タイガとガッツが一座に加わってから二月が経ち、2人は温かい一座の面々との接し方に戸惑いながらも、仲間と認められながら過ごしていた。
「はぁ!!」
「ちぃっ!うらぁ!!」
タイガとガッツは時間がある時には、互いに稽古を重ねていつでも戦場に戻れるように、剣を振ってぶつかり稽古をしている。
稽古を続けてから約5時間、タイガが滴る汗を拭う。
「はぁ、はぁ……。ガッツ、少し休憩にしようぜ。朝からぶっ通しだし。」
「そんなにやってたか?少し休むか。」
汗を拭って、水筒に入った水を飲むタイガとガッツ。すると、2人に歩み寄る幼い影がいた。
「タイガ〜!ガ〜ッツ!」ぎゅ〜っ!
「タイガさん!ガッツさん!」
「あ、リルルちゃん、ラット。」
2人に近付いてきたのは、戦災孤児で一人でいるところに一座のメンバーに拾われて、彼らと行動を共にしている一座のメンバーである少女“リルル”と、一座にいる孤児の少年でクシャーンの10歳の少年“ラット”であった。
「何の用だよ。離れてろ。」
「むぅ〜!ガッツってば冷た〜い!一緒に遊ぼうよ〜!」
「うおっ!?馬鹿、剣持ってるんだから気を付けろ!?危ねぇだろうが!」
自分にじゃれつくリルルに戸惑いながらも離そうとするガッツを見て、タイガとは楽しげに笑い、それを遠目で見ていた一座の団員達も笑う。
「お前ら〜!見てんじゃねぇ!!?タイガも笑ってんじゃねぇ!!」
「ガッツ、顔真っ赤……見てて面白い……ぷふっ!」
「っ!お前〜!タイガ〜!!」
「あ!待て待て〜!」
「待って下さいよ〜!タイガさん、ガッツさ〜ん!」
「「「「「(和やかだなぁ~。)」」」」」
子供らしく追いかけっこをする4人を見て、団員達は優しく微笑むのであった……。
◆◆◆
翌日、ゲオルグは昼間の公演を終えて、午後の公演に向けての段取りを行っていたのだが、困った事に午後の公演の殺陣をやる筈の団員が病気になってしまい、殺陣をやれる団員がいなくなってしまった。
配役を変えるのにも時間を要するため、すぐに変える事は難しい。
そこでゲオルグはタイガとガッツに頼むことにした。
「頼む!2人とも、午後の公演の殺陣に出てくれ!」
「見せもんになるなんざごめんだ。」
「ゲオルグさん、俺とガッツはあくまで警護を目的にしてます。劇で、しかも
「そこは殺陣をやる奴が合わせる。2人は普段やってるようにやってくれれば良い。頼む!報酬に上乗せするから殺陣に出てくれ!」
「……分かりました。やれるだけやります。」
「おいタイガ、本気かよ。」
「こうまで言ってくれてるんだ。出ないと失礼だろ?ガッツもやれるだけやってみようぜ。」
「ちっ……!わぁ〜ったよ、やるだけやってやる。」
「タイガ、ガッツ……!ありがとう!じゃあ早速紹介しないとな!お~い、
ゲオルグに呼ばれて部屋に入って来たのは、タイガとガッツに空いた時間で剣の相手をしている青年で、クシャーンよりも遥か東の国から来たという者で名を剣心という。
剣の腕前はタイガとガッツよりも強く、何度やっても負かされてしまうほどであるが、剣心から認められている。
「団長、殺陣は2人が拙者とやるのか?」
「あぁ、そうだ。2人とも了承してくれた。派手なのを頼むぞ。」
「承った。」
剣心は2人に殺陣のやり方を説明すると、午後の公演に向けての練習と衣装に着替えていき、その時を待っていた。
午後の公演、開始前。
ゲオルグ一座のピエロ兼医師でもある“アベル”がメイクをして、本日最後の公演の前の前座をして、観客たちを楽しませる。
その舞台袖では、タイガ達剣舞担当が出番を待っていた。
そしてステージが一度暗くなると、ピエロの姿をしたアベルと演奏組が軽快な音楽を鳴らし、タイガとガッツが荒々しく剣を振るう中、剣心がタイガの双剣とガッツの大剣を受け流して舞うように剣を振るう。
その殺陣に観客は固唾を呑んで見守っていた。
そしてタイガとガッツが剣心に向かって剣を振り下ろした瞬間、剣心の一閃にて2人の服が斬り落とされ、褌姿へと変わってしまった。
「「「「「「「だははははははははははははははははははは!?」」」」」」」
それを見て観客はどっと笑いが起こり、ガッツが叫びそうになるも、タイガに留められ、舞台袖に下がって行く。
「(ガッツお疲れ様。)」
「(見せもんなんか金輪際やるか!)」
午後の公演は大成功になり、結果としてガッツは恥ずかしい思いをしたが、それでも何故か一座を嫌いにはならなかった。
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