靴を履き替えて三人で教室に向かう。今日の学校の話題はやはりお姫様と呼ばれてる人たちについてだった。
大きな国のお姫様、偉い人の娘、噂は様々だけど偉い人の子供っということだけわかった。
「ま、俺達には縁もゆかりも無い話だな」
「それがそうとも言えないんだなこれ」
「どういうこと?」
チッチとアカドルは指を振るう。ちょっとウザい。
「このクラス、この間大規模な集団退学があっただろ?」
「確かにあったね、不正に入学したって奴らでしょ?」
それは権力者だとか金持ちだとかが教師に賄賂を渡したりして不正に入学を許可した学生達。よくあることらしい。
「確かに。まさかこのクラスの半数が不正入学者だとは思わなかったけどね」
「それな!」
見渡すと机物も何も置かれていない机がちらほらある。そこは不正入学者達が使っていた場所だ。
「まさか集団退学の後に集団留学か?」
「かもしれないって話だ」
「そしたらこのクラスも盛り上がるかも!」
二人は喜ぶが俺は喜べなかった。何故なら集団退学によって空いた席に教科書などを置いていた俺はそれがもうできなくなるということだ。
「留学生全員うちのクラスにならないかな!」
「あぁ!そしたら今後の学生生活が楽しみだ!今年の運勢大吉は伊達じゃないな!」
「でもお前恋愛おみくじ大凶じゃなかった?」
「うぐっ痛いところを突いてくるな」
二人が盛り上がってる中、俺は着々と1限目の授業の準備を進めていた。ここ高彩松高校では全ての世界の文化や歴史を学べたり魔法や魔術などの勉強もできる優れた場所だったりする。
「1限目なんだっけ?」
「あれだよ、まっさんの生物学」
生物学とはここ地球や異世界の生物などを勉強する科目だ。そこには魔法生物(魔物)や魔法動物(魔獣)、神聖生物(神獣)、幻想生物(幻獣)なども含まれている。
「生物学眠くなるから苦手なんだよねぇ」
ワーマはそう言いなら自分の席へと戻った。時計を見ていい時間だとアカドルも自分の席へと戻っていった。
「下世話な話は終わったかい?」
斜め後ろから声をかけられて振り返ると何処かで見たハーレム野郎がいた。下世話な話とは何のことだろうか。
「君たちのせいで僕は大切な彼女達と楽しくお喋りもできなかった。どう責任取ってくれるんだい?」
ふむ、彼女か。
俺は携帯端末を取り出してショウカにメッセージを送るために指を動かす。その間もハーレム野郎が何かを言っているが何も聞こえない。
「キミ!人が話しているのに携帯ばかりに集中して失礼だとは思わないのかい!?」
「あぁ、俺に言っていたんだな。名前を呼ばれなかったからてっきり別の人に言っているのかと思ったよ」
「さっき目が合っていただろ!」
知らない事を怒鳴られても困る。無視を決め込んでいたら携帯を取り上げられてしまった。
「知ってるか?他人の物を勝手に取るのは泥棒つってな、こっちの世界じゃ犯罪に指定されてることなんだぞ」
そこへ担任が教室に入ってきた。何も知らない担任は教卓に名簿などを置いて挨拶する。流石に教師の前では怒鳴れないのか、ハーレム野郎は携帯を返してきた。
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あれから特に関わってくることもなく昼休みへと突入した。俺はアカドルやワーマと机を繋ぎ合わせて昼食を取ろうとしていた。
「あ、やべ弁当を家に置いてきたかも」
「俺らの分いるか?」
「いや多分アイツが持ってると思うから呼ぶわ」
「ならまず謝罪文から送れよな」
ワーマにそう言われたが無視して携帯端末でショウカにお弁当を持ってきてくれとメッセージを送った。すぐに既読がついてすぐ行くと返事が返ってきた。
「やっぱ持ってきてるっぽいわ」
「お礼しとけよな」
「謝罪文は入れろよ」
返信が来てから数十秒ほどでショウカがやってきた。ドアを開けてクラス全体を見渡し、俺達を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
