球磨川禊の幼馴染   作:めだかボックスアニメ3期まだですか

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第4箱「決まっているじゃないですか」

 

 

 私から見て、神水零度という少女は、見た限りでも、診た限りでも、いわゆる異常(アブノーマル)だというのが、正直なところだった。

 

 13年前──球磨川くんと()()したあの日。異常専門病院こと箱庭総合病院で、私、人吉瞳は神水ちゃんのことを()()した。

 

 診察結果。確かに、異常(アブノーマル)ではあった。とは言っても、彼女はどこかがおかしかったとか、何かがおかしかったとか……そういった異変を有していたわけではない。

 

 礼儀正しく、受け答えもはっきりしていて、絵に描いたようなお利口さん。

 

 会話の内容も多岐に富んでいて、小粋なアイスブレイクなんかも挟んじゃって。「先生はスポーツが好きですか? 私は生まれて初めて五輪(オリンピック)の中継を見ましたけれど、あんな風に頑張っているアスリートの方々を目にすると、私も何らかのスポーツに手を出してみたくなってしまいます。そうだなあ、格闘技とか、萌えますよねえ」だなんて言うものだから、私はそれに「それならサバットなんかどうかしらん? もっともあれは護身術だけれど、神水ちゃんみたいに可愛い女の子なら、覚えといても損はないと思うわよ! それこそ、ギャップ萌え的な意味でも!」と返したんだっけ。

 

 つい先ほど『診察』と形容したけれど、しかし実際のところは、ほとんど女子会(ガールズトーク)だった。

 神水ちゃんは中々の聞き上手さんでね。私が何か話すと、それに感心したようなリアクションを取ってくれた。相槌を打ってみたり、「あー、確かに分かるかもしれません」みたいに同意を返してくれたり。

 

 今でも会話の内容を覚えているくらいだから、私としてもやはり楽しかったのだと、そう言わざるを得ないのよね。

 

 理性的で、理知的で、理想的。

 まだ2歳の女の子なのに、神水ちゃんはほとんど成熟していると言ってもよかった。

 

 そう、ほとんど、成熟していた。

 肉体はともかくとして、()()の方が。

 

 

 ──()()2()()()()()()()()()

 

 

 神水ちゃんが異常(アブノーマル)な理由は、そこだ。

 そのことに気がついたのは、診察が終わり、次の診察までの合間に存在するわずかな休憩時間。

 

 当時は今より若かったとはいえ、しかし私だって一端(いっぱし)()()()()()だった。

 

 だというのに、さっきの有様はなんだ?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 いいや、向けなかっただろう。

 というよりかは、向けさせてもらえなかった。

 

 後になって知ったことだけど。どうやら神水ちゃんは、話の中で仄めかしていた、幼馴染である男の子の()()()()として、ついでに受診しただけだったらしい。

 

 なんだ、それは。

 いくらなんでも、ありえない。

 

 私がまず疑ったのは、神水ちゃんの年齢が虚偽申告であり、実際にはもう少し上の年齢(4歳くらい)だという可能性。

 結論。神水ちゃんは申告通り、確かに2歳だった。ついでに言ってしまえば、彼女が先ほどの診察(雑談)で放った言葉の全てに、嘘がなかった。

 

 そりゃあそうよね。

 だってあの子、肝心のところは()()()()()()()()()()()()()んだもの。

 

「それで、今日はどうしてここを受診したのかしら?」

 

「ええと。なんと言ったらいいのか分かりませんが、幼馴染のおにーちゃんに『せっかくだし診てもらえば?』と言われたので」

 

「あら、そう? それじゃあ神水ちゃん、何か最近困っていることはある? どんな些細なことでもいいのよ」

 

「あっ、それならあります。えっと、その……。うう、やっぱり恥ずかしいので、仔細はぼやかしてお話ししてもいいですか……?」

 

「ええ、もちろん。あんまり根掘り葉掘り聞き出しても、それはそれで逆にストレスになりかねないから……加えて言うと、当然話したくないようなことなら、無理に話さなくても──」

 

「実は私、ほら、さっき言った幼馴染のおにーちゃん、いるじゃないですか。その人のことが、最近ずっと、その、気になってて……」

 

