緋弾のアリア~Sランクの頂き~   作:鹿田葉月

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はいどうも、一ヶ月ぶりです、鹿田 葉月(*`・ω・)ゞデス。
すみません、軽くスランプ中で、あまり思い付きませんでした。それに今忙しく、もしかしたら夏休みまで次が出ないかもしれません。

Emiya Sirouさんに評価8。
マスタースパーク魁さんに評価9。
pandorainzabokkusuさんに評価10!
A.yu-goさんに評価7(コメ付)

を頂きました!ありがとうございます!

では、第63話、始まります。


63話~小夜鳴 徹~

「――おや、よく(かわ)せましたね。流石は『破壊神』と言ったところでしょうか」

 

立ち入り禁止となっているランドマークタワー屋上の中央付近で、わざとらしく驚いた表情をつくる人物――小夜鳴先生。

その横には、先程まで理子の隣についていた、BとGが静かに立っている。

 

「な、なぜ……何故お前がここにいるんだ、小夜鳴ッ!それにBとG!お前らは何故そっちにいる!依頼主(クライアント)はあたしだぞッ!」

 

突然現れた小夜鳴先生に、理子は素を隠すこともせずに問いただす。

それはそうだろう。なんせ、理子の言葉を借りるなら――シナリオ通りなら、ここで小夜鳴先生が出てくることはなかったのだから。

それに、BとGがアチラについていることも分からないようだ。

アリアとキンジは驚きはしたものの……臨戦体制は崩さずにいる。

ただ、その標的が理子ではなく、小夜鳴先生の方になっている。

 

「ふふっ。私が何故ここにいるか、ですか……。それは、貴方の隣にいる錐椰くんが教えてくれると思いますよ?」

 

手に持っていたスタンガンをポイ……と捨てながら、小夜鳴先生は俺を見た。

その目には、何か確信を持っているのが表れている。

 

「零!一体これはどういうことだッ!」

「簡単に言えば……泳がされていただけだ」

「――ッ!」

 

理子に胸ぐらを捕まれそうになる勢いで捲し立てられるので、諭すように静かに告げる。

苦虫を噛み潰したような表情になり、俺から二、三歩離れる理子。

 

「お、泳がされていた……?あたしが?」

「理子。お前はどうやってBとGを雇った?」

「どうやってって……『理子さんに、イ・ウーから雇われました』って、アイツらが――」

「――イ・ウーを退学したお前にか?」

 

なっ――と、声にならない声が上がる。

 

「それに色々とおかしいんだよ。俺らが潜入始めてからのセキュリティ強化。別に強化だけなら然程(さほど)おかしくはないが、それだとアリアが掃除中に分かるようにはしない。それになぜ金庫の真上にある遊戯室に監視カメラがない?感圧床があって正面からも入れなさそうな以上、上からの浸入が一番確率が高いのに……つまり、()()()()()()()()()()()

 

そう、俺が感じた違和感はこれだったんだ。まるで、『ここから盗んで下さい』と言われているみたいに、限定されてたんだよ。

それに気付いたのが、作戦終了後だったけどな。

 

「そして、盗んで浮かれている間にスタンガンを使って拘束した後に十字架(ロザリオ)を奪い返し、そこにいるB・Gと共にここで撃退……というプランだったのでしょう、小夜鳴先生?」

「――素晴らしい(フィー・ブッコロス)!流石は錐椰くん、素晴らしい観察眼です!」

 

大げさに腕を広げたり、拍手したりしながら、小夜鳴先生は言う。

その目はいつも生徒達に向ける優しい目ではなく、ただ意地が悪いやつの目をしている。

 

「しかし、君たちの()()()には実に楽しませてもらいましたよ。桐ヶ崎くんは潜入捜査のカモフラージュだとここにくるまで思ってましたので、そこは分かりませんでしたが。まったく、実に傑作でした」

「……そうかい」

「な、何よ……なんなのよ、アンタ!まさか、アンタがブラドなのっ!?」

 

不気味な雰囲気を持つ今の小夜鳴先生に、アリアは『小夜鳴先生=ブラド』説を唱える。が……

 

「アリア。それは残念ながら違う」

「ええ。彼はまもなくここに来ますよ」

 

俺と小夜鳴先生の二人からの否定に、アリアは少し顔を赤くして、「そ、そう……」と呟いた。

だが、アリアの言ったことは違うことには違うが……読みは当たっている。流石はホームズ家の長女。しっかりと直感は働いている。

 

