前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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前話の今話の間にあった美殊&護堂本番のR18短編

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巨星が堕ちれば迷惑千万

 欧州……どころか世界規模で裏の界隈は荒れていた。

 原因は言うまでも無く、ヴォバン侯爵の死亡だ。ユーラシア大陸とアフリカ大陸の術師にとって、かの魔王こそがカンピオーネの中のカンピオーネ。

 殺害人数は軽く7桁を超えると言われ、公式記録でも一千人以上が住む都市が『疾風怒濤』により一晩で壊滅し多数の死者を出している。

 

 誰もが知る神殺し、ヴォバン侯爵。横暴さに耐え兼ね、邪知暴虐の魔王に挑んだ一流の大騎士、超一流の聖騎士は数知れず。

 それら全てが返り討ちにあい、死せる従僕の仲間入りを果たしてきた。

 知恵の王と呼ばれた神殺しに、複数の神格ですら打ち倒し降した古豪のカンピオーネ──それこそがかの狼王。

 

 此度も獲物を求めて日本へと向かったのは、複数の結社が把握していた。その一つである<赤銅黒十字>のエリカにすぐ情報が届いたのも、古王の動向がそれだけ注目されているせい。

 ヴォバンが脚を運べば都市が滅ぶ。それは欧州の常識であり、今回もそうなると思われていた。

 サルバトーレ・ドニを降し、新世代最強とまで呼ばれる草薙護堂であろうとも、まず勝つのは難しいだろう。

 

 ……それら事前の予想を覆し、届いたのは凶報だった。巨星堕つ。アメリカはニューヨーク、金融都市マンハッタンにおいて、草薙護堂とジョン・プルートー・スミス両名の共同作戦により、ヴォバン侯爵討ち死に。

 周辺被害は……零。

 

 それは間違いなく凶報だった。最古にして、破壊の権化とまで呼ばれた侯爵が死亡する。それだけでも大珍事なのに、被害が全く出ていない。

 すなわち、侯爵は抵抗する間もなく葬られたという事。

 神殺し二名が組んだのだから、それは当然などと考える輩は早死にするのが裏の界隈だ。その程度で侯爵が死ぬのであれば、当の昔に彼は恨みつらみから殺されている。

 

 ……最古の王ですら寄せ付けない強さを、どちらかが有しているのだ。スミスはそこまでの噂が無い。ならば考えられるのは一つ──草薙護堂はヴォバン侯爵を瞬殺する領域にいる。

 ドニが失墜し、アレクサンドル・ガスコインに身を寄せるかヴォバン侯爵の犬になるか……それとも<赤銅黒十字>のように、草薙護堂を御旗にするか。

 悩んでいた結社は数多くあり──この凶報を切っ掛けに、大部分が草薙派を表明し始めた。

 そこでイニシアチブを握ったのは、美殊が名代と指名し、護堂から直接<赤銅黒十字>の筆頭騎士である『紅き悪魔』(ディアブロ・ロッソ)の称号を賜ったエリカ・ブランデッリだった。

 

 美殊が命を降した、護堂の名義で侯爵に連なる全てを押収せよの指令を彼女は良くこなした。

 むろんエリカ一人では難しい。<赤銅黒十字>全体で動き、それでも手が足りなければテンプル騎士団の流れを汲むイタリアの名門結社──ローマの雌狼、蒼穹の鷲、トリノの老貴婦人、フィレンツェの百合の都、パルマの楯も巻き込んだ。

 サルデーニャの件で少なからずこれらの結社も護堂に関わっていて、彼の名代としてエリカが動く以上は無視できない。

 むしろこの流れに乗れば自分たちにとっても大きな利益があると踏んだ六名門が手を組み、欧州各地に散らばっていた侯爵名義の物件や土地、魔術具、魔導書、人的資源を回収していった。

 中には真っ向から抗議する術師達もいたが、魔王陛下の勅命で働く大騎士達を止められるわけも無く……次々と制圧された。

 

 ……そして、この流れから除け者にされた魔術結社がある。同じくイタリアの名門──<青銅黒十字>だ。

 結社総帥であるクラニチャールは力の信奉者で、若き頃からヴォバン侯爵を自らの盟主として仰ぎ見ていた。

 それもあり、ドニの失墜後は何処よりも早く侯爵の軍門に下り──草薙王の情報を届けてしまったことで、彼の怒りを招いたと腫物扱いだ。

 若きカンピオーネが七月末にミラノを訪ねると宣言したことはエリカの口から届けられ、その情報はすぐに欧州全体に広まった。

 

