前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

6 / 70
あなたの御名前なんですか?

「一体どこの神様なんだろうね?」

「さてな。名は確かに重要じゃが、さりとてそれが絶対ではない。我こそ最強にして勝利。それさえ理解しておれば十分よ」

「結局、記憶喪失と同じなんだから大丈夫では無いだろ、それは」

 

 少年神と行動を共にすることになった僕らは、御昼寝の時間が終わって営業再開をしたカフェにいた。カフェと言うかバールだ。日本では、イタリアバルと言うほうが伝わるだろう。

 

 夜には居酒屋に代わるらしい御店。その外には地中海が一望できるテラス席があって、そこに神と霊格が半分欠けた神と神殺しが鎮座している。

 この光景、イタリアの魔術結社が見たら腰抜かすんじゃないだろうか。なにせ戦略核2発と、それを面白半分で破裂させると畏れられている魔王陛下がエスプレッソ片手にのんびりとしているのだから。

 

「そなたからは蛇の気配もしよる。であるならば、魔女としての素養もあろう。我の来歴などに、思い当たるところはないか?」

 

 蛇、つまりは地母神だ。地母神は男性神が台頭する前には様々な職能を司っていたが、戦争が当たり前の時代になるとその地位から追い落とされた。その過程で竜などの倒されるべき存在として認定されてしまい、不可思議な術を使い翻弄する悪い奴と、シンプルに剣でぶった切る英雄なんて形に物語が編纂された。

 

 キリスト教の影響もあるのだろうが、神の奇蹟以外は大体悪い術だ。そんな悪い術を使うのは、元が大地母神の倒されるべき竜に違いない……みたいな理屈で、大抵の地母神は魔術・呪術に対する高い適性がある。

 僕も例外ではなく、人間基準なら人類史に名を連ねて、魔術神基準なら100点中75点から80点ぐらいの魔導力がある。

 

 なので、この中では一番当たりを引ける確率が高いだろう。

 

「まず霊視で一発! は難しいね。本人が名を忘れるぐらい摩耗しているせいか、びっくりするぐらい視えない。構成要素や、何の神格を含んでいるのかぐらいは捉えられるんだけど……」

「そうなると、地道に当たりそうな神を探すしかないのか?」

「ある程度まで絞り込んだら、そこを足掛かりに無理矢理霊視できるかも……さて。一番最初に視えたのは黄金の剣だ。地中海で黄金の剣となると、有名なのはメデューサから誕生したクリュサオルだね」

「クリュサオル? 聞いたことがない名前だな」

「メデューサの子供だとペガサスの方が有名だからね。それとクリュサオルの娘であるエキドナも。エキドナの方なら、護堂も聞いたことがある筈だよ」

「なんだっけ? 前にヒュドラがどうとか聞いた覚えがあるような……」

「それで正解。キマイラにケルベロスにヒュドラにネメアの獅子。ギリシャ神話に登場する、有名どころの怪物のお母さんがエキドナだよ……話を戻すと、黄金の剣。これは生まれたばかりのクリュサオルが、持っていたとされる剣。典型的な蛇から誕生する、鋼の象徴だね」

 

 鋼を形作る砂鉄や鉄鉱石は大地から採掘できる。そして熱して鉄に精錬し、冷やしたりして形作るのに使われる火や水もまた、大地に属する性質だ。それらが神話に組み込まれていくと、大地母神、つまり蛇から剣が出てくるようになる。

 

「クリュサオルの剣はその後、ギリシャ神話では全然出番がない。本家本元のギリシャ神話より、イングランドのエドマンド・スペンサーが書いた、アーサー王伝説を下地にした物語、『妖精の女王』の主人公アーティガルが使った方が有名だね。アーティガルはアキレウスの鎧を持ち、女神アストライアに教えを授けられた。これも典型的な、鋼を育てる女神の物語だ」

「アーサー王伝説……アーサー王伝説か……あれかぁ……」

「ん? なぜこやつは気を落としているんじゃ?」

「アーサー王絡みで、色々とね……」

 

 去年に色々とあったんだよ。英国の魔王様とか、神祖とか。

 

