いやですね……活動報告にも書いたんですけど、本当に来年の4月まで一切書かないつもりでした。
ですが今日、12月1日は、この作品『緋弾のアリア~Sランクの頂き~』の執筆一周年ということを思いだし、記念として執筆させていただきました!
皆様のおかげで、一周年記念を迎えることができました。本当にこの作品を見てくださっている皆様には、感謝の言葉が見つかりません。
さて、一周年記念を飾るのは、この作品のオリジナルヒロイン、シェイル・ストロームさんことシェイさんの『○○の一日~』です。一周年記念ということで張り切った結果、一万以上の文字数になりましたので、所々休憩を入れて読んでください。
それでは、始まります。
5:30
――身体に感覚が回り、重く感じる。
いつも思うけど、起きたばっかりって、何か不思議な感覚だよね。素直に何も考えてない、からっぽの状態みたいな感じ。
「うーん……」
抱き枕(カピバラの絵が刺繍されている)を離して、右手を上げて左手を頭の後ろに回しながら右手を掴み、軽く伸びをする。そしてベッドから降りてリビングへ向かう。
「――おっ、シェイ。起きたか。おはよう」
――トクン
「おはよう、零君」
声が聞こえた方を振り向くと、丁度玄関から黒色のタンクトップとハーフパンツを来た、汗だくの零君がやって来た。
「悪いけど先にシャワー浴びてくるから、朝飯は後にしてくれ」
「ううん、まだお腹すいてないし。ゆっくりしていいよ~」
「ああ」
スタスタと脱衣所へ向かっていく零君。
こんな朝から何で零君が汗だくかというと……実は朝練をしているの。
普段学校では後輩への指導や
また、零君といえば大技ばっかりのイメージがあるけど、練習では基礎中の基礎をずっとやっているの。でも、その動きはとても綺麗。
誰も知らない、零君の秘密。
それを知っていることに、少し嬉しく思う。
「……シェイ、何やってるんだ?」
「ふぇっ!?」
いきなり後ろから声をかけられてびっくりした。
見るといつの間にか、武偵高の制服に身を包んだ零君が立っていました。
知ってると思うけど、武偵は常在戦場。いつどんな時に何が起こるか分からない。そのために常に防弾使用である制服を着ている人が多いの。
「れ、零君。シャワーは?」
「もうあがったけど?」
は、早くないかな。時計を見てもまだ5分くらいしか経ってないよ?
何で男の子って、シャワーとかお風呂とか結構早い人が多いんだろう?
「それよりシェイ。まだ寝惚けているんじゃないのか?ぼ~ってしてたけど」
「う、ううん。大丈夫だよ」
「そうか?なら良いけど」
そう言いながら、エプロンを取り出す零君。どうやら今から朝御飯の準備をするみたい。
「あっ、私も手伝うよ」
そう言って私もエプロンを取り、ゴムで髪をくくり、ポニーテールにする。普段はロングだけど、料理する時は髪をまとめているの。
「先に着替えてこいよ。寝間着のままだぞ?」
「今朝は少し余裕があるの」
「……それで、昼からライブか。日曜なのに大変だな、シェイも」
「ううん。楽しいから全然苦じゃないよ……で、何をすれば良い?」
「今から魚焼くから、味噌汁作ってくれ」
「分かったよ……良かったら、毎朝味噌汁を作っても良いよ?」
「いや、毎朝作るのは大変だろう?シェイも忙しいんだしさ」
