【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい 作:もく
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「今日からお前と週一で特訓する姫野だ」
岸辺の低い声が訓練場に響く
「よろしくね~」
軽い調子で手を振る姫野
「よろしくお願いします」
ヒカリは素直に頭を下げた
今日は岸辺が勝手に決めた週に一度の特訓日
その間、他の4課の誰かが仕事に出る
強力な悪魔が出なければ暇だ。だが出れば――死ぬ可能性の方が高い
岸辺は腕を組む
「とりあえず殴り合いだ。クロは目から出て待機。天使とでも遊んでろ」
「ガキじゃねえっつうの」
クロが姿を現す
「大人しく見てりゃいいんだろ」
「ねえ先生、アイス買ってよ」
天使の悪魔がだらけた声を出す
「金はやる。自分で行け」
岸辺は姫野を見た
「15だからって手加減するなよ。こいつはお前と違って100点のイカれたデビルハンターだ」
「えー私50点だったのにぃ?」
「毎月バディの墓参りしてるうちはネジは固いままだ」
姫野の笑みが一瞬だけ薄くなる
「……ふーん。まあよろしくね、天野ヒカリ君」
⸻
殴り合いは、想像以上に拮抗した
姫野は酒と煙草のイメージとは裏腹に、動きが鋭い
無駄がなく、視線が読めない
ヒカリも未来視なしで紙一重だが避け続ける
互いに一撃も当たらないまま、10分が過ぎた
「結構ゆっくり食べてたのにアイス終わっちゃった」
遠くで天使の悪魔が呟く
未来を覗いていたクロが微妙な顔をする
「あー……そろそろ終わるな。変な感じで」
(ひっでえ負け方だな、これ)
⸻
ヒカリは息を整える
(思ったより強い……でも疲れが見える。ここだ)
踏み込む
拳が姫野の顔へ――
姫野はわずかに反応が遅れ、後ろに下がる
拳は逸れ、胸元に当たった
「あっ……」
「えっち!」
次の瞬間、ヒカリの顔面に完璧な蹴りが入りヒカリは倒れた
「信じらんないよ女の子相手に顔狙うとかさ〜」
姫野は笑いながら近寄り、ヒカリの頬をぐりぐり押す
「子供なのによくないぞ〜、うりゃうりゃ〜」
「痛い… し、仕方ないじゃん! 一番鈍るところだったんだから!」
「じょ〜だんだよも〜!やっぱ男の子からかうのがいっちばん面白えや」
そこに岸辺が歩み寄る
「なんだ。女慣れしてないのか」
ヒカリが顔をしかめる
「じゃあ別の特訓が必要だな」
「未成年を変な店に連れてかないでくださいよ、せんせー」
「お前は俺をなんだと思ってる」
姫野が茶化し、岸辺がすぐ返した
そしてヒカリを見下ろす
「姫野との特訓は中止だ。ヒカリは中国で俺の知り合いに稽古をつけてもらう」
ヒカリの顔色が変わる
「……待ってください。他の人ならいいですけど、あの人だけは」
「知ってるのか。なら話が早い」
岸辺の目は冷たい
「お前、女相手だと無意識に急所を外すな。顔は狙えるくせに、胸や特定部位は避ける。ネジが外れ切ってねえ」
ヒカリは睨む
「敵が女でも躊躇なく殴れ。じゃないと一生お前の敵は倒せないぞ」
「……あんた最低だよ」
「言ったろ。デビルハンターに向いてるのはイカれた奴だ」
岸辺は煙草を咥える
「目的を果たしたいなら、最高にイカれろ。断っても連れて行く」
沈黙
「ねえ先生」
姫野が割って入る
「今夜新人歓迎会あるんだけど、ヒカリ君も参加させてよ」
「ちょうどいい。歓迎会の後、そのまま飛ばす。稽古が終わるまでほぼ無期限休職だ」
「イカれてる」
「15でデビルハンターやってる君が言う?」
姫野は笑った
⸻
4課 新人歓迎会
「「「「「かんぱーい!」」」」」
ビールの泡が揺れる
飲めない二人だけがジュースを持っていた
「まさか三人しか入らないとはねー」
姫野はヒカリをちらりと見る
(しかも一人は明日から消えるとか……私のせい?)
「自己紹介いこっか?」
ヒカリは頷く。
「天野ヒカリです。時間の悪魔と契約しています。よろしくお願いします」
「時間の悪魔。適当にクロって呼んでくれ」
クロが軽く手を挙げる
「面白い未来描ける奴なら契約してやる」
「じゃあ私と契約してくれる?」
姫野が笑う
「しょーもない未来しか見えねえから却下」
「ちぇー」
「早川アキです」
黒髪の青年が静かに言う
「契約悪魔は狐です」
「何歳?」
「18です」
ヒカリは目を丸くする
「三つも上かー。アキ先輩? 早パイ?」
「それだけはやめろ」
(15でデビルハンター……まだ子供じゃないか)
「じゃあアキ先輩で」
そこへ、
「ごめんね。少し仕事が残ってて」
マキマが現れた
空気がわずかに張りつめる
「仲良くなれそう?」
「みんな優しいですよ」
ヒカリが口を開くとすぐ岸辺が割り込む
「マキマ。ヒカリは中国に送って鍛え直す。休職扱いだ」
「その間の穴は?」
「俺が埋める」
クロが言う
「どうせあいつは力使わせてもらえねえ。俺が働けば戦力十分だろ」
マキマは微笑む
「君、少し変わったね。わかりました。クロ君、ちゃんと働いてね」
「……僕行くの確定なんですか」
ヒカリがぼやく
「せっかくの機会だもの」
マキマの視線は優しい
「ちゃんと強くなって、4課に貢献してね。期待してるよ」
ヒカリはジュースを一口飲む
甘いのに、少し苦かった
人によっては次あんまり好きじゃないかもしれません