「……となると、この少年はクリュサオルか、そのアーティガル?」

「んー、違うと思う。例に出したけれど、それだと駱駝が入ってるのが変になる。駱駝を神話に取り込んだとなると、出身はアラム人がいた地域の筈だから……アッシリア帝国やペルシア帝国?」

「それってどの辺になるんだ?」

「今のイランやアフガニスタンだから、中央アジアらへん……それで勝利の神様……少年の姿……ヒンドゥー教のスカンダ?」

 

 スカンダは美少年の姿をした勝利の軍神。一説によれば、シヴァとパールバティの子供ともされている強大な神だ。

 なおこの説が当たると、この少年神は僕の兄さんという事になる。なにせ両親が一緒になるのだから。

 

 僕の父『大黒天』がインドの破壊神シヴァなのは有名だが、母である『熊野牟須美』──イザナミもインドに縁が深い神格。

 

 熊野牟須美は千手観音と神仏習合していて、千手観音はヒンドゥー教の多臂像の神を下地にして誕生した概念。その中には、カーリーやドゥルガーと言ったシヴァの奥さんも含まれている。

 これらの女神は、パールバティの別形態と見做される神格。その流れで行くと、パールバティとはざっくりと言ってしまえばイザナミなのだ。西から遥か東側に流れ、当時の口伝のみで継承されていた日本古来の蛇信仰と結びつき、紀元八世紀に編纂された『古事記』や『日本書記』に名を残す大地母神へと姿を変えた。

 

 ……最初聞いた時、えーと言ってしまった。そんなんありなんだ、と。しかしそんな下地があれど、母は当初父からの求婚に渋ったらしい。今の妾は、パールバティではなく熊野牟須美だと。

 が、そこは愛多き神格である我が父は諦めなかった。三顧の礼ならぬ三十顧の礼を尽くし、最後には母にお腹の上で踊って貰ったらしい。カーリーの逸話再現?

 

 そんなこんながあり……愛が再び育まれた二柱の間に、僕が生まれた。生まれる筈がない、とんでもないイレギュラーな僕が。

 そんな僕はと言えば、ヒンドゥーな観点からすればシヴァ神とパールバティ神の子供。つまりスカンダの妹になる。

 

「スカンダ?」

「日本だと韋駄天の名が一番通りがいいね。旧き天空の主、インドラから指揮官の座を奪い取ったほどの強き軍神。孔雀にまたがり空駆ける姿から太陽神としての神格も併せ持ち、魔神ターラカを討伐した神殺しの神だよ」

「孔雀だと太陽神になるのか?」

「なるよ。孔雀は羽を広げた姿が太陽の後光のようにも見えるせいか、太陽信仰と結び付けられやすいから。世界最大の宗教であるキリスト教でも、孔雀は太陽のシンボルとされて、その肉は聖なる肉故に腐らない……不死の肉体に関わりやすいんだ」

 

 ついでに蛇を喰らうので、その辺も太陽に繋がる要因になっている。古代には神聖な存在だった蛇は、最終的に地を這い暗闇に潜むことから、『死』や『闇』の使徒になった。不浄な倒されなければいけない存在に。

 それを空から襲い喰らう孔雀は、闇を倒す光の戦士だ。そのせいか鳥と関わる神格は、太陽としての側面を持つことが多い。同じインド神話ならガルーダがまんま蛇を倒す光り輝く鳥として。ちょっと離れたエジプトでは、ハヤブサの頭を持つ天空神ホルスとラーとかも、その辺の事情が取り込まれている。

 

 僕の出した言葉を呑み込んだ少年神は、そうじゃなと呟いた。

 

「スカンダか。残念じゃが、どうにも嵌る感覚がせんな。我の奥底に僅かながらも残る記憶が、否と言うておるわ……じゃが、いまそなたが口にしたインドラ。そちらには少し惹かれるものがある」

「インドラの方に? そうなると……黄金の剣……黄金の鉄器……黄金が象徴するのは、普通は太陽のことだ。そうなると、この神様はスカンダではないが、太陽神としての側面もある。そのうえでインドラ神と縁があり、駱駝にも結び付けられた神格。そして嵐……強い風……ヴリトラハン……ウルスラグナ? でもここはイタリアだからローマと結びついたとして、そうなると……ミトラスかも」