「……そういう意味じゃないんだけどね……」ボソッ
「ん?今何か言ったか?」
「ううん、何にも」
とりとめのない話をしながら、二人並んで料理を作る。私が零君の部屋に泊めてもらってからずっとあるこの光景。
この瞬間が、私は好き♪
7:00
「……ふぁ~ぁ……」
朝食作りももうお皿によそうだけになった時に、寝室からアリアちゃんがやってきた。
「おはよっ、アリアちゃん♪」
「おはよう、アリア」
「おはよう……」
目をネコみたいに手を丸めて擦りながらやってくる。その姿はとても愛らしく、ファンクラブがあるのも頷けるね。
「アリア、顔洗ってこいよ。まだ眠そうだぞ?」
「うん……」
零君に言われたように、まだアリアちゃんは眠たそうで、足取りもおぼつかない様子。
……あ、ドアに頭打った。痛そう。
「シェイ、冷蔵庫から牛乳出しといてくれ」
「あ、うん。分かった」
洗面所に入っていくアリアちゃんを見ながら、冷蔵庫から牛乳を取り出す。ついでに砂糖も。
……毎回思うけど、アリアちゃんいつも牛乳に砂糖入れて飲んでるけど、虫歯にならないのかな?私も牛乳は飲むけど、砂糖は入れないし。あと零君はコーヒー。
「――桃まんある?」
トテテと洗面所からやって来るアリアちゃん。もう完全に目が覚めたみたい。
因みに桃まんとは彼女の好物で、キンジ君曰く、『桃の形をした、ただの饅頭』だって。そんなこと言ったらほとんどの物に『ただの~』がつくことになっちゃうけど……
「……朝から砂糖入りの牛乳に桃まんじゃ、本当に虫歯出来ちゃうよ?」
「大丈夫よ、ちゃんと歯磨きしてるし」
「その歯磨き粉だって味付きのでしょ?」
「細かいことはいいの!」
「――はいはい。親子喧嘩はいいから、食べるぞ?」
そう言いながらエプロンを外して席につく零君。
「――零。今、どっちが『親』の方で言った?」
「……え?」
「――勿論、私が『親』だよね。零君?」
「何言ってるのよ。アタシが『親』よ」
「アリアちゃんと私だったら、私の方が『親』に向いてるよね」
「アタシの方が向いてるわ」
「私」
「アタシ」
「私!」
「アタシ!」
「おいおい二人とも。なんでそんなことで――」
「「零(君)は黙ってて!」」
「あっ、はい」
……何で真剣に言い争っているのかって?だって今の感じだと、零君が『父親』みたいな言い方になってるよね。
ということは、この場合の『親』は『母親』、つまり零君のおよ――
(……お、およ、よ……///)プシュー
「えっ、どうしたシェイ?顔赤くなってるぞ?風邪か?」
「だ、大丈夫!大丈夫だから!そんなに覗きこまないで///」
うぅ……急に恥ずかしくなってきた。アリアちゃんも同じみたいで、顔を真っ赤にして俯いている。
この雰囲気は良くないと思ってアリアちゃんとアイコンタクトする。
「た、食べようか」
「そ、そうね」
素早く私達は席に座り、呆気に取られている零君を待つ。
「さ、零君。食べよう」
「食べましょ、零」
「あ、ああ……」
7:30
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」
「ごちうさ……じゃなくてお粗末様」
食べ終えた私達は自分の食器を片付けだす……何か、零君違うこと言ってなかった?
