プリンセスコネクト!!Re:DIVEアナザーストーリー   作:タピオカ&ピスタチオ

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聞き込み調査

 ――ランドソル城内 AM0:23:55 ――

 

ペコリーヌ「ビデスさん、ですか? その方とカイトくんが」

 

トモ「うん、マツリちゃんが朝方見たって」

 

ペコリーヌ「そうですか。どこに向っていたかはわかりますか?」

 

ジュン「ギルドに確認したんだけど、元々はギルドに所属していた冒険者だったそうだよ。でも、もう十数年以上前に引退して、そこから商人として、ランドソル中央部から南部にかけて卸しを担っていると」

 

トモ「個人情報を見ず知らずの人が閲覧するのはダメなんだけどね、本当は。でも、ユースティアナ王女、王家の火急の頼みとなれば手段を模索している時間はないから」

 

ペコリーヌ「ありがとうございます。となれば、行商のルートから割り出すのが一番手っ取り早いですね」

 

 ペコリーヌは地図を取りに向おうとしたが、トモが先んじて卓上に大まかな地理を纏めた鳥観図をひろげてみせた。

 

ジュン「実は既におおよそは確定しているんだ。ギルドからの情報と行商のルート、そしてそのビデスさんの知り合いから得られた情報……これは確証があるとは言い切れないけれど」

 

 そう言ってジュンは漆黒の鎧に身を纏った無機質の手指で指示した。

 

ジュン「先ず、午前10時27分ごろ、へーべ丘陵を望むジュノー平原中南部……駆け出しの冒険者にとって格好の採集ポイントだね」

 

ペコリーヌ「過去に私たちも行ったことがあります」

 

ジュン「うん、それでこのビデスさんは屡々採集地点一帯で冒険者相手に商売しているとの報告が実際に駆け出しの人から上っているんだけれど、日中——昨日のだね、そこに助手かお手伝いかわからなかったけど、子供がいたって。見た目や服装から恐らくどこかの貴族なんだろうってことだけど」

 

 ジュンは幾つか現場で目撃した人からの情報を基に人相書きしたものを鳥観図の上に載せた。

 

ペコリーヌ「あっ! この子です!」

 

 ペコリーヌは若干脚色されたり貧相に見えたりして微妙に本人とは言い難い絵面ながらもポイントを抑えていたことから即断した。

 

ジュン「そうか。じゃあ確定だね。ならビデスさんのルートを追跡していて正解だったよ」

 

トモ「ジュンさん」

 

 トモは黒筆で或る町を丸で囲った。

 

ペコリーヌ「ここが、そうですか?」

 

ジュン「ああ、この町がビデスさんの戸籍が届けられている住所地だね」

 

 ペコリーヌはその町に目を向けながらも、意識の方は更に南へと落ちていた。

 

 

 

 ――ギルド本部 AM2:22:18――

 

サレン「で、カイト君を捜索していたのね」

 

コッコロ「その通りでございます」

 

サレン「一度だけ会ったわよね……そう、あの子が。確かに不思議な子だったわよね。綺麗な顔立ちに、上等な恰好、てっきり貴族街の御子息かと思っていたわ」

 

コッコロ「むぅ、私も当時はあの方について理解し切れていなかったもので。そのような誤解が生れてしまったこと、面目次第もございません」

 

サレン「別に構わないわ。けれど、ちゃんと説明していて欲しかったわ。そうすればこちらとしてもいろいろと構ってあげられたと思うし」

 

 コッコロは深々と頭をたれた。

 

サレン「ふふっ、別に責めてる訳じゃないわよ。あんたもあんたの主様も、どこか抜けているけど、気にかけてしまう、変な所があるのよね」

 

コッコロ「ありがとうございます。そう言っていただけるのでしたら嬉しゅうございます。主様はここの所ご立派になられて、私の方が頼ってばかりでございます」

 

サレン「そんなことないでしょう。寧ろあんたがそう思っている以上に、ユウキもあんたの献身に助けられていると思うわ」

 

 コッコロはそう言われて、口べに薄く笑みを浮かべて、喜ばしさを隠せずにはいられなかった。が、すぐに事の深刻さを思い出し、気を引き締めた。

 