「……まさか、恋のお悩みとはね。うん、いいわよ、その調子で話してみて! こんなおばさんが最近の子の力になれるかは分からないけど(以下省略)」

 

 という感じで。

 私としても自覚はなかったのだけど、心療外科医である私が、むしろ2歳の子供相手に()()()()()()()()()()

 

 なんでもないほうに。

 どうでもいいほうに。

 

 ……ただまあ、強いて言うのならば。

 彼女が異常(アブノーマル)だったのは、精神が既に()()()()()()()()ことのみだった。あの子みたいなのを早熟って言うのかしらね。

 

 だから私も、当時はさして問題視しなかった。

 現状それで困っているようなこともないようだった(流石にその辺りは診察で看破している)ので、私は神水ちゃんをそのまま送り返した。

 

 そして、それから13年。

 つまりは、今日この日この時。

 

「っ……()()()()()()()()()()()()()……?」

 

 私、元心療外科医こと人吉瞳は。

 善吉くんを武器みたいに振り回して生徒会室に白昼堂々侵入してくる、変わり果てた神水ちゃんと()()した。

 

 ──(いや)、違う。

 よく似ているが、あれは神水ちゃんではない。

 

 ならば、目の前の彼女は、一体誰だ…………?

 

「なっ……善吉、を、()()()()()……!? おい、神水同級生! 貴様一体、どういう了見で……」

 

「──イィイイイイイイィッ、ヤァアッフウウゥウウウウウゥゥゥゥ!!!! つーわけでどーも生徒会執行部の役員諸君、スーパーマリオのモノマネしながらド派手に登場!! サプライズはお気に召したでしょうか、手土産は善吉クンだよ!! ほら受け取れ丁重に乱雑に丁寧に乱暴に投げ渡してやっからさ!! ぎゃはははははははははははははははははははは!!!!」

 

「ッ!? 神水同級生──じゃない……!?」

 

 かろうじて反応できたのはめだかちゃんだけ。阿久根くんや喜界島ちゃんは、動揺してしまってまるで動けていない。

 

 ……本当なら、すぐにでも神水ちゃんの細首に足蹴りを叩き込んでやりたい気分。私は母親(モンスター)だから、可愛い息子を血塗れのボロ雑巾みたいにされても黙っていられるほど、まだまだ人間できちゃいない。

 

 だけど同時に。

 今の神水ちゃんは、()()()()()()()()()()

 

 不鮮明、極まりない。

 不透明、極まりない。

 不明瞭、極まりない。

 

 不明、不明、不明。何もかもが曖昧模糊としていて、掴みどころがまるでない。

 

 理性的とは正反対に暴力的。

 理知的とは正反対に感情的。

 理想的とは正反対に壊滅的。

 

 反対、反対、反対。何もかもがあまりに意味不明で、捉えどころがまるでない。

 

 不気味で、素朴で、かつ壊れている。

 無理矢理形容するのならば、今の神水ちゃんはそんな感じ。

 

 そう、まるで。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──

 

「──ああ、そういうことね」

 

「んあ? えっと、一体全体何をどーしたらこんなとこにランドセル背負ったちびっ子が迷い込むんだ? んー、私が頼まれてんのは生徒会連中に挨拶してくることだけだからなー……ていうか、どっかで見た気がするんだよな──」

 

「神水ちゃん、あなたもしかしてもしかすると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 当てずっぽう、ではない。

 13年前のあの日から、ずっと疑問ではあったから。

 

 神水ちゃんは「幼馴染のおにーちゃんに推奨されて受診に来た」のだと、確かにそう言っていた。

 

 いやいやいやいや。

 その『幼馴染』って、十中八九が球磨川くんでしょ。そしてその球磨川くんといえば、昨日箱庭学園に転校して来たばかり。

 

 まず間違いなく、()()()()()()()()

 

 そんな確信を持って、私は微笑みながら、神水ちゃんに近付いてみる。もしこの子が神水ちゃんのままならば、きっと私のことも覚えているはず。

 

 覚えているなら、付け込むだけ。

 忘れているなら、刻み込むだけ。

 

 打算込み。それで上等。

 私が今やるべきは、銃後に構えることではなく、こうやって矢面に立って子供達を守ること!

