試験が終わって早数ヶ月。4月を目前にして俺は今·····
「ねぇ獣兵衛〜元気だしなよ」
「ヒン·····ヒン·····」
切奈にとぐろを巻くように抱きつきながら、慰められてる。
「だってよぅ·····」
「私も残念だけどさぁしょうがないっしょ?ね?良い子だから」
ぐるりと身体を二週半した俺の頭を抱き膝に抱えながら、少し困ったように眉を下げつつ頭を撫でてくれる切奈。アッアッアッ〜オギャっちゃう〜
「マッマ·····」
「あ、それはちょっとキモかも」
「アッハイ」
「とにかくサ、もういい加減諦めな〜?同じクラスじゃ無いのは残念だけど、別に会えなくなるわけじゃ無いんだからさ?」
そう、切奈とクラスが別になってしまったのだ·····!!あ、雄英の受験自体は合格したよ。首席だったわ。というか正直こんな事言うのはどうかと思うんだけど、ぶっちゃけ俺が殴る蹴るとかの荒事で負ける事無いと思うんだよな。プロとか含めてもね。
そりゃまぁ腕っ節の強さだけではなれないから免許制なんすけど。とにかく、俺はそれくらい強いからそう言う試験くらいは全く問題無いって話。というか、それくらいメリット生んでくれんとね?割に合わんのだわ·····
俺の鬣を手ぐしで溶かしながら「それにさ」と続ける
「いい機会だと思わない?心機一転、人間関係まっさらなクラスでさ高校デビューしちゃいなよ!私とは昼とかでも一緒に居られるしさ」
「んーそうなぁ」
ぶっちゃけそれに関しては諦めてはいるんだよな。同じ異形系にもドン引きされる事の多い俺は積極的に人と関わる気は無い。両方が不幸な目に合うだけだからだ。
向こうに悪意があろうとなかろうと俺にビビってしまうし、それに対して向こうが申し訳なく思えば思うほど俺も気を使って気まずくなるという無限スパイラル。いっそ嫌ったりしてくれてる方がシカトで済むから楽なんだよな。
切奈は俺の事を想ってくれてるから無理強いにならない範囲でちょこちょこ俺の交流の輪を広げようと頑張ってくれている。
そんな彼女の気遣いに応えられない自分を情けなく思うもののこればっかりはコミュ力どうこうって話でもねーならなぁ。自分で言うのもアレだけどけっこうひょうきん者よ?俺。
でもまぁ、もっかいチャレンジしてみるかぁ·····?
「ま、そうだな·····これを機にデビューしちゃうかぁ!」
「おー!やっちゃおうぜ〜?目指せ友達100人的な?」
「いきなりハードル高くね?」
「それな〜?」
「おぉい!」
二人でケラケラとひとしきり笑いあった後、また取り留めのない会話へと戻る。うん、やっぱり挑戦してみよう。失敗は怖くない。だってもうこれ以上ないくらい幸せなんだから。この二人の時間が俺にある限りいくら他人に怖がられても関係ない。切奈が隣にいてくれるだけで俺の勇気は尽きることがない。
数日後、いざ初登校の日である。制服に袖を通すのに時間がかかるので早起きをして制服のスリットに1本ずつ背鰭を収めていく。この背鰭ガチで邪魔なんだが、引っ込んでくれないんだよな·····俺の個性の不便な所だ。
気持ち的な俺の意志には反応してくれないのだ。逆に、こんなふうに攻撃したいだとか、軽くなりたい重くなりたい的なのにはすぐ反映される。俺の個性は厳密には『変化』とか『変形』じゃ無い『適応進化』だ。つまり、個性を使う度完全にその目的に即した生物としてチューニングされ直す。
いつもの基本形態がいちばんバランスが取れているから元に戻るというか目的を終えるとまた勝手に『進化し直す』んだ。これが俺が人間の見た目に戻れない理由のもう1つでもある。シンプルに今の俺に比べて弱いのだ。人間、ホモ・サピエンスという生物の形が。
さらに私生活でうっかり夜更かしをして『不眠』とか飲まず食わずで『食事不要』とかの特性を獲得してしまう可能性があったりするので気を使わなくてはならない。うっかりそうなると本当に不味い、というか精神衛生上非常に宜しくない。俺はギリギリ人間でいたい。と言うまぁとても難儀な個性だ。
とはいえ、いい加減もう慣れたけどな。
着替え終えたらさっさと朝食を済ませて、母さんに声を掛け玄関へ。
「アンタももう高校生か。早いねぇ·····さ、行ってらっしゃい!頑張ってきな!」
「おう。行ってきます」
外に出れば家の前に雄英の制服に身を包んだ切奈が「おはよう」と手を振って迎えに来てくれていた·····なんだ?ここ天国か??
