【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい   作:もく 

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ちなみに僕は次回以降の戦闘シーンが不安しかないです!


43話 開戦

私は、二道に辿り着いた

一度、深く息を吸ってから扉を押す

 

 

カラン、と鈴が鳴る

 

 

店内を見回すまでもなかった

いつもの席に、デンジ君はいた

花束を抱えて、少し緊張した顔で

 

 

「レゼ……」

 

 

名前を呼ばれて、胸がきゅっと縮む

 

 

「本当に来たんだ」

 

 

そう言いながら、無意識のうちに冷たい言葉を選んでしまう

 

 

「君は本当にバカだね。もう少し賢くなった方がいいよって言ったの忘れたの?」

 

 

嬉しい

本当は、それだけなのに

 

 

でも、まだどこかで思ってしまっていた

――巻き込みたくない、って

 

 

するとデンジ君は一瞬だけ目を丸くして、

それから、砂浜のときと同じ笑顔で言った

 

 

「じゃあ、レゼも一緒だな」

 

 

「俺と一緒に逃げたいって思ってくれたんだろ?」

 

 

そう言って、花束を差し出してくる

 

 

「……バカだなあ」

 

 

思わず、力が抜けた

 

 

「これじゃ上手く逃げられないよ」

 

 

「でもさ」

 

 

「レゼは受け取ってくれるだろ?」

 

 

その言葉に、もう逆らえなかった

私は花束を受け取って、小さく呟く

 

 

「……Спасибо」

 

 

「ん? なんか言ったか?」

 

 

「なんでもない」

 

 

私は顔を背ける

 

 

「行こう」

 

 

そう言って、二人で出口へ向かった。そのとき

 

 

「レゼちゃん」

 

 

呼び止められて、振り返る

 

 

「行っちゃうんだね」

 

 

「はい……今までお世話になりました」

 

 

そう答えると、マスターは静かに封筒を差し出した

 

 

「はい。退職金」

 

 

中を見て、驚いた

たった一ヶ月。しかもバイトなのに、十分すぎるほど入っている

 

 

「でも私……」

 

 

そう言いかけたところで、マスターが言葉を遮る。

 

 

「レゼちゃん」

 

 

柔らかい声だった

 

 

「短い間だったけど、君がここで働いてくれてる間、すごく楽しかったよ」

 

 

「今の私にしてあげられることはこれくらいしかないけどね」

 

 

少しだけ笑って、ヒカリ君と同じことを言う

 

 

「幸せになってね」

 

 

そして、私の隣に立つデンジ君を見た

 

 

「デンジ君。レゼちゃんをよろしく頼んだよ」

 

 

「……ああ!」

 

 

少し慌てた返事

 

 

「ありがとうございました」

 

 

深く頭を下げてから、私はデンジ君の方を見る

 

 

次の瞬間、身体がふわりと浮いた

 

 

「えっ——」

 

 

「この方が早いだろ!」

 

 

そう言って、デンジ君は私を抱え上げる

 

 

驚きよりも、可笑しくて、安心して、

思わず彼の服を掴んだ

 

 

二道の外へ出ると、空は明るかった

 

 

この先に何があるかは、まだわからない

でも――

 

 

今は、ただ

 

私は、彼の腕の中で、

少しだけ未来を信じてみようと思った

 

 

 


 

 

吉田と岸辺とクァンシは2人が店を出るのを見送っていた

 

 

花束を抱えたまま、慌てた様子で走り出すデンジ

その腕に抱えられ、しがみつくレゼ

2人とも笑顔だった

 

 

それを見て、クァンシが小さく息を吐く

 

 

「……可愛いじゃないか」

 

 

「何考えてんだ」

 

 

岸辺は視線を逸らさずに言った

 

 

「俺たちがやるのは、あの二人の護衛だぞ」

 

 

「わかってる」

 

 

「……行くか。会計頼む」

 

 

岸辺は立ち上がり、カウンターへ向かった

 

 

「はい。でも……お代は結構です」

 

 

「なぜだ」

 

 

マスターは少しだけ背筋を伸ばし、真剣な目で3人を見る

 

 

「ヒカリ君から聞いていると思いますが、お2人は私の恩人ですので」

 

 

そして、はっきりと続けた

 

 