 

 とまあ、そんな感じで、私はかなりの覚悟をもって、神水ちゃんと相対したのだけれど。

 直後、神水ちゃんは「あーっ! 思い出した思い出した完全に思い出した! アイ・リメンバー・ユー!!」と叫び、私の頭に右手を置いた。

 

 すわ私も善吉くんのように、ぎゅっと握り込まれてしまうのかと思ったんだけど……。どうやら私の読みは全くの的外れもいいところだったようで。

 

「いやーっ、お久しぶりじゃんかよ瞳せんせー! 13年ぶり、元気してた? ってどっからどー見ても元気だわな、ぎゃははは!」

 

「…………」

 

「あん時はありがとね、いや本当に! 大好き! 超好き! 愛してる──けど、流石に無駄な破壊は趣味じゃねーし、ここはぐっと堪えてあげちゃおっかなー!」

 

 ……神水ちゃんは満面の笑みを浮かべながら、私の頭を撫でくりまわしてきた。

 

 ちょっと、ごめんね。

 流石に私でも、理解が追いつかない。

 

 見回してみると、どうやらめだかちゃん達(目を覚ましたらしい善吉くん含む)も同様の感想を抱いているようで。

 いやまあ、同様の感想というか、動揺の感想なんだろうけど。

 

「えっ、と……神水ちゃん──神水零度ちゃんで、合ってるのよね? 随分とその、様変わりしているみたいだけど」

 

「あー、いやいや、それがそういうわけでもねーのよ。つっても()()()()()()()()なんだけどさ」

 

「……神水同級生。さっきから貴様の発言はいちいち要領を得なさすぎだ。善吉をこんな目に遭わせている以上、勿体ぶらず答えてもらいたいものだな」

 

「……あー、てめえが零度ちゃんが一目置いてるとかいう黒神めだかちゃんか。長い付き合いになるだろーから」

 

 直後、生徒会室に轟ッ! と暴風が吹いた──厳密には、それはめだかちゃんが神水ちゃんの眼前で、拳を寸止めした際に生じた()()だった。

 

 ……めだかちゃん。流石にここでことを交えるのはまずいわよ。

 なんてったって神水ちゃん、おそらく不意打ちとはいえ、そして一瞬だったとはいえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「次は当てる。善吉を先に傷付けたのは貴様の方なのだから、文句などあるまい?」

 

「……ぎゃは。これ、どういうつもり?」

 

「どうもこうもあるか、()()()()()()()

 

「なっ……めだかさん! ひとまず落ち着いてください! 話の全貌がまだ明らかになっていないのに──」

 

「阿久根書記。()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「──ッ!! それ、は……」

 

 阿久根くんの静止も正論で返り討ち、か。

 この展開、ちょっとまずいかもしれないわね……。

 

 というのも。

 さっきから神水ちゃんの表情が。

 

 まるで()()()()()()()()()()()()()()()()なんだもの。

 

「そういうこと、そういうこと、そーうーいーうーこーと、ね。でも私、別に生徒会の皆様方に挨拶しに来ただけなんだけど?」

 

「それならば何故善吉にあんな狼藉を働いた? まるで理屈が通っていないだろうが」

 

「ぶつぶつぶつぶつうるせーなめだかちゃんよお。私ん中では理屈が通ってんだから何でもいいだろーが」

 

「……おい、ちょっと待てよ零度。流石に俺の方としては、何の理由もなく一発ぶち込まれたなんてのは納得いかねえ。せめてどういう理由で──」

 

「ん? あれ、ああ……さっきからめっちゃ呼び間違えられるなーって思ってたけど、そういえば自己紹介まだだったっけ」

 

「──は? いや、どういう、ことだ……」

 

「だーかーら、零度ちゃんと私は全くの別人ってこと。零度ちゃんは私の妹だよ。私は神水冥土っつー名前だから、そこのところよろしくね、長い付き合いになるだろうし! ぎゃは☆」

 

 いや、そんなにいきなりギャルっぽくなられても……。

 

「いや、そんなにいきなりギャルっぽくなられても……」

 

 善吉くんとも変なところで感想が揃う始末。やっぱり親子の血って争えないのね。こんなことで実感したくなかった。

 

 じゃなくて! そうじゃなくて、冥土ちゃんは今何と言った!?