「また初めて聞く名前が出てきたな。インドラがインドの神様なのは分かるけれど、ウルスラグナにミトラスてのは?」

「両方、今はイスラム教に追いやられたゾロアスター教と関わる重要な神格だよ」

「たしか世界最古の宗教……だったか?」

「うん。古代イラン……ペルシアでザラスシュトラ=スピターマが創始した宗教で、悪と善の二元論が特徴。このゾロアスター教の主神はアフラ=マズダと言う知恵の神で、同時に正しき光……太陽神としての側面を持つ。アフラ=マズダが太陽神になったのは、天空神が一宗教の主神に成りやすいからなのもあるけれど、それ以上にイラン高原でミスラが信仰されていたから。新しい神様を創る際に、元々信仰されていた神格を下地にした方が信徒を集めやすいから仕方ないね」

「新しいリーダーの方針に、元のリーダーの方針を重ね合わせるみたいな話ってことか」

「イエス!」

 

 元から何かしらの神が信仰されていると、新しい神様に信仰を集めることは難しい。人間、よほど目新しい概念でないと、見向きもしないのだから。なので手っ取り早く、元の神話を自分達の神話に取り込むことは多数の地域にみられる普遍的な概念だ。それこそ、大地母神が倒されるべき悪に零落させられたのも、これと似たような話だ。

 

「ミスラはインドのミトラと同じ、インド・イラン語派が崇めていた太陽信仰から派生した光明の神様だよ。紀元前30世紀頃には、インドとイランに住むことになる民族は同一の民族だった。その後東に向かいインド亜大陸に定着した民族と、西に向かいイランに定住した民族に別れる。元が同一かつ同様の文化と文明を築いていたから、それを下地にしていることもあり神話体系によく似た要素が見受けられるんだ」

「ふぅん……そのミスラってのが、ミトラスになったと?」

「そうだよー。ユーラシア大陸交易路網ことシルクロード。全長6400㎞にも及ぶ大規模な交易路が開かれた事で、中国~ローマ間で物品と文化のやり取りが開始された。この途中には当然のようにイランがあって、西に東にと多数のあれこれが行き来するようになった……その中にはミスラもいたんだよ。神話の輸出だね」

 

 シルクロードを渡ってローマに持ち込まれたミスラは、紀元1世紀ごろから勢力を急速に拡大。あっという間に国教レベルまで成長したが、その後はキリスト教が台頭して衰退した。栄枯盛衰を感じるね。

 

「そのミトラスには戦闘神としての神格もあるんだ。ウルスラグナは、ミトラスやミスラから軍神としての側面を抽出した神格。十の化身に姿を変えて、戦場で悪しきを滅ぼす、神を葬り末路わす神……古代だと一番強いやつがリーダーとして選ばれていたけれど、時代が降るにつれて、別に一番強いやつが一番偉いわけではなくなった。指揮官と将軍みたいに分業化が進んでいった時代背景が神話にも取り込まれて、偉い指揮官のミスラと、その下で命を受けて動くウルスラグナとして成立していったんだ……あ……」

 

 ここまで絞り込んだおかげか、霊視が機能するようになった。あー、なるほど。ミトラスかと思ったけれど、この少年神は──

 

「ウルスラグナの方か。ごめん、護堂。さっきはミトラスかもなんて言ったけれど、訂正させて。この神様はウルスラグナさんだよ」

「……のようじゃな。その名を聞いて、我の中でも欠けていた器が満たされおったわ。そうかそうか、我はウルスラグナか。うむ、勝利こそ我と知っておればそれで良いが、名が戻ってくることは歓迎すべきじゃな。善き哉」

「そうか、それじゃ……ウルスラグナさんと呼べば良いのかな?」

「ラクシャーサにさん付けされるのは適わん。今はこうして共におるが、我と汝は元来は命を賭して争う関係。我らの敵に、親しみを籠めてさん呼ばわりされるのは少しむず痒いわい」

「じゃあウルスラグナにしておくよ」

「それでよい」

 

 鷹揚に頷き返すウルスラグナさんに、護堂はなんだかなぁ……みたいな空気だ。従来は殺し合いをする関係なのだから、当たり前と言えば当たり前かもしれないが。

 とはいっても、護堂はよほどのことがないと喧嘩なんてしたがらない。よほどが起きた瞬間に、ブレーキが壊れる悪癖があるが……

 

