【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい 作:もく
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音速を超える速さで槍が放たれる
その時だった
「蛸」
床から、黒い影が伸びる
一本の太いの触手
蛸の悪魔
「間に合ったみたいですね」
吉田が静かに立っていた
触手が岸辺を引き戻し、致命の一撃を防ぐ
「助かった」
岸辺は短く言う
「どういたしまして」
そこからは、三人の一方的な蹂躙だった
吉田が前線に出る
触手が視界を制圧し、動きを縛りつつナイフで刻んでいく
槍は自由を失い、
鞭は間合いを奪われる
クァンシは容赦しない
鞭には丁寧に、槍には雑で淡白でそして速い
「遅い」
「甘い」
「だから嫌いなんだ、こういうのは」
一瞬一瞬の積み重ね
やがて、武器人間たちは完全に押し切られた
最後に立っていたのは——
岸辺、クァンシ、吉田
戦いは、彼らの勝利で終わった
「もう1匹やってもよかったかもな」
「それは嫌」
「勘弁してください」
アキは体勢を立て直しながら、目の前の女を睨みつけた
(どっちだ……アイツは、どっちの味方だ……!)
確かに今、斬撃は逸らされた
薙ぎ払われたのは自分だ
だが——それは「助けた」と言えるのか
サムライソードと共に行動していた過去
そして“死体を支配できる悪魔”の存在
目の前の沢渡アカネが、本当に“本人”なのかすら確信が持てない
沢渡は面倒くさそうに髪を払った
「別にあんたらのためじゃないから」
視線はアキではなく、サムライソードへ
「私は私のために来た。……あんたらのお友達に唆されて、だけど」
⸻
決戦前、公安の地下施設
時間が止まった世界を、ヒカリは静かに歩いていた
冷たい蛍光灯の下、死体保管室へと入る
目当ては一つ、沢渡アカネの遺体
首のないそれに触れ、ヒカリは小さく息を吐く
能力を発動し、凍りついた時間を巻き戻す
肉が繋がり、血が戻り、鼓動が再生する
沢渡が目を開いた
「……どういうこと……」
混乱する彼女の視界に、ヒカリが映る
クロの力が、彼女の記憶の霧を払っていく
ヒカリは淡々と告げた
「思い出したかな。君は元々、民間のデビルハンターだった」
「マキマが小動物を支配するところを見てしまった。それで支配された」
「銃の悪魔との契約という体で蛇の悪魔の力でで公安を殺し、奪った銃をヤクザに流した」
沢渡の表情が歪む
ヒカリは続ける
「サムライソードと仲良かったよね。彼も今は支配されてる」
「助けたいなら、協力してくれない?」
冷たい言い方だった
優しさではない
同情でもない
「もちろん、君たちが殺した人間の罪は消えない。軽くもならない」
「でもさ」
ヒカリは視線を落とす
「僕はもしナイフで人が死んだ時、悪いのは“振った側”だと思うんだ」
「ナイフそのものは、ただの道具」
まっすぐに見る
「君はナイフ側だったはずだよ。まだ自分のために生きる権利はある」
沈黙
「どう? 僕の友達を助けてくれる? 用意できるのは刑期減免くらいだけど」
沢渡はため息を吐いた
「はあ……わかった。でも私は私のために戦う、それでいい?」
「もちろん——」
「ヘビ、丸呑み」
不意打ち
だが、何も起こらない
沢渡の眉が寄る
「……なんで出てこないのさ」
ヒカリは少し笑う
「ウロボロスってあるでしょ。蛇は昔、時間の象徴だったんだ」
「つまり蛇の悪魔は、時間の悪魔の眷属ってわけ」
「今は僕の領域内だよ」
「チッ……」
⸻
沢渡はサムライソードを睨みつける
「私はあいつがマキマに支配されてるのが癪なだけ!」
「ヘビ、薙ぎ払い!」
巨大な蛇の尻尾が現れ、サムライソードを横殴りに弾き飛ばす
アキが未来を見る
暴力が踏み込み、コベニが刃を滑らせる
それに抵抗するサムライソードの攻撃を蛇の尻尾が弾いていく
姫野のゴーストが一瞬、腕を押さえつけた
沢渡の力と4課メンバーの連携によってできたほんの数秒の隙
だがそれで十分だった
アキの刀がサムライソードの首に入っていく
そして——
サムライソードの首が飛んだ
そしてまた一つの盤面が、マキマの想定から外れた
静寂
アキは荒い息のまま沢渡を見る
敵だった女
そして、たった今共闘した女
沢渡は視線を逸らし、吐き捨てる
「勘違いしないでよ。でも……」
ほんの一瞬、声が揺れる
「支配されてたとはいえ仲間を殺した。悪かった」
謝罪なのか、区切りなのか
誰にもわからない
「少しだけ、2人きりにさせて」
アキは無言で頷き、サムライソードの左腕を完全に拘束する
トリガーを押さえ、再起不能を確認してから、距離を取った
沢渡はゆっくりと彼の前に立った
地面に転がる首と倒れている体を見下ろし、しゃがみ込む
「どうせ心臓は公安が回収する」
小さく笑う
「前のはたぶんマキマが保管してる。だからさ」
視線が、わずかに柔らかくなる
「普通の人間として生きることになると思う」
「私たちは人殺しだからしばらくはムショ暮らしかもね」
沈黙
そしてー風が吹く
「ねえ……チェンソーのこととか忘れてさ」
指先が、かすかに震える
「普通の人間として自由になったら、どっか田舎で私と暮らさない?」
返事はない
彼には聞こえていない
それでも——
その言葉だけは、嘘ではなかった
8話で書いた裏設定について
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知ってる ここには書かないで(他作品へ)
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知ってる 終盤に触れてほしい
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知らない