「なら零。一体どうして、小夜鳴がここにいるんだ」

「今本人が言っていただろ、キンジ。『彼はまもなくここに来ますよ』って」

「……?」

「そうですよね、小夜鳴先生?いや――」

 

キンジの問いに答えた後――

 

「――『人格のある擬態』さん?」

 

小夜鳴先生の目を見ながら、そう言った。

それに対し小夜鳴先生は少し、本当に驚いた表情を浮かべた。

 

「……何故、私が擬態だと?」

「とぼけないんですね」

「錐椰くんがそう言った以上、確信があると思いますので」

 

――そうかい、そいつは光栄だね。

皮肉めいたことを考えながらも、小夜鳴先生から目を離さない。

 

「どういうことだ、零!」

「落ち着け、理子。零にも何か考えがあるはずだ」

「その通りだ……キンジ、アリア。お前らにブラドの正体を教えてやるよ」

「ブラドの正体……って零、既に知っていたの!?」

「ああ。つっても、今日の朝気付いたけど」

 

それも、紅鳴館(こうめいかん)で一番最初に入ったロビーでな。

……あそこにあったのは獣の剥製や、複数の槍。

そして、俺が目につけた物は――槍だ。

 

「アリア。槍・ワラキア・ブラド・串刺し――この単語で導き出せることがあるだろ」

「……?――ッ、ドラキュラ――!」

「そうだ。ブラドの正体は、ドラキュラ・串刺しブラド公だ」

「ドラキュラ……?それは……架空のモンスターの名前じゃなかったのか?」

「……違う。ドラキュラ・ブラドはワラキア――今のルーマニアに実在した人物の名前だ。そして、()()()()()()()。あたしはアイツに監禁されていたんだ」

 

キンジの最もな疑問に、理子が答える。

監禁されていた頃を思い出してしまったのだろう、その顔は苦渋に満ちている。

対して小夜鳴先生は――笑ったまま、此方を見つめている。続きをどうぞ、ってことか。

 

「そして、何故小夜鳴先生がここにいるかについてだが……これも、ブラドのことを考えればすぐに分かる」

「ブラドのこと?」

「ああ。奴は言った通り、ドラキュラだ。吸血鬼とは、吸血で自分の遺伝子を上書きして進化する生物と言われている。だが、吸血鬼も所詮(しょせん)動物。本能のままに吸血していたために滅んだとも言われている。だが、ブラドは恐らく――人間の血を偏食していたんだろう」

「人間の血を偏食……?」

「ああ。人間の血を得たブラドは知性を得て、計画的に多様な生物の吸血を行って、屈強な個体となった。が……人間の知性は、そこら辺の動物の能力とは訳が違う。だから、人間の吸血を継続しなければならなかった。結果、ブラドには人間の遺伝子が上書きされ続け……小夜鳴 徹という、()()()()()()()()()()()()()()()。違いますか?小夜鳴先生」

「――正解です。流石は錐椰くんですね。つくづくあの時に血液を採取しておけば良かったと思いますよ」

 

パチパチパチ。

俺の推理に、小夜鳴先生は拍手を行った。まるで、よくできた生徒を誉める先生のように。

……いや、一応先生だったな。今では違うが。

 

「そうです。私はブラドの殻であり、私が激しく興奮した時――つまり私の脳に神経伝達物質が大量分泌された時にブラドが出現するようになっていました……ところで遠山くん。ここで一つ、補講をしましょう」

「……補講?」

「君がそこにいるリュパン四世と不純な遊びに(ふけ)っていて追試になったテストの、補講ですよ」

 

おい。なにやってたんだよキンジ。

しかし、いきなり何の話をしているんだ、コイツ。

 

「遺伝子とは――気まぐれなものです。父と母、それぞれの長所が遺伝すれば有能な子、それぞれの短所が遺伝すれば無能な子になります。そして……そこのリュパン四世は、その遺伝の()()ケースのサンプルと言えます。10年前、私はそこのリュパン四世のDNAを調べた事があります。その結果、リュパン家の血を引きながら、その子には――」

「や、やめろ!オルメス達には関係な――」

「――優秀な能力が、全く遺伝していなかったのです。遺伝子学的に、この子は『()()』な存在だったんですよ。極めて希なことですが、そういうケースもあり得るのが遺伝です」

