前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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ダイヤモンドから夢を放つ

 全員で僕お手製の戦闘服に着替え終わる。恵那さんなどはぴょんぴょん飛び跳ねて、動きやすいかどうかを確かめている。

 護堂も同じように、服が関節稼働などの邪魔にならないかを確かめるようにグルグルと回す。

 

「これ動きやすいな? ここまで引っ張られるような感覚のしない()()()()は初めてだ」

「羽毛のように軽くて、それなのに丈夫なのは結構なのですが……どうしてジャージなのですか? 美殊様のセンスですと、ニュースに出てくるような軍隊が採用する戦闘服でも出てくると思っていたのですが」

「それは先入観に囚われ過ぎだよ……と言いたいけれど、少しは悩んだんだよね。やっぱり戦闘服と言えば、ミリタリースーツみたいなのが理想ではあるから」

 

 僕の作成したバトルスーツは、最初は各国の特殊部隊が採用してるような軍事作戦用の戦闘服を参考にするつもりだった。

 ただあれらは構造と素材で耐久性・機能性・環境適応性を得ているのに対して、僕が造るのであれば魔術を組み込むことでそれらを確保できるので、別に見た目が派手になりやすい戦闘服を真似る必要もない。

 

 悩んだ末に採用したのが、結局ジャージである。なぜこれかと言われたら、僕もいざ出陣する時は大体ジャージだから。ひらひらした服って、見栄えは良いけれど動きにくいと思うのだ。

 少年の加護を使った祐理さんと恵那さんは服装が変化し、恵那さんであれば巫女服に。祐理さんであれば十二単に変化する。

 あれを見る度に僕は思うのだ……めっちゃ動きづらそう、と。勿論十二単を着ても万全に動けるが、ジャージと比べたら動きに雲泥の差が産まれる。格下相手ならまだしも、まつろわぬ神相手には致命的な隙となる。

 

 それに考えてみて欲しい。一体どこの誰が、どこにでも売っていそうなちょっとお洒落の入ったジャージを、まつろわぬ神との戦闘にも使えるバトルスーツと思うのか

 そんな話をしてみたら──

 

「その辺の戦いに対する合理的思考は、なんかこう……お前らしいな」

「でしょ?」

 

 全員でお揃いの黒ジャージに着替えると、まるで修学旅行に来た高校生だ。全員高校生なので、そのまんまだねこれだと。

 なおこのジャージ、素材について詳しく解説したらサルバトーレさんの手足だ。神殺しの肉体を構造解析して転用したのは事実だが、手足もそのまんま利用している。ちょうど四つあったからさ……分子レベルで錬金術して再結合させたら、なんか良い感じになるから。

 

「……美殊様が御作りになられたのだから性能は確かなのでしょうが、サルバトーレ卿の肉体を使いましたと伺ったら、非常に複雑な気分になります……」

「師匠としてはあれなんじゃない? 動物の毛皮で服や皮鎧を造ったぐらいの感覚」

「その辺のマッドサイエンティスト具合は、今に始まった話じゃないから祐理も諦めような」

 

 微妙に不評だった。うん、まぁ人体使った服ですと聞いて、良い気分にはならないよね。

 

 

 

 

 

 エリカさん達<赤銅黒十字>にナポリに向かう事を伝えてから、僕らは転移術でナポリに到着。降り立ったのは、刑務所として使用されたこともある観光名所『サンテルモ城』だ。

 城の上から辺りを見回し、まずは目視で異常が無いかを確認……戦闘が起きている気配はない。

 

 『探知』を起動すれば、はっきりとまつろわぬ神を感知できる……それとサルバトーレさんの所在地も。

 

「サルバトーレさんは旧市街にいるね……座標からして、崩落した地下遺跡に埋まってるみたい」

「……一応、後で回収してやるか」

 

 以前のサルバトーレさんであれば鋼鉄の肉体で崩落を防ぎ、魔剣で大地を切り裂いて脱出できるだろうが、僕の四肢を嵌めてスマートスキンを肌として張り付けられた状態だと、権能行使すらままならない。