 これでヴォバン侯爵が存命で、なおかつドニが健在であればまた話も違うが、現在の欧州に草薙護堂を止められる存在はイギリスの魔王しかいない。

 しかし黒王子(ブラックプリンス)は、早々に──

 

「俺の知ったことではない。お前たちの招いた災いならお前たちで片付けろ。なぜ俺が、そんな火中の栗を拾わねばならんのだ。くだらん……そもそも草薙護堂と熊野美殊とは、俺は停戦協定を結んでいる」

 

 と<青銅黒十字>からの打診を一蹴している。彼にしてみれば、なぜ自分にとって最大の敵である最後の王を……極東の魔王の従者をして、満足している危険物に関わらないといけないのだと嘆きたくなる。

 ただでさえ、去年に起きた事件が切っ掛けで最後の王から威嚇されているのがアレクサンドル・ガスコインだ。

 

 そう言った点を抜きにしても、長年追い求めていた先代最後の王について名を告げられている。その貸し分ぐらいは返してやらんでもないと外面を気にするアレクは、向こうから喧嘩を売りに来ない限りは護堂陣営とは揉める気もない。

 

 藁をも掴む思いで米国の魔王にも打診したが──

 

「ヴォバン侯爵は我が版図で、愚かにもまつろわぬ神を呼び寄せようとした。しかも、よりにもよって我が国の心臓部の一つでな。その原因には<青銅黒十字>も噛んでいると、私は同盟相手(草薙護堂)から伺っている。本来であれば私からも君たちに問う事は多くあるが、彼が詰問に訪れるのであれば我が質問は心の中に沈めておこう……彼との出会いがどのような結果であれ、私は一切の関与をしない」

 

 と、こちらも君たちで片付けろと一蹴された。あとはアイーシャ夫人と中華の羅豪教主しか頼れる相手なぞいないが、前者はこの時代にはおらず、後者は連絡手段が一切ない。

 ……仮に連絡手段があったとしても、中華の魔王が<青銅黒十字>に味方することなぞ万に一つもあり得ない。厚顔無恥にも己らの恥を擦り付けようとすれば、護堂よりも先に教主の怒りを喰らう事態になる。

 下手をすれば<青銅黒十字>どころか、欧州の結社幹部全員が自分の血で自分の遺書を書くことになる。侯爵が恐怖の魔王なら、教主は古代中国の女帝だ。

 まず直談判するのであれば、願いを口にした代償に自分の首を斬り落とさないといけない。それでようやく耳を傾けてくれるかもしれないが、あくまでも可能性があるだけ。

 ……それか数百年に一度レベルの逸材を、献上品として差し出すか。曹操の如き人材マニアな癖が教主にはあるので、御眼鏡に適えばそこを足掛かりに攻略は出来るかもしれないが──残念ながら、<青銅黒十字>にそれだけの天才はいない。才女リリアナですら、精々五年から十年に一人は出てくる程度の才覚。

 かの教主が自らの弟子として鍛えてみたいと思わず前のめりになるのは、それこそ己すら遥かに凌ぐ最上級すら超えた究極の一に辿り着ける才能が必要となる。

 

 ……つまるところ、<青銅黒十字>には関わりたくないと、多数の結社がそっと距離を取っていた。触らぬ神の祟りに愚かにも触れて、これから怒りの天罰を喰らう予定の結社にどうして積極的に関わりたいのか。

 今回、草薙王はその怒りの対象がどこにあり、いつ天罰を降すのかを慈悲深くも告知してくれている。おかげで何をしていいのか、何をしたら駄目なのか広く周知された。

 処罰の対象である<青銅黒十字>にしても、気に入る言い訳を考えておけと一か月以上の猶予をくれている。

 ……その上で多方面に協力を頼みこんだのはマイナス点だが、どうしようも無いことを受け入れた彼らは、言い訳とは何かを考えた。

 

 考えて──

 

「これは……気に入られるだろうか。しかし、話に聞く草薙陛下が、果たしてこのような酒を気に入られるのか?」

 

 銀髪の少女リリアナ・クラニチャールは、ミラノにある<青銅黒十字>の本部でリストと品物を見比べながら、思わずぼやいてしまう。

 彼女がいるのは、本来であれば総帥や幹部だけが立ち入ることを赦された神聖なる間だ。儀式魔術を行ったり、新たな大騎士を任命するときなどに使用される特別な部屋なのだが、そこには現在大量の品が運び込まれている。

