前世凡人 今凡神   作:カンピオーネ二次復権派

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草薙家の面目躍如

「はぁあああ!!」

 

 裂帛の気合とでも呼ぶべきか。一閃、また一閃と白銀の煌めきが宙に文字を描き出す。鉄──それも見たところ、不滅の属性を帯びた鋼の剣だ。それが四方八方からウルスラグナさんを襲うが、全て躱されている。大げさな動作もなく、最小単位での回避行動だ。

 僕はその動きを見ながら、同時に剣の方にも意識を向ける。

 変わった剣だ。確か名前がクオレ・ディ・レオーネ……英訳すればライオンハート。要するに獅子の心だ。名前からして、獅子心王リチャード一世に由来する剣かな?

 

「珍しい剣を使ってるね、エリカさんは」

「そうなのか? 俺には、レイピアみたいな細い剣にしか見えないが……」

「封印が施されてるからそう見えるだけで、本体は全く違う形をした剣だよ、あれ。獅子心王の剣……エクスカリバーか、カリバーンがモチーフの魔術兵装っぽいね」

「エクスカリバーって言うと、あれか?」

「あれだよ……」

 

 魔王殺しの兵装だよと付け加えると、護堂は嫌そうな顔をした。そりゃ、そういう顔にもなるよね。去年あんなことがあったばかりだし。

 はぁ……とため息をついて、気を取り直したのか護堂の顔が元に戻る。

 

「モチーフてことは、流石に本家本元ほどの出鱈目な力はないんだよな?」

「ないね。そもそも護堂の知るあれだって、本家なんかじゃない。とある神具を原型とする派生した鋼だからね、あれは……そのとある神具こそが本当の、本家本元だよ」

 

 それにと付け足しておく。

 

「派生した影打ち(レプリカ)でも、魔術兵装ではなく、神具の領域。本物のエクスカリバーなら人間には振るえないし、神様でも一部の鋼だけが帯刀を赦される究極の武器。そんなものを人間が扱うのは無理だからね?」

「そう言われたら、それもそうかってなるな……ならあの剣は、そこそこ優秀な魔術の剣ぐらい?」

「だと思うよ。鋼特有の不滅属性は視えるから、武器としては優秀だよ。 ……使い手が聖騎士級なら、神や神殺しが相手でも武器として普通に通じるだろうから、破格とすら言えるかも」

「……つまり、全く通用していないのは使い手のブランデッリさんが、ウルスラグナと比べても、格下だからか」

「うん」

 

 護堂が言うように、エリカさんの剣技は軍神に全く通用していない。初撃の時点で見切られていたから当たり前なのだが、あそこから何も進歩していない。

 時にフェイントを入れ、上からいくように見せかけたかと思えば、手首を返して一気に下から突き込む。これは首を振って躱された。

 

 足元の地面から剥離していたアスファルトを蹴り上げ、それを避けたところに袈裟斬りを入れようとしたみたいだけれど、アスファルトをキャッチされて、リリース──投げ返されて、エリカさんは逆に飛びのく羽目に。

 そこに飛び掛かったウルスラグナさんは、技を入れていない上段からの太刀を落とす。技術を伴わない、力任せの大振りだ。明らかに遊んでいる一撃だが、避けた直後のエリカさんは飛びのくことも出来ず、剣で受けざるを得なかった。

 

「ぐ……このぉ!!」

 

 アスファルトが少し砕けて、彼女の足首が地面に沈む。空から重量物が降ってきたような衝撃を受けたかのよう。

 事実、ウルスラグナさんの太刀は強力だ。剛力に関わる権能──牡牛や駱駝は使っていないようだが、それでも軍神の一撃とは尋常ではない。

 ウルスラグナさんは見た目が少年なだけで、腕力は人間の成人男性など遥かに凌駕している。たぶん僕と同じで、権能や術による強化が無くてもベンチプレス1000キロとか普通にできる。

 