「二人共、おはよう。それからはい、忘れ物」
「助かる!」
「おはようショウカ、今日も大変だね」
「ショウカ、ソイツの席使っていいぞ」
「俺使ってるわ!」
「ありがとう」
「いやありがとうじゃねぇよ!?」
有無も言わせずショウカは俺の上へと座り持ってきた自身の弁当を広げて食べ始めた。
仕返しをしたかった俺はショウカの頭の上で弁当の蓋を開けて食べ始める。
「落としたら許さない」
「わかってるよ」
そういい箸でおかずを掴もうとすると弁当を誰かに取られた。掴むものを失った箸はショウカの頭を小突く。いたっとショウカが小さい声でつぶやく。俺とショウカは弁当を奪ったであろう人物に目を向ける。
「キミ!人の頭に弁当を載せるとは!いったいどんな教育をされてきたんだい!?しかも女の子の頭に!!」
ハーレム野郎は何かキーキー言っていたがよく聞き取れない。
「ショウカちゃん!こんな男達とではなく!ボク達と一緒に食べない?ボクは人の頭に弁当を載せるようなこともしないし下世話な話しもしないよ!」
そういうハーレム野郎はショウカに手を差し伸ばしていた。
「下世話な話ってなんのこと?」
「さぁ?」
ワーマとアカドルは下世話な話について気になっているようだが俺的には弁当を返して欲しい。
ショウカは口に入れていたおかずを飲み込むと箸を置いてハーレム野郎の方を見る。ハーレム野郎は満面の笑みを浮かべてショウカを見る。だがショウカは俺の袖を引っ張り―――
「誰?この人」
「そうだぞお前誰だよまず名乗れよ!!」
「そうだぞ貴様!まず自己紹介をしやがれ!」
「急に当たり強くするじゃん二人共」
急に当たり強くされたからかハーレム野郎は後退り元いたところへと帰っていった。結局アレはなんなのだろうか。
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校内を鐘の音が鳴り響く。午後の授業の終わり、今日の学校の終わりを告げるチャイムだ。俺達三人は再び集まって話をしていた。
「今日どうするよ」
「ゲーセン行く?」
「いや、暇だし第二世界に行こうぜ」
「お!いいね!」
第二世界『ファクタラウト』は昔のアニメやゲームなどによく登場する剣と魔法の世界だ。日々モンスターと戦う人々の組織ギルドなんてものもあるらしい。
「今から行って明日の授業間に合うのか?」
「おいおい忘れたか?IDカードがあれば家からでも行けるんだぜ」
「そういえばそうだった。全く、二人は暇でうらやましいな」
「エンは来ない?」
「悪い、買い物頼まれてるんだよ」
「そっか、なら俺達二人だけで楽しむことにするよ」
「また暇な日ができたら今度は一緒に行こうな」
そう言い早々に教室を出た。途中、ハーレム野郎に呼び止められた気がするがきっと気のせいだろう。
廊下を走らない程度に早く駆け靴を履き替えて家から一番近いスーパーまで走った。
片手では持ちきれないほどの荷物を持って家の扉を開けた。
「ただいま〜」
いつもならここで返事が返ってくるのだが今日は返ってこなかった。
「ショウカ?」
荷物を廊下に置いてショウカを探しにリビングに向かった。扉を開けてリビングに入るとそこには倒れたショウカの姿があった。
「ショウカ!!」
俺は駆け寄ってショウカの体に触れた。まだ暖かさを感じ、次に呼吸ができているのか口元に手を近づけた。呼吸も動いてることがわかった。
近くにソファがあったためショウカを抱っこして急いでソファに寝かせた。
「いったいどうしちゃったんだよ…」
熱があるわけでもなく呼吸も整っており見た感じ何か病気にかかったわけでもなさそうだった。
一度病院に連れて行ったほうがいいと思い廊下に置き去りにした荷物から携帯端末を取り出しリビングに戻る。
「…え」
ショウカがいなくなっていた。
「これはいったいどういう―――」
次の瞬間俺は気付けば床倒れていた。