【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい 作:もく
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「やれやれ……人使い荒いんだから」
アイスを三つ抱えながらヒカリは小さく息をついた
あの二人を残してきたが、まあ大丈夫だろう
悪魔同士、簡単には死なない
――とはいえ
ふと、背筋に視線を感じた
横を見ると金髪の同年代くらいの少年と、オレンジ色の犬……いや、悪魔が立っている
少年の目はまっすぐアイスに向いていた
「この前、優しい兄ちゃんに食わせてもらったよな……うまかったよな……」
「ワフ……」
ヒカリは目を細める
(お、デンジとポチタじゃん。ラッキー)
「食べる?」
「いいのか!?」
「ワフッ!」
即答だった
ヒカリは少し笑った
(まあ、あの二人の分は後で買い直せばいいか)
三人は近くのベンチに腰を下ろした
ポチタはちょこんと間に座っている
「僕はヒカリ。よろしくね。一応デビルハンターやってるんだけど……君、人に危害は加えない子だよね?」
「俺、デンジ。ポチタは大丈夫だぜ。俺もデビルハンターやっててさ、ポチタとは契約してるんだ」
「ワフッ!」
ヒカリはそっとポチタの頭を撫でる
ふわりと柔らかい感触
(もふもふだし可愛すぎんだろ……)
「チェンソーの悪魔って聞くともっと怖いの想像するけど、いつもその姿なの? 戦闘中は変わったりするの?」
「ポチタはずっとこのままだぜ? まあ確かにイメージと違うよな。でもポチタはポチタだ!」
「ワフッ!」
ヒカリは微笑む
(うん、知ってる。でも……今はまだ“はじまってない”)
アイスを食べ終えると、デンジは満足そうに息を吐いた
「うまかったぜ! 前もこんな風に食わせてもらったよな、ポチタ!」
「ワフッ!」
「その人ってどんな人だったの?」
「雰囲気はヒカリに似てたな。髪は黒だったけどさ。俺を見たとき、ちょっと悲しそうな顔してたんだよな。また会いてぇな」
ヒカリは一瞬だけ目を伏せる
「……会えるといいね」
「だな! アイスありがとよ!」
二人は手を振って去っていった
ヒカリはその背中を見送り、静かに息を吐く
「さてと……もう一回並ぶか」
⸻
アイスを買い直して戻ると、二人はベンチに並んでいた
「おまたせー。ちょっと並んでてさ。……二人は仲良くなれた?」
クロはアイスを受け取りながら肩をすくめる
「少し話したけどよ、こいつ働かねえってさ。マキマもちゃんと働くようになるまで二倍働けってよ。頑張れ」
「さいですか……」
ヒカリは天を仰ぐ
(まあ、強要する必要はないか。頑張るのは嫌いじゃないし)
ベンチに腰を下ろす
「クロ、デンジに会ったよ。ポチタもまだ生きてた」
「まだはじまってねえからな。そういやあいつとアイス食ったな。お前が急にこの世界に来たとき、食いかけのままあいつらに押し付けちまったわ」
「それやっぱりクロのことだったんだ」
少し笑う
「それでさ、先生が言ってた週一の特訓相手って誰かわかる?」
クロはにやりとする
「喜べヒカリ。相手はお前の目的の最初のターゲット――姫野だ」
ヒカリの目がわずかに細まる
「で、どうするつもりだ? 姫野を強くするのか? なにがあっても完全契約はやめるよう説得するのか?」
ヒカリは空を見上げる
「その辺は来週考えるよ。この三年、上手く使ってみせる」
クロは満足そうに笑った
⸻
「すぅ……すぅ……」
気づけば、隣で天使の悪魔が眠っていた
睫毛が長く、遠目には少女のように見える
だが男だと知っている
「寝ちゃったか」
ヒカリは静かに立ち上がる
「気をつけろよ。そいつに触れると寿命が減るぞ」
「わかってるよ。でも多分、減るのは肉体の寿命だけだ。僕の力には直接関係ないと思う」
ヒカリは手袋をはめる
「肉体の寿命なら、時間の悪魔で補えるでしょ?」
「まあな」
クロは薄く笑う
「来週楽しみにしてるぞ。お前が姫野をどう変えていくか」
そう言って、クロは目の中へと消えた
ヒカリは天使の悪魔を背負う
思ったよりもずっと軽かった
「天使……てん……」
少し考える
「天くん、でいっか。よろしくね、天くん」
背中で規則正しい寝息が続く
本部へ向かう夜道を歩きながらヒカリは静かに呟いた
「おやすみ。また明日」
街灯の下、影が長く伸びていた