【本編完結】時間の悪魔はデンジとレゼを幸せにしたい 作:もく
中国
「来たか」
高い建物の屋上。風が強い
「腐れ縁からの依頼だ。報酬も振り込まれている。仕方がない」
女は振り返る
「今日からお前を鍛える。クァンシだ」
ヒカリは一瞬だけ視線を逸らした
「……よろしくお願いします」
「顔は悪くないが、まだ幼いな」
クァンシは淡々と告げる
「私は相手が子供でも容赦はしない。あのバカが甘やかしたせいで中途半端にイカれたお前を、ちゃんと“イカれた”デビルハンターにしてやる」
⸻
初日
「遠慮はいらない。本気で殺しにこい」
次の瞬間、ヒカリは地面に叩きつけられていた
呼吸が詰まる
「何その程度で動揺している。健全な15歳ってところか」
冷たい視線
「そんな甘さじゃ、適当な女の魔人に殺されるのがオチだな」
立ち上がる
また倒される
「その程度であの女を殺せると思っているのか」
そして言葉が刺さる
「私一人に傷一つ与えられないなら、この先命がいくつあっても足りないぞ」
ヒカリは歯を食いしばる
「……所詮クソガキの戯言だな。言葉に実力が追いついていない。ただのカスだ」
⸻
一ヶ月後
地面に倒れ込んだヒカリに、紙袋が投げられる
「……これ食うか? うまいぞ」
ヒカリは目を瞬かせる
「毒は入ってない」
「……疑ってないですよ」
クァンシは横に座らない
少し距離を空けたまま一緒に食べていた
「上達はしている。まだまだだがな。今日はここまでだ。休め」
以前よりも、倒される回数は減っていた
だが未だに勝つことはできなかった
⸻
三ヶ月後
「今日は私に来た依頼をお前がやる」
「え?」
「倒せたらご褒美をやろう」
現れたのは大型悪魔
ヒカリは時間を駆使して辛うじて討伐する
帰還後
「ほら」
クァンシが無造作にヒカリの頭を掴む
ぐしゃぐしゃと、乱暴に撫で回された
「な、何するんですか」
「褒めている」
そのまま一日中、暇さえあれば肩を掴まれ、頭を撫でられ、頬をつつかれる
「……師匠、近いです」
「嫌か?」
「嫌っていうか……落ち着きません」
「そうか」
それでもやめない。だが以前の殺気はない
どこか、奇妙に穏やかだった
⸻
半年後
ヒカリは確実に強くなっていた
女相手でも躊躇なく急所を狙えるようになり、
それでも“必要以上に壊さない”加減を覚えた
ある夜、荷物をまとめるヒカリの前にクァンシが立つ
「待て」
「……そろそろ帰ります」
「もう帰るのか?」
視線がわずかに揺れる
「今後は武器人間と戦うことも増えるだろう。全力の私と戦って慣れておけ」
静かな声
「まだ帰らせない」
ヒカリは違和感を覚える
その言葉は、命令というより――
引き留める響きだった
「……心配なんですか?」
クァンシは目を細める
「勘違いするな。ただの合理性だ」
そしてその夜
「ああああああああああ!!!!」
屋上に叫びが響く
だがその戦いの中で、ヒカリは“躊躇なく殺しに行く目”を手に入れた
そして同時に、“殺さずに止める技術”も
結局、帰国までに一年かかってしまった
⸻
「――まあそういうわけで、なんやかんや一年かかりましたとさ」
「お前も大変だな、特に後半」
クロが肩をすくめる
「撫でられ続けたのは精神的にきつい、死にかけたよ」
「1年でなんかあった?アキ先輩の呪いの悪魔との契約は止めれた?」
「よくも悪くもアキにはちゃんと友好的な悪魔として認識されたからな。俺はもう完全契約しているわけだし呪いの悪魔の代わりに眷属の未来のやつに契約させた。」
「僕が干渉できなかったからそっちでなんとかしてくれて助かったよ。ありがとう」
そんな話をしながら二人は東京本部へ向かった
⸻
