【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい 作:もく
車の後部座席で、デンジはそわそわと落ち着かない様子だった
「あのっ、アナタのお名前は……?」
「マキマ」
即答だった
デンジは少しだけ顔を赤らめ、続ける
「マキマさん……好きな男のタイプとかあります?」
マキマは少し考える素振りをしてから柔らかく笑った
「うーん……デンジ君みたいな人」
「デンジ君……? ……俺じゃん」
嬉しそうに呟くデンジ
――あーあ
確かにマキマは綺麗だ、顔は
でも中身は完全に悪魔だ
“みたいな”って言ったんだよな
デンジ、違うんだ。あの人は君自身を見てない。君の心臓しか見てない
僕は窓の外を眺めながら、小さく息を吐いた
デビルハンター東京本部
マキマは淡々と説明する
東京には民間も含めて1000人以上のデビルハンターがいること
公安は有給も多く、福利厚生が整っていること
――死にやすいからでしょ
心の中でだけ突っ込む
僕はデンジに着替えを渡した
ネクタイの締め方がわからないらしく、結局僕がやることになった
「じっとして。ほら、こう」
「おお……すげえ」
「アキ、新入りだよ」
アキと呼び捨てにするくらいには、僕たちはもう長い付き合いだ
3年目だもんね
マキマがアキを紹介し、デンジはそのまま連れていかれた
「マキマさんと仕事したいならちゃんと働かなきゃダメだからね」
「はーい」
素直だなあ
……まあ、あのあと金的が待ってるんだけど
ついていくのはやめておこう、痛そうだし
案の定、ボロボロになって2人は戻ってきた
「先輩が金玉の悪魔に玉を襲われました」
「ウソです…コイツの嘘です」
わー痛そう
ドンマイ、アキ
マキマは2人を見て、にこりと笑った
「どう?仲良くなれそう?」
「全っ然」
「こいつクズです」
「仲良くなれそうでよかった」
「気が合うなら大丈夫そうですね」
僕が適当にまとめると、アキがこっちを見る
見るな
マキマは淡々と告げる
デンジは特別だということ
公安を辞めたり違反行為をすれば悪魔として処分するということ
さすがにそれは、と口を挟むと、マキマは笑顔のまま僕を見た
「君もだよ、ヒカリ君。元は違法契約者なんだから」
こんにゃろ……
「いい加減クロへの八つ当たりやめてもらえません?」
返事はない
デンジに向かって「死ぬまで一緒に働こう」と優しく言う
無視かよ生姜焼き
結局、監視という名目でアキとデンジは同居することになった
二人が去り、部屋には僕とマキマだけが残った
そこへ、欠伸をしながらクロが入ってきた
「デンジが来たんだっけ?何の用だ、マキマ」
「礼儀を覚えた方がいいよ、クロ君」
「この人の八つ当たり減らしてよ。僕だって面倒は嫌なんだ」
「知らねえよ。直せるならマキマ、お前が直せ」
「嫌です」
舌打ちしかけた僕をマキマが軽く睨む
「ヒカリ君、舌打ちしない」
「……はい」
本題は、デンジが問題行動を起こしそうな未来を見てほしいというものだった
クロは珍しく素直に俺の視界へ入り込む
未来はぼやけていたが、大きな問題はなさそうだ
パワーとも、まあ何とかやれそう
「そう。ありがとう。今日はもう上がっていいよ」
珍しいな
「風邪でも引いてるんじゃねえの?」とクロが呟く
マキマは微笑む
「ヒカリ君、今日は天使君と何か食べてきたら?」
あーはいはい出費コースね
最低の上司だよ
天使の悪魔は遠慮なく肉を頬張っている
「本当は休みだったんだっけ?君も大変だね」
「わかってくれるならもう少し控えめにしてくれない?」
「僕は天使である前に悪魔だからね」
「やっぱりただの悪魔じゃん」
「傷付いたなあ。もっと食べよう」
クロが横で笑う
レシートを見た僕は、翌日東京中の悪魔を狩り尽くすことになる
早く支配の悪魔を殺したい
本気でそう思った
「力は使いこなせるようになったか」
「……はい」
少女は一人になった
秘密の部屋よりは広い、個室を与えられた
それでも自由とは呼べない空間
「いつか……自由になれるのかな」
まだ瞳は完全には染まっていない
「誰か……会いに来てくれたらいいな」
かつて逃がした小さな悪魔を思い浮かべる
次に出てきたのは自ら手を下した犬だった
「……そんなわけないか」
少女は静かに目を閉じた
8話で書いた裏設定について
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知ってる ここには書かないで(他作品へ)
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知ってる 終盤に触れてほしい
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知らない