 たぶん埋もれたまま、地面の下から脱出出来なくなっている。そのまま死んでくれないかな~と僕の小市民マインドは願ってしまうが、別に死んで欲しいと思っていない護堂は助けてあげるつもりのようだ。

 

「まつろわぬ神様達はどのあたりにいるの?」

「少しお待ちを……両柱とも、別れた場所におられます。片方は南東に2キロほど向かった地点に。もう片方は、ここから西に6キロ地点に滞在されておられます」

「ここから南東と西だと、この辺りだね」

 

 祐理さんも僕と一緒に広範囲探査をしてくれたのか、まつろわぬ神両名の居場所を把握していた。僕も彼らを捕捉しているのでナポリの詳細地図をタブレットに映し出し、この辺だよと二人に見せる。

 

「南東に2キロ行けばサンタルチア港か」

「西にあるのはクラテレ・デリ・アストロニ自然保護公園?」

「のすぐ傍にある、アニャーノ競馬場だね。こっちに推定ユノの大地母神はいるみたい」

「なら港にいるのが推定ミトラスか……」

「そうなるね。どっちから向かう?」

「近いのは港の方だろ? ならそっちに向かう」

「ミトラスの方からだね。了解!」

 

 この距離なら転移で向かうよりも、近づきながら状況を観察できる飛翔術の方が適している。全員を連れて、僕の魔術でサンタルチア港を目指す。

 ある程度近づけば、その神様が目視できた。卵城と呼ばれる要塞の上を陣取り、海の方を眺めて何かを待っている様子だ……ミトラスだとすれば、太陽が上がるのを待っている? まつろわぬ神はまつろわぬ身となっても、まつろう頃の神格が消える訳じゃない。太陽神であれば、日光を浴びることで力を万全にしたり出来る。

 

 それを狙っているのだろうかと僕が訝しんでいたら、こちらに向かって飛行する僕らを見つけて、む? と向こうは目を細めた。

 まだ距離があり、僕らは闇夜の中を飛んでいる。それでも向こうが太陽の神格であれば、この程度の暗闇は無いに等しい。地平線の彼方にいようとも、一度捉えた相手であれば隠れようが見つけ出せる筈だ。

 こちらの存在を完全に捉えたらしく、卵城の上に立つ男は、顔だけ向けていた状態からゆっくりとこちらへ向き直った。

 

 当代の意匠と言うには古めかしい出で立ちで、白いマントが実に神々しい。太陽の神格なのだから、光り輝くような白は普通だろと言わんばかりの眩しさだ。

 そして直接目視したからこそ、僕と祐理さんはミトラスではないことに気付く。より正しくはミトラスだが、ミトラスではないと。

 

 向こうと同じように卵城の上に降り立った僕らを見て、彼は興味深げに僕らを観察している。その視線を紐解けば、さてさてどこの女神と神殺しだ……かな?

 

「あれがミトラスなのか?」

「ごめん、違う。イタリアだからミトラスだと思っていたけれど、別の名前で顕現しているよ──あれはペルセウスだね」

「ペルセウス? それって、あのギリシャ神話の英雄の?」

「そのペルセウスだよ。ペルセウス・アンドロメダ型神話の英雄神」

「ほう? 私を見て、一目でこちらの名を見通してみせるか。なるほど……御身は女神、それも大地母神か。それも慧眼を持つ地の女神……む? それだけでなく、これは私と同じ英雄神の? 失礼ですが、御身の名を伺っても宜しいですかな?」

「……別にいいよ。僕は熊野美殊。旧き名をアルダーナーリー。貴方と同じ、鋼の系譜に属する神様だ……貴方はペルセウスさんで良いんだよね? ミトラスやソール・インウィクトゥスではなく」

「おおっと、名を問いながらも、私の方から乙女に名を名乗らぬなど失礼でしたな。御身が我が名をつまびらかにしたからと言って、それで名乗らぬ道理も無し……如何にも。私の名はペルセウス! ミトラスやソールも我が名ではあるが、此度はこの名を使っている」

