【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい 作:もく
レゼ出てくるの結構後になりそうで申し訳ない
公園のベンチで、一人の人間と二人の人型の悪魔が並んでアイスを食べていた
「僕はあんまり働きたくないんだよね」
溶けかけたアイスを見つめたまま、気だるげに言った
「仕事は全部君たちに任せたいな。僕も君たちと同じだよ。マキマに拾われて、無理やり働かされてさ。そんな人生、君は受け入れられるの?」
視線がヒカリへ向く
「君、死ぬかもしれないんだよ? 少なくとも僕は、そんなのごめんだね」
ヒカリは少しだけ困ったように笑った
「……たとえそうだとしてもさ。僕はこの世界で、やりたいことがあるんだ」
天使の悪魔は首を傾げる
「変なの。ねえ白髪君、あと一本食べさせてよ」
苦笑しながらヒカリは立ち上がり、売店の列へ向かった
ベンチには強大な力を持つ悪魔が二人きりになる
しばらく沈黙が落ちたあと、クロが先に口を開いた
「どう思うのも勝手だけどよ」
前を向いたまま、淡々と言う
「今はお前も俺も生きてる。だったら、やりたいことくらい決めたらどうだ?」
天使の悪魔は目も向けずに答える
「悪魔らしくないことを言うね。僕は全部めんどくさいから、いつ死んでもいいと思ってるよ。マキマにこき使われる毎日も嫌だし」
「少しでもめんどくさくないことは?」
「食べることかな。でも途中で食べるのもめんどくさくなる」
クロは小さく鼻で笑った
「それでいいじゃねえか。美味いもん食いたい、それだけでも生きる理由にはなる」
天使の悪魔はわずかに目を細める
「でも働く理由にはならないよね。君が何を企んでるかは知らないけど、僕は真面目に働く気はないよ」
「じゃああいつに全部やらせりゃいい」
あっさりと言う
「お前は何もしなくていい」
「勝手に決めちゃっていいの? 白髪君、怒るんじゃない?」
「怒らねえよ。あいつは人それぞれの生き方を大事にするやつだ」
一瞬だけ、クロの視線が売店のほうへ向く
「あいつもな、バディがいると効率が下がるとか思うことあるだろうよ。でもそれでも、見捨てねえ」
天使の悪魔は少しだけ黙った
「本当に君たちは変わってるよ」
「だからよ」
クロはゆっくりと天使の悪魔を見る
「悪魔同士、契約でもしねえか」
空気がわずかに張り詰める
天使の悪魔の瞳が初めてはっきりとクロを捉えた
「……それ、本気で言ってる?」
「ああ」
短い肯定
「今後の仕事はサボっても構わねえ。その代わり――」
公園の風が乾いた音を立てる
「ヒカリがいつか、切羽詰まった状況で“本気で命令してきたら”、それを聞け」
沈黙
数秒がやけに長い
「それさ」
天使の悪魔が静かに言う
「君は、そうなる未来を知ってるってこと?」
「ただの予想だ。あいつ自身の未来は、なぜか見えねえ」
クロは視線を逸らさない
「あいつが寿命を使い切って死ぬまで、その時が来なきゃそれで終わりだ」
「……都合よく利用しないでほしいんだけど」
「もちろん俺のためだぜ?」
迷いなく答える
「俺の目的を達成するための契約でもある」
天使の悪魔はじっとクロを見つめる
そして、小さく息を吐いた
「君もちゃんと悪魔で安心したよ」
わずかに口元が緩む
「いいよ。契約成立だ」
空気がほんの少しだけ歪んだ
「この話はヒカリには内緒にな」
クロは立ち上がる
「悪魔同士、仲良くいこうぜ」
「……マキマの言う通り、めんどくさい」
それでも、どこか楽しそうだった
やがてヒカリが戻ってくる
「おまたせー、ちょっと並んでてさ。はい。……二人は仲良くなれた?」
クロはアイスを受け取りながら言う
「少し話したけどよ、こいつ働かねえってさ。マキマもちゃんと働くようになるまで二倍働けってよ。頑張れ」
「うへぇ……」
ヒカリが肩を落とす
その様子を見て、天使の悪魔はほんの少しだけ微笑んだ
それは、ごくわずかな変化だった
けれどその時間は確かに、彼にとって“めんどくさくない瞬間”だった
二人は、そのことに気づいていない