「それじゃウルスラグナの名前も判明したし、次はどうして霊格が欠けているのか……か?」

「そうなるね。地上に顕現した時に何かしらのバグがあった? と結論付けるには、神の格は侮れない。そうなると、誰かと戦って、怪我をした。そう考えるのが必然だね」

 

 僕が地上に降りた時のように。

 

「バルカン半島に近いから、例の侯爵と激突した可能性が一番高い。次が別の神格と争う事になった。基本的に、このどちらかだと思うよ」

 

 神に勝てるのは神殺しか神だけ。この当たり前の法則に従うのであれば、この二つしかありえない。

 

 最大候補はバルカン半島にいる最古の魔王。300年を生きる神殺し、ヴォバン侯爵。かの魔王と戦い、敗れはしたものの逃走した。これなら辻褄があう。ウルスラグナさんには羊や白馬と言った、不死に纏わる化身があるのだから、死なずに逃走出来るだろう。

 

「え? それってまずくないか? あの時みたいに、ウルスラグナを追ってカリアリまで来たりするんじゃ……」

「ちょっと占ってみるね。ウルスラグナさん、髪の毛を一本貰って良いですか?」

「髪を? 魔女の類に、あまり体の一部を渡したくはないが……仕方ない。一本だけじゃぞ」

 

 魔女に渡したくないのは分かる。その気になれば、感染呪術で呪いを伝播させられるからだ。呪いの藁人形とか。

 これが人間の魔術師であれば、神が持つ無効化体質でどうとでも防げるが、同じ神が使う魔術や呪いとなれば話が違う。流石に髪一本で呪うのは難しいが、全体毛量の三分の一ぐらい貰えるのであれば、遠隔から護堂やウルスラグナさんを呪うことも割と簡単にできる。

 

「これを簡易方陣の上に乗せて……あー、なんかカリアリ港の方に、凶兆の禍が出てる」

「マジかよ」

「おおマジ。今すぐにじゃないね。日が暮れる頃に、何かが海の方から来る……みたい。でもこれ、神や神殺しっぽくはない。んー……神獣ぐらいの凶かも」

「そやつであれば、もしかすると我の一部やもしれんな」

「……もしかして、神格の一部が剥離して、それが暴れまわってる?」

 

 僕の問いにウルスラグナさんはゆったりと頷く。十の化身の内、半分無かったのはそのせいか。そうなると……ちょっとメールを打っておこう。

 護堂の携帯が震えてメールが届く。それを見た護堂は、少しだけ頭を掻いていた。

 

「仕方ない。夕方頃に、港の方に行ってみるか」

「そうしようか。神獣とはいえ、変に放置すると大変なことになるし」

 

 僕や護堂にとっては、権能による強化を受けていない神獣なんて大した敵じゃない。しかし、人間基準では全く違う。

 よく訓練された、100点中70点ぐらいの魔術師が20人ぐらい徒党を組んでようやく対処できるのが神獣だ。一部には単独でも渡り合える魔術師──イタリアであれば、最高位の聖騎士パオロ・ブランデッリなどがいるが、それは例外中の例外。

 

 喧嘩なんて御免だと言う護堂にしても、流石にそれが来ると知れば無視は出来ない。

 

「夕方までは観光でもして時間を潰そうか」

「そうだな……君は何処か見たいところとかあるか?」

「我に聞く事か、それは? 我はお主が、悪しき羅刹なのかを見極めるためにここにおる。ゆえに、いないものとしておけ」

「……壁だね」

「壁だな」

「は?」

 

 僕と護堂の言葉に、ウルスラグナさんは本日二回目の、なんじゃこいつらみたいな目をしている。だって、その考えは間違いなく壁だよ。

 

