(挿絵あり)カルトスーパーの次は学園ハーレム 作:アウトレットホール
_今一番言われたいセリフです。
日本に到着して間もなく、白いワゴン車が俺たちを出迎えた。
こんな寝心地の悪いものに縛り付けられてなけりゃ観光気分で最高だったろうさ。
「しっかし、何もここまでする必要はなかったんじゃ…」
「私語を慎め。こう見えても向こうじゃかなりの問題児だったらしいんだ。拘束がなけりゃ俺たちもどうなるか」
「うげ、そうなのか。人は見かけによらないんだな」
警官と医療スタッフが話をしながら俺ごとストレッチャーをワゴンに運び込む。
何を言ってるかは分からないがこちらを見る表情から察するに気分のいい会話はしてないんだろう。
早く一人になりたい…。
なんだったら今ここで殺してもらっても構わない。
もうどうでもいい。世界がどうなろうと_
『中継です。巡りが丘駅周辺で暴行事件が発生しました。今も現場は騒然としています。
近隣住民の皆様は至急避難するように_』
***
「タケヤさーん」
「ん?」
「今からどこに行くの?」
「教室!」
「…教室逆だよ?」
「うそぉ!?いそげー!!ありがとう!じゃあねー!」
しばらく廊下を歩いてから言われたのでガビーンとなる。
クスクスと笑う女子学生に別れを告げて逆方向に一直線!!
私は丈槍 由紀!
学校が好きな高校3年生!先輩なのですえっへん!
今日もいつも通り学校に来てめぐねぇと…あ!先生のことね!
めぐねぇとお話をしようと思ったのに…
「いつもはめぐねぇと一緒に来てたから間違えちゃった…。めぐねぇどうしたんだろ?」
廊下を走りながら思考を巡らせる。
めぐねぇとは朝のこの時間なら廊下でバッタリ出会うのに今日はそれがなかった。
そのせいで教室の場所を何度も間違えてしまい、すっかり教室に到着するまでギリギリの時間になってしまった。
めぐねぇがいない原因…。なんなんだろう。
うーん、お寝坊?それとも朝ごはんが美味しすぎて夢中になった?
あ!猫さんと戯れてる?!
キーンコーンカーンコーン
「って!考えてる場合じゃなかった!!いそげー!!」
うん!もしかしたら教室にいるかもしれないよね!
…あ!だとしたらめぐねぇに怒られちゃう!!
ダダダダ!!と更に加速し、三年C組と書かれたプレートが掲げられている扉の前で急停止!!
ふー他の先生に見られなくてよかったー。
ガラガラ!
「おはよう!」
「おっすー、遅刻だぜー…。と言いたいところだが、それはめぐねぇもみたいだな」
掃除用具ロッカーがある窓際から一番近い場所の席のチョーカーを首に巻いた女の子がヒラヒラとこちらに手を振る。
私の席はあの子の隣だ。
トコトコと自分の席に向かいながら訪ねる。
「あれ?めぐねぇまだ来てないの?」
「んー、あれじゃね?男でもできた」
「まっさかー!めぐねぇに限ってー!!」
席に座ってからププーと口元に手を当てて笑ってしまう。
だって、想像があまりにもできなかったから。
「おまえ…何気にひどいよな」
チョーカーの子が私の様子を見て呆れながら言う。
一応想像してみる。
めぐねぇと男性がデートしてる状況を想定した。
「ね…?今日どこか変わったと思わない?…んもう、髪を切ったのっ。
ちゃんと見てよ…」
「ぷっははははは!!」
だめ…!!想像しただけで笑っちゃう…!!