「気のせいだ。別に心がぴょんぴょんしている訳でも、ぽいぽいしている訳でもない」
「心を読まないで!ていうか気のせいじゃない!?」
まったくもう……心を読まれるのは零君の役割じゃなかった?相変わらず人の機微には鋭いなぁ……ある感情以外には。
「で、シェイは今日どうするの?」
「ああ、アリアちゃんには言ってなかったね。私これからライブに行ってくるの」
「ふーん……そういえばアタシ、シェイがアイドルの時の姿、見たことなかったわね」
「そうなのか?一昨日にも某Mなステーションに生放送で出てたじゃないか」
「録画していた動物番組を観てた」
「……そうか」
「――よしっ!零!今日は一緒にシェイのライブ観に行きましょっ!」
「――ふぇっ?」
「――はい?」
アリアちゃんのいきなりの提案に、私と零君は驚いた。
「観に来るって……何で?」
「なんとなくよ。どうせ今日は用事も無いし」
「おいおい。俺にも用事があるんだが……だいたい、そんなことしたらシェイも困るんじゃないか?」
「私は大丈夫だよ。それよりも零君の用事って?」
「12:00からあかりちゃん達一年生組の稽古だよ」
あかりちゃん達……確か、
「零君。携帯貸して」
「……?良いけど」
ホイッ、と首を傾げながらも携帯を取り出して渡してくれた。
(ええと……あかりちゃんの苗字って何だっけ……あ、名前で登録してあった)
受け取った後電話帳を開いて、あかりちゃんに電話を掛けるために調べる。あかりちゃんの苗字を知らなかったけど、名前で登録してあったために探すのが簡単だった。
そのままコールすること数秒して、元気な声が携帯から耳に届いた。
『もしもし!零先輩どうしましたか?』
(……何だろう。アリアちゃんがネコか仔ライオンだとしたら、あかりちゃんは完全に仔犬だよね)
電話越しでのあかりちゃんがパタパタと尻尾を振っている姿が容易に目に浮かんだ。
「ヤッホーあかりちゃん♪シェイだけど」
『……え?な、何でシェイ先輩が零先輩の電話に?』
「そんなことより、今日私のライブに来てくれない?」
『……え?シェイ先輩のライブですか?そんな――『行きます!』ってライカ!?』
うわ、びっくりした。
今あかりちゃんのセリフに被せて言った、活発そうな声の子は――ライカちゃんだね。私のファンだって言ってくれた……今思い出しても嬉しいな♪
「ライカちゃん、おはよう♪」
『お、おはようございます!っていうか私達が行っていいんッスか!?』
「勿論。零君達も来るし、皆で一緒に来てくれても良いよ」
「いや、俺まだ行くっていってな――」
『『『『行きます(ですの)!』』』』
「……だってさ、零君♪」
「……分かったよ」
良し。なんとか零君を誘えたよ。
……ん?何でそこまでして零君を誘ったかって?それは……ふふっ。乙女の秘密って事で♪
「んー。そうすると午後までの時間が空くな……」
そう言って考え込む零君。
「なにも予定ないの零君?」
「ああ……そうだな、武器の点検でもしようかな――」
「なら、買い物に付き合って♪」
「……Oh...」
10:00
「――やっぱり、日曜日だから人が多いな」
「アリアちゃん。日本のショッピングモールに来るのは初めてでしょ?どう、感想は?」
「そうね。ここまで人が多く集まる所に来るのは初めてだわ」
あれから着替えた私と零君とアリアちゃんは、大型のショッピングモールに来ています。
「しっかし……何か、周囲から見られているんだが……何でだ?」
「武偵だからじゃない?」
周囲からの目線に、少し気にしている零君と、あまり気にしていないアリアちゃん。確かに武偵だからという部分もあるんだけど……
「おい。あのピンクのツインテールの子、超可愛くね?」
「本当だ。超可愛い!」
「その隣の男子も超カッコよくない?あたしモロタイプなんだけど!」
「足もスラッとしてて長いよ!モデルさんかな?」
――実際は、こんな風な感じなんだよね。二人とも美男美少女だから、注目を集めてしまうのも無理はないよね。
「二人とも凄い美人……髪の色も似てるし、兄妹かな?」
「かもしれないな……しっかし、後ろの
「えっ……あ、ホントだ。てかいたの気付かなかったわ」
「あたしも」
「帽子目深に被りすぎだし、眼鏡してるしねー」
そんな中、周囲の人たちは
「……しっかし、相変わらずシェイの変装はバレないな」
「ホント。知っているアタシでも、一瞬他人と思ってしまうわ」
「こういうことができないと、普段の生活が大変でしょ?」
そう。私は今、黒髪短髪の女子の変装をしている。黒髪はカツラで、眼鏡と帽子は地味な色の物。これだけでほとんどバレないの。
「まぁ私の変装はともかく……取り敢えず服屋さんに行こう?良いのがあったら今日のライブに使うし」
「勝手に決めて良いの、ソレ。詳しくはないけど、衣装とか用意されてるんでしょ?」
「私の所の事務所は基本何でも許してくれるから、衣装じゃなくて自分でも持ってきたのでもいいんだよ」
「へぇ~……そういえば、今日のライブってどこでやるんだ?」
「ラクーン台場にある遊園地だよ」
「え、ラクーンシティ?」
「誰もそんな物騒な所に遊園地建てないし来ないよ!」
……いや、零君やネリーちゃんなら「「肝試し~♪」」とか言いながら無双して帰ってきそうだけどさ。右手にタイラント、左手にGみたいな感じで。ウェスカーさん思わずサングラス落としちゃうよ。
そんな会話をしつつ、私達は服屋さんに着いた。
結構大きい店で、色々な服が揃ってる。
「……じゃあ、俺はそこら辺にいるから、後は二人で……」
すると零君がそそくさとどこかに行こうとする。でも、逃がさないよ?