 

 それらは<青銅黒十字>が数世紀かけて集めた財宝の山で、歴史的価値のある物品から、魔術的価値のある魔道具。単純に金銀白金(プラチナ)と金銭的価値が高いお宝など雑多に置かれている。

 これらは全て七月末に来る、護堂に献上されるために結社が各地の支部などから掻き集めたお宝の山だ。

 

「気に入る言い訳とは、つまるところ御眼鏡に適うだけの貢ぎ物を用意しろ……か。お爺様の御言葉は本当なんだろうな?」

 

 果たしてこんなものを集めたところで、意味があるのかとリリアナは考える。確かに草薙護堂は、自分の名義で侯爵の物品を<赤銅黒十字>に集めるよう指示したとは彼女も聞いている。

 神殺しの王者(カンピオーネ)が態々そんなものを欲しがるのは、意外と珍しい。

 殺された侯爵であれば、本当に欲しいのは神や同格との闘争。ドニも同じく、真に求めるのは自分を殺せるだけの実力を持つ強者との死闘。

 アレクなら欲しければ勝手に盗んで行き、スミスは物欲にそこまでの興味がない。

 教主であれば献上物としてなら受け取るだろうが、あれこれを持ってこいなどと命じはしない。天上の存在たる自分には、下々が何かを差し出すのは当然であると考えているので、命じなくともそうなると信じているから。実際そうなることの方が多い。

 アイーシャ夫人は……アイーシャ夫人だ。この魔王についてはそういう存在としか言えないので、考えるだけ無駄である。

 

 そんな中、エリカに命じて物品を押収していく。それは当然、物欲があるのではないかと考察される。

 そして一か月以上の時間を与えた上で言い訳……となれば、それはこんな言葉が隠れているのではないかと推測される。

 

俺が気に入るだけの金銀財宝を用意しろ。それ次第では、お前たちの命を助けてやるよ

 

 これは神殺しの怒りを買った身としては、真実であればかなりの慈悲深い対処だ。ここに集められた品々は確かに貴重な逸品ばかりだが、しょせんは金で買えるだけの品物でしかない。

 命は金では買えないし、そもそもヴォバン侯爵を例に出せば死ねるだけ温情だ。持つ権能次第では、カンピオーネが死ぬまで魂を縛り付けられる恐れがある。

 

 ……同時にリストの最後の方を見て、リリアナは再度大きなため息を吐く。

 リストに乗るそれらは、何も物言わぬ物品だけではない……女も多数記載されている。

 

 <青銅黒十字>はイタリア七名門の一角であり、それだけ構成員もかなり所属している。イタリア人もいれば、ギリシャ、オーストリア、ルーマニア、チェコ、ブルガリア、中には元英国人だっている。

 それだけいれば当然女性も多数在籍していて、それなりの綺麗どころが揃っている。

 

 そして草薙護堂とは年頃の男性だ。十代半ばから二十代半ばまでの十年が男性の性欲が強い時期で、それはイタリアでも感覚は変わらない……どころか、日本よりも早熟の傾向が強い。

 一説によればイタリア人の4割が16歳で童貞を捨てると言われていて、8割強が22歳までには女体の味を覚える。

 これでドニのように戦いこそが我が人生なタイプでは意味もないが、物欲がしっかりとあるならば性欲もあるのではないか?

 ならば差し出すのは物品だけでなく、見目麗しい女もだ! と<青銅黒十字>はなんか暴走していた。

 

 流石に結社の麒麟児であるリリアナや、その他の才女達は差し出せないが、門弟や見習いであれば何とか。

 ともかく何が向こうの琴線に触れるのか分からない以上、差し出せそうなものは全て用意する。

 それはリリアナにも理屈としては理解できるが……

 

「サルデーニャを救ったような御仁が、女性など欲しがるのか? 話によれば、見目麗しき従属神を連れているとも聞くが……」

 

 呆れてしまう。我が家のお爺様は侯爵死亡の件以来意気消沈し、覇気を無くされてしまったとリリアナは嘆く。

 その上で草薙陛下をどうにか出来ないかと足掻き、諦めた末の全てを差し出してでも結社を守ろうとする姿勢を、孫娘としてどう評価すればいいのやら……

 