 そんな腕力から繰り出される、遠慮呵責のない豪刀。受けたのが普通に鍛えただけの剣道家などであれば、防御ごと貫通して真っ二つだ。

 それを受けて呻き声を上げるだけで済んでいるのだから、エリカさんは呪力による運動能力の底上げや、身体強化の術の出力が高いのだろう。これらの術の精度や練度は術者によるので、御遊びとは言え軍神の太刀を受けられるレベルにまで鍛えているのは相当に優秀な魔術師の証だ。

 

「やる……わね!! 小物だと思っていたけれど、訂正させて貰うわ! 剣の腕だけなら、欧州でも最高位よ、あなた!!!」

「なに、この程度などまだ児戯よ。しかし、お主は我に挑むだけのことはある。我の加護を与え、戦場に送り出したくなるほどじゃ」

「加護? 随分と持って回った言い方をするわね! まるでマルスのよう……マルス……定命の者なんて言い回し……それにこの剣技……軍神?」

 

 おや? もしかして、今の言い回しで気づいたのだろうか。流石に加護がどうと言われたら、魔術師ならピンと来るものがあるだろう。

 それに少しばかり切っ先を交えただけとは言え、剣には振るう者の性格やあり様が映し出される。欧州の基準で言えば、エリカ・ブランデッリとは大騎士の位になる筈だ。では大騎士を遊び感覚で翻弄し、なおかつ加護がどうと口にする人物。

 そして、各地で神獣の出現に合わせて目撃される謎の少年。これらが結びつける要素など、一つしかありえない。

 

「ん?」

 

 エリカさんの腕から力が抜け、剣先が地面に降ろされる。それを見たウルスラグナさんは、なんじゃもう終わりかと同じように剣を降ろした。

 

 スッと膝をつくブランデッリの御令嬢。見事な所作に、思わず心の中で拍手をしてしまう。尊大な口調ではあったが、名門の御貴女としてああいった礼拝作法を習う機会も多いのだろう。

 

「……数々の無礼、心よりお詫び申し上げます。御身がいと高き軍神であると気づけぬ我が節穴に、誠恥じ入ることばかり……この首を差し出しますゆえ、この地への報復をお考えなさらぬよう、配慮してくださることを願うばかりです」

「良い良い。お主のそっ首なぞいらんわ。若人、それも無抵抗のおなごの首を落としたとあっては、我の沽券に関わるでな。人間が無体を晒したことについて、報復も考えておらん。我は民衆を守護する勝利の軍神。この地を滅ぼす気など毛頭ない」

「その言葉に、感謝申し上げます……恥を忍んで、御一つ尋ねても良いでしょうか?」

「許す。なんじゃ?」

「御身がサルデーニャ島に降臨成された神格……で宜しいのでしょうか?」

「という事になっておるのう。じゃが、我は現在記憶を失っておる身でな。各地に出た神獣とやらは我の一部ではあるが……これがお主への返答になる。これでよいか?」

「幸甚に存じます」

「……ブランデッリさんとウルスラグナさんの喧嘩は、特に怪我もなく終わった……で良さそうだな」

「みたいだね。良かったよかった」

 

 ウルスラグナさんが超手加減していたのと、あくまでもエリカさんが一人空回りしていただけなので、その正体に勘付いてしまえばこんなものなのだ。

 呑気にお喋りしながら僕らがとことこ近づいてくるのに気づいたのか、エリカさんの視線がスッとこちらに気づく。

 

「ウルスラグナ? ……ペルシャの軍神、ウルスラグナ様。それが御身の尊名で御座いますね。して、あちらにおられる東洋人二名は、御身の従者で御座いましょうか?」

「従者ではない。片方は、我の同胞。もう片方は、我らが誅すべき羅刹の者よ」

「同胞と羅刹……東洋人で女神を……まさか!!!」

 

 こちらに向けていたエリカさんの目が、ギョッと開かれる。神が倒すべきと定めて、なおかつ女神を連れた東洋人。それに該当する相手なんて、この世に一人しかいないからね。そりゃ、気づくか。

 エリカさんが護堂に向き直り……これは! ジャパニーズ土下座!! 携帯何処だったかな。

 