 

言われた理子は――ぎりっ、と歯を食い縛り。

俺達から、顔を背けた。

――本当に、心の底から聞きたくない言葉を言われた――

――それを、絶対に聞かれたくなかったライバルに、聞かれた――

そういう、表情だった。

 

「――さて、もう少し教育してあげてもよろしいのですが……錐椰くんがいるのにそれをするのは少々危険なので、もう彼――ブラドに登場してもらいましょう」

「……どうやってだ。見たところさっきお前が言ったように、神経伝達物質が大量に分泌されていないようだが?」

「ええ。まだ私には神経伝達物質の規定量までは分泌されていません――そこで、この子達の力を借りるのですよ」

 

そこで小夜鳴が目線を送った先には――先程から一言も喋らなかったBとG。

小夜鳴から視線を送られた二人は小夜鳴の近くまで寄り……

ポゥ。と、手に青白い何かを表した。

 

「れ、零。あの二人のあれは?」

「――夢を視させる気だ」

「夢……?」

「あの二人は夢を操ることのできる超能力(ステルス)持ちだ。だが、何故今それをしたんだ……」

 

俺の呟いた疑問は――

 

「遠山くん。よく見ておいて下さいよ?私は人に見られている方が、()()()()()()ものでしてね」

 

小夜鳴がキンジを指名しながら、BとGの手を当てられて、()()()()()()()()ことで答えが出た。

なっ……と、声にならない声を上げるキンジ。

そりゃそうだ。なんせ、この中で一番馴染み深いのは、キンジなのだから。

あの独特の、スイッチが切り替わるような気配は、間違いない。

 

(ヒステリアモード……!)

 

気付いた俺と、あまりのことに呆然とするキンジに、小夜鳴は笑いかけた。

……なるほどな。そりゃ、BとGが当てられる訳だ。大量に神経伝達物質を送ることができるヒステリアモード持ちなら、夢で()()()()()のを見せれば……ブラドを呼べるってか。

アリアとキンジが警戒し、理子が怯える表情の中――

 

 

「さあ かれ が きたぞ」

 

まるで神の降臨を迎えるかのような、小夜鳴の恍惚(こうこつ)とした声。

それに伴い――びり、びりびり!

洒落たスーツが紙みたいに破け、その下から出てきた肌は赤褐色に変色していく。肩や腕の筋肉は、ばき、ばきり、と不気味な音を立てて雄牛のように盛り上がっていく。ズボンは上の方の布が残っていたが、露出した脚はもうケモノのように毛むくじゃらだ。

 

「へ……変、身……!?」

 

驚きのあまり途切れ途切れになったアリアの言葉は、的をついている。

まさに、バケモノ。変身している。

 

「Ce mai faci...いや、日本語の方がいいだろう。()()()()()、だな」

 

声帯まで変わったのか、急に何人かが同時に喋っているかのような不気味な声で喋りだした。

 

「オレたちゃ、頭ん中でやり取りするんでよ……話は小夜鳴から聞いてる。分かるか?()()()()()()()()()()――」

 

そう言ってこちらを睨む凶暴そうな眼は、黄金の輝きを放っている。

そして、その目が理子を捉えると――

 

「おぅ4世。久しぶりだな。イ・ウー以来か?」

 

ズシィン……!と響く足音を立てながら、真っ直ぐ理子に向かって歩く。

一方、理子は恐怖のせいか、足がすくんでいる。まともに動けそうにもない。

そこにキンジが、バババッ――!

三点バーストにしたベレッタで、ブラドの足を狙い撃った。

だが――

 

「……うっ!?」

 

呻いたのは、キンジの方だった。

ブラドの足に開いた3つの銃創が……赤い煙のようなものを一瞬上げたかと思うと……

まるで口を閉じるように、簡単に塞がってしまったのだ。

それも、ほんの一秒ほどで。

 

「四世。そういえば、お前は知らなかったんだよな。オレが人間の姿になれることを」

 

撃たれたブラド本人は気にしていないのだろう、理子への歩みを止めない。

 

「ま……待てブラド!オルメスの末裔を(たお)せば、あ、あたしを解放するって約束だろ!あたしはまだ――」

「――お前は()とした約束を守るのか?」

 

ゲゥゥウアバババハハハハハハ!

