何とか今年中に投稿できました。流石に一話は投稿しておきたかったので……間に合ってよかったです。
フリーダムGOさんに評価・9
ナギンヌさんに評価・9
を頂きました!ありがとうございます!
それでは、第69話、始まります。
――
その言葉が頭の中で、何度も繰り返される。
会えなくて、見つからなくて……それでも、必死に探した。
世界を飛び回り、情報を集めた。人脈を広げるために表舞台で名前を売り、武力を誇示し、『
それでも……それでも。望には、届かなかった。心のどこかでは、もう望はこの世界にはいないではないか。そう、思っていた。
だけど、それが……。
(それが、ついに……)
「――ン。―ェィ―。――零君っ!」
「うおっ!」
何もなかった暗い所で、急に耳元で叫ばれる。
思わず身を引きながら声の元を辿ると……。
「……シェイ、か?」
「それ以外の誰に見えるの?零君は」
澄んでいる藍色の瞳を不機嫌と言わんばかりに細めている少女――シェイル・ストロームが、隣に立っていた。
「今日は変装してないから、間違える事ないと思うんだけど?」
「あ、ああ……でも何で、
「……え?」
何言ってるの?と細めていた瞳を丸くするシェイ。
その身に着けているのは――鮮やかな色をした、浴衣だった。
白を基準とした綺麗目な素材に、青い
いつもはストレートにしている黄緑色の髪はアップにしており、桜の髪止めは外している。
少女らしい可愛さというより、大人の綺麗さを感じさせる今のシェイからは、まるで
(――
頭の中で出てきたワードに引っ掛かりを覚え、同時に今までシェイに向けていた目線を周囲に向ける。
辺りを見渡すと……シェイと同じように浴衣を着たカップルやグループだらけで、集団で盛り上がっている者、誰かを待っているのか、腕時計を何度も確認しつつ立っている者。
そうした者達が溢れかえっている中、ふと目に映ったのは、ジャイアントパンダ。
となると、ここは……
「……上野駅、か?」
「……零くん。寝ぼけているのかどうか知らないけど、今日は7月7日だよ」
「7月7日……てことは」
「そっ。
俺が困惑しているのが冗談ではないと分かったのか、隣に立って説明してくれるシェイ。
カランッ。と乾いた音を鳴らす下駄を聞き、普段は髪で隠れているシェイのうなじから目をそらしつつ……段々とクリアになってきた頭で考える。
確か、アリアと七夕祭りに行く予定は計画していた。これは間違いない。
それで、だ。俺の記憶にあるのは……アリアとカナが戦って……それで。
(……
あの時はまだ、6月28日くらいだったハズ。武偵高の夏休みは緊急依頼等の関係上、普通より早い7月7日。つまり今日から夏休みだが、一週間以上が抜けている。
「シェイ。俺は――」
「一週間前からずっと、何処か上の空だったよ。周囲からは気付かれない程度には、だけどね。受け答えもしてたし」
シェイに確認しようと疑問を口にする前に、先に答えられた。聞きたい事が分かっている、そんな風に。
「昨日自分から、『明日七夕祭りあるから準備しておけよ』って言ったから治ったと思ったんだけど……」
「あー……すまん。全く記憶にない」
どうやらそれだけの期間、シェイに心配をかけてしまったらしい。
居場所についてサイアから教えてもらい、具体的な話は後日。ということにしたハズなのに。
「もう……
折角のお祭りだし。と続け、上機嫌に鼻歌まで歌い出すシェイ。全て見透かした上で、敢えてムードを軽くしてくれているようだ。
……シェイのこういうところ、凄い助かるよ。言葉にすると何の事?とか言いそうだから言わないけど。
「さて……色々と分かったけど、アリアは?元々はアリアから誘っていたんだが……」
「それがまだなの。そろそろ来ると思うんだけど……」
話と頭を切り替える為、待っているハズのアリアを探すが、見当たらない。7時に集合予定であり、現在時刻は6時55分だから、遅れてはいないけど。
道行くカップル達を眺め、何故か腕を両手で掴んでくるシェイに驚いていると……。
「――零ッ、シェイ!」
「おいアリアッ、引っ張るなって!」
俺達が背にしている巨大パンダが入っているガラスケース、その後ろから聞き慣れた声がした。
それにつられて顔を向けると……笑顔で近寄ってくるアリアと、そのアリアに腕を掴まれてついて来るキンジがいた。
あー……これ、集合場所にはいたけど、待ち合わせる位置が違ったパターンだな。そもそもアリアがこういった行事には楽しみすぎて早く到着する傾向があるし。
からころと下駄を鳴らして近寄ってくるアリアの浴衣姿は……
ああ――可愛いな。
ピンクと赤を基調にしたアリアの浴衣は金魚柄で、女子の中でも身長が低い体にこれでもかというほど似合っている。
隣にいるシェイが女性らしさと言うなら、今のアリアは少女らしさが全面に出ている。
「な、なに零。何処かおかしい所ある?」
思わず見続けていた俺の表情に何を感じたのか、アセアセと浴衣の帯と胸元を正している。それがまた今のアリアの格好に合っていて、笑いそうになってしまう。
「いや、おかしい訳じゃないよ。寧ろ似合っている」
「そ、そう……?」
「うん、可愛いよ」
「かっ、カワッ!?」
ボボボボボッ!