「草薙陛下。御身にも、非礼な口を訊いたこと、お詫び申し上げます。サルデーニャ島に私が派遣されたのは、赤銅黒十字が決定したことではなく、あくまでも私がパオロ総帥に願い出た故です。御身に働いた、礼節を欠いた無礼な振舞いの数々。あれらは私の未熟が招いたもの。どうか私は罰せられても、赤銅黒十字には手を出さぬようお願い申し上げたいと存じます」

「ええと……つまり、自分はどうなってもいいから、組織には手を出さないでくれと? いや、いいよ別に。ブランデッリさんに罰とか考えてないし……美殊も同じだよ……何してるんだ、お前?」

「え? ……写真?」

 

 携帯をマナーモードにして、エリカさんの土下座を連射撮影している僕に護堂が呆れた目を向けてくる。

 

「なんで?」

「……珍しくて、つい?」

 

 だって考えてみてよ護堂。イタリア美少女のガチ土下座だよ? 観光地の写真よりも貴重だよ、これ?

 

「……やめてやれよ。俺としては、土下座させてることになってるだけでも、だいぶ心苦しいんだ。その上で写真なんて撮ったら、俺たちが悪いやつみたいじゃないか」

「うーん……でも、何も無しで見逃して……てのは通らない可能性があるよ。エリカさんはああ言うけれど、赤銅黒十字所属の魔術師として来ていて、神殺しに喧嘩を売りました。それで向こうが許してくれるから、その言葉に甘えました……なんてのが外に漏れたら、欧州の神殺しに対する畏怖や敬意からして、魔術結社としての発言力に影響が及ぶかもしれないし……その辺はどう、エリカさん?」

「御身の仰られる通りです。ブランデッリの娘は赦しに甘んじると噂されれば、それだけで軽視されるようになっても可笑しくはありません。もう一つ。この場で私が辱められることで、御身らは私のみへの罰で赦して欲しい。その願いを聞き届け、慈悲を賜ってくださったことになります」

「それがないと、神殺しに対して結社として大きな借りが出来てしまう。だからここは、なんでもいいから罰を与えてください……かな?」

「……………………」

「沈黙は金にしておくよ……じゃ、護堂。エリカさんから許可も貰ったから、もうちょっと撮影しておくね」

「こ、こいつ……」

「……やはり、ラクシャーサよりも、こやつの方が大人気ないのではないかのう?」

 

 外野がネチネチと言ってくるが、これは必要な行為だから。こうすることで、エリカさんのあれこれを禊できるんだよ。神事も職能上奉じられている僕が言うんだから間違いない。

 

「あ、そうだエリカさん。一つ良いですか?」

「何で御座いましょうか?」

「……今の気持ちについて、僕に──私に全て教えなさい」

 

 エリカさんの物まねをしながらそう言ったら、髪からチラリと見える耳が一瞬で真っ赤になった。あ、可愛い。あと100枚は撮らなきゃ!

 

 

 

 

 

「いえーい、パオロさん見てる~? あなたの大切な大切なご姪っ子さんは、さっきまつろわぬ軍神とカンピオーネに喧嘩を売りました~。ほら、ここで一緒にピースだよ」

「こ、こうでしょうか?」

「そうそう」

 

 もうこんな機会は一生無さそうなので、せっかくだからととあるビデオレターの撮影ごっこに僕とエリカさんは興じる。チャラ男役にウルスラグナさんと護堂に出演して貰いたかったが、知らん&俺は参加しないからなと一蹴された。

 

「……のう、草薙護堂」

「なんだ?」

「あの娘は、いつもあんな感じなのか?」

「いいや。普段はあんなじゃないし、最初あった時もこんな一面があるなんて知らなかったんだ……本当に、最初はおどけたところが少しある、理想的な美人お姉さんだと思ったんだよ……はぁああ……俺の初恋、あれなんだぞ……あれ」

「……お主も何やら苦労しているようじゃな」

 

 こら、そこ。僕をネタに仲良く……はいいのか、別に。むしろ仲良くなって貰えたならば、道化に甘んじたかいがあったと言うものだ。

 それと護堂。ハワイの時のあれこれで知ってはいたけれど、今日あったばかりの軍神さんに愚痴ることじゃないだろ、それは。全く……

 エリカさんも物理的に痛い目とかに合わなくて良かったし、これで万事解決……

 

