詰みポイント33:対剛剣完封戦法(女の敵)
「ーーえっ!
アルマが生きているッ!?」
一章終わりから四章開始にしてようやくその真実を知ったラムザは、一も二もなく俺らの仲間に加わった。
長年の重荷から解放されたような顔をしている。
原作でもアルマの事になるとアルマ!しか言わなくなるからなラムザ。生きてると知った以上、アルマを助けるのに全力で協力するのは間違いない。
まあアルマを聖アジョラの依代として利用しかねないヴォルマルフは潰さなきゃいけないし、アルマを元に戻すために願いを聞いてくれるかも知れん聖石も回収しなきゃいけない。
とりあえずはヴォルマルフを追うか。
ーーとりあえず三日は城で休んで情報収集も済ませてから、俺らにラムザを加えた一行は、ゼルテニア方面へ逃亡したらしいヴォルマルフを追いかけることにした。
(ラッドは「仕事が忙しいから手伝え」って手紙が届いたとかでガフガリオンの元へ旅立っていった。アイツ今異端審問官に雇われてるんだから実質敵だろ…)
寝て起きるとまあまあ状況が変わっていて、昨日の悪魔の襲撃は『それを想定し誘き出した大公と、悪魔退治のベオルブの勇者ラムザ率いる央天騎士団による悪魔退治』へと話がすり替わっていた。
その路線を裏書きするように。大公は早くも女王即位支持を撤回し、央天騎士団もまた原隊へ復帰しようという連中で溢れかえっている。
もはや近い未来で運命づけられた、政治的な敗北者になるのを避けるためとは言えーー全員、変わり身の早いことである。今はみな、大敗北者になるのを回避するため動いている感じか。もちろんババ抜きのババが最終的に押し付けられるのは、団長が悪魔に変じるのをばっちり見られた神殿騎士団になるだろう。
ただしそれは今じゃない。教会勢力ーー教皇が神殿騎士団を切り捨てる、という内示を得てからのことになるだろう。
うっかり先走ると風向きが変わった時にエラい目に遭わされる。ちょうど今の大公みたいにな。
まあ三章でも死ぬ奴は大体助けられたみたいで良かった。
良かったんだがーー
「あっ、見て!? あれが噂の勇者ベオルブ一行よ!」
「ベオルブ四兄妹!? 悪魔退治の旅に出ているっていう、あの!?」
人違いです。
道ゆく人から飴ちゃんを貰いつつ否定するが、一向に勘違いは収まらない。
とりあえずラムザに握手会をさせてその場を凌ぐがーーリオファネス城の連中がまた適当こいたせいで、俺らが巡業ヒーローショーの一座みたくなっている。君たち。ドグーラ峠で、僕と握手。
そうこうしている内に、自治都市ベルベニアに着いたんだがーー
「師匠ー?
街の高台で、なんか緑のフード被った女が剣持って仁王立ちしてますけどー?」
先行していたティータがそんな報告と共に帰ってきた。
なんだ? 新たなヒーローか? と一瞬思うが、すぐにその正体に気付く。
「……ああ、……メリアドールかぁ……」
メリアドール・ティンジェル。神殿騎士。
イズルードの姉で、ヴォルマルフの実子である。
シナリオでは弟の仇討ちで襲い掛かってくるのだがーー
「え? 弟ってあの、寝台でうんうん唸っていた人ですか?
師匠が出会い頭に腹パンした?」
俺をヤカラみたいに言うのやめろ。
イズルードは肉体的な傷は大した事ないんだが精神的なトラウマを受傷したらしい。なんでも、聖歌隊が生の喜びを謳い上げながら襲いかかってくる悪夢を見るらしい。ふーん。ホラーだな。(すっとぼけ)
「命を奪われるのに比べれば。とんでもなく安いものだと思うが……」
「ーー姉はそうは思わない、って事ですね」
弟のトラウマの復讐に来てんのかアイツは。
まあ父親のヴォルマルフも恐らくこっちへ来ただろうし、適当なホラを吹き込まれて時間稼ぎにけしかけられてるだけの可能性もある。
あとゾディアックブレイブの一員として聖石サジタリウスを持っている。ぜひ取り上げておきたい。
と言うことで、倒す一択しかないわけだがーー
「ーー師匠? 相手が女ひとりだけだったら、わたしがちょっと行って、イワしておきますよ?」
イワすな。ヤカラかお前は。
俺は冷汗を流しながら、ぶんぶんと首を振る。
「いや!!このマップは、このマップだけは絶対にティータを出撃させられない!大変なことになる!」
「?? 今わたし、レベル99ですよ? あんな女の子ひとりに遅れなんて取りませんよ?」
「違う!そうじゃない!」
不思議そうなティータへ、俺は説明する。
問題はメリアドール……ディバインナイトのジョブアビリティ『剛剣』である。
このアビリティはかなり離れた場所から4種の技を放つもので、それぞれーー体防具、頭防具、武器、アクセサリを破壊する。
つまり。全部食らったらーー真っ裸である。
俺の説明を聞き、ティータは両手で己の身を抱き震え出した。
「女の敵じゃないですか……ッ!!」
そうだよ。
ティータは理解できないものを見る目で高台を見やる。
「相手を脱がしつつ戦うなんて、とんだド変態……ッ!」
うん。メリアドールの戦い方の方が、ヤカラに近いかも知れないな。
「なるほど……!トラウマにはトラウマを返してやろう。そういうわけですか……!なんて的確な復讐……ッ!」
いや、そこまでは考えてないと思うな?
