アルガス転生 〜家畜に神はいない(俺以外)〜   作:葛葉狐

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詰みポイント31:ベオルブの理想の騎士(歌謡祭)

 

 ーーリオファネス城、城門前。

 押し寄せた俺らを。松明の火影踊る門前に待ち受け、ラムザはひとつ溜息をついた。

 

「本当に来たのか……。

 公式声明は聞いたんだろう?

 ことは既に、誰を王と奉じるか。誰に剣を捧げるに相応しいか……志の元に日々剣を磨く、騎士たちへの問いかけへと移った。

 自由な在野浪人の出る幕はないよ。ディリータ」

 

 ラムザは生身の方のディリータへ話しかけた。

 無言のディリータの瞳は、踊る火影を照り返し揺れている。

 ティータが兄に寄り添うのを見て、俺は代わりに口を開いた。

 

「ーーそうでもないさ。

 要は権力基盤をブッ叩けば。大公の発言力は低下する」

 

 デカい城を指差す俺を、ラムザは面白そうに見ている、

 

「これは。大きく出たな。

 ……まさか城ごと破壊する気かい?」

「そこまでする必要がない。

 要するに。オヴェリア『女王』への至上主義をとなえる、思想的主柱にして武力基盤。

 すなわちーーお前ら『央天騎士団』さえ倒せば。

 大公は主張を引っ込め、この政争も終わる……ってわけさ」

 

 女王への忠誠を共通理念として集まった寄合所帯なら。その思想的主柱ーーすなわちオピニオンリーダーを倒せば、あっさり瓦解する。

 オピニオンリーダーが倒されたらゲームオーバー。伝説のオウガバトルかな。

 

「なるほど。

 でも、教会は黙っていないんじゃないかな?」

「知ってるぜ。大公は教会の首根っこを押さえているだけだろ?

 不正を世にバラす、と脅して。

 その証拠が、探してた『ゲルモニーク聖典』だったよな」

「???」

 

 あれ。この反応。ひょっとしてラムザ何も知らんのか。

 教会はオヴェリアの擁立に大筋で賛成で、摂政がゴルターナ公になろうがバリンテン大公になろうが別にどっちでもいいと考えているーーそう捉えているのか。

 だから、操れる目がなくなったゴルターナ陣営を切って、神殿騎士団は大公の招聘に応じてやって来たーーそう思っているのか。

 

「よくわからないがーー

 僕たちを倒せば、政争は止まる。

 逆にきみ達が倒されれば、オヴェリア女王即位の声は無視できなくなる。

 そういう認識を共有できたと思っていいんだね?」

 

 ラムザは両手を広げた。

 

「さてーーここへ来たということは。

 『まことの騎士』を見に来たんだね。

 では見せてあげよう……

 本物の騎士道こそが。君たちを打ち破るさまを!」

 

 ラムザの横に。風を纏って、鉄巨人が落下着地する。

 その地響きは大気を震わせた。

 震動に酔うように、ラムザは剣を抜き放つ。

 

「さあ。行くぞ、『騎士ディリータ』!」

「ーーナイト・ディリータ・忠実ナル剣」

 

 応じて、俺たちも身構える。

 相手はラムザと鉄巨人の二人か。

 ヤードーと何が違うんだ?

 まことの騎士とは何のことだ?

 

「皆、ゆくぞッ!ーーまことの騎士に力をッ!」

 

 その俺の疑問に答えるようにーー城壁上にずらりと、男達が立ち並ぶ。

 揃いの央天騎士団の紋章を身につけた彼らは。

 一斉に口を開けーー歌い始める。

 

 ♪頑張れ〜 僕らの〜 騎士ディリータ〜

 

 戦場に場違いな男声ソプラノ合唱を聴きながら。

 俺はその正体に気づく。

 

「これはーー応援歌か!?」

 

 応援歌。

 吟遊詩人のアビリティである。

 効果は、とても強力でーー詩(うた)い始めてから一定CTごとに味方全員のspeedが1上がるーーという破格の性能だ。

 欠点は、歌い始めたら他の行動を取ると応援歌が中断してしまう点と、星座相性によってspeed上昇に成功失敗が発生するところか。あと必ず一定CTが経過しないとspeedは上昇しないし、ショートチャージで短縮もできない。

 

 ♪ラムザ〜 我らが〜 ベオルブの魂〜

 

 俺は胸壁上にずらりと並んだ吟遊詩人たちを見る。

 それらの弱点をーー人数を揃えることで、回避する作戦か。

 くそッ出撃人数6人の壁を容易く超えやがって。

 こっちはファイナルファンタジータクティクスなのにお前らはタクティクスオウガじゃないか。タクティクス違いだ。

 

「ーーなるほどな。

 吸収した人員をどう納得させ、どう使っているのか、ずっと疑問だったが……」

 

 元は、北天南天両騎士団員だっただろう、歌い手たち。

 今見ている光景はーー縮図そのものだ。

 

「ラムザ。

 これが、お前の目指すーー理想の騎士像か」

 

 皆の声援を受け戦うベオルブの騎士。

 騎士は己の力のみに依るのではなく、皆から貰う力で戦う。

 皆もまた守られるばかりではなく、騎士へと力を与える。

 

「そうだ……!

 皆の為にこそ剣を振るう!

 皆がいるからこそ戦える!