コッコロ「それで、サレン様は何故このような夜更けの時分にこちらへいらっしゃったのでございましょう?」

 

サレン「え、私? 私なら、王城に召集されて、何でも今日いっぱいの業務配置の置き換えがあるとかって……あっ、そういうこと!」

 

コッコロ「恐らくご推測の通りでございましょう。私はペコリーヌ様とキャル様よりとあるお方の身辺について探って欲しいと頼まれまして、その際に、ギルド本部のカリン様を訊ねるよう言づかりまして」

 

サレン「それで当のカリンさんは?」

 

コッコロ「ご不在のようでございます……。サレン様は何かご存知ではありませんか?」

 

 サレンは口許に指をあてて考え込む仕種をした。

 

サレン「——そういえば、カリンさんではないけれど、フォレスティエのミサトさんと自警団(カォン)のカスミさんが走っていくのを見かけたわよ」

 

コッコロ「お二人が? どうしたのでしょう」

 

サレン「さあ、でも、あの二人の急ぎようといい、カイト君のことといい、どうも無関係とは思えないわよね」

 

コッコロ「……」

 

〇或る町 AM4:38:29 

 

獣人族の男「本当にオメエも行くのかよ」

 

オレット「何? 一緒についてきちゃ悪い?」

 

獣人族の男「悪いって訳じゃねえがよ。ほら、ラカンもいるんだしよ」

 

オレット「あの子は近所さんに預けたから大丈夫よ」

 

獣人族の男「近所にって……大丈夫なのかよ、本当に」

 

オレット「大丈夫は大丈夫よ。伊達に数十年この町に暮していないわ」

 

獣人族の男「……そんなオメエがだよ。どういう風の吹き回しだ?」

 

オレット「乙女の秘密よ」

 

獣人族の男「乙女って……オメエ、そんなトシじゃぁ——何でもねえよ」

 

オレット「ほら何してるのよ。アンタもいっぱしの商人でしょ。お客さんへの対応は迅速にお願いするよ」

 

獣人族の男「何様だよオメエは……」

 

オレット「時間は待ってくれないよ! 早くなさい、ビデス!」

 

 獣人族の男——ビデスはオレットに急かされ、眠気眼を擦りながら馬を連れに駈けて行った。冬空はまだ明ける様子はない。ツンと鼻奥に沁みるような凍える寒さが大気を揺らしている。

 

オレット「……はぁ、まったく。早起きしなきゃいけなかったってのに」

 

 本来は少年をランドソルへ送って行くための早起きは、ゴタゴタあって、少年はなしに、加えてオレットを乗り入れて行くことになっていた。オレットは流石は子育ての経験があるからか、軽い仮眠を摂っただけにも関わらず精健であった。数年以上外的要因に煩わされる日夜を送っているとこれくらいの事なんてことないらしい。そして、オレットは一度心境に変化があれば、すぐに行動に移すだけの逞しさのある女でもあった。

 

オレット「アタシも向き合わなきゃだね……坊ちゃん」

 

 遠くから手綱を引いたビデスが遣って来た。

 

ビデス「おい、さっさと出発するぞ。今からなら昼ごろには到着すんだろ」

 

オレット「……久々だねぇ、ランドソルも」

 

〇ランドソル商業区 AM4:54:23 

 

ペコリーヌ「皆さん! 準備はいいですかぁ!」

 

コッコロ「ええ、私も主様も問題ございません」

 

キャル「近所迷惑でしょうが!」

 

 キャルのツッコミに紛れながら、ユウキは大きく頷いた。

 

ペコリーヌ「そういうキャルちゃんも日も明けていないのにうるさいですよ」

 

キャル「ここ最近でいっちばんっあんたをぶっ飛ばしてやりたくなったわ!」

 

ペコリーヌ「暴力はよくないですよ☆ キャルちゃん!」

 

キャル「……後で覚えときなさいよ」

 