 

 ()()()()()()()()()()()だと、確かにそう言った、そう言っていた!

 そして善吉くんは冥土ちゃんのことを「零度」と呼び間違えていた……ということは、導き出される答えは一つ!

 

「神水冥土ちゃん──だったかしら?」

 

「そうそう、超絶美少女冥土ちゃん! 瞳せんせー、ようやく名前呼んでくれたな! 好きっ! てか、好き過ぎっ!!」

 

「……そりゃどうも、ありがとう。で、冥土ちゃん。あなたつまり、()()()()って認識で、いいのかな?」

 

「正解正解大正解っ! 流石は心療外科医の瞳せんせー、更に好きになっちゃうぞ! あ、ちなみになんだけどさ、善吉クンを持ち上げてぶん回した理由は、ほら、道案内してくれたじゃん?」

 

「ま、まあ……したにはしたけどよ……」

 

「親切すぎて惚れちゃったから、その照れ隠し! なあぁあああぁんちゃってええええぇぇぇ!! ぎゃははははは!!」

 

「どうしよう喜界島、ぜんっぜん納得いかねえ……」

 

「う、うん……あたしも納得できない……てゆーか、理解もしたくないよ、人吉……」

 

 二人は何気なく、まるでそれが悪いことみたいに捉えてるようだけど、しかしこの場合に限り、それで正解なのよねえ。

 

 間違いない、冥土ちゃん──この子、過負荷(マイナス)だ。

 それも、擬きでもなんでもない、正真正銘、掛け値なしの過負荷(マイナス)……!

 

 だから冥土ちゃんは、二人と、それから阿久根くん辺りには、到底理解も及ばない存在。

 それでいいの。それで、いいのよ。

 

「……つーかさ、つーかつーかつーかつーかつーかめだかちゃん! てめえいつまでこの私に拳を突きつけてるつもりだ、いつまで敵意を向けるつもりだ?」

 

「要件を話すまでだ、神水同級生。貴様の話を信用するのならば、つまり貴様は()()()()()()()()使()()ということになるのだろう?」

 

「だからずーっとそうだって言ってんじゃねーかよお。そしてあくまでも『挨拶に来ただけ』だってのも、ずっと言ってるつもりだぜ?」

 

()()()()()()()()。球磨川禊という男が、まさかたったそれだけのために貴様ほどの人間を寄越すはずがない」

 

「話が分からねー奴だなあ、めだかちゃん。それともあれか? 私はまだ何にも悪いことしてねーのに、『疑わしい』ってだけで排除に打って出るつもりなのかよ」

 

「無論だ。ことあの男に関わるあれこれについて、早すぎるということはないのだからな」

 

「──あ、そう。さいですか、そっかそっか、そーですか。血の気が多くて嫌んなるぜ……。あー、どーすっかな。どーしよーかな、どーしてやろーかな」

 

「…………」

 

 ……苦い思いをする前に、この辺りで止めておきましょうか。ここから先は、今のみんなには()()()()

 

 とはいえ、そう簡単に止まってくれる子でもないはず。いざとなれば、心療外科手術(パッチワーク)も視野に入れないといけないわね……。

 

「あー、あーーーー、あーーーーーーーー。なんべん言っても信じてもらえねーなら、()()()()()。そんなに虐殺がお望みなら、てめえの要望通りに──」

 

 タイミングは、今!

 私は冥土ちゃんの出鼻をくじくために、彼女の目の前へ移動し──ようと、したところで。

 

 突如。

 ふっ、と。

 ()()()()()()()()()

 

「──駄目じゃないですか、冥土おねーちゃん」

 

「……えっ?」

 

「私達が禊おにーちゃんから頼まれたのは、あくまでも()()()なんですから。破壊や虐殺は、また今度です。ねっ?」

 

「貴様、もしかすると……私がよく知る方の神水同級生か?」

 

「ええ、はい。そうですよ、黒神さんがよく知る方の、神水零度です」

 

 なるほど、意図的(マニュアル)な交代ができるタイプの二重人格……てっきり恣意的(オートマチック)な交代なのだとばかり思っていたけれど。

 