 これが真の、ベオルブの騎士道だーー!!」

 

 ラムザは傍らの『騎士ディリータ』を振り仰ぐ。

 この『ディリータ』は裏切らない。

 剣を向けるべき相手を間違えない。

 当たり前だ。鉄巨人は指示にしか従えない。

 皆に望まれた行動しか取れない。

 それはすなわちーー

 

「人々に望まれる、武門の棟梁とはーー!

 より多くの人を助ける!騎士で在るべきだッ!!」

 

 剣を振り下ろし、断言するその姿は……確かに。

 ベオルブの魂を体現すると豪語するに、相応しい。

 だがーー

 

 ♪おお〜 われら〜 央天騎士団〜

 

「ダセえ……! まず絵柄がダセえ……ッ!」

 

 男声コーラスの元に戦う鋼鉄ロボ。昭和の香りしかしねえ。白黒アニメかな。

 

「……君たちには言われたくないッ!」

 

 ラムザは俺らの服装を指差す。そういえば俺らも全員聖歌隊ファッションだった。

 奇しくもなぜかこの場にはーー歌い手ばかりが集結している変な状況だが。リオファネス歌謡祭かな。

 だがこれは双方ともにーー戦場の最速を突き詰めた結果である。

 

「騎士ディリータ頑張れ!」

「ティータ美人だよ!」

「師匠イケメンだよ!

 

 そしてそこにラムザのエールと俺たちの褒め合いが混ざる。実にカオスだ。

 自分と鉄巨人へ、交互にエールを放つラムザ。俺たちの算術ハイトファイアを無効化しながら、「処理する」を連発しつつ迫り来る鉄巨人。俺たちが立つのは城壁脇、もう退がれる場所はない。

 普通に考えたらピンチだがーー

 

「よっと」

 

 実はそうでもない。俺たちは五人全員、城壁上にテレポした。

 

「ッ!?」

 

 鉄巨人に追い詰められるさまを眺めていたら、突然真横に現れた聖歌隊にーー吟遊詩人たちが驚愕する。

 

「こいつら、一瞬でーー!?」「迎え撃つぞ、バルクッ!」

 

 その護衛なのだろう。神殿騎士のバルクがブレイズガンを引き抜き、ラファの兄マラークが裏真言の詠唱に入るがーー

 ……お忘れだろうか。城壁上はどこまでも、同じハイトということを。

 

「「「「「ハイト・ファイア」」」」」

「「「「「グアアアアッ!!」」」」」

 

 俺たちのハイトファイア5連発で、バルクもマラークもそして吟遊詩人全員もあっさり戦闘不能に陥った。そして俺ら全員のスピードも5ずつ上がった。

 算術士を相手取るなら、味方は階段にでも並べとくべきだったな。

 

「くそッ! マラーク! バルク! こんなはずではッ!」

 

 ラムザは嘆きながらも鉄巨人に城壁上へ階段から登るように指示。ラムザはエール、鉄巨人は「処理する」を連発しながら、どうにか階段上まで辿り着くがーー

 その頃にはもう。俺らは、闘争の終着点……speed50物理AT99に到達していた。

 ドゴス(999)。ドゴス(999)。俺とティータの拳が、それぞれラムザと鉄巨人の脾腹をーー深々と打ち抜く。

 両者は一瞬宙に浮き、そして城壁上へ転がった。

 決着である。

 

「……う……ばかな……。

 真の騎士道が、敗れるなんて……」

 

 ラムザは動かない体を引きずり、停止した鉄巨人へ手を伸ばす。

 

「『騎士ディリータ』……。すまない……」

 

 ディリータはその機械への懺悔を、唇を噛み締めて聞いている。

 

 ーーぎゃああああッ!

 

 その時。遠く、城内よりーー断末魔の悲鳴か響き渡った。

 破壊の音、人のものとは思えない雄叫びがそれに続いてーーやがて。城の屋根の上へ、豪奢な衣服を着た初老の男がまろび出る。

 助けを求めるように周囲を見回し。やがて城壁上のラムザを認め、その男ーーバリンテン大公は叫ぶ。

 

「ラムザよ! ヴォルマルフが変心したッ!

 それだけではない、ヤツはおぞましい化け物へ変貌を遂げて……あれはまさに伝説の『ルカヴィ』!」

 

 あー…。大公はイズルードを人質にして、ヴォルマルフを脅し、交渉決裂しちゃったか……。原作通りだ。

 出てきた窓の中へ銃を撃ち込みながら、大公はなおも叫ぶ。

 

「ラムザ! よもや真実とは思わなかったがーー聖石の伝承に備えるため、末裔のそなたを領内へ留めておいたのだッ!

 頼む! かつての伝説の通り、『ルカヴィ』を討ち取ってくれッ!ーーベオルブの勇者よッ!」

 

 勇者を求めるその呼び声に。

 傷つくラムザは、動かぬ鉄巨人を見る。

 まさに今ーーベオルブの騎士が求められている時に。

 ラムザは倒れ、そして『ディリータ』は動けない。

 ここで動けずして。何の為の騎士道だ?

 

「……く……くそッ……動け……ッ!!」

 

 立ち上がろうともがき、再び転ぶラムザ。

 それを助け起こすーーひとつの手があった。

 肩を貸し、立ち上がらせ、そして地面に転がったおのれの剣を再び握らせてくる、その相手の顔をーーラムザは不思議げに見やる。

 ディリータはラムザを正面から見据え、告げた。

 

「『ディリータ』ならーーここにいる。

 今なお、助けを求める誰かのために……

 行くぞ!ベオルブの騎士、ラムザッ!」

「!!!……ああ、ディリータ……ッ!」

 

 

 

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