球磨川禊の幼馴染 作:めだかボックスアニメ3期まだですか
神水零度。一年十三組所属。
やはり例に漏れず
というのも、彼女は基本的に通学が免除されている十三組の生徒の中で、黒神めだか──めだかちゃんと、それから現在入院中の風紀委員長、モンスターチルドレン
無遅刻、無欠席。
それどころか始業のチャイムの1時間前には必ず着席している。
学校生活においても彼女は一目置かれていて──それはめだかちゃんを除き十三組唯一の皆勤賞だからというのもあるのだろうが──ともかく、注目を集め、衆目を集めている。
職員室の教員方からの評価も高い(十三組なのに登校しているからなのか?)。学業の成績も生半可なものではないとか。
生徒会会計職の
俺が方々の部活を回っていた時にもその名は聞いていたから……轟いていたから、やはり噂程度の話では済まないのだろう。
下世話な話になるが、容姿も端麗。ただでさえ美男美女連中が多い箱庭学園においても、
もっとも、それが彼女の見た目からなのか、それともその
余談、というか与太話にはなるが。
零度さんが4月の生徒会長選挙に出場していた場合、めだかちゃんと票を分け合って接戦になっていたのではないか──なんて、そんな噂もまことしやかに囁かれている。
めだかちゃんの幼馴染である俺、人吉善吉としては、流石に遺憾の意を表したいところではあるが。そんなぽんぽんと完璧超人がいてたまるかよ。
てなわけで、この俺、平凡な人吉善吉からしてみると、
……そうでなくとも、今は
「──と、そう思ってたんだけど……いやはや、人生ってのはどこでどんな縁が生まれるのか分からねえな……」
「ええ、そうですね人吉くん。もちろん私としても、まさか生徒会の方々と関わることになるだなんて、夢にも思っていませんでしたけど」
「まあそうでしょうね。まさか
「あら、いわゆる夢見心地という奴でしょうか? でしたら、そうですね。私が頬をつねって差し上げます」
「いや……今のはものの例えっつーか、単なる比喩というか……」
どういうわけか、俺は突然零度さんに声をかけられて、しかも「すみません、人吉くん。生徒会室はどちらでしたっけ?」なんて言われてしまったものだから、案内をしないというわけにもいかなかった。
いや本当、流石の俺でもイベント続きで参っちまうぜ。零度さんに声をかけられた時の、周囲にいた生徒たちのあの視線! 居心地が悪いとか、そんなレベルではなかった。
「ふむ、つねらせてはもらえないのですね……でしたら、人吉くんが私の頬をつねってもらえませんか?」
「えっ!? いやっ、いやいやいや! そんなことしたら、俺は明日から教室に机と椅子、それから居場所がなくなるんですけど!?」
「大丈夫です、私が許可したことなので。あと私、
「そんなカミングアウトを白昼堂々学校の廊下なんかでするんじゃねえよ! ていうかそんなことはどこでも明らかにするな!」
「うふふ、まあ冗談です。それはそれとして、ようやくタメ口になってくれましたね、人吉くん」
「えっ? あっ、ああ……」
「やっぱり同級生ですからね。敬語で接されるというのは、思いの外寂しいものですから」
いや、自分は敬語のままなのかよ。
そうも思ったが、しかし口に出すような真似はしなかった。
零度さん──零度は儚げに微笑みながら「かきたくもない恥をかいた甲斐がありました」と、俺に向かって当てつけみたいに言い放った。
……意外といい性格してるぜ、こいつ。
「そういうわけならこっちもタメ口で行かせてもらうが──あんた、一体何の用があって生徒会室に向かおうとしてたんだ? そこのところ聞かせてもらえないと、俺も適切な対応はできねえよ」
「おや、意外とがつがつくる
「からかってたのかよ、分かりづらい……」
「よく言われます。ただまあ、そう言われるのにも慣れましたね──
何でもないようにそう口にする零度。
一瞬呆気に取られたが、しかしまあよくよく考えてみれば、異常集団十三組である以上は、
「覚えてるっつーか、あんな出来事の後なんだ、忘れられるわけがないっつーか……ともかく、昨日関わったばっかだからな。それで?」
「実は私、その時に目安箱へと投書していたのですよ。『せっかく静かな教室で一人本を読めるという環境が整っていたのに、このままだとそれが台無しになりかねません。ですので生徒会の皆々様には、早急に
「見かけによらず物騒!?」
……ん?
