【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい 作:もく
ヒカリは俺の言葉を聞かずにそのまま先へ向かった
「…バカが」
追いかけた先で見たのは自身の目標を正面から叩き折られ立ち尽くすヒカリの姿だった
見えなかった
マキマが関わる未来だけは、直前まで
だからこの悲劇を生んだ
「ヒカリ…」
呼び掛けても返事はない
ヒカリはレゼの死体を見下ろしたまま何かをぶつぶつと呟いていた
「…なんで武器人間のことを見落としていた。マキマが成功する確信を持って天くんだけを連れてきたって勝手に思い込んでいたのか。あそこまで用意周到な女が別の策を考えないわけがないだろ…」
責めるのは世界ではない、マキマでもない
自分自身だった
それでも、その目だけは逸れてなかった
絶望を前にして逃げる選択肢を最初から捨てている、そんな目に見えた
何がそこまでヒカリを動かすのか俺には全てはわからない
でも1つだけ確かなことがある
コイツはこれ以上の絶望を過去にすでに味わっている
やり直しのできない世界で大きな後悔を心の中に残したからこそ、この力がある世界で希望を失うことはない
だから折れない、だから諦めない
だから今もずっと考えてるんだ
「ヒカリ、戻るぞ」
「…うん」
そしてまた時間が戻る
1度俺はヒカリの目に戻ることにした
「少し時間がほしい。マキマを倒す策を、レゼを救うために武器人間の対処を考えないといけないから」
『…わかった』
そしてヒカリはまた考える
「未来を知るものしか変えることができないならこの未来を回避できる力があるのは僕とクロだけ、クロをこっちに回すか…ダメだ、そしたらマキマの『ぱん』で即死だ。何回も死んでたら寿命が持たない」
ヒカリは絶対に諦めない
ただ一つだけ、致命的にズレている
『お前さ、いろんなもん背負い込みすぎなんじゃねぇの?』
「え?でも未来を変えれるのはそれを知ってる人だけなんじゃ…」
『他人に未来を知らせれば変えれるだろ、レゼにやったみたいにな』
「…できないよ、みんなを巻き込みたくない」
『それは…』
そのとき着信音が鳴った
『ちょうどいい、出ろ』
ヒカリは少し躊躇ってから電話に出た
「はい…」
『言ったよね、頼れって』
姫野だった
「…なんのこと?」
『バレバレだよ、また1人で全部どうにかしようとしてる』
『でも今回は違う、私のときとは違うんだよ』
『君1人じゃどうにもならない。それでも私たちを頼ることはできないの?』
なぜ姫野がそこまで察しているのか
心当たりはある。だが、今は口を挟がず黙って聞くことにした
「でも僕は…」
『いい加減にしてよ!』
姫野が声を荒らげる
こんなところは初めて見た
『いつまでも1人で進んでいって!』
『確かに君は強いよ、私なんか君の足元にも及ばない。でもね、君は1人じゃないの』
『君が私たちを守ろうとするように君を守ろうとする人がいるの!』
『私たちに手を差し伸べるなら私たちが差し伸べた手も取ってよ!』
「姫野…」
『私たちはさ、ずっと危険な仕事をしてるんだよ。いつも命懸けで戦ってる』
『迷惑なんかじゃない、私は君を助けたい』
『私は君のために戦える。みんなも、きっとそうだよ』
『だから…信じて』
ヒカリは黙り込む
まだ迷っているようだ
「…死ぬかもしれないんだよ」
『わかってる』
「…知らない方が幸せに生きられるんだよ」
『それでも私は君と一緒に背負ってみせる』
しばらく、ヒカリは何も言わなかった
電話の向こうで、姫野は急かさない
沈黙ごと受け止める覚悟で、ただ待っている
今度は、はっきり見えた。
これは命令じゃない、選択肢でもない
差し伸べられた手だ
ずっと手を差し伸べてきたヒカリが初めて差し伸べられた手
ヒカリは目を閉じる
ほんの少しだけ、肩の力を抜くみたいに息を吐いた
「……わかった」
たったそれだけの言葉だった
だが、その瞬間、確かに何かが変わった
ヒカリの中で、ずっと固く縛られていたものが、ほどけた
その答えに辿り着くまで、どれだけ遠回りをしてきたんだ
まあ、遅すぎるってことはないか。
そしてヒカリは
仲間と共にその未来へ向かって進み始めた
8話で書いた裏設定について
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知ってる ここには書かないで(他作品へ)
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知ってる 終盤に触れてほしい
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知らない