アルガス転生 〜家畜に神はいない(俺以外)〜   作:葛葉狐

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詰みポイント7:旅路の果てまで見通せない

 

「……お前たちの実力はわかった」

 

 高台から降りてきたミルウーダは腕組みをしたまま、難しい表情を崩さない。

 

「……」

 

 そのまま、砂山に突っ込んだ貴族全員謝罪要求白魔たちを見、沈黙する。

 

「……実力……?」

 

 ーーどうやら俺達の実力には、疑問符がつくらしい。

 

* * *

 

 貴族全員謝罪要求白魔への完勝を見届けたミルウーダは、事前の取り決め通り、ウィーグラフと話をしてくれると約束してくれた。

 ウィーグラフはギュスタブの「副業」に勘づいてもうドーターのスラム街を嗅ぎ回っているはずなので、この盗賊の砦からだと、マンダリア平原、魔法都市ガリランド、スウィージの森、貿易都市ドーターの片道四日の旅となる。

 預かっている骸旅団の拠点、すなわちここを放棄するってわけにもいかないので、後事は貴族全員謝罪要求白魔たちに任せ、身ひとつで俺らに同行するらしい。

 大丈夫かなあいつらに任せて。そのへんの貴族さらってきて、謝罪の正拳突き一万回とかさせないだろうな。

 出発前にミルウーダが挨拶に行ったら、なんか石をぶつけ合っていて、「おかしい……!ぜんぜん速度が上がらない……!やはりまだ何か秘術が……!」とか言ってたらしい。

 君のような勘の悪い家畜は嫌いじゃないよ。

 

 さて新キャラ、ミルウーダの加入である。俺はウッキウキで編成画面を開いたが残念というか案の定、ミルウーダはゲストキャラだった。ああもう育成する気なくしたわー。

 ついでに俺とティータのステータスを確認するが、アイテム士レベル8でカンストしていた。まあ投石150回ためる90回をキッチリこなしたからな。キャラレベルもいきなり25も上がって30に到達している。

 アイテム士のアビリティも全部覚えてmasterにしておく。

 次の目標は白魔道士レベル3、その次は陰陽士レベル3なので、アイテム士からジョブチェンジしておく。

 

 ミルウーダを連れて移動を開始するが、1日目でさっそく、通過3度目となるマンダリア平原でまたランダムエンカウントを引いた。鬼門かよ。

 レベル30のゴブリンとパンサーは強いが遠距離攻撃がない上にマップも広い。ひたすら逃げ回りつつspeed50物理AT99を稼ぎ切り、全員ワンパンで倒した。

 ちなみに白魔道士からはサブアビリティに基本技がセットできない(アイテムをセットするから)ので、俺とティータは基本隣り合って素手で150回ずつどつき合いしてスピードを上げてゆく。

 白魔道士がレベル8でmasterした上に、またレベルが25も上がって55になった。次の陰陽士にジョブチェンジする。

 そしてポーションがとうとうなくなった。

 

 移動2日目は魔法都市ガリランドに到着。底をついていたポーションを補充し、新たに使えるようになったハイポーションも仕入れたが、金がほとんどなくなった。

 大量の買い物を終えて街の外に戻り、待っていたミルウーダ(お尋ね者だからと街へ入らない)と少し離れた野原で野営の準備をし、飯を食う。

 

「ーーへえ。あそこが、ディリータ兄さんの学んでいた……」

 

 ティータは暮れなずむガリランドの方角、街並みから頭を突き出す立派な建物を見ている。ガリランド王立士官アカデミーだ。

 一方、俺はエルムドア侯爵の近衛としてこの街にやってきた時のことを思い出していた。

 あれは確か……。俺は「アルガス」の記憶を思い出す。

 下っ端の上に孤立していたからろくな情報が入って来なかったが、この街でラーグ公と非公式会談を行うって話だったはずだ。

 ところが会談期日前に着いた侯爵一行は突然マンダリア平原に向かい、ラーグ公とベオルブの依頼のもとギュスタブに襲われ、攫われる。

 既プレイの俺の知識では、侯爵はギュスタブに「民の目指すもの」について話を聞きに行ったはずだ。おそらくマンダリア平原はギュスタブとの待ち合わせ場所だろう。

 そして掌を返したギュスタブに襲われる。

 しかしそれにはひとつ、疑問点が残る。

 