ガシッ、と零君の腕を捕まえてニッコリと笑う。
「零君。どこに行こうとしてるの?」
「え、いや、えーっと、ほら、女子二人の方が服について何か言えるだろ?だから俺はちょっと……」
「男子からの感想言ってくれた方が決めやすいんだけどな~」
「いや、そう言っていつもネリーと1、2時間ほどかかって――」
「後荷物持ちも♪」
「……はいはい。参りました」
「良し。じゃあアリアちゃん、服見てこよっか」
「え、ええ……」
「……( ´Д`)ハァ……」
溜め息をつく零君をよそに、アリアちゃんの背中を押しながら店内を見回る。
――結局1時間と少しの間、零君がフラフラになるまで試着して感想を求めることになりました――
13:00
「シェイちゃん。そろそろだからよろしくー」
「分かりましたー」
場所は変わってラクーン台場。
マネージャーさんに催促されて、私は最後に自分の状態を鏡で確認する。
(……髪型・服も良し。髪留めも着けた。良しっ!)
結局、私の好みである白のワンピースにして、準備万端な状態。それを確認して、ステージに向かう。
ステージの裏側にあるカメラを見ると、お客さんがびっしり詰まっている。
……目の前に光る棒を持っている人達がいるのは御愛嬌だね。まぁ他の人の迷惑にならないなら別に良いけど。
『えー、皆様。大変長らくお待たせいたしました。ただいまより、シェイル・ストロームさんのライブが始まります』
(シェイちゃん、頑張って!)
(ありがとう、行ってくる)
同じ武偵アイドルの子にエールを貰って、ステージに上がった。
『みなさーん。
『おはちはー!』
私が挨拶をすると、お客さん全員が元気よく返事してきた。
……ん?『おはちは』って何って?えっと……これはあまり言いたくないんだけど……まぁいいや。言うね。
これは私が日本でのファーストライブ、まだ日本語をよく知らなかった時のことなんだけど。あまりにも緊張しすぎていて、『おはようございます』と『こんにちは』が混ざっちゃって、さらに『こんにちは』の『は』を『わ』と言うことを知らなくてそのまま言ってしまい、『おはちは』となったの。
それを言った瞬間、私は火が出るくらい真っ赤になったんだけど、それがファンの心を掴んだみたいで……すっかり定着しちゃった、ということなの。
『まずは今日来てくださってありがとうございます。今日も頑張りますので、是非応援よろしくお願いいたします』
『頑張れ~!』
『ふふっ、ありがとうございます』
その後、少し他愛のないトークをしつつ、零君達がどこにいるかさりげなく見渡す。
……あ、いた。後列から10列目の左端付近。そこにいるのは勿論零君……の首を絞めつつ笑っているネリーちゃんがいた。
(――ってネリーちゃん!?何でいるの!?アリアちゃん達が目を真ん丸にしているけど!?)