だって面白すぎるよこんなのっ。
「いや笑いすぎだろっ!?っとにひでぇやつだな…」
隣から鋭いツッコミをビシッと受け、余韻が残りつつもようやく笑いが止まる。
我ながら自分の行動をひどいとは思った。でも事実面白いから反省はしてないっ。
…ただ、めぐねぇにもし好きな人ができたら私はそれを全力で応援したい。
それってとっても素敵なことだもん。
私に構ってくれなくなるかもしれないのはちょっとヤだけど…。
「んだよ。大笑いしたかと思えば急に真面目な顔しやがって」
「私はいつでも真面目なのですっ」
ビシィ!(=ω=)
とカッコを付けてみる。
「さっきまでバカにしてたやつがよく言うよ」
ガラガラッ
「おらー、お前ら私語はやめて席に付けー。
慈先生はちょっと遅れてるらしいから先に授業はじめんぞー」
教室のドアが開くと英語の先生が入ってくる。どうやらもうそんな時間らしい。
すると、さっきまで談笑してた生徒たちがすぐさま席に戻る。
結局、朝のHRでめぐねぇが来ることはなかった。
さっきまではすぐに来るだろうと思っていたのに…。
ちょっと心配になってきたかも。
「よーし席に着いたな。今日は前にやったテストの答案用紙を返すぞー。40点未満は補習だからそのつもりでな」
えー!!と一同が叫ぶ。
そして、教卓まで生徒が一人ずつ呼ばれ答案用紙を渡されていく。
正直、今ので心配が吹っ飛んだ。
「うー…自信ない…。補習確定だよー…」
「ドンマイ」
机に突っ伏すとポンと肩に手を置かれる。
うー私は日本人だから英語なんて学ばなくても生きていけるよー…。
するとポンポンとさらに肩が叩かれる。
「そんなに叩かなくてもわかってるよー…」
「いやそうじゃなくてさ。なんだと思う、あれ…」
「?」
窓の外を見て私に問いかけてくる。
なんなんだろう?外には今誰もいないはずじゃ…。
立ち上がって窓に行き、外のグラウンドに目を向けて見る。
あれ?誰かいる…。
誰かがヨタヨタと覚束ない足取りでグラウンドを歩き回ってるのが見えた。
「運動部かな?朝練とは感心感心っ」
「にしては様子がおかしくないか…?そもそも今って授業_」
「こら!そこっ!何をしている!」
ついつい席を立ってしまったのでさすがに先生に怒られてしまう。
ご、ごめんなさい…。と言いながらトボトボと席に戻ろうとする。
しかし、それでもまだ何か話があるようで
「お、おい…!」
「もうっ授業中なんだからだめだよっ」
「そうじゃなくてめぐねぇ!めぐねぇの車だよ」
「え!」
大丈夫だったんだ!よかったー…!
また窓の外に目を向けると正門から入ってきたのは確かにめぐねぇの車だった。
少し窓から乗り出して手を振ってみる。
「おーい!めぐねぇー!」
「なんかやけにスピード早くね?」
しゅばっと手を上げる。
「先生!!トイレ!!」
「先生はトイレじゃありませ_」
ピューン!!!!
「って行くの早っ!!?」
返答も聞かずに私はカバンを背負って教室を飛び出す!
カバンには昨日、買い物中に見つけたハートのペンダントがあるのだ。
とてもかわいかったからつい買ってしまった。絶対めぐねぇに似合うはず!
いつも十字架のネックレスだからイメチェンイメチェン!
3つセットだったから私とめぐねぇでお揃いにもできるもん!
…あと1つはどうしよう?まぁいっか!
