増えすぎた人口をスペースコロニーへ移民させるようになって半世紀が過ぎた宇宙世紀0079年。地球から最も遠い宇宙都市サイド3がジオン公国を名乗り、地球連邦政府に対して独立戦争を挑んでいた。1ヶ月あまりの戦いで双方の人口の半分が死に至った。
宇宙世紀0079年10月20日
宇宙 軽巡洋艦ムサイ内にて
『こちらはムサイ、ラーザムの艦長だ。灰淵のグレイファントム隊に入電、作戦「凍土突破作戦」を開始せよ。この作戦では地上の味方との共同作戦だ、連邦のモスクワにある物質集積基地を叩け。今回の作戦で敵連邦軍の意表を突きオデッサの味方への追い風となるだろう。諸君らの、奮戦を期待する!』
『こちらオペレーター、HLVの投下ポイントに到達しました降下準備に入って下さい』
オペレーターの声を聞きあるものは笑いあるものは祈りあるものは覚悟を決めた。
『HLV降下開始グッドラック』
ムサイと分離したHLV2機は地球の重力に捕まり次第に加速し始める。
目標はモスクワ基地ただ一つと
地上にて
ふと、モニター越しの空を見上げた。
雲ひとつない、澄み切った青。
それはあまりにも穏やかで、この地上の惨状を嘲笑っているようにも見えた。
その青のさらに向こう、無数の星が瞬く宇宙には、コロニー群が浮かんでいる。
本来ならば、そこは人々が笑い、眠り、明日のことを語る場所だったはずだ。
……けれど今は、同じ人類が互いを撃ち合っている。
平和を求めたはずの宇宙が、戦争の理由になってしまった。
『おい!見ろよ流れ星だ!』
無線から楽しそうな声が流れる
白薔薇隊
それはジオンのネームドに対抗すべく設立された部隊。
MSによる対MS戦を想定した訓練を受け、
これまで数多くのジオンのザクを撃破してきた。
あのエース部隊。ホワイトベースにオデッサ作戦時配属が予定される部隊だ。
『早くオデッサに行きテェぜスコアを早くあげねぇと第二部隊に落とされちまうからなぁ』
そう愚痴をこぼすラミ伍長にリール少尉は
「移動用のミデアがエンジントラブルを起こしたから仕方ないさ」
『そうだよラミ伍長、まぁでも他のミデアを使えばいいのになぁ上層部は何してんだか』
『スミア曹長の言ってる事はその通りなんだけど、まぁ上の連中はミデア隊をホワイトベースへの補給に回してるから本当に仕方がないさ』
『ローズ1発言にはきおつけろ』
スージー大尉の落ち着いた声が返る。
続けて、彼の指示が飛ぶ。
『司令が入った、モスクワの物資集積所が襲撃を受けた。俺のストライダー隊とホワイトローズ隊が最も近い部隊だ、急いで救援に向かうぞ』
『こちら第2小隊、了解』
『ホワイトローズ隊も了解しました』
モスクワ基地守備隊said
「クソが!アイツらどこから現れた!」
遮蔽物に隠れマガジンを交換する。
『少尉!ハンズ小隊が全滅しました。』
「馬鹿な!?早すぎる」
コックピットのセンサーが甲高い警報音を鳴らし始めた。
モニターの光が一気に赤く染まり、コクピット内にけたたましいアラームが響く。
「オペレーター!増援はまだか?」
通信機から、少し焦りを滲ませた声が飛び込んでくる。
『現在ホワイトローズ隊とストライダー隊が5分後に到着の予定です』
『了解だ!全機弾幕を張れ時間を稼ぐんだ!』
ホワイトローズsaid
前方八千メートル――味方のモビルスーツ9機、61式戦車24両の反応。
さらにその先、敵モビルスーツ11機、戦車多数。
表示された数値の羅列が、戦場の混沌を無機質に告げていた。
「ストライダー、ホワイトローズ小隊全機、火器管制システムのロックを全解除!」
スージー大尉の号令と同時に、HUDの警告灯が次々と緑に変わる。
ロック解除――つまり、いまから撃っていいということだ。
陸戦型ジムの火器が一斉にアクティブ化され、ビームライフルのエネルギー系統が唸りを上げる。
通信の合間に、遠くで爆音が響いた。
土煙の向こうで火の手が上がり、赤い爆炎が空気を震わせる。
空気が熱を帯び、コクピットの外殻を震わせた。
「こちらナイト1! 前方の塹壕にザクが張り付いている! 前線を突破できない!」
通信機から、少し焦りを滲ませた声が飛び込んでくる。
前方には、掘り下げられた地形にザクが潜み、陸戦型ジムの部隊を迎撃しているようだ。
「こちらホワイトローズ任せろ――俺たちの部隊で穴を開けてやる。」
スージー大尉の声は落ち着いていた。
頼りになる声。あの人はいつだって、砲火の中でも自信に満ち溢れている。
「それは心強い! それまで持ちこたえる、頼む!」
通信が切れると、すぐに地平線の向こうから爆音が迫ってきた。