 そんな風に思いながらも、リリアナはリストを見つめる。もしも自分の名がこのリストに乗ったとして、それで草薙陛下が全てを貰うなどと言い出せば、その瞬間に彼女は魔王の所有物となるのだ。

 ……慈悲深いと称される王が、女性に対してどんな扱いをするのかは不明だが、もしも傷つけたりはせず守るような御仁であれば──なんて──

 

「くだらない思考だな……これは……うん……」

 

 創作と現実は違うのだ。どれだけ慈悲深いと称されようが、カンピオーネはカンピオーネ。神すら抹殺する覇王が、本気で女を気遣うなどありえない。

 その気質に振り回され、破滅の道を歩まされるだけだ。そう自分を戒めながら、リリアナは黙々と自分の仕事に没頭するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 欧州の時間から少し遡り。

 日本、七尾神社の室内で、草薙護堂は祐理と恵那に頼んで、腰付近に治癒の権能を使って貰い、最後の王との闘いで負った怪我を癒していた。

 

「王様……腰とその……お〇ん〇ん大丈夫?」

「なんとか…………少しは傷が癒えてきた。雄羊と弓の治癒もあるから、あと数分もあればなんとかなりそうだ」

「良かったです……護堂さん、最後辺りは非常に辛そうでしたから」

 

 祐理の眼は護堂に向けられた後、辛そうにさせた原因に向けられる。それは護堂にしがみ付き、すぴーすやーと満足そうな寝息を立てている最後の王にして運命の女王──熊野美殊だ。

 色々とあった末に、恋のABCのCまで進んだ護堂と美殊。しかしその代償は大きく、護堂の心身に恐ろしいまでの負荷を強いた。

 護堂はタントラにより美殊を何度も何度も果てさせた。時には一秒に一回のペースで攻め立てた。

 

 ……それでも美殊はもっと、もっとと護堂を欲しがった。今の今まで、『鋼』の神力により制御されていた地母の多淫。それが二柱の破邪で『鋼』から解放された結果、美殊の性的欲求は海より深く山より高いことが判明。

 普段から漏れ出していた、当柱が呼ぶところのドスケベサキュバス。それですら、氷山の一角でしかなかった。

 途中途中で護堂が休憩に入ったが、その間美殊は護堂の膝を借りて自分を慰める始末。

 

「……すごかったね」

「……ああ」

 

 護堂がそろそろ良いんじゃないか? そう問うても、美殊は目を潤ませて彼を欲しがった。

 

「やら……ごどうのいちばんがいい。まだえなさんのかいすうもいってないよぉ……ぼくがごどうのいちばんなんだから……」

 

 とにかく護堂の一番が欲しいと言い、これでもかと美殊は甘え続けた。

 

「ぼく、ぼくがんばるから。まだなんにもやくにたってないけど、ごどうのためにがんばるからぁ……がんませんばーすとへいきもかんせいさせるから……」

「良く分からないが、嫌な予感がするからそれは未完成で良いからな?」

 

 じぇねしすつくるもん……と意気込む美殊にそれは造らないで良いぞと釘を刺してから、護堂は美殊を慰めるために腰を振り続けた。

 途中途中で雄羊を発動させ体を癒し、祐理恵那コンビにも治癒を頼む。美殊のタントラは護堂のそれに負けを認めたのか既に機能停止していて、二人が破邪顕正をする必要は無くなっていた。

 しかし近づく二柱を見て、盗られると勘違いしたのか幼児退行気味の美殊は護堂にギュッとしがみ付いて──

 

「ごどう……ぼくの……」

「だ、大丈夫ですから美殊様! 私たちは、あくまでも護堂さんをサポートするだけですから!!」

「……とらない?」

「盗らない盗らない!! 王様は、今日は師匠だけのものだよ!!」

「……えへへ。ゆりさんとえなさんやさしいからすき」

「……笑顔だけなら随分と可愛らしいのですが、その結果として発揮されるのが、護堂さんのリンガ独占と言うのはどうなのでしょうか?」

「師匠、追いつめて追いつめて爆発させたらさっきみたいなものすごい力を発揮して、そのあと幼児退行するんだ……とんでもない壊れ方……」

 

 こんな壊れ方をしたのは護堂たちにも責任の一端があるので、彼は美殊が満足するまで己のリンガと腰を酷使した。

 その果てに運命の女王は深い眠りについて、最愛の腕の中で寝息を立てる。

 

