ザ・ファットマス・サクセス ─The most powerful destruction─ 作:大地の杖
ファットマスとして勝ちを連ねるコウジ。
そんなある日、無差別級タイトルマッチの誘いが来る。
相手は通称【フィルド・グラトニー】、イート・フィルドという名の黒人のスーパーヘビー級だ。彼は実に恵まれた体格をしており、その身長体重は190cm200kgに及んだ。
「質量対質量?面白いじゃないか、この話乗った!」
しかしファットマスは自らの質量を過信していた
彼は179cm、149kgという彼の足元にも及ばない程の質量の差があったのだ。
「しかしこの男…どこかで見たような…」
来たる当日、ファットマスは彼の質量を目の当たりにする。
それは一言で表すなら「肉塊」だった。だが単なる肥満体ではない、確かに内に筋肉を蓄えた計算された身体だった。
彼はファットマスに祈るように告げる
「おまえが俺を解放してくれた 今度は自分の番だ」と。
聞けば彼はなんと「ザ・モーストマスキュラー」であると言う。
彼もファットマスと同じく父の教えという規範から放たれ食の喜びを享受し、スーパーヘビー級への転向を果たしたのだ。
トラッシュトークが終わり試合のゴングが鳴ると同時にイート・フィルドから200kgの質量を乗せた平手打ちががら空きの腹に向かい放たれる!
これをファットマスは「ファットマススタイル・ダメージコントロール」によりダメージを受け止める!
だがその瞬間ファットマスの心の内に異常が起きた。
父の教えを守り、敗けを連ねるあの頃の記憶がフラッシュバックしたのだ。
この技こそ彼を【グラトニー】と言わしめる技、「グラトニー・ショック」だった。
負の念を相手に叩き込み、最も「飢えていた」その瞬間をフラッシュバックさせる妙技であった。
イート・フィルドはおもむろにしゃがみこみ、抱きしめるようにタックルをぶちかます。
この技こそ彼を【グラトニー】でありながら【フィルド】であると言わしめる技、「フィルド・スピアー」だった。
そのすべてを抱きしめるようなスピアーは、相手の最も「満たされた」その瞬間を想起させる愛の質量による技だったのだ。
こいつも「愛の質量」持ちか!
ファットマスは難敵であると気を引き締めようとするがフィルド・スピアーにより満たされた心が戦闘本能を和らげる。
そして「愛の質量」とファットマスの戦闘スタイルとは実に相性が悪い。
「ファットマススタイル・ダメージコントロール」は「ファットマス・オーバーフロー」を点火させるための熱量を溜め込む役割を持っているが「愛の質量」は対象を満たすためその熱量は大部分が心に注がれてしまう。
そのためファットマススタイル・ダメージコントロールとはエネルギー効率の点で非常に相性が悪いのだ。
打開する必要があった。
満たされ闘争本能が薄れ行くこの状況、そして一撃すら与えられていない敵。
このままでは負けるのは運命であると言えた。
しかし心に響き渡るものがあった。
声援だ。ファットマスへの、そしてイート・フィルドへの。
ファットマスは理解し、覚悟を決める。選手生命との別れを。
これしかない─愛の質量を、純化させる。
満たされた心が体を変容させる。引き締まりその体は父の教えの望む姿へと完全に変貌した。
「ファットマス・コンデンス」
─これこそが愛の質量の具現化であった。
純化された149kgの体が一歩、前へ出る。
それは脂肪のようなクッションを何一つもたず、ストレートに地面に重みを伝え、リングを揺らす。
再び前へ出る。金網が軋み歪む。リングにひびが入り出す。
最後の一歩、それはリングを破壊し、イート・フィルドを宙に浮かす─その瞬間を、ファットマスは逃さなかった。
「フィルド・マス・コンデンス」
それはただのぶちかまし…だが149kgの純化した肉体によるぶちかましだった。それは羽ばたくようにイート・フィルドのみぞおちへと吸い込まれ、すさまじい「愛の質量」による轟音と衝撃と共にイート・フィルドを吹き飛ばす。
「ぐぁ…痛い…!!でも…何よりこの心の暖かさ…ああそうだ…これが…これこそが…愛の質量…俺をどこまでも満たしてくれる…愛なんだよ…」
イート・フィルドは倒れ伏す。苦悶の顔でありながら、受け止めた愛の質量ゆえに、どこか満足げな顔であった。
しかしファットマスも無事ではなかった。
そう、純化した肉体を動かすための代償は大きかったのだ。
体が必要としたその熱量は彼のすべての脂肪を奪い、心筋の一部すらも燃焼させた。
そしてガリガリの、骨が浮き出た体で倒れ伏すファットマス。ダブルノックアウトである。
こうして彼は、試合終了の宣言と共に、ファットマスとしての選手生命も終わったのだ。
ザ・ファットマス・サクセス ─The most powerful destruction─
これにて「了」とさせていただきます。