「ほっ!ほっ!ほっ!」
ぴょんぴょんと軽快に階段をかつてないスピードで駆け下りていく。ふはは私は止められないぞっ。
めぐねぇ遅いよー!って言ってあげるんだ。
それに対して「だから佐倉先生ですっ」といういつものやりとりから私の今日はようやく始まるのだ。
それを考えたら居ても立っても居られない。
プレゼントも渡したらきっと喜んでくれるはずっ。
2階にたどり着き階段の踊り場に出ると1階までの階段の途中に誰かいた。
ま、まさか私以外にもめぐねぇを狙ってる人が!!?ってそんなわけないかーと一人ツッコミをしているとその人はこちらに振り向く。
アァ…オォ…
え?_
私はその場で固まってしまった。だってあまりにも怖い顔をしていたから。
だけど、顔を見るや否やこんな反応をされたら相手を傷つけてしまう。
普通に話しかけてみよう。
オォォ…アァァ…
グチャ_グチャ_
「えっと、私…今から先生を迎えに行かないといけなくて…」
グチャ_グチャ_
「あの、なんでこっちに来るの…?もしかして私に話があるとか…」
あれ?よく見たら血が出てる…。
私に手を伸ばしてくるその手はボロボロで血も出ていた。
きっと運動してるときに怪我をしたんだ。
「だ、だいじょう…ぶ?早く保健室にいこ?」
私は手を伸ばす。
ガアアアアァァァァ…!!!
「だめええええ!!!」
パァン!!!
グシャ
目の前で赤いものが飛び散った。
私の手を取ろうとした学生さんは膝から崩れ落ちて倒れてしまった。
頭から赤いものをドクドクと流しながら。
顔をあげるとそこにはめぐねぇの姿。そしてもう一人知らないおじさん。
「由紀ちゃん!無事!?怪我はない!??」
めぐねぇがこっちに来る。
知らないおじさんと一緒に。
「うん…大丈夫…」
知らないおじさんは私の目の前で屈みこんだ。
とても…とても悲しそうな目をしている。
「It's okay now. Come with me.(もう大丈夫だ。一緒に来てくれ)」
おじさんはさっき何か構えていた。
さすがに私でも知ってる。あれは拳銃。
あれは人をころ_
奇天烈な猫耳帽子を被った少女は後ろに倒れる。
気絶してしまったようだ。
こんな現実を受け入れられるわけもなく_
「ゆ、由紀ちゃん!!!」
「Leave it to me(任せてくれ)」
少女の足と背中を抱えて立ち上がる。
1階は危険だ。階段を駆け上がっていく。
後ろからピンク髪の女性も離れず追ってくる。
2階に上がりホールへ出る。周囲を確認してみるがすでに奴らは校内に湧いていた。
廊下の至る所で『食事』が始まっていたのだ。
グォォォ…!
な、なんだ!?やめろお前ら!
ぎゃああああ!助けてぇええ!!!
ガオオォォォ…!!!
「oh shit…!!」
ここに避難場所はない。
奴らに気づかれる前に階段をさらに駆け上がる。
「お願い…!!無事な子がいて…!!」
階段を上りながら後ろとチラっと見ると、泣きながら何かを祈っている。
この建物はおそらく学校だ。きっとこの女性は教師なのだろう。
生徒の無事を祈ってるに違いない。
苦い思いを抱えながら3階に上がる。
_しかし、そこも他と同じ状況だった。
だが、心なしか上に行くにつれて奴らの数が少なくなっている気がする。
だとしたら_
「お、屋上!!ここを上がれば屋上よ!!」
慌てた様子で上への階段を指さす。
お互い考えてることは一緒だったらしい。
一目散に駆け出す。
ドンッ!!ドンッ!!
いや!いやあああ!!!
女性の悲鳴とドアを叩くような音。
屋上は近いようだが、一旦立ち止まる。
抱えてた少女を一度彼女に任せて足早に下へ降りる。
「ど、どこへ行くの!?」
3階のホールに設置されているロッカーを開けてモップを取り出す。
相手はドアの向こうの獲物に夢中になっている。銃を使うのはもったいない。
そのまま様子を見届けている女性の傍を通り過ぎて屋上へのドア付近まで直行した。
ドン!!!ドン!!!と絶えずドアをこじ開けようとしている望まれない1人のお客さんがそこにはいた。
ガン!!!!
モップを壁に殴りつけて音を響かせる。
ドアを叩く手を止めてこっちを見た。ターゲットを変えたようだ。
「COME OOOOOOON!!!!」
グアアアァァァアァ…!!