 

 そう言いながら、ペルセウスさんは髪の毛をふさぁ……とかき上げながら、聞くが良いと言わんばかりの態度で、己の名を誇示している。やだ、どうしよう。今の動作に、僕の中の俺様系好きじゃないセンサーが働いてしまった。もう斬りたい。

 あとペルセウスさんが、なぜミトラスやソールを我が名と呼んだのかについては、彼の出自が関係している。

 ものすごくざっくり言ってしまえば、ペルセウスは複数の神格を持つ神様だ。一番の大本はティアマトを倒した英雄神マルドゥークが起源となるが、それだけでなく複数の神が彼と習合している。

 

 習合した神格の一つがミトラス。英雄ペルセウスの名が文献として出てくるのは、紀元前七世紀頃に成立した神統記が初出である。このペルセウスの成立過程としては、先ほどのマルドゥークがギリシャに持ち込まれ再編成。そこにシルクロードを渡り伝わった太陽神ミスラの逸話が取り込まれ、ペルセウスと言う神は成り立った。

 ミスラの名残として残っているのは、ペルセウスがペガサス──太陽を運ぶ白馬に跨る逸話だ。

 それとペガサスと共に誕生した、黄金の剣を持つクリュサオル。これもまた、のちにウルスラグナさんに分割される戦闘神としての、ミスラの名残だ。

 

 そんなペルセウスさんがギリシャ崩壊後ローマに持ち込まれると、ミトラスやヘリオスと習合して太陽なる英雄ペルセウスとして新興神の立場を得た。

 なのでペルセウスさんはミトラスであり、またソールやヘリオスでもあるが成立する。神話は時として、全く違う神格から違う神格の名前が出てくることがある。

 

「私は名乗ったのだ。そちらも熊野美殊以外も、私に名を教えてはくれないかな? 特に美殊と同じく、麗しきそちらの乙女達の名を」

「……俺は良いのかよ」

「乙女の名よりも、男性の名を優先することなどないだ──ふむ? 君は神ではないが、只人ではない気配を感じるな……なるほど。当代の神殺しか。これがちり芥ならいざ知らず、神殺しとなれば事情も違う。良かろう、では君から名乗り給え」

「……草薙護堂だ。あんたが言うように、神様を倒してしまった人間だよ」

 

 自分よりも先に、祐理さんや恵那さんの名を問われた事が若干納得がいかないのか、護堂は不満そうに自分の経歴と名を語る。

 それを聞いて、ペルセウスさんは神殺しが人間とは片腹痛いとおかしそうに笑う。

 

「デイモン、ラクシャーサ……人間ではなく、邪悪なる魔王としての名こそが、君たち神殺しの本性だ。それを指して人間などと呼ぶのは、我が宿敵としては些か過小評価に過ぎるな」

「勝手に宿敵にするな!」

「宿敵だとも。我ら『鋼』と神殺しなる大妖は数千年に渡り、相手の血で己の血を流す戦をしてきたのだ。その逆縁は、例え君と私が初対面であろうとも、消せるほどの因縁ではないぞ……」

 

 ニヤリと笑うペルセウスは次に、まだ名乗っていない二柱の女神に目を向ける。このまま放っておくと戦端が開くと考えたのか、まずは祐理さんが口を開いた。

 

「お初にお目にかかります、偉大なる英雄神ペルセウス様。私は万里谷祐理。旧き名を吉祥天。地母の末席に座る身です」

「初めまして、ペルセウスの神様。清秋院恵那。旧い名前をカーリー。祐理と同じく、地母の末席を頂いたばっかりだよ」

「これはこれは……乙女らからも、只人ではない気配はしていた。それがまさか、大母とはな。さて……なぜ御身らは、神殺しと共にある? 我ら鋼の英雄神ほどでは無かろうとも、御身ら大母にとっても神殺しは怨敵。共にある意味……少しばかり気になりますな」