「あれ、ヒカリ君じゃーん!」
姫野が手を振る
「アキ先輩! 悪魔嫌いは直りました?」
「直るわけないだろ、それに直す必要もねえ。……まあクロは別だ」
クロが鼻で笑う
「変に恨み買いたくねえからな」
再会の空気は温かい
だが、アキの目は少しだけ硬かった
再会に喜びつつ3人とクロはマキマの仕事部屋に入室した
「まずはおかえりヒカリ君、お土産はあるかな?」
「1年間人類最強の格闘能力を持つ人に倒され続けた人間がお土産なんか持って帰れると思ってるんですか?」
「でも君は1年も殺されそうになってた割には死にそうな顔してないからねー。後半はイチャイチャしてただけなんじゃないの~?」
「そんなわけないでしょ。あなたと違ってあっちの眼帯女…師匠はマジもんの鬼、ていうか悪魔よりも悪魔っぽい人でしたよ。特訓前後の対応は多少緩くはなりましたけど勝手に特訓追加して帰国できないようにされたんですよ。でもまあ……強くなれましたよ、今なら躊躇なく姫野先輩を殴れちゃいます!」
「うわっ!ヒカリ君さいてーだ!」
姫野も1年離れても変わらず親しく接することができている
話したのはせいぜい2日程度だが姫野のコミュ力は凄まじかった
「4課の人間はかなり死んだ。補充はされたが……減らせる犠牲は減らしたい」
ヒカリは頷く
「うん。今度は僕もちゃんと守る」
そしてマキマが口を開く
「ヒカリ君が帰国したからクロ君が正式に働くのは今日までだね。明日からはまた天使君と組んでもらうよ。明日からの仕事については去年と変わらないから去年みたいに死傷者を減らしつつ悪魔を倒してね」
「はい、またお世話になります」
そしてヒカリは公安に復帰した
⸻
翌日から
今回の仕事は東京に溢れたゴキブリの悪魔の処理、4課全員が動員された
「ゴキブリは気持ち悪いから嫌いなんだよね。5年使用」
そして一閃
天使の悪魔もまた何かが変わろうとしていた
「終わったよ。今日はもう休んでいい?」
「ありがとう天くん、僕は他の人のカバーに行くからその辺で休んでて」
ヒカリは自身を加速し東京中を駆け回る
「…たまには自分でアイスを買おうかな」
「ひー!今のゴーストの力じゃ1匹しか抑えられないよー」
「コン!もう少し抑えててください!」
姫野とアキは4匹のゴキブリの悪魔の相手をしていた
最初こそ上手く対処していたがゴキブリの悪魔の生命力は強くだんだん追い詰められていた
「こりゃ死ぬまではなくても無傷は無理だねー」
「っ…!ヒカリが来ます!動かないでください!」
未来を見たアキが姫野に指示をした次の瞬間、
自身の時間を早め、高速移動するヒカリに4匹のゴキブリの悪魔が一瞬で処理された
そしてヒカリは次の場所へ向かっていく
「いやー速いね~、一瞬で細切れだよ。たしか自分が強くなったから寿命の消費が抑えられてきたんだっけ。もう東京のデビルハンターはあの子1人で大丈夫かもねー」
「1人で戦うにも限界はあります…だから俺たちは少しでもあいつや他の人の負担を減らすために強くならないと」
「アキ君は優しいね。ま、私たちが強くならないといけないのは事実だもんね。まだ16歳の男の子に負けてらんないね」
2人がさらに強くなることを求めた瞬間だった
⸻
そうしてヒカリたち4課が悪魔を倒し続けてさらに2年が経ったある日
「ゾンビの悪魔が出たんだって。ヒカリ君は行きたいかな?」
ヒカリはマキマに呼び出されていた
「休日に呼んでそれですか?休みなしで働かせるつもりなら僕すぐにやめちゃいますよ?」
マキマは態度や発言を咎めることなく優しく微笑んだ
「それは困るね。じゃあ私だけで行ってくるよ」
デンジが来る
そして、マキマとの決着の時も近付いてきていた