【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい   作:もく 

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襲撃篇
13話 長い1日の始まり


「みんな二日酔いで大変だろうから今日は午前の悪魔討伐はヒカリ君に任せることになったんだ。私は京都に出張、午後は休んでいいからね」

 

マキマはいつも通り柔らかく笑っている

ヒカリはため息をついた

 

「未成年労働者の使い方酷いですよ。いい加減部下いじめるのやめてください」

 

「いじめてるつもりはないけどクロ君の態度を改めることができたら少しは考えてあげる」

 

「じゃあ無理じゃないですか、訴えますよ」

 

「言っても無駄だと思うけどね。じゃあいってくるね」

 

扉が閉まり、クロが舌打ちした

 

「あんなのトップにしてるとか本当にバカだよなこの国は」

 

「それだけ擬態が上手いんだよ。今日は襲撃がある、それなのに仕事が振られちゃった。姫野、間に合えばいいんだけど…」

 

「間に合わない可能性も十分ある。ループの始点は置いとけよ」

 

ヒカリは静かに指を鳴らした

 

「わかった」

 

小さな音、見えない杭が時間の奥に打ち込まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりだった

私はデンジ君、アキ君、パワーちゃんとラーメンを食べていた

銃声のような音

でもパワーちゃんは太鼓の音だと言った

いつもの嘘、だから油断した

アキ君も未来の悪魔の力を使っていなかった

 

気づけなかった

 

デンジ君の知り合いらしい男が銃を向ける

撃たれる

胸が熱い

心臓は外れている、でも深い

パワーちゃんが殴り飛ばし、アキ君の狐が男を食った

 

「早川アキ…私の口にとんでもないモノを入れてきたねえ…人でも悪魔でもなっ…」

 

言い終わる前に、狐の顔が裂けた

中から出てきたのは、頭と両手に刀が生えた男

デンジ君のチェンソーに似ている

アキ君が天使の悪魔の刀を抜いた

未来の悪魔の力で動きが読めている

一度も被弾せず、斬り続けていた

 

倒した

――そこまでは、上手くいってた

女が現れる

男はまだ生きていた

一瞬でアキ君の胸が裂ける

スーツが防いでいる、でも次はない

 

「ゴースト…」

 

「イヤだ、あの女…恐ろしい…」

 

血がこみ上げる

私はもう、長くない

 

…ごめん、ヒカリ君

 

約束、守れなかった

 

でも

 

アキ君は守ってみせる

 

「私の全部をあげるから…ゴーストの全部使わせて…」

 

何年も感じなかった契約の感覚

何かが削れていく

視界が白黒になる

先に、何かを持っていかれた

でももう関係ない

 

アキ君もヒカリ君も泣ける

デビルハンターは死に慣れすぎると涙が出なくなる

でもアキ君は泣く

新人が死んだとき、隠れて泣いていた

あれだけ思って泣いてもらえたら、きっと嬉しい

ヒカリ君も、未来が見えても止められなかった死があったとき、泣いたはず

時間を戻して運命を捻じ曲げたから、泣いたことにはなっていないけど

あの顔はなぜか覚えている

 

夢じゃない

どこかの時間軸で、私はそれを見た

 

私のことも助けてくれるのかな

泣き顔、からかってやりたいな

 

ヒカリ君は来ない

来ていたら、こんなことになっていない

 

来れなかった理由があるんだ

だから、私がやる

ねえアキ君

 

アキ君は死なないでね

私が死んだとき、泣いてほしいから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――え?

何も起きない

 

白黒の世界でみんなが止まっている

足音がコツ、コツと近付いてきた

 

スーツ姿の…白い髪の青年

 

「切り札、使っちゃったんだね」

 

いつもよりずっと大人びた声だった

 

「…来てくれたんだ、約束守れなかった…ごめんね」

 

「アキを守ろうとしたんだね」

 

「うん…私の全部を捧げてでもアキ君を守りたかった…」

 

「それをしても変わらなかったよ」

 

ヒカリ君は冷たい現実を突き付ける

わかってた、でもやるしかなかった

 

「君はゴーストと完全契約をしてしまった。だから今から消える」

 

「うん。でも、アキ君は助かる…私の命を捧げた数十秒の時間稼ぎで」

 

「でも…アキの横には姫野がいないと…ダメだよ…」

 

ヒカリ君の声が震え涙が落ちる

はっきり見えた

 

「だから…僕が絶対助けてみせる…アキの横で生きさせてみせるよ」

 

背後でクロが低く言う

 

「お前にとっても大事な先輩だったんだな…あとはこっちの勝負だ。銃野郎の肉片食った悪魔をすぐ片付けてこいつを助けるぞ」

 

「うん…絶対に死なせない」

 

力が抜ける

嬉しかった

助けに来てくれて

 

――カチッ

 

 

 

 

 

 

 

目が覚める

横にいるのはデンジ君

朝の光、夢

 

でも違う

私は確かに見た

なのに思い出せない

大事なことなのに

 

でもわかる

今日、私たちは今までにない死地に立つ

 

生きたい

生きてみせる

またみんなと笑うために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日の定義ってなんだろう

二十四時間経てば明日になる?

僕は違うと思う

友達や家族が笑っていなかったら、その日は終わっていない

そこから時間が止まる

だから僕の明日は

姫野が生きて次の日を迎えること

絶対に死なせない

明日もまた、みんなで笑う

 

誰もいない部屋

それでも必ず帰ってくるという意志を込めて、ヒカリは笑った

 

「いってきます!」

 

8話で書いた裏設定について

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