思っていた事を素直に言ったら、アリアの顔や首筋が瞬時に赤くなった。
え、どうなってるんだ今の。俺の目でも捉えきれなかったんだが。
「――零君?私の浴衣には可愛いとかって感想ないの?」
「うん?シェイは可愛いと言うより綺麗だろ。月並みしか言えないけど」
「そっか、ありがとっ♪」
アリアの急速赤面術に目を丸くしていると、隣にいたシェイがずいっと顔を近付けてきて感想を求めてきた。
こちらに対しても思っている事を言ったら気を良くしたのか、コテンと肩に頭を乗せて鼻唄の続きに入る。
「……キンジ、どうすればいい、この状況」
「女嫌いの俺に聞くか?それ」
「ごもっともで」
俺と同じく武偵の制服を着込んでいるキンジに助けを求めるが、
「――と、とととにかく!早くお祭りに行きましょっ!後シェイも零の腕掴むの禁止ッ!」
「え、でもアリアちゃんだってさっきキンジ君の腕掴んでなかった?」
「いいからっ、さっさと行くわよっ!」
「あっ、ちょ、ちょっと待って!」
アリアの唐突な禁止令を
俺とシェイの間にたったアリアがそのまま手刀で腕を離し、そのままシェイの腕を掴んで、人の流れに向かう。シェイも最初は抵抗しようとしていたが、アリアの掴む強さに諦めたのか、なされるがままについていく事にしたらしい。
「何だったんだ……?」
「分からん。まあ俺らも行こうぜキンちゃん」
「キンちゃん言うな。弾くぞ」
「おーこわ」
JR上野駅から国道沿いに少し歩いて折れ曲がると、屋台が連なる通りに出る。
カナや
「……わぁ……」
日本のお祭りを見たことが無かったアリアは、色とりどりに飾られた
その様子が可愛らしいのか、軽く笑みを浮かべながら隣を歩くシェイ。一歩下がってついていく俺とキンジ。
「……というか、シェイはそのままの格好なのによくバレないな。さっき会った時に不安しか無かったけど」
「ああ、あれか?認識阻害をかけといたんだよ。知り合い以外には女性がいるってくらいにしか感じない状態になってる」
「……さすが零だな」
「だろ?」
まあかけた記憶が無いんだが。どうやら無意識の内にやっておいたらしい。シェイに聞いたら呆れられた。
前を歩く二人に聞こえないようにコソコソ話していると……
ピタッ、と、アリアが一つの屋台で立ち止まった。
わたあめ
の屋台である。
アリアの視線の先では
大きなふたえの目をくりっくりさせてそれを見ていたアリアは、
「零。なにあれ」
「なに……って、わたあめだな。書いてある通りに」
「あめ……ってことは食べられるの?」
アリアは斜め下から、本当にふしぎそうな顔をしてこっちを見上げてきた。
「あれはガキの食べもんだぞ?」
キンジが小声で
「た、た、食べたいなんて一言も言ってないでしょ!」
ちょっとヨダレらしきものを口の端にのぞかせながら犬歯をむいた。
体液の分泌はやいなぁ、アリア。
しかし、アリアがこういう状態の時は、『ものすごく食べたい時』なのが分かっている。
ちら、と目線をシェイに向けると、言いたいことが伝わったのかウインクで返してきて。
「でもまあ、お祭りって年齢を気にせず楽しむものじゃないかな?ほら、キンジくんだって駄菓子屋に行くとつい買いたくならない?」
「それは、まあ……」
「てことだな……すみませーん。わたあめ、4つ下さい」
ロシア出身のシェイに駄菓子屋の話を持ち出されると思わなかったのか、少しつまるキンジを
するとざっ!とアリアも超高速で入ってきた。
そんなに食べたいんだな、アリア。屋台の台がちょっと高いから、頭だけやっと上に出せている状態だけど。
「おじさん!味は選べるの?」
「えらべるよぉー」
へー、選べるのか。