凄くびっくりしている状態だけど、あくまで顔は崩さないまま。アイドルとしての基本が役に立ってる。
……まぁ、ネリーちゃんのあの顔は、また零君が何か変なこと言ったみたいだから問題ないかな。それより集中しないと。
『では、そろそろ最初の歌を歌います……聴いて下さい――』
――『Drop』
――激しいエレキギターの演奏から始まり、それによって会場は一気に盛り上がり、私は歌い出した。
この曲は、私がライブをする時に、絶対に最初に歌うようにしている曲。
理由は、この曲の内容が、イジメを受けた少年の末路を描いたものだから。こんなにもイジメというものは酷いものなんだと、皆に知って欲しいから。
――『崩れ落ちてゆく世界』
『
もう僕の目に映るものはない――
一番を歌い終わった後、零君達の所を確認する。
アリアちゃんは……驚いているみたいだね。日本のアイドルファンの熱狂に唖然としているのかな?
あかりちゃんは……アリアちゃんとおなじような感じ。流石は
志乃ちゃんは……こういうところにあまりこないのか、とまどってばかりだね。なんだか初々しい。
――『明るく綺麗な未来』
当の昔に暗闇に消えた
『友達と過ごした日々』
時が過ぎても、戻ることはない――
二番が終わった。後もう少し。そう思いながら、再び零君達の方を見る。
ライカちゃんは……アハハ。どこからか光る棒を取り出して振っている。麒麟ちゃんが困った様子で見ているよ?
ネリーちゃんは……誰かと話をしているみたい。
……って、あれ私の事務所のスカウターじゃない!?もしかしてネリーちゃん、スカウトされてる真っ最中?
……いけない。ネリーちゃんを見ると表情が崩れそうになる。集中しないと。
――『関わらないことが僕のセオリー
その結果、消えていく大事なmemory
大丈夫、何も、心配ないって
思っていた、頃が、ありまして
終わらない、暴と名のつく言動
見えないや、この現実のend
身を投げて、辿り着いた深海
息を止め、この世から引退』――
――『静かな、静かな最期』
僕は求めていたの、この瞬間を。
『側に舞い降りた天使』
未練はないよ。Go to the next!
――『綺麗な、綺麗な世界』
きっとこれから、楽しくなるの。
『最後に、一つだけいい?』
この世界に言うよ、サヨウナラと――
――うつ くし いさ いご ――『drop』――
歌が終わり、会場から拍手が巻き起こる。
その中で私が目にしたのは、屈託のない笑顔で拍手を贈ってくれている零君だった。
『ありがとうございます。では早速次の曲、いきまーす!』
そうして私はたくさんの皆様方に、歌を贈った――
16:00
「シェイ、お疲れ~」
「お疲れ、シェイ」
「お疲れさまでした、シェイ先輩!」
「アハハ、ありがとう」
あれから2時間ライブをして、1時間サイン会と握手会を行った後、私は皆に囲まれていた。
「アタシ、日本のライブ初めてだけど、スッゴク良かったわ!」
「あたしもです!シェイ先輩ほっんとうに凄かったです」
アリアちゃんとあかりちゃんが目をキラキラさせて話している。そんなに気に入ってくれたのなら嬉しいな。
「流石はシェイさんッス!やっぱり『From...』は『Drop』とは反対で青春を謳歌している感じでしたし、『Pride』の時の盛り上がりは半端なかったッスし、後は『約束事』や、新曲の『恋・君』は少女らしさを感じましたし、後それからそれから――」
う、うん。ライカちゃんが変なスイッチ入っちゃった。まぁでも楽しんでくれたみたいで良かった。
それから後の人達は――と考えた所で、
――ピロ……テロ……プロ……
「……ん?何の音?」
急に聞こえてきた音に、皆がキョロキョロしだす。
……零君とネリーちゃん以外。
「……ああ、ごめんね。私の
「そうなの?変わった着信音ね」
「仕事用だし、なるべくすぐに出れるように特殊な音楽にしてるんだ……ちょっと確認してくるから、少し離れるね」
そう言って皆の元から離れ、
白色の、特に語ることのない、普通の携帯。
私は、常に3つの携帯を所持している。一つは私用、後の二つは仕事用。
なんで仕事用が二つあるのかって?それは――
届いたメールを見てみると、題名に、『GOW』と書いてあった。
――その一つが、
『From ?