襲い掛かってくる奴の頭目掛けて力いっぱいモップを振り下ろした。
グチャァ!
「fuck!!fuck!!fuuuuuck!!!!」
ゴチュ!!グチュ!!!ゴキ!!!
女性はあまりの光景に目を逸らす。
何かが潰れたような音が聞こえたが想像したくないのだ。
相手が静かになったと同時に攻撃を止める。
肩で息をしながら足元の凄惨な死体を眺めた。
…大丈夫そうだ。死んでいる。
目を逸らす彼女の手を取ってドア前に移動する。
そして、ドアを叩いて開けてもらうよう懇願するが
ドンドンドン!!!
「Please!!Open the door!!!」
「いや…!誰!?誰なの!?」
ドアの向こうから女性の声が聞こえる。
開ける気配はない。一連の出来事に恐怖しているのだろう。
しかし、そのことを気の毒に思ってる余裕はない…!
「その声…!悠里さん…!!悠里さんなのね…!!」
「その声は…佐倉先生!?今開けます!」
横から入ってきた教師の一声でドアがすぐに開放される。
屋上に出るとすぐにドアを閉めた。モップをドアに固定して開けられないようにする。
気休め程度にはなるだろう…。
少女が地面にへたり込んでいた。
女性が駆け寄り必死に声をかけている。
ここは任せてもいいだろう。
しかし…まさかずっと屋上に通じるドアを一人で支えていたのか?
なんてことだ…。体力も精神も限界に近いはず…。間一髪だったかもしれない。
屋上を確認する。
ここに奴らはいなさそうだ。…まぁそうだろう。
いるならすでにさっきの子も奴らの仲間入りだ。
どうやら屋上で菜園しているらしい。
トマト、キュウリ、キャベツ…瑞々しい野菜たちを確認していると端に少女が一人座り込んでいるのを見た。
なんだ?もう1人いたのか?
念のため、警戒しながら近づいてみる。徐々に距離を詰めていき_
ハッとした。少女に近づこうとする前に気づいてしまった。
少女の前には頭を切り落とされた奴の死体。
傍には血まみれのシャベル。
そして返り血を浴びた少女の姿。
その状況から何が起きたのか想像に難くない。
一旦、少女のことは放置することにした。
…どうやら今度こそ危機を抜け出せたらしい。そのことに安堵する。
すると、唐突に今までの出来事の恐怖が俺を襲う。
そう、だ…。一体何が起きているんだ…。
おそるおそる…。
景色の方に少しづつ顔を向けていく。
もしかしたら夢だったのかもしれない。
霧の事件といい、あんな地獄が2度と起きるわけなんかない。
だが_
アアアァァァァ…
オオオォォァ…
グゥオァァァァ…
黒煙が町の至る所でモクモクと上がっている。
どこを見ても大惨事だ。
下のグラウンドを見れば奴らの『食事』風景。
やめてぇぇえええ!!!
グァァァァ…!
「Aah…!!」
ゴシュ!!ゴチュ!!
響き渡る咀嚼音_
「Aaaaah…!!!」
助けてえええ!!!
車から引きずり出されて餌となる市民_
「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaah…!!!!」
もう_俺を苦しめるのはやめてくれ_
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!!!!!!!」
その叫びは誰に向けたものなのか。
少なくとも世界にその叫びはこだました。
先ほどまで放心状態だったツインテールの少女は驚いて声の主を見た。
心配した悠里がデヴィッドの元へ駆けつけ様子を伺う。
その光景を慈は黙して遠くから見ていた。
いつの間にか意識が快復した由紀は上体を起こして沈痛な面持ちで下を見る。
彼女なりに今回の事件を受け入れようとしているのだろう。
そして、この出会いをキッカケに彼と彼女たちの学校生活が始まるとは地獄の渦中にいた彼らに予期できるはずもなかった_
軍人(映画)の前だろうと女子の前だろうといきなり叫んじゃうなんてかわいいね♥
『かれら』が来るだろ、黙れよ。