「なあーー

 エルムドア侯爵とウィーグラフって。

 戦場で幾度も肩を並べて戦ってるし、面識はあったはずだよな?」

 

 王立魔道院のあたりを見て複雑な表情を浮かべていたミルウーダは、俺の方を向いた。

 

「そうね。

 騎士団長同士としても。軍議の場とか。

 それなりに接点はあったわね。

 ーーそれがどうしたの?」

 

 ウィーグラフの副官を務めていたミルウーダは、二人が揃う場をそれなりに見ているらしい。

 

「仮に、骸旅団になにか聞きたいことがあったとして。

 侯爵がウィーグラフやお前ではなく、ギュスタブに訊ねる理由とか。

 心当たりあるか?」

「なに? 侯爵ってそれが原因でさらわれたの?」

 

 あの金の亡者のギュスタブに、人選ミスね、と首を振るミルウーダだが、別のことが気になったらしい。

 

「骸騎士団時代ならともかく。

 戦争終結で騎士団解散させられて、お尋ね者になった骸旅団に。いまさらーー侯爵が何を聞こうって言うの?

「えーと確か……侯爵は、貴族の傲慢と腐敗に絶望して。

 なら民が望むものは何かと骸旅団に訊ねたんだけど。

 自らの境遇への不満と他力本願しか出てこなくて、さらに絶望したんだって」

「待ってなんでお前がそんなに詳しく知ってるの!?」

「ーーあ。師匠は少しだけ未来が見えるんですよ」

 

 横からティータがサラッとネタバレした。

 

「それでわたしも死ぬところを助けてもらったんですよ」

「なるほど……それで貴女みたいな若い女の子が、弟子入りなんて形で着いてきているのね……」

「ちなみにあなたも死ぬところだったらしいですよ?」

「そうなの……?それは感謝すべき、なのかしら……?」

「ーー家畜呼ばわりされて」

「家畜呼ばわりされて死ぬの!?どんな死に方よ!!」

 

 と、そこでミルウーダは、ティータを見た。

 

「でもーーそれなら。死の運命から救い出したところで、解放するだけでもよいのでは?」

「あっ……そうですよ師匠? わたし別に、仮にここで放り出されたとしても、別に。馬飼いとかやって暮らしてゆけますよ?」

 

 救った人間の人生すべてに責任持つ必要ないんですよ?と言わんばかりのティータ。

 でも。

 目の前の死を回避させてやっただけで恩人ヅラ。あとは知りません、なんてのは責任ある社会人の仕事じゃねえんだよ(社畜精神)。

 

「ーーそういうのは救ったとは言わない」

 

 横を向いて断言した俺に、ティータとミルウーダは何やら顔を見合わせた。

 

「ね。……こういう人なんです」

「なるほど。先に語った、ランベリーへの招聘といいーー

 貴女が師匠と仰ぐのも頷ける」

 

 買い被りすぎだ。俺はそっぽを向いた。

 俺は単に自分が生き延びたいだけだ。それもできるだけ長く。

 周りでどしどし死んでゆく人間を生き延びさせて味方につけてその後も役立たせていった方が、アルガス生存エンドRTAキメられるだろ、って考えてるだけである。

 まあ見たことないんだけど。アルガス生存エンド。

 ミルウーダは居住まいを正し、深く頭を下げてくる。

 

「失礼した。これまでの数々の非礼、重ねてお詫びする。

 改めてーー未来視の師匠、いや、視匠か。

 視匠にお訊ねしたいことがある」

 

 視匠て。おいコイツ俺らの流派を勘違いしてんぞ。

 サダルファス流に未来予測の奥義とかはないんだが。

 

「視匠の知り得る、もっとも先の未来にはーーどんな景色が広がっている?

 その景色の中で。民は……笑っているか?」

 

 質問するミルウーダの目はごく真剣だ。

 未来を知る俺の答えひとつでーー歴史の仇花と散りゆく、骸騎士団・骸旅団の戦いに意味があったかどうかーー決まるのだ。

 俺はシナリオ中、時代的に一番後のものとなるだろうシーンを思い浮かべた。

 

「うーん。

 俺の知ってる、一番先の時間軸での光景は……」

 

 なんだっけな。そう。

 思い出の教会跡のシーンだ。

 

「……確かもう、ディリータが王に即位していてー、」

「えっちょっと待ってディリータ兄さん!?