件名 GOW
シェイル・ストローム――イラク』
(……はぁ、今ライブ終わったばっかりだったのにな……)
私はため息をつきつつ、『了解』と送り、そのメールと発信履歴を排除した。そしてそのまま零君達の所に戻る。
「ごめんね。今仕事が入っちゃって、今から行かないといけないの」
「そうなの?大変ね」
私の言葉を素直に聞き取ったアリアちゃんと一年生達。
「……シェイ、頑張ってこいよ」
「気を付けてね」
事情を知っている零君とネリーちゃんは、複雑そうな表情をしている。もう『リバースランカー』ではないから、自分達は関与できないからね。
「うん、行ってくるよ」
そう言って私は小走りでその場を後にする。
零君達からの死角に入った。周りにも誰もいない。
「ん……『Link』」
ちゃんと確認した私はその場で止まり、少しだけ力を入れて言葉を発する
すると――何もなかった目の前から、人が通れるような、黒い穴のような何かが出てきた。
「場所・イラクに繋いで」
私がそう言うと、黒かったモノがいきなりグニャリと変化し、そこには明らかに今この場所の景色でもなく、ましてや日本でもない景色が映っていた。
「……やっぱり、国内部での紛争だね。大方、怪我した人の中に関係者が混ざっているのかな?」
何て呟きつつ、私はその景色が映っている穴へと歩き出す。
……ああ、そう言えば言ってなかったね。
私は――空間・次元を操れる
穴を通ると、そこはもうイラク。
怪我した人を探そうとすると、
――パァンッ、キンッ!
と一発の銃声に、金属音。
音のした方を振り向くと、一人の男がこちらに向かってツァスタバ M70を構えていた。
「――ったく、突拍子に現れるなっていつも言っていますよねぇ、シェイさん?」
「アハハ、ごめんねサイア君」
「……その『ごめんね』を、いい加減『次から気を付ける』って意味にしてくれないかね?」
「ゼンショ ケントウ シナイ」
「何故カタコト!?それに検討しないのかよ!?」
毎回恒例の挨拶に、私を守ったツンツン青髪の大柄な少年――サイア君ががっくり肩を落とす。
「それよりもサイア君」
「それよりもって……一体何――」
「じゃんけん!」
「ぽい――!」
――私はグー。サイア君……も、グー。引き分けだ。
「むぅ~……サイア君の記録が伸びてゆく……」
「多分人生全部費やしても俺に勝ち負けつけられる奴はいないよ」
「……サイア君のバーカ。アーホ。ツンツン頭」
「何で俺disられてんの!?しかも最後関係ないよな!?」
……ふふっ、やっぱりサイア君を弄ると面白い。これは『GOW』メンバーの共通意識だね。
「――&∋%¥¢♀≦◎○<″≠●¥!?」
さっき撃ってきた人が何か言ってるけど、私アラビア語分からないしなぁ……
「サイア君。何言ってるのか分かる?」
「『何者なんだよお前ら!?』だってさ」
「おお~、流石はアメリカ人だね!」
「いま出身地まったく関係ないよな!?」
……と、言っている間にもイラク人は銃を連射してくるが、サイア君が『水牢』でイラク人を囲っているため、私達に届く前に全て強力な水圧で粉々にされる。
「そう言えばサイア君、
「ああ、あいつらか?最前線で殲滅作業に入ってるよ。今頃鉄臭いレッドカーペットでも歩いているんじゃないか?」
「……物騒なアメリカンジョークだね」
「アメリカ人だからな……あ、そうだ。怪我人なら左の建物の三階にいるぜ。軽傷が7・ある程度が8・重傷が3だ」