「なんでって言われたら、それは簡単。僕らは草薙護堂に堕とされた女神だから……彼に敗北(惚れて)、その身に侍ることを選んだ。護堂は僕らの旦那様なんだぜ?」

 

 僕がどやぁと胸を張ってみたら、ペルセウスさんは神殺しに竜蛇として退治されましたかと皮肉げだった。

 

「大母をそれだけ侍らせるとは、君は中々英雄の素質があるようだ。これが神殺しなどで無ければ、一夜を共に語りたいが……私は鋼で、君は羅刹。ならばやるべきことは、古来より決まっている」

 

 その言葉を切っ掛けに、ペルセウスさんの圧力がグッと強くなる。鋼特有の戦意が大気を歪めて、物理的な圧として僕らを呑み込もうとする。

 が、その程度で怯むようでは、この場に立つ資格などない。こうして前線に出るのは初めての祐理さんにしても、その威圧に呑まれることはない。なにせ彼女は、ペルセウスと同じ土俵である神の領域に、従属神程度の力しかないが立っている。それを抜きにしても、まつろわぬ神を相手に退くような玉じゃない。

 そんな僕らの平然とした姿を見て、ペルセウスさんはその意気や良しと嬉しそうだった。

 

「……言っておくが、俺はあんたと喧嘩や殺し合いをしに来たんじゃない。何の目的があるのか、聞かせて欲しくてここに来たんだ」

「神殺しとは思えぬ、少し腑抜けた戯言だな。私の殺気をぶつけられても、動じもせぬ戦士とは思えん言葉だ……しかし目的か。それがそちらの戦意と直結するのであれば、私としては語らねばならないな」

 

 ペルセウスさん曰く。どうやら彼は、ユノと名乗る大地母神と接触していたらしい。それで彼はどうして自分が、地上に顕現したのか悟ったのだとか。

 ──ああ、この女神は竜蛇のそれ。つまり竜退治の英雄である自分は、きっとこの女神を倒すために呼び出されたのだ。

 

 それを心から理解したペルセウスさんは、ユノに決闘を申し込んだらしい。ユノはそれを承諾したが、何やら条件を付けたらしい。

 戦うのであれば、その力が万全な状態でやってこい。それと相応しき場で待つ故、お前の方からやってこい。

 

「……街中で戦おうとはしなかったのか?」

「さてな。私は多くの民が注目する市街でのいくさこそ華だと思っているが、どうやらユノはそうではなかったらしい。それに最高位の地母が決闘に相応しいと決める場所にも、些かの興味がある。それゆえ、場と時間の提案を私も承諾し、ここで朝日が指すのを待っているのだよ」

「ああ、やっぱり」

 

 決闘云々までは予想していなかったが、ペルセウスさんが己の力を最大にするために港で太陽を待っていると予想したのは正解だったようだ。

 ……それはそれとして。

 

「その決闘をして、もしも勝ったらの話だが──」

「──そのもしは、私に対する侮辱だぞ、神殺しよ。私は竜蛇を殺す英雄。それにユノを殺害するために、この地に降臨したのだ。その私が勝つのは、既に確定事項だぞ」

「そ、そうか……なら言い直すよ。勝った後、あんたは地上でどうするんだ?」

「そんなもの決まっているだろう? ユノとの対決による傷が癒えたら、次は君との死闘だ。女神を堕とした神殺しを打ち倒し、乙女らを救い出す。それが太陽と同一の輝きを持つ、英雄たる私の使命だとも」

「……俺と喧嘩をすると?」

「喧嘩ではない、決闘だ。お互いの命と尊厳を賭けた死闘こそが、我らの宿命であり宿願。その誉れに挑むことこそ、私が英雄たる所以だ」

 

 堂々とお前と──護堂と戦うペルセウスさんを見て、僕はこりゃ止まらなさそうだと、こっそりとタブレットを操作して爆撃機を近くに待機させる。

 ええと弾頭は──これでいいかな? あんまり強力だとナポリ諸共吹き飛んじゃうから、あくまでも目くらましと牽制用で……僕の毒を搭載させて、体の動きが鈍るようにして、と。