 あの兄さんが王様になるの!?!?

 元馬飼いの平民ですよ!?」

「あれ言ってなかったっけ。そうだよ?アイツ王になるんだよ」

「何してんの兄さん!?ハイラル王国とか作るの!?」

「おい任天堂にケンカ売るのやめろ」

「任天堂って何ですか?」

「いや気にしなくていい。ーーそんで、空に向かって、

 『ラムザ。お前は何を手に入れた? オレは……』

 って呟いてるシーンだな。

 手に血まみれの包丁ぶら下げながら」

「血まみれの包丁!?兄さんどうしたの!?誰か刺してきたの!?」

「ああ、ちょうど王妃を刺したところだったんだよ」

「王様がお妃様刺したの!?兄さん大丈夫なの!?サイコパスなの!?」

「いや、その直前にディリータ、王妃から刺されてるから……」

「なんで兄さんが刺されてるの!?二重の意味で大丈夫なの!?そもそもそんな事になって国が大丈夫なの!?」

「いやなんか。後年の歴史では、王妃は五年後に卒去、ディリータはその後も長く治世を続けた、ってなってるらしいぞ?」

「その歴史、捏造されてません……?」

 

 一方、ミルウーダの反応は静かだった。無言のままでいた。

 拳を握って下を向いて、なにやら震えている。

 

「ーー平民が、王に……!」

 

 どうやらそこが彼女の琴線に触れたらしい。

 もっと気にすべきとこ沢山あったように思うんだが。

 いきなり、がば、と顔を上げる。

 

「平民が王になるような明日が、くるならば。

 ーー私達の戦いにも、斃れていった仲間達にも、ここまで積み上げてきた無数の屍にも。

 すべて、意味があったと言うことができます……!

 視匠! その未来へ辿り着くお手伝いを、どうか私にもさせて下さい!

 さて、そうと決まればまずはランベリーの安定からですね!

 兄、ウィーグラフは私がかならず説得します!

 お任せください!」

 

 拳を握って立ち上がり、ミルウーダは燃えている。

 俺の質問の答えはまだ聞けていないがーー

 まあいいか。協力者が増えたのはいいことだ。

 

 

 移動3日目はスウィージの森。

 レベル55とクッソ高いボムやゴブリンから木々の間を逃げ回りながら、どうにかspeed50物理AT99に到達し、また片端からワンパンKOしてまわる。

 飛び道具も飛んできたがマップ中央に川走ってるお陰でだいぶ逃げやすかった。行動順を監視しながら、マップ四隅を順番に移動してゆくだけだ。

 これで陰陽士もレベル8カンストでmaster、キャラレベルもまた25上がって80となった。ここまで来ればもう素でスピードが10くらいあるので、以後の稼ぎもかなり楽となる。

 そして。

 ついに。

 ついに。

 俺たちは、話術士への転職条件を満たした。

 目標はレベル5だが、以後15マップくらいは話術を使う必要がでてくる。ゆくゆくはパーティアタック150発を50発まで減らせるようになるので、戦闘準備時間を三分の一に減らせるようになるのだ。

 とりあえずウッキウキでジョブチェンジしておく。

 

 さて。旅程最終日、4日目。

 俺たちはようやく目的地ーー港湾都市ドーターへ足を踏み入れた。

 スラム街は薄暗い。狭い家が軒を連ねてひしめいている。

 辺りに流れる不穏な気配も当然だ。

 ここはもう、骸旅団ギュスタブ隊のアジトのひとつ。

 

「これで最後だ。

 ーーギュスタブはどこにいる?」

 

 剣を抜き放つ音。

 俺たちは泥水を跳ね飛ばして走り、土むき出しの広場に飛び出す。

 転んだ騎士へ剣をつきつけている、その男はーー

 まぎれもなく、ウィーグラフ・フォルズその人だ。

 

「待って! 兄さんッ!」

「……ミルウーダ!?なぜここに!?」

 

 ミルウーダの声に思わず剣を止めるウィーグラフ。

 その驚き顔へ、俺は求める答えをくれてやる。

 

「ギュスタブならーー砂ネズミの穴蔵だ」

 

 知らぬ男からもたらされた情報に。

 ウィーグラフは訝しげにーーその片眉を上げた。

 

「きみは……?」

 

 

 

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