「……師匠、揺すっても全然起きないね」

「先ほど見せた、私たち三人を合わせても全く届かない、桁が数個は違う呪力量。あれが美殊様が仰られていた、全開(フルスペック)の討滅神なんだと思います。でもあれは美殊様にとっても、恐らくですがかなりの負担を強いる力の使い方。護堂さんがお与えになられた満足感と、力を使ってしまった疲労感でお眠りになられたので、当分は起きないかと思われます」

「……フルスペックの美殊か。俺は二柱分の呪力が本当の美殊だと聞いていたんだけど……あの時の力は、確実にそんな領域を超えていたように思う。あれはなんだったんだ?」

 

 美殊を追いつめ過ぎたせいで、垣間見せた本当の討滅神としての能力値。『盟約の大法』を使っていないのに、それに匹敵するかもしれない力を自力で美殊は引き出したのだ。

 どう考えても二柱分なんて逸脱した力で、それが護堂には不思議でしかなかった。

 それにこれも恐らくですがと、祐理が一つの解答を示す。

 

「美殊様の二柱分は間違っていないのだと思います。その代わりに加算ではなく……()()なのかもしれません」

「え……それって要するに、足し算じゃなくて掛け算てこと!?」

「はい。美殊様も10足す10で20が本当の力だと思い込んでいる。でもそれは違って、10かける10で100。もしかしたら100足す100で200ではなく、100かける100で1万。そうお考えになれば、先ほどの海のような巨大過ぎる神力にも説明がつくんです」

「なら……本当のフルスペックの美殊は、通常の神様が100の力しかないところを1万の力を保有していて……そこから『盟約の大法』で強化されるから──」

 

 三人とも、可愛らしい寝息を立てる美殊を見て嘘でしょ……と呟く。二柱の破邪顕正を一方的に破壊し、神力に対する特攻武器である知恵の言霊すらも瞬間的に滅ぼした異常なまでの力。

 あれこそが本来のフルスペックを発揮した美殊で、そこから超強化まで残されている。

 その上──

 

「本来ならセーフティになった筈の運命の担い手の権限すらも、師匠は自前で持ち合わせてる……幾ら王様みたいな神様を殺す王を倒すためとは言え、とんでもない破壊兵器が誕生したんじゃないの、これ?」

 

 その言葉を聞いて──ま、護堂はそんなもんかもしれないと思った。数値だけを聞けば非常に恐ろしい存在に思えるが、護堂の知る美殊とは普段からまぁまぁ人のことを振り回す問題児だ。

 それがすごく強いからと言って、だからなんだと言うのだろうか。そもそも破壊兵器がどうと言うのであれば、宇宙兵器の時点で大概だ。今更フルスペックの美殊が、想定の一千倍、一万倍強かろうとも誤差に過ぎない。

 

 それに護堂は知っている。腕の中でスピスピ幸せそうに寝ている子は、年上の癖に年上っぽい部分が全然見えない変な子で、性欲旺盛な困ったさん。 

 たくさんおねだりしたり、護堂がねちっこく攻めたら体を震わせながら果てたりするが……護堂のためになりたいと、誠心誠意尽くしもする精神的に脆いところのある普通の女の子だ。

 なら自分は、それを受け止めてやればいい。受け止めて、許容して、それでいいんだよと時に褒め、困ったことをし続けそうになれば怒ってやればいい。それだけの話だ。

 

 なに、それぐらいの男で無ければ、想像以上に遥か上の力を持つ『究極の鋼』を帯刀することなんて許されない。

 だから護堂がすることは、たった一つだ。

 

「……美殊のタントラ問題は解決したが……たぶん、性的欲求たっぷりなのは変わらないよな?」

「……変わらないと思います。むしろ護堂さんのことを、今まで以上に求められる。そんな気がするんです……」

「祐理の直感でそう思ったなら、そうなんだろうね…………頑張ろう、王様!! 師匠が満足するまで、恵那達も頑張ってサポートするからね!!」

「恵那……その心意気は嬉しいんだが、二人も俺が欲しい時が……あるんだよな? その時はどうするんだ?」

 

 護堂がそう問うと、祐理も恵那も目を逸らす。その態度にだよな~と護堂は天井を見てから、自分の股間に言葉を投げかける。

 

「……頑張ろうな、俺のリンガ。俺も頑張るからさ」

 

 経験人数は三人なのに、今年だけで経験回数が100万回を軽く超えそうだ。そう思いながら、美殊を抱き枕にして護堂も眠ることにした。

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