「ぐすっ……」

「あら? ……エリカさん、泣いてる?」

「な、泣いてなんかいませんわ! これはそう、ちょっと潮風が目に染みただけです!!」

「でも、鼻水も垂れて──」

「これは……ちょっと、肌寒い恰好をし過ぎたのかもしれません!」

「……ごめんね? 僕、やり過ぎちゃったみたいで……」

「………………これは自分の情けなさに対する涙です。少し考えれば、各地で目撃された少年が件のまつろわぬ神で、神獣は神のしもべであることに気づけた筈なのに……意気込み過ぎたせいで、空回りした自分への悔しさです……」

 

 そっか。視たところ、プライドの塊そうだものね、エリカさんは。それなのに、めちゃくちゃ怪しい人物、イコール神に繋がらなかったのは悔しい感情になるんだ……いざと言う時には、全力逃走する僕や護堂とは大違いだ。

 しかし不思議だ。なぜ彼女は、神を追っているのだろう。神と関われば、プライドがへし折られるようなことなんてたくさんある筈。

 それは欧州だと当たり前の考えの筈だけれど、先の話が事実ならば、サルデーニャ調査に手を挙げたのは彼女からだ。なぜそんな生き急ぐような真似を?

 

 僕がそんな風に考えて黙り込んだことを不思議に思ったのか、目にはてなを浮かべながらエリカが口を開いた。

 

「どうされましたか?」

「ちょっと不思議に思ってね。まつろわぬ神の脅威は、出現数の少ない日本よりも、ヴォバン侯爵を筆頭に、複数の神殺しが生誕している欧州の方がよほどご存じの筈だ。それなのに、どうしてエリカさんは志願したのかなって?」

「それは……それは、称号のためです」

 

 詳しい話を聞けばこうだ。

 赤銅黒十字は元々はテンプル騎士団を前身とする魔術結社。フランス王フィリップ4世が14世紀初頭に解散を命じた後、本拠地であったキプロス島からローマを通じてイタリア全土に残党達が散らばっていった。

 

 テンプル騎士団は、その膨大な財力からフィリップ4世に目をつけられたぐらいのスーパー金持ち集団。同時に古い魔術を代々継承してきた集団でもある。

 それから派生して、なおかつ古い魔術結社である赤銅黒十字には多くの伝統がある。

 その一つが筆頭騎士『紅き悪魔(ディアブロ・ロッソ)』の称号。最近までは聖騎士かつイタリア最高位の魔術師パオロ・ブランデッリが保有していたが、総帥に就任したことでこの称号を返還した。

 

 つまり、現在この称号は誰の手にもない浮いた状態だ。偉大な叔父が長年受け持ち、代々受け継がれてきた栄誉なる名。それをエリカさんは手にしたいが、若さゆえに実績が全くない。

 

 そして後手後手に回ると、別の人物に渡る可能性がある。そんなところにまつろわぬ神絡みの事件が発生。現在は解決できそうな人物は南米に出張中。もしもこれらを解決できたならば、受け継ぐに足りうる実績となる筈だ……ここまでが目論見だったのだが、まさかの神殺しと神に直接喧嘩を売る事態に。

 

「……草薙陛下とウルスラグナ様と美殊様を相手に、分を弁えない無礼なる振舞い。これがパオロ総帥や、赤銅黒十字の騎士たちの耳に入れば、とてもではないけれど、紅き悪魔(ディアブロ・ロッソ)を頂くに相応しいとは判断されません……私としましても、このような早とちりをする身で、受け取るに足るとは、とても……」

「野球で言うところの背番号みたいなものか……それは……なんというか、難しい問題だな」

「栄誉と名誉を求めて、自ら死地に飛び込まんとする心意気は立派じゃが、勇気と蛮勇を履き違える様は感心せぬな」

「うーん……気持ちは分かるけれど、まつろわぬ神に自ら近づかない方が良いよ。命が幾つあっても足りないよ、それじゃ」

 

