【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい 作:もく
街中ではすでに戦いが始まっていた
槍と鞭
二体の武器人間を前に、岸辺とクァンシは一切の無駄なく距離を詰める
言葉はない
合図もない
それでも二人は、互いの動きを“知っている”
槍が振りかぶられた瞬間、岸辺が一歩踏み込む
同時にクァンシが横へ滑り、死角を奪う
槍が放たれる
凄まじい威力。コンクリートが抉れ、衝撃が空気を裂く
だが——
「どれだけ槍の威力が高くても」
クァンシは軽く身を沈め、紙一重でそれを躱す
「当たらなければ、意味はない」
次の瞬間、岸辺のナイフによる一撃が入る
重く、確実な打撃
長年、互いの“間”を信じてきた二人だからこその連携だった
鞭の武器人間が割って入る
鋭い一撃が岸辺を狙い——
「……っと」
だが、クァンシがその前に立つ
鞭がしなる
絡め取るような攻撃
クァンシはそれを受け止め、静かに言った
「私はね、同類なので」
口調は丁寧で、どこか柔らかい
「お嬢さんの攻撃は、効かないのですよ」
一瞬の隙
鞭が弛んだ、その瞬間を岸辺は逃さない
しかし槍が再び岸辺を狙う
今度は避けきれない距離
「チッ——」
クァンシの今の姿勢では間に合わない
そして音速を超える速さで槍が放たれた
ビルの屋上
風を切る音と同時に、サムライソードが踏み込んだ
最初に前へ出たのは、意外にもコベニだった
いつもと違って震えもしない手
そして足も止まることはない
包丁を逆手に構え、最小限の動きで斬撃を受け流す
正面からは受けない
逸らし、滑らせ、距離を保つ
「……っ」
息は荒い
だが判断は、驚くほど冷静だった
「おお!コベニちゃんやるぅ!」
暴力の魔人が声を上げる
そして前に出た
拳が唸りを上げ、サムライソードを押し返す
「変わるぜコベニちゃん!」
重い一撃
だがサムライソードも踏みとどまり、即座に反撃へ移る
「チッ……!」
その“次”をアキは見ていた
アキも前に出る
未来
ほんの数秒先
「——今だ」
無駄のない動き
予測通りの位置へ、確実に攻撃を当てていく
そこへ——
「ゴースト」
姫野の声と同時に透明な腕が現れる
一瞬
本当に一瞬だけサムライソードの動きが鈍る
「……くっ」
「ゴースト、3年寿命をあげるから」
姫野は歯を食いしばる
「今だけ、左手も使わせて」
増えた腕が絡め取る
完全には止まらない
だが、“流れ”は確実にこちらに来ていた
——はずだった
サムライソードは力尽くで振りほどく
ゴーストの拘束を掻い潜り、一直線にアキへと向かう
「アキ君!」
姫野の叫び
刃が振り下ろされる——
その瞬間
巨大な影が割り込んだ
何者かによる圧倒的な質量が、アキを薙ぎ払う
「——っ!」
吹き飛ばされながらアキは目を見開く
姫野も固まった
その先に立っていたのは
「マジかよ…!」
「沢渡……!?」
確かに死んだはずの女だった
8話で書いた裏設定について
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知ってる ここには書かないで(他作品へ)
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知ってる 終盤に触れてほしい
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知らない