表れたサイア。彼は一体何者なのか……
第44話、始まります。
――俺は目の前にいるサイアをよく見る。
身長は190程で、ガタイはとてもしっかりしている。キレイな蒼髪は少しツンツンしている。
「零、少し見ない間にガタイ良くなったな」
「……お前に言われると何か苛立つ」
「何でだよ!?」
そしてこのような弄られキャラ。何だろう、どこか剛気と似ている。
「……零、アイツは?」
「ああ、アイツは……」
「ああ、それは自分で言うぞ」
アリアが聞いてきたので答えようとすると、サイアが口を挟んできた。
「俺の名前はサイア・クロニクル。サイアって呼んでくれ。武偵ランクは……」
「そんなのいいわよ、どうせアンタも『リバースランカー』なんでしょ?」
「……何だ、バレてるのか」
「同じパターンでネリーがやっているからな」
「そうですかい……なら言うわ。『守護神』。これが俺の二つ名だ」
そう言ったサイアは笑みを浮かべる。
コイツいつも笑みを浮かべているんだよな……ここら辺は不知火に似ている。
まぁそんなことより――
「
「……ああ、分かっているよ」
ピシッ――と、空気が張り詰めたような感覚。
コツッコツッと両者共に近付き、その間は約1メートルとなった。
いきなりの展開にキンジ、アリア、白雪、更にはジャンヌ・ダルクまでもが息を飲んだ。
そして俺達は中段に拳を握り、そして――
「「――じゃんけんぽん!」」
「「「「……は?」」」」
俺がチョキ、サイアもチョキ。
何か外野から声が聞こえてきたようだが、そんなことより――
「チッ、またあいこかよ。今日こそはいけると思ったのに……」
「甘いな、零。俺の道は誰だろうと閉ざすことはできない」
そんなやりとりをしていると……
「「「「……」」」」
他の四人が呆気に取られたような顔をしていた。
「どうしたんだ、お前達」
「い、いやレンちゃん。空気が張り詰めたと思ったらいきなりじゃんけんを始めたことに驚いているんだけど……」
白雪の言葉に他の三人が頷く。
てかジャンヌ・ダルク。お前も頷くなよ。最早敵としての威厳が無いぞ。
「まぁ何でかって言われると、これが毎度のお約束みたいなものなんだよ」
「お、お約束?」
「
「……は?負けたことも、勝ったこともない?」
「つまり、
「……それはまた、凄い才能ね」
「だからコイツを一回でもいいから負けさせるか、勝たせるかしたいんだけど……絶対にあいこにしかならない」
「『何事も平等が大事』。これが俺のモットーだからな」
……そうなんだよ、コイツはとにかく平等、平等ってうるさい。いや、いいことなんだけどな。
「……そろそろいいか?サイア。お前は私の用心棒なのだ。しっかりと役目は果たしてくれよ」
「おっと、そうだったな」
「……忘れていたのか?」
ジャンヌ・ダルク……面倒くさいからジャンヌでいいや。ジャンヌが痺れを切らしたのか、サイアに呼びかけたが、そのサイアはのんびりとしている。
流石、『GOWの天然記念物』とメンバーに言われるくらいだな。
「ああ、忘れてたわ……でも」
そこまで言ったサイアは俺から離れ……
背中に隠してあった、見た目が軽そうな
「――こっから、絞めるわ」
――ピシッと、空気が張り詰めた。しかし、先程よりも数段上。
ようやく集中しだしたか……なら、と俺は両手を広げる。
『錐椰 零の名の下に』
『リミッターコード・0000Z。全ての超能力及び身体能力のリミッターを解除。リバースランカー・破壊神、再起動』
リミッターを外し、臨戦態勢をとる。
「さぁ、始めようか――」
ーside零outー
ーsideキンジー
一瞬の静寂。
そして、零が動いた。
「「「……え?」」」
そして、俺とアリアと白雪は驚いた。
「見え……ない」
アリアがそう、呟いた。そして、それは俺と白雪も思っているところだ。
見えない。
辺りのコンピューターが無惨に壊れていくのに、零とサイアという男の、動きが。
ヒステリアモードで強化された、亜音速の銃弾をスローモーションのように捉えることのできる動体視力でさえ。
「これが、『リバースランカー』同士の戦い……」
初めて見た……いや、この場合は見えてないから、知ったというのが正しいか。とにかく、これが零の本当の実力、なのか。
「――余所見してたら危ないぞ」スタッ
「ウワァッ!」
い、いつのまにか、零が隣まで来ていた。お前、さっきまで奥にいなかったか?