 近くに来て事情を僕と同じく、一緒に聞いていた護堂とウルスラグナがそれぞれ思った言葉を口にする。

 僕としては称号の大切さは分かるが、神様案件に関わるのなんて止めときなよと言う気持ちだ。

 

 エリカさんはと言えば、ウルスラグナさんに攻撃が一切掠りもしなかったことで実力差の一端が垣間見えたのか、僕らの言葉に意気消沈してしおらしくしている。その姿を見てどうしたものかと僕らは考え──

 

「と、そろそろ時間だね」

 

 腕時計のアラームが鳴り、凶兆が来る時間がすぐそこまで迫っていることを教えてくれる。ウルスラグナさんは踵を返し、港の方に足を向ける。僕もそちらに向かおうとして、護堂が動かない。何かを考えて、エリカさんの方に向き直った。

 

「……なぁブランデッリさん」

「どうなされましたか、草薙陛下?」

「その……陛下ってのはやめてくれないか? あまりそう言った言葉で話しかけられるのは、好きじゃないんだ。それにどうして陛下なんだよ」

「日本では、もっとも立場が上の者に付けられる敬称は、陛下だとお聞きしましたので」

「それって、もしかしなくとも天皇のことを言ってるのか? 本気でやめてくれ。神様殺しはカンピオーネだとか、魔王だとか、王だなんて言うらしいけれど、俺はそんな偉い立場になったつもりなんてない」

 

 護堂の言葉に、はぁ……みたいな空気をエリカから感じ取れる。欧州魔術結社の観点にしてみれば、ほぼ初対面のカンピオーネに礼を尽くすのは普通のことだ。

 それを違うからと言われても……だろうが、エリカは分かりましたと言葉にする。

 

「では草薙様で宜しいでしょうか?」

「まだ硬いな、それは。ブランデッリさんは、俺と同い年ぐらいだろ? なら普通に草薙とか護堂でいいよ。俺もエリカかブランデッリと呼ぶことにするから」

「それは……分かりました。護堂と呼ばせて頂きます。私のことは、エリカとお呼び頂ければ幸いです」

「口調がまだ硬いけれど……それは仕方ないか。エリカはその、称号を手に入れるためには、何かしらの実績がいるんだよな? そんでもって、今すぐにでも必要だと」

「はい……その通りで御座います」

「なら、俺たちと来るか?」

「……え?」

 

 護堂の言葉に意外そうな反応を示す。まさか来いと言われるとは思わなかったのだろうか。

 

「神様案件ぐらいの、何かしらデカい事件を解決したとか、そう言ったあれこれが必要なんだろ? なら一緒にいれば、解決に助力したーとか、言ってもいいんじゃないか?」

「それは……その通りですが、私が供をして良いものなのでしょうか?」

「既にウルスラグナがいるからな。今更一人や二人増えたところで、何が変わるわけでもないだろ。ほら、袖触れ合うも他生の縁とか言うだろ?」

「私は日本の慣用句には詳しくないので確かなことは言えませんが……御身がお赦しくださるのであれば、ともにこの騒動の終焉を見届けたい心があります」

「ならちょうどいいんじゃないか? さっき美殊が言ってただろ? 命が幾つあっても足りないとか。でも、俺たちといるなら、少しはその命にも安全性が確立されるんじゃないかと思って。ほら、行こうぜ」

 

 そう言って護堂がエリカに手を差し出していた。その手を見て、エリカさんはと言えば──

 

「護堂。女性を誘うなら、もう少し情熱的な言葉で招くべきですよ」

「悪いが、そういうのは苦手なんだよ、俺」

 

 護堂の差し出して手を、エリカがしっかりと握っていた。

 

 ……その光景を見ながら、僕は結局のところ一緒に来るなら危ないよとか。足手纏いを増やしてどうするのさとか。そんなありきたりな言葉よりも、別の言葉が口から出てしまった。

 

「これが……草薙の血筋! 恐ろしい子……毎日が草薙だった筈……こうやって、一郎お爺ちゃんも現地妻を増やしていったんだろうなぁ……あ、草薙って、もしかして草を薙ぐぐらい簡単に女の子を口説くって意味なのか」




敬語エリカがさん付けしないリリアナみたいな口調になった件
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