 ユウキはそんな二人の言い合いを聞きながら、一人明後日の方を見ていた。先ほど、ギルドの面々がここに集うより少し前のことだが、ばったりと会ったラビリスタとの会話を思い出した。覇瞳皇帝との戦いの際に、ユウキはラビリスタの本性に迫る経験をした。その経験からして、先ほどのラビリスタとの会話には、ユウキの伺い知る筈のない物事をより深く洞察し、或いは身に覚えがあるのかもしれない。

 

コッコロ「……主様」

 

ユウキ「うん」

 

コッコロ「参りましょう」

 

 ユウキはコッコロの呼びかけにすぐ応えた。見ればキャルもペコリーヌもいつの間にか城壁の麓へと向かっていた。キャルが喧嘩腰に、ペコリーヌが宥めているのかおちゃらけているのかわからない掛け合いをしながら。ユウキは腰に佩いた剣の柄に手を添えた。ラビリスタの懸念の通り、自身の力を用いる場面が来るだろう事に何んとなしに勘付いていた。最早、躊躇いはなかった。

 

〇美食殿ギルドハウス AM3:46:17 ペコリーヌ視点

 

ペコリーヌ「ただいま帰りました☆」

 

キャル「あら、もう終わったの?」

 

ペコリーヌ「はいっ! 政務の引継ぎもバッチリ、それに沢山情報もいただきましたから、何時でも出られますよ」

 

キャル「ほんと!? 情報って、何がわかったのよ!」

 

 キャルは猛然と問うた。その凄みにペコリーヌは珍しく気圧された。

 

ペコリーヌ「ちょ、ちょっと、キャルちゃん! ちゃんと話しますからストップ、ストップしてください!」

 

 キャルはペコリーヌの言葉を聞いて、なおも数瞬ついぞ掴みかかりそうになっていたが、漸く意義を咀嚼し終えたようで、前のめりになっていた体の重心を戻し、一息吐いた。

 

キャル「……何がわかったの?」

 

ペコリーヌ「はいっ、順に説明していくんですけど、その前に一番重要な点を伝えておきますね。カイトくんの行方がおおかた絞れました」

 

キャル「そ、そう! それは良かったわ」

 

ペコリーヌ「……」

 

キャル「……ペコリーヌ? ——おおかたと言うのは?」

 

ペコリーヌ「これは手に入った情報とはちょっと関りが薄いのですが、私の予想が正しければ、事はそう単純ではないのかもしれません」

 

キャル「……詳しく話しなさい」

 

 緩みそうになった気が冷や水を浴びたような感覚によって落着きを取り戻したキャルは、段々と強まっていく鼓動を直に聴いていた。鼓動を発する心臓が冷えていく体に対して妙な熱を帯びていった。

 

ペコリーヌ「そうですね、じゃあNIGHTMAREの皆さんやギルドの方々に協力いただいて得た情報を前提としてお話ししますね」

 

 ペコリーヌは先ほど、NIGHTMAREのメンバー、ジュンやトモから口頭で説明を受けた事を半ば端折りながら語り聞かせた。ビデスという獣人族の男の事、彼の職業、大まかな経歴まで、カイトが知り得ているような確信や個々人の心情までは当然ペコリーヌにもNIGHTMAREにもギルド本部にも知り及ぶはずがなかったが、あの場でペコリーヌだけは何故カイトがビデスの手を借りて、『南』へ向ったのがわかっていた。というよりも、南と言われて、そしてビデスの暮す町へ向っているだろうという予測を聞いて、『何故南でなければならないのか』という見地に立った時、己ずとそれらしき理由が見えて来た。

 

ペコリーヌ「——恐らく、カイトくんはあの森を目指しているのだと思います」

 

キャル「……何かあるのね、やっぱり」

 

ペコリーヌ「あれ、キャルちゃん知っていたのですか?」

 

キャル「知ってたってより簡単な推測よ。わざわざ、ウチから家出して、多分知らないヤツと共に向かわなければならない理由。アイツの言動とか、こっちに来てからの行動範囲なんかを鑑みると、大体検討はつくわ」

 

ペコリーヌ「あの日、カイトくんをたまたま見つけた時、キャルちゃんの目から見て森に不自然な点はあったりしました?」

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