「ジャンヌが戦闘体制に入ってるのにお前達が棒立ちのままだったから忠告しに来たんだよ」
零がそう言ったのでジャンヌの方を見ると、いつの間にか華麗な洋剣を手にしていた。
「まったく、油断大敵だぞ。俺がサイアを抑えておくから、お前達は三人で――」
「――キンちゃん、レンちゃん、アリア。お願いがあるの」
とその時、零の声を遮って、白雪が話しかけてきた。
「どうした?」
「ジャンヌとの勝負、私一人にやらせて」
――その声は、いつもの慎ましく弱々しいモノではなく。
とても勇敢で、力強かった。
「白雪……」
「ごめんね、3人で戦えばいいんだろうけど……でも」
「別にいいんじゃないか?」
「零!?」
「キンジ、考えてみろ。あの白雪が一人で戦うと言ったんだぞ……かごから、飛び出したいと言ったんだぞ」
「……そうだな」
「キンちゃん……レンちゃん……」
「ただし、危なくなったら問答無用でキンジとアリアがカバーに入ること。これが条件だ」
「……うん、それで十分。ありがとう」
白雪は礼を言った後に前に出る。
「ジャンヌ。もう……やめよう。私は誰も傷つけたくないの。たとえそれが、あなたであっても」
「笑わせるな。3人がかりならともかく、原石に過ぎぬお前一人が、イ・ウーで研磨された私を傷つけることはできん」
「私は
という白雪の言葉に、今度は――
言葉が、返ってこない。
俺には分からないが、今の白雪の言葉は超能力者には相当の
零もへぇ……と興味ありげに呟いているし。
「――ブラフだ。G17など、この世に数人しかいない」
「あなたも感じるハズだよ。
「……仮に、真実であったとしてもだ」
ジャンヌの声には、今度は少し緊張感が籠もっていた。
「お前は星伽を裏切れない。それがどういうことを意味するか、分かっているならな」
「ジャンヌ――策士、策に溺れたね」
白雪の声が、強まる。
「それは今までの、普段の私。でも今の私は、私にどんな
白雪の不思議なセリフに、ジャンヌは――黙った。
策を
そしてジャンヌは零に散々策を破られた後、今はこの、
「キンちゃん、ここからは……私を見ないで」
俺に背を向けたまま、白雪が、微かに震える声で言った。
「……白雪……?」
「これから――私、星伽に禁じられている技を使う。でも、それを見たらきっとキンちゃんは私のこと……怖くなる。
言いながら、白雪は頭にいつもかけていた白いリボンに手をかける。
その指も、小刻みに震えていた。
「――なぁキンジ、ありえないことって、俺の存在だけで十分だよな?」
と零が言ってきたので、
「ああ、そうだな。だが……白雪。俺がお前のことをキライになる――?
二人の幼馴染みの声に、押されるようにして。
しゅらり。
白雪はムリに微笑んだ顔を半分だけ振り返らせながら、その髪に留めていた白いリボンを解いた。
「すぐ、戻ってくるからね」
そして、かつん、と赤い
その構えが――普段の八相とは違う。
剣道ではおよそ一切の流派に存在しないであろう、奇怪な構えだ。
「ジャンヌ。もう、あなたを逃がすことはできなくなった」
「――?」
「星伽の巫女がその身に秘める、
くッ――と、白雪がその手に力を込めたかと思うと――
刀の先端に、ゆらっ――と、緋色の光が
『キンちゃんは……火って、好き?』
『こういうのはいいけどな。でかい炎とかは怖いだろ。それが人間の本能だ』
花火大会が終わった後、二人で線香花火をしていた時の会話が頭の中でリピートされる。
あの時は意味が良く分からなかったが、今ではハッキリと分かる。
室内を明るく照らしあげたそれは、
あれこそが、白雪の切り札の超能力。
「『白雪』っていうのは、真の名前を隠す伏せ名。私の
言い終えると共に、カッ!
白雪は床を蹴って、火矢のようにジャンヌに迫った。
白雪の術に一瞬目を奪われたジャンヌはその場に低く屈むと、ガキンッ!と洋剣でその渾身の一撃を受け止めた。
じゃりんっ!と、通常なら火花のところを――宝石のようなダイヤモンドダストを散らしながら、そしてその氷を瞬時に蒸発させながら、二本の剣が
さっ――いなされた白雪の刀が、傍らのコンピューターを音も立てず切断した。
「いまのは
白雪は再び、緋色に燃えさかる刀を頭上に掲げる。
あれは、立ち上る炎が白雪自身を傷つけないようにするための構えだったのか。
「さてっと……俺もそろそろ、行きますかな」
そう呟いた零は背中から紅色に染まる日本刀二本を取り出した。
「白雪に敬意を表して――俺も、
――そう言った瞬間、零の刀も、炎に包まれていた。ただし、零の炎はとても静かに、けど確実に燃えている。
「――さぁ、終わらせようか。俺の目が
そう言った零は、サイアに向かって歩いていった――
ーsideキンジoutー
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それでは、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。