「うん。ありがとう」
サイア君に例を言いつつ、言われた建物の中に入っていく。
カツカツと三階まで上がり部屋に入ると、中からは呻き声や悲鳴などが飛び交っていた。
(……うーん、思ったよりも騒いでいるね。さて、重傷の人は……いや、その前に日本語、もしくは英語を喋ることのできる人がいるかどうか)
「すみません!誰かこの中で日本語を話すことができる人はいますか?」
「Excuse me! Is there anyone who can speak English?」
日本語と英語、どちらともで呼び掛ける。すると、
「I can do it」
軽傷の中の男性が一人、
「良かった。話せる人がいて」
「ああ。それより私は何をすればいい?」
「取り敢えず今から重傷の人の手当てを行いますので、私の通訳係と補助をお願いします」
「了解だ」
男の人が了承してくれたので、私は重傷の人の下へ行く。
一人目……足を撃たれて動けないみたいだけど、止血さえしてしまえば数時間はもつ。
二人目……同じく止血さえしてしまえば問題ない。
三人目……腹部を何発か撃たれている。まだ生きているみたいだけど、直ぐに手術しないと手遅れになる。この人を先にした方が良さそう。
「すみません。私はこの人を手術するので、あなたは他の二人の止血を行ってください」
「ああ……だが、どうやって止血すればいいのだ?私には分からないぞ」
「大丈夫です。私が手術を行いながら指示するので、それに従って行ってください」
「そ、そんなことができるのか?」
「できます……『Link』」
男性と話ながら、少し力を入れる。
「亜空間に繋げて。患者の体半分を入れる穴とこちら側から覗く穴、手を入れる穴の三つ」
私が指示すると、黒い穴が三つ分現れる。
私はその一つの中に、腹部を負傷した人を入れる。
「こ、これは一体……」
「この空間は、時間の概念が無い空間です。この中に入れておけば、これ以上の流血を阻止できますし、手術中に目を覚ます心配がありません」
戸惑う男性に説明しつつ、私はその空間に予め入れてある手術道具を手にし、覗く用の穴に顔を向ける。
「まず、撃たれている人を落ち着かせて下さい。興奮していると血の流れが速くなり、止血が難しくなります」
「分かった」
(撃たれた所は……弾丸が通り抜けている物がほとんど。繋ぎあわせるだけでいい。埋まっている場所は……良かった、盲腸の所だけ。ここなら、人体にあまり必要としない場所だから、そのまま摘出。他の臓器への癒着が心配されるけど……私なら大丈夫)
男性に指示を送りながら、着々と手を動かし、縫い合わせていく。
「す、凄い……君は一体……」
「武偵です。それもSランクの……良し。終わり」
「は、早い。もう終わったのか?」
「はい」
手術が終わったので、穴から人を出す。
若干の手術痕は残るけど、それ以外は普通に動けるようになるよ。
「……良し。後は全てやりますので、あなたは他の人にこちらに来るよう呼び掛けてください」
「あ、ああ」
止血を男性から交代しつつ、お願いをしておく。
男性は了承し、皆に呼びかけにいった。
(本当に、話が通じる人が良い人で良かった。自分も軽くとはいえ負傷しているはずなのに)
二人分の止血を坦々と進めながら、負傷者に呼び掛けてくれている男性を見る。
(……良し。止血も終わった。後の皆もパパッと終わらせよう!)