あれ、おかしいな。
零度の言っていることが本当だとするのならば、目安箱に投書ができていたのならば──
少々の疑問をもって、零度の顔をちらと見る。すると彼女は、こちらの意図など
……なんだよ、高嶺の花だ何だと言われてるみたいだったが、あるんじゃねえか、可愛らしいところ。
「ええ、まあそういうことなのです。ちょっと前々から気になっていたので、人吉くんに声をかけさせてもらいました。ごめんなさい」
「ん……まあ、別にそれは構わねえんだけど……でもまたどうして? 正直言って、俺はあんたみたいな人に声をかけられるほどの人間じゃないと自負してるんだが」
「『自負』だなんて、そんな言葉を使わないでください、不愉快です。戦う前から勝手に負けたつもりになられても困ります」
「いや……これもただの比喩──つーか、一般語なんだけど……」
「冗談です。小粋なアイスブレイクみたいなものですよ……それで、私があなたを前々から気にしていた理由はですね。
「と言うと、つまり?」
「つまりも何も、そういうことです。私は黒神さんとも多少の交流があるつもりですけど、しかし彼女、幼少期から共にいるというあなたの話は中々してくださらないので」
……そりゃあまた、随分な理由で。
しかしどう答えたもんかな、この質問。俺としてはさっき見知ったばっかの相手に、俺の
とか、そんなことを考えて、そしてどうやって質問をいなしたものかと、逃げの方向に舵を切り始めたところで。
「おや、着いてしまいましたね、生徒会室」
零度がそう言ったものだから、俺は視線を上げる。すると確かに、俺達の眼前には見慣れた生徒会室の扉が鎮座していた。
……
まあいいか、話し込んでいたからその分だけ歩いて──歩き終わっていたのだろう。
「ここまで案内ありがとうございました、人吉くん。感謝ついでにもう一つ頼まれてもらいたいのですが、いいですか?」
「えっ? ああ、うん。これでも生徒会の末席を汚す身だからな。何か悩み事や相談事があるなら、できる限り応えるつもりだよ」
「それでは、遠慮なく。私、これで案外人見知りなところがありまして」
「いや、流石にそうは見えないんだけど……」
「そうなんですよ。女の子に恥をかかせないでください、ただでさえ私は恥ずかしがり屋なんですから」
「そうも見えねえんだけど!?」
「と、も、か、く! 一人で生徒会室に入るのは恥ずかしいので、
零度は弱々しく、上目遣いでそう頼み込んできた。……まあ別に、俺としては断る理由もないから、別にいいんだけど。
俺はそう考えて、ひとまず思考は打ち止めにして。
「まあそれくらいなら、頼まれるまでもないけど──」
このように答えた。
すると喜色満面の笑みを浮かべ、「本当ですか、ありがとうございます!」と返す零度。
「それでは少し待ってくださいね。入室に際して、
「……? おう、分かったよ」
意図は分からなかったが、しかし十三組に名を連ねているにしては、えらく理性的だなあ──なんて、この時の俺は、間抜けにもそんなことを考えていたわけだが。
──恐らくは。
──多分だけど。
──今となっては。
──記憶をたどれば。
──振り返ってみれば。
ここで頼み事を受諾したことが。
俺にとっての、
「
「……………………えっ?」
俺はたまらず振り返り、そして。
そこに零度が立っているのを目撃して、一瞬経過してから──溢れ出した、
溢れ出した、
ここまで来て、俺はようやく。
そこにいるのが、
「ッ!? お前、誰っ──」
お前誰だ。
その言葉を最後まで紡ぐことは、俺にはできなかった。
それは何故か? 理由は単純。
「──っぁ!?」
「
爆笑。
高笑い。
呵呵大笑。
この世全ての笑いを詰め込んだみたいに、楽しそうに、それはもう愉しそうに笑いながら、俺の顔面を鷲掴みにした零度に似た何者かは。
そのまま、俺の身体をぶん回し、生徒会室の扉にぶち当てて。
俺の背中で扉を破壊しながら。
生徒会室に
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