 それから──まぁこんなもんかな。サンタルチア港からは人も引いてくれているようだから、港を破壊しても問題ない。

 

「ねぇペルセウスさん。僕たちは、別に護堂に攫われたとか、そんなんじゃないんだよ? それを理由に護堂と戦うのは、僕としては止めて欲しいな」

「すまぬが、それは乙女の頼みであろうとも不可能だな。私は悪を打ち払い、麗しき乙女を救い出す英雄たる鋼。まつろわぬ身になろうとも、その在り方は決して無くなりはしない。それに──」

 

 腰に携えた豪刀──刃渡り1mほどの反り曲がった刀身を抜いて護堂に突きつける。

 

「神殺しほどの勇士とのいくさ。これに燃えずして、どこに戦意を燃やせと言うのですかな?」

「……そっか。つまり、何があろうとも護堂とは戦うつもり。そう考えて良いのかな?」

「その認識で結構ですとも、麗しき乙女よ」

 

 僕は護堂に目配せして、恵那さん達にも目配せする。精神感応で繋がっているから、僕が何を考えているのか皆は読み取ってくれた。

 護堂なんて若干溜息をついているけれど、これが僕であり、僕の戦い方なのだ。

 

「うん。分かったよ、ペルセウスさん! ……じゃあ仕方ないよね」

「ん?」

 

 装填(セット)……急急如律令(オーダー)……

 

 僕らが転移して港からすぐのところにあるホテルロイヤルコンチネンタル屋上に移ると同時に、卵城にミサイルが次々と投下。僕らと会話していて気を取られていたペルセウスさんが、爆撃の雨に呑み込まれていく。

 あまりにも唐突な攻撃開始であり、ペルセウスさんも面食らったのか爆発に翻弄されている。

 

「お、おおおおおおお!!!?」

 

 僕の耳には、爆発の中からペルセウスさんの困惑と耐えようとする声が響く。呪力を振り絞って耐えようとしているようだけれど、残念ながら僕の爆弾は純物理破壊の塊。その上で神が持つ、人が造った兵器では傷つかない概念を神が造った兵器と言う概念で突破するように生成されている。

 そも、僕の爆弾は鋼化した僕を殺すために設計された特注品だ。神すら殺す兵器を使った、特大の不意打ち爆撃。流石にミトラスと習合した英雄神であろうとも、これは相当に効くはずだ。ついでに僕の毒も含んであるので、少しでも爆発時の煙に触れたら皮膚から浸透して細胞破壊を引き起こす。

 

「あ、ぺ、ペルセウス様が、光となって消えました!」

「太陽神が持つ、不死の特性だね……でもそんなに離れていない。ヴェズーヴィオ国立公園の方に逃げたみたいだね」

 

 あそこにはヴェスヴィオ火山があるので、たぶんそこで回復するつもりだろう。鋼の神格にとって、火山とは回復し易いパワースポットだ。

 ……勿論逃がすつもりもないので、僕らは転移ですぐに追いつく。

 

 そこにははぁはぁと息を荒げながら、転移して追いかけてきた僕らを見るペルセウスさんがいた。

 

「い、今のは……御身の攻撃ですかな?」

「うん」

「なぜ……と問うても、意味が無いのでしょうな。トロイアの時代から、いくさにおいて不意打ちは決して卑怯な手に非ず。我ら鋼は好みませぬが、御身が蛇としての鋼なのであれば……これも当然ですか」

 

 僕は再度うんと頷く。どうしてユノさんとの決闘が終わるまで、待ってあげる必要があるのだろうか。なぜ時間を置いてあげる必要があるのだろうか? 太陽が昇れば、ペルセウスさんは強くなると分かっているのだ。ユノさんとの闘いで弱ったところを叩くのも手だが、それではどこまで被害が拡大するのか分かったもんじゃない。

 