黒煙と赤い閃光が空を切り裂く。
前方4000メートル先、陸戦型ジム6機が盾を構え、片膝をつきながら応戦しているのが見えた。
「これより支援射撃を開始します! キャノン砲、装填完了、照準データ入力――」
「撃ち方――始めッ!!」
轟音が腹の底を震わせた。
スミア曹長が乗るガンキャノンの両肩から、火を噴くように砲弾が放たれる。
爆風が砂煙を巻き上げ、戦場の空気を一変させた。
「……命中。」
崩れた建物の中に、瓦礫まみれのザクが一瞬だけ姿を見せた。
動きが止まっている。
その一瞬の隙を、逃すはずがない。
自分はビームサーベルを装備しザクのコクピットに刺した。
次の瞬間、ザクの胸がオレンジ色に染まり、爆発。
爆炎と土砂が混じり合い、前線の一角が大きく抉れた。
だが、安堵は一瞬だった。
「〝スカート付き〟が動き出した! 数3!」
ナイト小隊隊長の声が上ずる。
後方の遮蔽物から、紫色の機体が土煙の中から現れた。
後方で待機していた3機編成のドム小隊が動き出したのだ。
ドムは対モビルスーツ戦を考慮して作られているので1vs1に持ち込まれたら、こちらの分が悪い。
ドムは高速で地面を滑るように進み、ジャイアント・バズを構える。
三発、発射――牽制射撃だ。
別働の陸戦型ジム小隊は咄嗟に回避し、ドムが放った弾はジムのシールドを掠めるがフォーメーションが乱れてしまった。
その隙を突いて、ドムが急接近する。
。
「……速い!」
だが、速すぎる。
動きが直線的だ。読みやすい。
ドムは確かに地上では最速のモビルスーツであるが、しかし、そのスピードの為に動きが直線的になることが多い。
腕のいいパイロットなら、スピードが必要な時と必要ではない時を見極めて使い分けをするが、このドムのパイロットはスピードをあまり落としていない。
だから、動きは速いがどこに移動するかが分かりやすかった。
私は息を吸い込み、肺が満ちる瞬間で止める。
照準がブレないよう、静止。
ドムがジムに襲いかかるその進路を――読んだ。
「今だ!」
操縦桿のトリガーを引く。
ビームが一直線に走り、ドムの脚部に命中。
赤熱した装甲が裂け、内部の熱核ジェットが暴発する。
両脚が吹き飛び、ドムは地面を転がりながら爆散した。
ドムのもう一つの弱点である、熱核ジェットエンジンを脚部に内蔵したことによる被弾面積の増加だ。
ドムの脚部はザクよりも大きいので被弾しやくなっている。しかし、重装甲なので生半可な攻撃では脚部の破壊は困難であるがビームライフルなら、その装甲も容易く破壊することができる芸当だ。
熱風がコクピットを揺らし、通信機がノイズを吐き出す。
――援軍のドム、撃破。
他2機は1機が撃破されると尻尾を巻いて逃げていった。
『さっきはありがとう助かったぜ、今度奢らせてくれ、俺らは他の場所の援護に行ってくる。元気でな』
通信が切れると同時に、陸戦型ジム2個小隊と61式戦車1個小隊が轟音を立てながら移動を始めた。
私はその背中を見送りつつ、モニターで辺りを確認する。
――『ああああああああーーーッ!!』
耳を劈くような、叫び声ともノイズともつかない音が響き渡った。
私は思わず手を止め、センサーを総動員して周囲の反応を確認する。
『どうしたんだ?リール少尉?』
「先ほど、通信に奇妙な音が……敵の交信かと。」
『いや、俺の通信には何も入ってないが? ストライダー2、そちらは?』
『こちらも異常なしだ。』
「念のため、後方に確認を取る。こちらストライダー1よりスカイレイダー。不審な通信を傍受していないか?」
『こちらスカイレーダー不審な音は――ま、待ってください!』
オペレーターの声が急に緊迫した。
「超上空に敵反応! ドダイより大型……2機、急速接近中!」
警告を聞いた瞬間、私はモニターを切り替え、上空を捉える。
センサーが微弱な熱源を補足。小さな点が映し出された。
映像処理をかけると、その点が鮮明になり――
「HLV......だと?」
その瞬間、後方から轟音が響く
『ローズ3迎撃します!』
ガンキャノンの両肩のキャノン砲が空中のHLVを狙って炸裂する。
火線が大気を灼き、爆煙が空に咲き乱れる。
『……流石に、ガンキャノン砲を喰らえば持たないだろう。』
そう思った矢先――
「敵反応あり! まだ生きています!」
オペレーターの声が震える。
「……嘘だろ。」
私はモニターを凝視する。
炎の中を抜け出すように、HLVの影が再び現れた。
それはまるで、弾丸そのもののように、轟音と共に高度を下げながらこちらに迫ってきていた。
そして――この遭遇が、少尉の数奇な運命の幕開けとなる。