理子の言葉をふさぎ、ブラドはキバを()いて笑った。

その笑い声がまた――明らかに人類のそれではない。

 

()()()()繁殖用牝犬(ブルード・ビッチ)。少し放し飼いにしてみるのも面白(おもしれ)ぇかと思ったんだがな。結局お前は自分の無能を証明しただけだった。ホームズには負ける、盗みの手際も悪い。弱い上にバカで、救いようがねえ。パリで闘ったアルセーヌの曾孫とは思えねぇほどだ」

 

ブラドは、100年前に引き分けたという初代・怪盗リュパンの名前を出した。

 

「だが、お前が優良種であることに違いはない。()()次第では品種改良されたいい5()()が作れて――ソイツから、いい血が採れるだろうよ!錐椰。おめぇの遺伝子でも掛け合わせてみるかァ?」

 

…………。

 

「いいか4世。お前は一生、オレから逃れられねぇんだ!イ・ウーだろうがどこだろうが関係ねぇ。世界のどこに逃げても、お前の居場所はあの檻の中だけなんだよ!ほれ、これが人生最後の、お外の光景だ。よーく目に焼き付けておけよ!ゲハッ、ゲバババババッ!」

「ひっ……!」

 

理子に近づいたブラドは、理子に手を伸ばす。

対して理子は恐怖で座り込んでしまい――それでも胸元のロザリオはとられまいと、強く握りこんでいる。

そして小さく――

 

「お父様、お母様――たすけ、て」

 

と言った。

――もう、良いよな。

ガシッ。

 

「――ア?」

 

ブラドの腕を、何かが邪魔をした。

それは――俺の腕。

 

「おい錐椰、てめぇ、誰の手を――」

「――ぶっ飛べ」

 

――ガァゥンッ!

ブラドの懐に入った俺は、右腕の掌底一発で……

ブラドを、屋上と屋内へと繋ぐ階段がある所の壁まで吹き飛ばした。

 

「……え?」

「――おい理子、助けを求める相手が違うんじゃないか?」

 

一瞬、何が起こったのか分からなかった理子の目の前に、スッと膝を曲げて目線を合わせた。

その目には、必死に堪えようとしていたのか、大粒の涙が溜まっている。

 

「目の前にいるだろ?求める相手が」

「えっ……?だって、あたしは、オルメスと因縁が――」

「アリア本人は、そう思っていないみたいだが?」

 

ブラドへガバメントを向けながら、警戒しているアリア。

そこには理子と闘おうとする姿勢はなく、寧ろカバーしようとしているところもある。

 

「でも、あたしはお前達を殺そうとして――」

「武偵は『常在戦場』。そんなもん日常茶飯事だし、殺されたら殺された方が悪い」

「で、でもあたしは――」

「あーもう、まどろっこしい!」

 

まだ何か言おうとしている理子の頭をグシャグシャに撫で回す。

 

「さっさと助けを求めろ、俺ら()()によ」

「とも……だち……?」

「そうだろ?同じ学校行って、同じ任務やってるじゃないか。なら友達だろ……ったく、俺のキャラにないことさせるな」

 

ポンポン。と頭を軽く叩く。

理子は、俺、キンジ、アリアを見やって、少し迷うような素振りを見せて――

 

「たす、けて……アリア、キンジ、零」

 

と言った。

 

「おう、任せろ」

 

そう言って俺はキンジとアリアの元に行く。

 

「キンジ、アリア。少しいいか?」

「――アタシ達はブラドの足止めをしておくから、その間に零はあの二人を相手しておくってところかしら?」

「……流石だな、アリア。キンジ、いけるか?」

「可愛い女の子から『助けて』って求められたんだ。するしかないさ」

「流石はヒスキンだな」

 

そんなやり取りをしていると……

 

「オイ錐椰ァ……!てめぇ、よくもやってくれやがったなぁ!」

 

ズシィンッ……!と足音を立てながら、ブラドが歩いてきた。

その眼は血走っており、俺だけを見ている。

そしてスッ――と、BとGも構えだした。

 

「いくぞ、アリア、キンジ」

「ええ。いいわよ」

「ああ、いくぞ!」

 

俺はB・Gに、キンジとアリアはブラドに向かって、それぞれ駆け出した――。




はい、どうでしたでしょうか?
自分は車校とバイトに挟まれながらですが、なんとか頑張っています。
皆様も風邪や怪我のないようにお過ごしください。

では、ご機嫌よう。(´・ω・`)/~~バイバイ。

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