単に戦法として強いってだけで。
防具破壊者の視線から逃れるように、物陰へ隠れるティータを放って。
俺ら男どもはメリアドールの攻略法を話し合う。(女騎士的な意味ではなく)
「いいかみんな。
作戦の前に、まずーー禁止ワードを設定するぞ?
“さッすが〜! ○○様は話がわかるッ!"
これは禁止ワードだから、絶対に口にするなよ?」
「どんな状況でそのフレーズが飛び出してくるんだよ……」
「しかしメリアドールの剛剣は純粋に脅威だな。あの高台へ突撃している間に、遠距離から武器を破壊されたら打つ手がない」
「うーん。確かアイテム士の極意に、武器や防具を破壊されないための補強術が無かったか?」
メンテナンスか。
確かリメイクで剛剣ともども仕様変わったんだよな……。
破壊されないけどダメージは受けるんだったっけ?
よく覚えてないな……。
遠距離から大ダメージ受けることは変わらないんじゃなあ……。
その方法は選べない。
俺は重い口を開いた。
「……。剛剣使いを相手に完封勝利を収めたいならば。
手はひとつしかないがーー本当にやるのか?」
「? 何か楽に勝てる手立てがあるなら、実行するべきでは?」
「……。そうか……」
やるしかないのか……。
* * *
「「「「うわああああッ!!」」」」
鬨の声を上げながら、坂道を駆け上がる俺たち。
行く手の建物の上にーーフード姿の頭が見えてくる。
「ーー正面から来るとは愚かねッ!
弟のトラウマの仇ーー討たせてもらうわッ!」
本当にトラウマへの復讐だったのかよ。
「それは単に、お前の弟が繊細なのが悪いんだろうがッ!」
脆弱なやつから退寮してゆくんだよ!皇大では!
弱いやつに社頭に立つ資格なんて無えん(以下略)
「ほざきなさいッーーえ……?」
剛剣技を繰り出そうとしていたメリアドールが、何かに気づいた。
そのままーーまだ遠方を走る俺らに目を凝らす。
「!? ーーきゃあああああっ!?!」
突然メリアドールは両手で顔を覆い、かがみ込んだ。
「はっはっはっはっはッ!
どうだ! これでお前の剛剣は無効だッ!
手も足も出まいッ!」
勝利の笑いを響かせながら、坂道をひた走る俺らはーー武器防具アクセサリ、その一切を装備していない。
つまり下着一丁。盾だけ持って、下半身を隠しながら全力疾走する四人の男たちである。
「ーーいやあああああッ!」
メリアドールが悲鳴とともに星天爆撃打を放ち、空から降ってきた星屑が俺の脳天を直撃するが何ともない。
「はっはっはッ! 無駄だと言ったろうがッ!
そもそも防具を装備していなければ剛剣はノーダメージ!
お前の弱点くらいわかっているんだよッ!」
全身くまなく弱点として晒しつつ、俺は勝ち誇る。
そのままメリアドールに走り寄り、下着一丁の四人で囲む。セイブザクイーンで斬りかかってくるのを盾で押さえつけて、そのまま盾で小突き回す。
「オラッ! 降伏しろ、メリアドールッ! お前に勝ち目はないッ!」
「いやあああ誰か助けてえええ!」
「ーーそこまでだ! 全員、大人しくしろッ!」
え。
呆然とする俺らを、わらわらと走り寄ってきた武装市民ーー自治都市ベルベニアの自警団が取り囲む。
「神妙にしろ! 四人とも、暴行未遂で連行するッ!」
俺は取り押さえられながら。下着一丁のまま、官憲へ状況の説明を試みる。
「!!!ーーち、違う! そもそも、俺たちがこんな格好をしているのは! こいつの『剛剣』のためで……!」
「強●!? 自供したな! 語るに落ちた悪党め!」
「違ぁぁぁぁうッ!!」
ポーン。
その時、場違いな効果音と共に一枚のウィンドウが開いた。
:『姦雄』アルガス・サダルファスについての情報は、以下の通りだ。
「俺の二つ名があああああ!?
ーー松野ッ!
殺してやるッ! 殺してやるぞーッ!」
地面に押さえつけられながら、ジークデン砦構文で喚きちらす下着一丁の俺を。
遠く離れたところから恐ろしげに見つめ、ティータがぼそりと呟く。
「……女の敵……ッ!」
なんでだよ!
* * *
ーーその後。
連行された自警団詰所で身分を明かし、諍いがメリアドールから仕掛けた私闘であることを説明し、どうにか納得してもらった俺らはーー心に深い傷を負ったメリアドールが戦いから手を引き、聖石を引き渡すための和解金50万ギルを支払うことでなんとか示談が成立した。高っけえ……。
ちなみに、口止め料込みで和解金の一割相当額を自警団の懐へと払う羽目になり、笑顔の自警団長からこう言われた。
“さッすが〜! 勇者様は話がわかるッ!"
ーーお前が言うんかい。