【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい   作:もく 

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もう1つの54話です
53話は契約について明かされないまま終えたのでこちらはヒカリがそのまま死んだ世界になります


もう1つの結末へ
54話 ヒカリがいなくなった世界


ヒカリが死んでから、あっという間に一年が経った

 

公安の墓地

無機質に並ぶ石の列の中にあいつの名前も刻まれている

風が吹くたび、草が揺れる

その中で、俺と天使はいつものようにその前に立っていた

天使がふと墓石を見下ろしながら呟く

 

「ねえ時間君、死体に法律って適用されるの?」

 

「さあな」

 

適当に返すと、天使はポケットから何かを取り出した

 

缶ビールだ

 

「じゃあさ、これかけてあげようよ」

 

「いつ持ってきたんだよ……」

 

呆れながらも止めはしない

どうせこいつなりの弔いだ。

だが、缶を傾けようとしたその手が、不意に止められた

 

「死人でも未成年だ」

 

低い声、呆れているように聞こえる

振り向かなくてもわかった

 

「……相変わらずだね、人間君。真面目な人はモテないよ」

 

天使が軽く肩をすくめる

その後ろから、もう一人

 

「そんなことないと思うけどなー」

 

ひょいと顔を出したのは姫野だった

アキの手にあるビールを当然のように奪おうとしているあたり、何年経っても変わらない

 

「お前らな……」

 

思わずため息が出る

 

「それだから先生に100点のデビルハンターって言われねえんだよ」

 

「うるさいなー。じゃあそっちはどうなのさ、毎週来ちゃってさ」

 

姫野が笑いながら言う

 

「俺らは元は狩られる側だ。関係ねえよ」

 

少し間を置いて、アキの方を見た

 

「……まあ、お前は前線はもうないから関係ねえか」

 

「こっちはこっちで大変なんだよ」

 

アキは短く息を吐いた

 

「今日も頼むぞ」

 

「はいはい」

 

軽く手を振って返す

アキはもう前線で戦うことはない

——こいつは今、公安デビルハンターのトップだ

マキマの後任として就任した

聞くところによると、殉職率はかなり下がったらしい

任務の振り分けは実力に応じて細かく分けられ、報酬も比例する

無理をさせない、死なせない

あいつらしいやり方だ

 

そしてもう一つ

死人が減った理由

それが俺だ

アキは俺と契約し、未来を“結果だけ”見ることができる

誰をどこに送れば死ぬのか、生きるのか

 

未来の悪魔でもできたことだが——

あいつはヒカリが死んですぐに

「未来……最悪……」

とか言って勝手に死にやがった

仕方ねえから取り込んだが、強化されるだけで、契約用の悪魔が減ったのは地味に痛手だったらしい

 

そんなことを考えていると、アキがふいに口を開く

 

「クロ、ちょっといいか」

 

その声に呼ばれて、場所を移した

向かった先は、かつてマキマが住んでいたマンション

今は誰もいない、静かな部屋

 

「どうした?」

 

中に入ると、アキは机の上に置かれたものを差し出した

DVDと、一枚のメモ

 

「いい加減片付けようと思ったんだが……こんなものが見つかった」

 

DVDなんて最近出てきたものだろ、悪魔のくせに金持ちだな

 

だが、再生した瞬間——

画面に映った顔で、空気が変わった

 

『これを見つけたのは誰かな』

 

柔らかく笑う女

 

『私の予想はアキ君とクロ君。当たってた?』

 

「……なんだこれは」

 

思わず呟く

 

『これを見ているってことは、私はヒカリ君に負けちゃったっぽいね』

 

軽い調子

まるで、結果なんてどうでもいいみたいに

 

『これは万が一のために残しておいたものだよ』

 

アキは無言で画面を見ている

俺も黙って続きを聞いた

 

『彼の意思は強かった。私が全力で相手して、それでも負けたとしたら——この先の未来が不安だったから』

 

『これと、メモを残してあります』

 

……あいつもこういうのやるんだな

どっかの映画にでも影響されたのか

 

『1999年7月。人類が滅亡するというノストラダムスの大予言』

 

一瞬、空気が凍る

 

『これは本当』

 

「……」

 

『たぶんクロ君でも、認識できてないことだけどね』

 

言われて、ふと気づく

最近、人間の未来をまともに見ていなかった

だがもし——

今見れば街を歩く人間のほとんどが、同じ未来を持っているのだろう

 

1999年7月にほとんどの人間はそこで死ぬ未来を示す

 

『私の予想だけど』

 

画面の中の女が、わずかに目を細める

 

『ヒカリ君は、私との戦いで寿命を使い果たしている』

 

「……」

 

『でも、それを止めることができるなら』

 

『ヒカリ君が必要だと、私は考えているの』

 

静かな声だった

初めて、少しだけ本気に聞こえた

 

『だからヒカリ君は配下に欲しかったなー』

 

「……こいつ」

 

思わず舌打ちが出る

重要なことなのに遊んでやがる

 

『だからアキ君とクロ君に、私から最後の仕事』

 

『この部屋に“監視の悪魔”を封印しているの』

 

『私の眷属。優秀だけど、この先は役に立たない』

 

『私が死んでいる以上、この子のことは好きにしていいからさ、彼を生け贄に——』

 

ほんの一瞬の沈黙

そして、最後の言葉が落ちる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クロ君の力で——ヒカリ君を蘇らせて』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『困ったら私を蘇ら「黙れ」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作で二部が終わったので見切り発車でこちらは二部を書き始めることにしました
途中でやめてしまう可能性大ですが引き続きよろしくお願いします(既に次回が未定です)





チェンソーマン完結しちゃいましたね…
ハッピーエンドではあったんですけどやっぱりコレジャナイ感が…
何より謎が残りすぎてしまってこれが書きにくい!(それはどうでもいい)
でも友達に薦められて読めて本当によかったです
続きあったらいいですね
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