こちらに来てくれている負傷者の人達を見ながら、私は一人気合いを入れた――
22:00
「ただいま~……」
「お帰り、シェイ」
「お帰り。夕食は食べたか?」
あれから数時間、治療や後始末などに追われ、気付けばもうこんな時間になっていた。
「うん、仕事先で食べてきたから大丈夫だよ」
アリアちゃんの手前、少しボカして言いながら、リビングのソファに座る。
「はふぅ……つかれたよぅ……」
「あまり無茶はするなよ?してほしいことがあったら何でも言ってくれ」
「……何でも?」
ソファに寄りかかるように体を横にしていたけど、零君の発言に体が反応した。
そして――両腕を広げ、赤ちゃんの『抱っこして』のポーズをとる。
「モフモフ」
「……はいはい」
意味を理解した零君は――バサッ。
その背中から、白い、大きな翼を出した。それを私は、思いっきり抱き締める。
モフモフ……モフモフ……
「……モフモフ♪」
ただただ、触ることだけに専念する。
触る度にモフモフとした感触がして、フワフワとした柔らかさに顔を埋める。
(もう羽毛布団じゃなくて零君の翼で寝たいよ……柔らかいし暖かいし気持ちいいし……あっ……なんだか、ねむく……)
フカフカした零君の翼に包まれたせいか、段々と眠たくなってきた。何とかして起きていようとしてみるけど、全然眼が覚めない。
「シェイ?眠たいのか?」
「……うん……」
「……仕方ないな」
目を開けるのも億劫になってきた時、体がフワッと浮く感覚がしたと思ったら、ゆりかごに乗せられているような感覚。
それがまた眠たさに追い討ちをかけることになり、私はそのまま体を預けた。
2:00
(ん……あれ……ここは……)
意識が覚醒し、薄暗い中私は目を開けた。
辺りを見渡すと、私のベッドで寝ていることが分かった。
(あれ……私確か、リビングで零君の羽を触っていて……)
頭の中から記憶を引っ張り出して、現在の状況を確認する。
(……もしかして、途中で寝ちゃって、零君にここまで運んでもらった……みたいだね)
記憶が途切れる前に感じた、揺りかごに揺られるような感覚。
――トクンッ
それを思い出した私の体に、体温以上の熱が帯びてきた。絶体今、全身が火照っている。
(零……くん……)
二段ベッドの上から降りて、下で眠っている零君の寝顔を見ると、スゥスゥと静かな寝息を立てて寝ていた。
――トク、トク、トク……
それを見ているだけで熱が収まるどころか、さらに高まっていくのを感じ、鼓動が速くなる。
(――ダメ。いつもそうだけど、零君といるだけで鼓動が速くなる……普段は零君から気付いてもらおうと、少しだけアピールしているだけ。だけど、寝ている今なら……少しだけ、気持ちを伝えても良いよね?)
いまにも破裂してしまいそうな鼓動を感じながら、寝ている零君に顔を近づける。
「零君、あのね?私、『あの日』からずっと零君のことが――」
零君の顔の側まで私の顔を近付けたその時――
「ううーん……」モゾッ
「――ッ!」
いきなり今まで動かなかった零君が動いたので、思わず顔を引っ込めてしまった。
零君は軽く動いた後、またスゥスゥと静かな寝息を立て始めた。
(……びっくりしたよ~。急に動き出すのはないよ、零君……)
思わず胸を撫で下ろしつつ、溜め息をついた。
(……ハァ、今ので何かやりづらくなったな……)
鼓動を抑えようとしても強く、速く打ち続けたまま。一向に治まる気配はない。
どうしようと思っていると、零君が動いたために空いているベッドのスペースが目に映った。
(……今日は色々あったんだし、良いよね――?)
そう思った私は、きしっ……と零君の寝ているベッドに腰掛け、そのまま布団の中に入り、零君に抱きついた。
……クン、トクン、トクン――
抱きついた零君の体から、規則正しい鼓動が感じられ、そこに零君がいるということを感じさせてくれる。
(……やっぱり、零君が気付いてくれるまで、この言葉はとっておくよ。だから――早く気付いて、ね?)
……トクン、トクン――
いつの間にかうるさかった私の鼓動は治まり、ただ零君の鼓動を感じながら、再び目を閉じました――
翌朝。たまたま早く起きたアリアちゃんに見られて一悶着あったけど、それは別のお話。
これが私、シェイル・ストロームの、
何気ない、ある日の一日でした――
はい、どうでしたでしょうか。今回はオリジナルヒロインのシェイの表の顔と裏の顔をお送りしました。
これを機に、少しでもシェイのことを、そしてこの作品のことを好きになって頂けると幸いです。
ところで……皆様はどれくらいの文字数が読みやすいでしょうか。今はだいたい4000くらいにまとめてますけど、要望があったら増やすかもしれません。
そして檸檬_lemon様に評価10を頂きました!ありがとうございます!
では、ごきげんよう。(´・ω・`)/~~バイバイ。