「俺の彼女可愛過ぎないか???」
「もう、なに急に?ありがと。獣兵衛も似合ってるよ、制服」
「サンキュ。ほら、乗りな」
「いぇーい楽ちん」
思わず本音が出たが何時までもイチャつく訳にもいかん。電車通学はちと時間がかかるのだ。切奈を尻尾に乗せて駅へ向かう。
通勤ラッシュの混んだ電車内に俺がいる事であら不思議。2メートル半超えの俺と切奈がゆったり余裕を持って立てるスペースが爆誕!ちなみに俺は立ってるが切奈は俺の尻尾を椅子に座っている。お行儀がちと悪いけどなんでかスペースは余ってるからね!!セーフセーフ(すっとぼけ)
「超今更なんだけどさ」
「はい」
「獣兵衛がこうもビビられてるのってさ、やっぱ表情が全く読めないのがダメなのかな?」
そう俺の鬣の先を手慰みに編み込みながらそうボヤく·····本当に今更だね???
「まぁ·····そうなぁ?この前みたレトロ映画に出てくる黒い宇宙生物がすげぇ似てたもんな。やっぱ根本的に怖がられる面してんだろうな」
「基本的にモンパニ顔だもんね」
「じゃかあしいわい」
「能面とか被る??」
「バケモンすぎる」
と切奈と戯れつつ到着、雄英高校。受験しに来た時とは違った緊張感があるな·····切奈と二人で門をくぐる。雄英とはいえここまでの化け物を見るのはちと珍しいようで少しざわつく。だがヴィランがどうとかってザワつかないあたりやはり民度の高さが伺えるな!!
「じゃ、私こっちだから。また入学式でね?」
「おう。あとでな!」
二人でコツンと拳をあわせ別れる。俺はA組、切奈はB組へ向かう。少し名残惜しいが、切奈も応援してくれたしな!さぁ新しい学友との初めての顔合わせだ!意気揚々と扉を開ける。そこにはまだ半数ほど空席はあるものの新しいクラスメイト達の顔。皆がいっせいに向けられた視線はやはり少しの驚きは含まれている物の、いつもの恐れなどは感じない。
いいぞ!順調なファーストコンタクトを切れそうだ!まずは挨拶から!と思ったが一瞬言葉につまる。うーん、コミュ障。思えば今仲良くしてる奴も自分から声掛けたこと無かったな·····だがここで折れる訳にはいかない。ここで会釈だけして席につこうものなら得体の知れない化け物として最初のグループ分けに絶対に置いていかれる!!
そう思い息を吸おうと思った矢先に後ろから来ていた目付き悪めの金髪君に声をかけられる
「邪魔じゃどけや。入口で突っ立てんなバケモン殺すぞ!」
「あっゴメン」
···············ごめん切奈もう心折れそう
本当はB組にしたかったけど体育祭までスキップしなきゃだったり、ほっとくと切奈ちゃんと永遠にイチャつき出すので作者の技量の都合で断念。次回早めに出せると良いな。感想、評価お待ちしております!