「まぁ、そう言わずに。先達として、僕に神様らしさとか色々と教えてよ」

「先達? そう言えば、そなたがどこの同胞なのかを聞いておらなんだな。どこの出なんじゃ?」

「うーん……一応日本だよ。東の果ての島。古い名前で言えば、アルダナーリーシュヴァラ。今は名前を変えて美殊を名乗ってるけどね」

「アルダナーリーシュヴァラとな!? シヴァとパールヴァティーが合一して生誕した、完全なる神……なるほどのう、それならば鋼と天空神と地母神の気質が混ざっておるのも納得じゃな。しかし美殊? 自ら名前を変え寄ったのか?」

「色々とあってね」

 

 実際にはアルダナーリーシュヴァラは全く関係ないのだが、僕の中にイザナミ由来の地母と大黒天由来の鋼や嵐が内包されているのは事実。なので神話上の名前は、アルダナーリーシュヴァラですよと説明するのが一番手っ取り早い。

 

「深く詮索すると、そなたとしても説明し辛い案件のようじゃな。ならば、これ以上は突っ込まんでおこうか」

「助かります……」

 

 自己紹介も終えたところで、全員でバールから移動する。そこからはカリアリの各所巡りだ。護堂とウルスラグナさんと共に、石造りの街を巡っていく。

 途中サッカーをしていた若者らに混ざり、三人全員でサッカーをすることに。なぜそうなったのかと言われたら良く分からない。なぜか気が付いたらそうなっていたとしか言えないからだ。

 

 なおサッカーの結果については、両チームとも完全に互角。向こうのチームに護堂&ウルスラグナさんが入り、もう片方には僕が所属することになったからだ。

 これでウルスラグナさんが完全な状態なら結果は違っただろうが、彼は今飛車角落ちで弱体化している。もう片方の護堂はと言えば、単純なスペックであれば僕の方が上。これがルール無用の殺し合いなら不利なのだが、ルールありきのスポーツなら神殺しの戦闘直感などに蓋をある程度出来る。

 

「ゴッドハンド!」

「なんだあの嬢ちゃん! いま手が大きくなったぞ!!」

「待てよ!! 魔術(それ)はイカサマだろ!!?」

「ぶっぶー。これはただの技術だから」

「……このラクシャーサよりも、あやつの方が大人気ないのかのう?」

 

 手が大きくなったように見せかけるだけの、呪力や神力を使わないちょっとした小技だからセーフ! 護堂は不満なようだが、別にズルなんてしていない。そんなことを言い出したら、人間のスポーツに神と神殺しが参加してる方がズルだ。

 と言うかだね? ここまでやらないと、流石に二対一の不利を覆せないの。僕ら以外にも遊んでいる人はいるけれど、全員全くついてこれてないからね?

 

 とまぁ、こんな感じのサッカー対決があり、終わる頃には──

 

「なるほどのう……羅刹ではあるが、それなりに勝負に対する心得を学んでおるか。あやつと違って」

「それは……褒めてるのか?」

「うむ。勝利の軍神からの金言、素直に受け取っておけ」

「あ、ああ……サンキュー?」

 

 護堂とウルスラグナさんの仲がちょっと良くなっていた。これで最終的にもっと仲が良くなって、殺し合いをせずに済みました……が理想的なんだけど。上手くいってほしいな。

 そんなこんなで一日も終わり、日も暮れ始めた。そろそろ時間なので、全員で港に向かって移動することにした。

 

 夕焼け小焼けでまた明日~と鼻歌を歌いながら歩く僕と、護堂とウルスラグナさんの影が伸びる時間帯。そんな僕らの道を塞ぐように、建物の屋上から人影が降りて来た。

 

「ようやく見つけたわ……突然で申し訳ないけれど、お尋ねしたいことがあるの」

 

 その人物は、10代半ばの金髪少女だ。赤みがかった金色の髪で、背は僕より少し高い。かなり綺麗な顔をしていて、服の上からでもプロポーションの良さが分かる。

 おーすごい! 媛巫女や僕は神の血が流れているので綺麗になりやすいけれど、気配からして普通の人間なのに、それらに追いつくかもしれない美貌をしている。天然ものでこれは中々だ。

 

「この島に顕れた神について、わたしに──エリカ・ブランデッリに全て教えなさい」

 

 全身から自信のオーラとでも呼ぶべき気が放出されている女の子──エリカさんは、唐突に僕らにそう尋ねた。顕れた神と言うと、エリカさんが指さすウルスラグナのことかな?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。