 ……そうなってくると、逆に喜ばしいことなのかもしれないわね、二重人格、分裂人格も。

 

 異常(アブノーマル)過負荷(マイナス)

 それぞれの強度は計り知れないけれど、平均はゼロに近い。とりもなおさず、()()()()()()()()()()ということだから。

 

「善吉くん、大丈夫でしたか? 冥土おねーちゃんってば、照れ隠しが熱烈というか、言うなれば激烈なので」

 

「……おう。この程度の怪我なら、まあどうにでもなるから、零度が気に病むことはねえよ」

 

「えっ? 嫌ですね善吉くん。私は全然これっぽっちもほんの一欠片ほども気に病んでなどいませんから、安心してください」

 

「俺としては少しくらい気に病んでほしいんだけど!?」

 

「私はヤンデレですから、それでいいですか?」

 

「ひとっつも『それでいい』要素が見当たらねえんだけど!!」

 

「冗談です。小粋なアイスブレイクみたいなものですよ」

 

 そう言って零度ちゃんは、しとやかに笑う。

 

 ……母親としては複雑ね。息子がこんな風に弄ばれている姿を見るだなんて。

 

「ところで黒神さん。今は零度ちゃんの方なので、拳を収めてほしいのですが」

 

「うむ。見知った神水同級生の方であれば、大人しく拳を収めるのも(やぶさ)かではない」

 

「黒神さん、そこはちゃんと話聞いてあげるんだね……」

 

 喜界島ちゃんの言うことも、もっともだと言わざるを得ない。

 だって、ねえ? 確かに今は零度ちゃんの方に交代しているようだけれど、それでも少し前までは、その人格(キャラクター)は冥土ちゃんの方だったわけで。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 少なくとも2歳の時点で、一応はプロの心療外科医であったこの私を欺くことができた、零度ちゃんという怪物(アブノーマル)を。

 

 やはり私の所感としては、その辺り、どうにも()()()()()()()()()()なあ……。

 

「さて、と。随分とお騒がせしてしまいましたが、結局のところ私が『ご挨拶』に来た、というのは本当なので。用を済ませたら、私はすたこらさっさと退散することにいたします」

 

「……零度さん。少し俺から聞きたいことがあるんだけど、質問しても構わないかな?」

 

 ここで声をかけたのは阿久根くん。この子も大概、切り替えが早いのよね。

 

 流石は元()()()だ──と、そう形容するのは、もしかすると阿久根くんに失礼かもしれないけれど。

 

「ええ、構いませんよ、高貴くん。私に答えられることならば、なんでも答えて差し上げます」

 

「ありがとう、それじゃあ遠慮なく──きみと冥土さんは先ほどから『ご挨拶』をしに来たのだと、そう言っているけれど」

 

「『()()()()()()()()()()』、ですよね? ええ、分かっています……そして。そんなの、決まっているじゃないですか」

 

 零度ちゃんはそう答えて、そしてそれから、こう続けた。

 

「私、この度クラスが変わることになったので。黒神さんと同じ教室で女子会(ガールズトーク)に花を咲かすということも出来なくなりますから、『お別れのご挨拶』に来ました」

 

「……ほう、なるほどな。『ご挨拶』というのはそういう意味だったか。それで、変更後のクラスはどこだ? 十一組(体育科)か、それとも十二組(芸術科)か?」

 

 合点がいったように頷きながら、そう問いかけるめだかちゃん。

 

 確かにそこは、肝心で、そして要だ。そして零度ちゃんは、ただでさえ友人の少ないめだかちゃんの、数少ない友人らしい。

 

 だからめだかちゃんが、そこを気にしてしまったことを、まさか責められるはずもない。

 

「うふふ、それは、ですね──」

 

 だけど、それでも。

 

 やはりめだかちゃんの疑問がきっかけとなり、直後()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは、疑いようもない事実だった。

 

 

「──()()()()()()()。昨日転校してきたばかりの禊おにーちゃんを主軸に据えた、(アンチ)エリート集団、過負荷(マイナス)の寄せ集めクラスですよ」

 

 






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 前回2件の評価が入ってまして、そのうち片方がまさかの10評価だったので、狂喜乱舞していました。

 というわけで、感想や評価等もらえると喜びます。
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