 だから不意打ちで一気に戦力を削り、あとは僕ら四人で囲んで速攻で袋叩きにする。不意打ちと数の暴力こそ、僕ら草薙護堂陣営の真骨頂だ……なんて考えていたら、祐理さんや護堂から卑怯臭いと心の中に返答が来た。だってこれが一番安全かつ、確実にまつろわぬ神を駆除できる方法だから…… 

 

 それに今回サンタルチア港を卵城ごと破壊したが、これは計算した破壊だ。最小限に被害を抑えつつ、ペルセウスさんにかなりの大打撃を与えられた。そう考えれば、やはりこれが確実な手なのだ。

 

 その証拠に、彼の神力は大きく目減りしている。手負いの獣となった神様や神殺しは怖い。彼らは手負いの状態こそが、力を発揮するように出来ている……なんてのは、手負いの獣の迫力に騙されているだけだ。

 どうあがいたところで、怪我をして力が減れば戦力は落ちる。そこでこれなら勝てると油断するから、逆転される。逆転されたせいで、手負いの獣はやはり危険だと錯覚する。

 

 油断するな、慢心するな。相手が死にかけでも、全力で叩き潰せ。それを僕は今も忠実に守っていて、だから──転移時にペルセウスさんの後ろに配置しておいた恵那さんが、救世の神刀を手に斬りかかる。

 

「かけまくもかしこき美殊のおおまえにかしこみもうさく……らせつのきみにしづみしおおかみのみたま、いまこそ合せ祀る御祭に奉りたく、大神のくしく妙なる大威徳をかからしめ賜び給ふ!! 力を貸して草薙劔!! その本質をここに顕し給え!!」

「なにぃ……ぐぅあああ!!」

 

 背後からの斬撃を避けきれず、ペルセウスさんの背が深く断ち切られる。続く二振り目を避けようとするけれど──真正面から僕が突っ込んでいくので、彼はこちらに対処せざるを得なくなる。

 でもそれをすれば、今度は恵那さんが──

 

「我は告げる。生ある物は全て平等である。あらゆる意味、あらゆる形を我は等しく火の糧としよう。焔の煉獄、その一太刀を刮目してみよ!!」

 

 祝融の権能を草薙劔に宿し、更に追撃。前からは僕が救世の神斧を手に、ペルセウスさんの首を刎ねんと迫る。護堂と祐理さんも参戦し、僕らはペルセウスさんに反撃する暇を与えず、ひたすらにリンチする。

 それでも動こうとすれば、時たま爆撃して翻弄するのも忘れない。

 

「爾ち千引石を其の黄泉比良坂に引き塞ひて! 是冥府閉ざす事戸なり!!」

 

 ある程度弱らせたところで、御札を張り付け封印術で閉じ込める。これで光になって逃げることも出来ない。そのまま人形の中に──僕の呪詛を含ませたそれの中に入れて、更に弱まらせる。

 

「護堂、口を開けて!」

「これでいいか。あー」

 

 ここまで弱らせたら、直接神力を引っこ抜ける。ペルセウスさんから力を剥奪させて、それを口移しで護堂の中にあるウルスラグナさんの神力に流し込む。ペルセウスさんはミトラスなので、東方の軍神・弐式の強化に使える神格なのだ。

 ぬいぐるみの中にあるペルセウスさんは殆ど抜け殻みたいな状態だけれど、そこで油断したら捲られる恐れがある。僕はヴォバン侯爵にやったように、護摩壇を設置して一気にお焚き上げをする。

 灰になったぬいぐるみを搔き集めて団子にしたら、最後にミサイルの弾頭に詰めて宇宙送りにしておく。

 ……強敵だった。光になって逃げられるところだったけれど……なんとか尽力して仕留める事が出来た。

 

「良し! 次はユノさんのところだね!!」




大地母神x3+神殺しx1かつメンバーの中で一番強い奴が誉れもへったくれもない思想だからまつろわぬ神が一柱だと苦戦とか熱い戦いがある戦闘シーンにならねぇ……
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