「レゼちゃんを……二人を、お願いします」

 

 

クァンシは一瞬だけ黙り、それから頷いた

 

 

「ああ、わかった」

 

 

「またのお越しをお待ちしております」

 

 

3人は店を出た

 

 

 

 

 

――数分後

 

 

少し離れた場所でデンジとレゼは完全に囲まれていた

 

 

ビルの屋上から5人の武器人間が2人を見下ろしている

 

 

火炎放射器の武器人間が、軽い調子で声をかけた

 

 

「あれ? ボムちゃん来ちゃってんじゃん。マキマさん、やらかしちゃった?」

 

 

「ああ?」

 

 

デンジが顔を上げる

 

 

「マキマさん? どういうことだよ」

 

 

「デンジ君、降ろして」

 

 

レゼは静かに言った

 

 

「こいつらは公安の追手」

 

 

花束をそっと地面に置き、レゼはデンジの腕から降りる

 

 

「でも先生は味方だって――」

 

 

「たぶん、マキマ直属の部下……」

 

 

レゼは周囲を見渡す

 

 

「2対5、だね」

 

 

「まあ」

 

 

デンジは歯を見せて笑った

 

 

「全員ぶっ殺せば、レゼと逃げられんだろ? やってやんよ!」

 

 

胸のスターターを引く

 

 

レゼも、迷いなく首のピンを抜いた

 

 

「ま、そのための俺らだしな〜」

 

 

火炎放射器が肩をすくめる

 

 

「そんじゃ、心臓もらうよ。ボムちゃん」

 

 

5人が一斉に飛びかかろうとした、その瞬間

 

 

「蛸、墨」

 

 

吉田の声と同時に黒い煙が一気に広がった

 

 

「クァンシ、今だ」

 

 

「命令するな」

 

 

煙の中を切り裂くように、矢が放たれる

 

 

槍の武器人間へ

そして、鞭の武器人間へ

 

 

武器人間の身体が大きく弾き飛ばされた

 

 

「デンジ」

 

 

岸辺がデンジに呼び掛ける

 

 

「お前らは、剣と火炎放射器をやれ」

 

 

「お嬢さん」

 

 

クァンシが視線だけでレゼを見る

 

 

「ここは任せなさい」

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして向かいのビルの屋上

 

 

サムライソードの前に1人の人間が立っていた

 

 

「や、久しぶりだね」

 

 

「……ああ? 誰だテメェ」

 

 

「覚えてないなら別にいいよ」

 

 

姫野は軽く肩をすくめる

 

 

「私は君に一回やられちゃったからね。リベンジ、させてもらうよ」

 

 

「アキ君!」

 

 

少し離れた場所で、アキが静かに息を整える

 

 

「お願いだ……最後に力を貸してくれ……」

 

 

手で印を結ぶ

 

 

立てる指は、三本

 

 

「コン!」

 

 

狐の悪魔の腕が現れサムライソードを弾き飛ばした

 

 

「アキ!?」

 

 

「デンジ!」

 

 

アキは叫ぶ

 

 

「お前は目の前の敵に集中しろ!」

 

 

盤面は、完全に整った

 

 

 

デンジとレゼの前には、剣と火炎放射器の武器人間

 

 

「あーあ、分断されちまったよ」

 

 

火炎放射器が笑う

 

 

「ま、心臓はもらうぜ?」

 

 

「やってみろよ、バーカ!」

 

 

 

 

槍と鞭の前には、岸辺、クァンシ、吉田

 

 

「足、引っ張んなよ」

 

 

「ああ」

 

 

 

 

そして――

 

 

サムライソードの前には、姫野、アキ、コベニ、暴力の魔人

 

 

「なんで私なんですか〜!」

 

 

「よろしくね! コベニちゃん!」

 

 

「そんじゃ、やるか!」

 

 

「今度は……タマだけじゃ済ましてやらねえぞ」

 

 

 

こうして最後の戦いが、始まった




他作品を読んでる方向けに活動報告にて希望を取ろうと思っています

今作には関係ありませんが今後の活動に大きく影響を及ぼしますので出来れば回答をお願いします

8話で書いた裏設定について

  • 知ってる ここには書かないで(他作品へ)
  • 知ってる 終盤に触れてほしい
  • 知らない
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