何で俺の分まで……と愚痴りながらシェイと屋台に入ってきたキンジを尻目に、そんな事を思う。
「ももまん味!ある?」
「あるわけねーだろ」
「あるよぉー」
「あんのかよ!」
普通の屋台にはないだろう味に
「私はイチゴ味で」
「じゃあ俺は抹茶」
「はいよぉー」
「キンジ、うなまん味まであるってさ」
「なんだこの店は……」
とか言いながらもうなまん味買ってるじゃねーか。
くる、くる、くるる……
つま先立ちになり見える範囲を少しでも広げて、アリアは目をキラキラさせながらわたあめ誕生シーンを見守る。
「ほいっ、わたあめの完成。お兄さん達のカノジョさん達可愛いからおまけだ」
オジサンはももまん味とイチゴ味だけ少し大きめに作ってくれたわたあめを俺に渡す。
「カノジョじゃないですよ」
「……今はまだ、ね」
「ん?シェイ何か言ったか?」
ボソリと呟いたシェイはなんでもないよーとか言いながらイチゴ味を受け取る。
代金を支払いおえ、アリアとキンジにそれぞれわたあめを渡し、
「零!これ、これ、どこから食べるの!?」
などと目の中に星を輝かせ、小さくジャンプしながら俺の服をぐいぐい引っ張ってくるアリアを
だけど、こういった雰囲気は、嫌いじゃない。
わたあめを食べきった後(キンジの食べたうなまん味が絶品だったらしい。複雑そうな顔してたが)、アリアは、タコ焼き、りんご飴、チョコバナナ……と、目に映る全てのモノを食べまくった。その隣でシェイはりんご飴をまだ食べている途中だというのに凄いペースだ。
キンジが武偵としてなのか、
「アタシはこないだの体重測定で、背がほとんど一緒の理子より軽かったから大丈夫」
「それって理子ちゃんが……いや、なんでもないよ」
視線を一ヶ所に固定していたシェイが、コホンと話を変えるように咳をする。言いたいことは分かるが、自分から地雷を踏みに行く必要はない。
ともあれアリアはお祭りを
射的は、さすがに俺たちがやってしまうとチートなのでパス……おい誰だ『そもそも存在がチートだろ』って言った奴。
「どこの国でも――お祭りになるとみんな、はしゃぎすぎね。こういう時こそ犯罪は起きやすい。警戒が必要だわ」
というような事を時々思い出したように言うアリア。突っ込みたい所が色々とあるが、触れないであげた方がいいだろう。
「……おい、あれって」
「どうした、キンジ?」
「あーあれ。確かあかりちゃんの
キンジとシェイが何かに気付いたらしく、同じ方向を見ている。
俺とアリアがつられる様に見ると、そこには……。
「――ピーポピーポピーポニャン♪ピーポニャン♪けいさつかんだっよ~♪」
白ビキニに猫耳をつけた少女――
「し、将来有望そうだったインターンが……アタシの
「あかりちゃん、
……。
「おい、零?大丈夫か?黙ってるけど」
「――あっ、やばい」
「やばいって……何がやばいんだよ、シェイ」
「アリアちゃん、協力してっ!零君っ、
「えっ……あっ」
――その後、気付いたら乾さんを膝に乗せて、頭を撫で回していた。
周りにはぐったりとした様子のアリア達が座っており、乾さんは顔が真っ赤になっていたが、それはまた別の話で……。
はい、どうでしたでしょうか。
この一年だけでも緋弾のアリアAAの漫画が最終回を迎えましたね。
AAの世界観は好きでしたし、もう少し続いてほしいと思いましたが、それくらいに終わるのが丁度いいのかもしれませんね。
それはそれとて、七夕祭りが拾う所多すぎて一話にまとめられなかったので、二話構成になります!よって次回は第零章ではなく第四章の続きからになります!
それでは、皆さん良いお年を!(´・ω・`)/~~バイバイ。