行。先ほどとの違いがあるとすれば、護堂は体内から呪詛に抗いつつ、美殊の包囲網に対処しないといけない点。

 そんなやり取りを繰り返すうちに護堂の呪力も底を尽きかけたので、彼は最後っ屁として『余次元の劔』を発動。

 

 東京ドーム跡に鎮座する多脚要塞諸共仮想空間を粉砕して──模擬戦は終了した。

 

 

 

 

 

 

「どうだった? 僕との模擬戦は」

 

 そう問うてみたら、三人とも僕を白けた目で見ている。な、なぜ?

 

「美殊様。此度の訓練では、宇宙兵器は終盤まで使わない……そう仰られていたと私は覚えていますが……あれは何ですか?」

「ええと……み、みんなが本気で来るなら、僕も本気でやって上げないといけないなーなんて思って──てへ?」

 

 とやってみたものの、三人ともなぜか淡々と布団を敷いていく。な、何事?

 

「お、お布団なんて用意してどうしたのかな? まだお昼だから、今日の夜戦には早いと思うん……だけど?」

「……二人と話してな。美殊には反省を促す場が必要だって……二人とも、美殊の拘束を」

「はい!」

「了解王様!!」

「あ、あれれ?」

 

 恵那さんと祐理さんに両サイドから取り押さえられて、僕は布団に転がされる。抵抗は出来るけれども、一体僕はどうされるのだろうか?

 

「反省って……何をされるのかな?」

「……こうするんだ。我は言霊の技を以て世に義を顕す」

「戦士の化身!? あ、ちょっとまって。まさかとは思うけれど──ほらやっぱり!?」

 

 僕の周囲を黄金の剣が取り囲み、僕の神力をゆっくりと削っていく。それだけでなく、恵那さんは天叢雲を使って呪詛破りを行い、祐理さんは御霊鎮めで僕の神力を抑えてくる。

 そして護堂を見れば──僕のタントラが壊れる前に、しっかりとコピーしている。

 それで僕も気づく。三人が言う反省の場とは何なのかを。

 

「確か僕を屈服させたら……だったな。本当は俺だけの力でそうしたかったが、それを待っているといつになるのか分からない。だから──二人の力も借りて、今日お前を屈服させる!」

「ま、待って!! まだ僕心の準備が出来てないよ!?」

「美殊様……観念してください」

「そうだよ。恵那達も散々痴態を見せたんだから、師匠もそろそろ王様相手に恥ずかしいところを見せないと」

 

 あ、ああ! ま、まずい!! 戦士の化身にリンガを抑えられ、さらに二柱の干渉で僕のタントラは完全に殺されている。

 もしもこの状態でタントラをコピーした護堂に攻められたら──

 

 ──僕が思い浮かべるのは、護堂にねちっこく攻められて果てていた祐理さん。あんな状態になってしまうのだ。

 ずっと先だと思っていた、護堂に初めてを上げる儀式。それが唐突に来た事に僕は──ドクンと心が跳ねて、お腹がきゅうと疼く。

 

「──ご、どう……優しくして、ね?」

「……それじゃあ、御仕置にならないだろ?」

「……へへ……」

 

 だよねー……あ、ちゃんと前戯はしてくれるんだ。それなら安心──あ、これしゅご──

 この後。僕は凄いことになった。恵那さん曰く、祐理さんと比べてもなお遥かに上の、とんでもない乱れ方をしたとか。あんな壊れ方をするとは思わなかったとも言われた。

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