田中リリス(582歳) 作:オクタマ共和国宣伝省
P.A. 0542/12/06 22:43:42
H.O.P.E.: こんばんは、H.O.P.E.は正常に起動しました。何を始めますか?
Academic papersを立ち上げてくれ
H.O.P.E.: 了解しました。論文執筆支援システム「Academic papers」を有効化します。
テスト
どうやら生きている。60年メンテ無しでも動くとは、流石は日本製だな。戦後のコピー品だが。
なら問題ない。さあ書こう。
試案A:21世紀中期の合衆国崩壊、地球外生命体来襲及び後のゾンビパニック、混乱の中確認された特異個体と田中璃凜澄の類似性の順に言及。これから手をつける。
試案B:リンダウィルスの持つ遺伝子改変能力、ベクターとしての能力を中心とした構成案。
試案C:上記2案が上がり次第考える。
試案A
『タイトルは後で決める~アメリカ軍はエイリアンには勝てたけどゾンビには勝てなかったよ~』
岩戸内戦の終結以来、オクタマ共和国では神聖独裁官 田中璃凜澄による独裁統治が行われている。彼女の持つ特異性は、他のA個体群より突出して長い寿命、変異能を失わず新たな器官を形成できる変化自在の細胞組織、そして内戦終結時に市民(B個体群)に対して行った精神干渉など、多岐に渡る。その特異性の根源及び危険性についての調査は、現在のオクタマ共和国の体制下では困難を極めた。
本研究は、田中璃凜澄の持つ一連の特異性について、旧アメリカ宇宙軍月面情報基地「Tycho Brahe Base」メイン・サーバより回収されたリンダ・オブライエン博士の研究データに基づいて解析する。
21世紀中期にアメリカ合衆国で発生したリンダウィルス感染症災害にて、数例発見された特異型ミュータント個体についてええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
何をやってるんだ俺は
バカバカしい。ヤメだ。やってられるかこんなこと。
何が悲しくてとっくの昔に解体されたハトノス研究所のフォーマットに従って書く必要がある? 徒労で、自己満足だ。無意味な行為だ。意味のないことは、するべきじゃない。それを言い出したらこの文章を書きなぐってることにもきっと意味なんてないが、書かずにいられないものは仕方がない。
そもそもの話だ。おいゼフ。これを読んでる人間なんざお前ぐらいのもんだろ? 室長に提出するでも学会に発表するでもない文章を気合入れて書いても仕方ねぇ。
というか、なんだ。
今気づいたが、どうやらこれは俺の遺書になるみたいだ。
なあゼフ。歳の差はバカみたいに開いてるが、俺はお前のことを友人だと思ってる。おかしな話だよな、もう死にかけって歳の老人がアホな事抜かして。でもお前は俺なんかのことを見つけ出して、気にかけてくれた。お前はいい奴だ。
お前が俺のことをどう思ってるかは分からないが、これは友人に宛てて書く遺書だから、思うままに書いてみようと思う。じゃあやっぱり、気合い入れて書かなきゃな。
そういう訳だから、酒飲んでないと手先が震えてタイピングもできない老人の妄言にしばらくつきあってくれ。
んじゃまあ、まずは必要な情報の提示から始めよう。
とりあえず時系列順に、2039年に起こった「ロサンゼルスの戦い」から。
Information 01: Battle of Los Angeles(1 September – 6 October 2039)
9月1日未明、未確認飛行物体は月周回軌道を離れ、地球への降下を開始した。NASA(アメリカ航空宇宙局)及びアメリカ宇宙軍は同物体が中華人民共和国の戦略級宇宙機である可能性を指摘し、その予測降下地点がアメリカ東海岸北部とされたことから、即時迎撃と対中報復作戦の実施を大統領に進言した。
午前5時24分、ヴィルヘルム大統領は迎撃を許可、報復については判断を保留した。アメリカ空軍は直ちに試作戦闘機Boeing YF-51 Mustang Ⅱを出撃させ、空対宙核ミサイルASM-2155 Hecateを用いた迎撃作戦を実施した。この攻撃により大気圏突入中だった未確認飛行物体は一時的に推力を喪失し、ロサンゼルス市近郊に墜落した。
墜落直後より未確認飛行物体から約8万体の敵性地球外生命体が出現し、周辺地域への無差別な攻撃を開始した。
翌9月2日、合衆国政府は大混乱に陥りながらも、本事案を敵国からの攻撃ではなく地球外生命体による侵略と断定し、陸軍に出動を命令。カリフォルニア陸軍州兵を中核としたアメリカ陸軍との約一ヶ月間に渡る市街地戦を経て、未確認飛行物体及び地球外生命体群は完全に制圧された。
この忌々しいファースト・コンタクトの情報は諸外国に隙を見せることを嫌ったアメリカ政府によって徹底的に隠匿され、市民には”新型生物兵器の暴走事故”というカバーストーリーが流布された。直後に勃発したアメリカ内戦の混乱もあり、本事件に関する情報はその戦闘の規模と比較して極めて少ない。
戦闘の詳細は『After Action Report, 160th Infantry Regiment: 2 September – 6 October 2039』を参照。
どうだ? こんなおもしれぇ話は学校の世界史じゃ習わなかっただろ?
あのババアはエイリアンだのなんだのは一切信じないタイプのセンス・オブ・ワンダーが欠如した人間だからな。俺たちがまとめた資料に目を通しはしたはずだが、取るに足らんとゴミ箱に叩き込んだんだろうよ。
だが、このイカれたお話は紛れもなく実在した事件だ。俺たちの身体が持つホモ・サピエンスからかけ離れた形質こそが、その証左と言えるだろう。
次はエイリアンとリンダウィルスについてか。要点だけコピペするが、後でオブライエン博士の資料を参照してくれ。
Information 02: Research on aliens and their symbiotic viruses(Lynda O'Brien 2040)
エイリアンはQueen個体を頂点とした社会を構築しており、ハチ目の昆虫に見られる真社会性と類似する。しかし明確に異なる点として、彼らの脳には電磁波や不明な手段を用いての高度な相互情報伝達機能が備わっており、複数の脳で単一の思考を共有していることが挙げられる。エイリアンは全ての経験を共有しており、彼らの認知には個体の区別が存在しない。
また、Queen個体はエイリアン・ネットワークのサーバの役割を担っている。Queen個体は繁殖に関わらず、エイリアンの増殖はworker個体やsoldier個体による単為生殖に依存している。Queen個体は生殖や労働、戦闘に従事しない代わり、巨大な脳と強力な通信能力によって全個体の自我の中枢として機能している。
エイリアンの肉体はウィルス様の亜生物構造体と共生関係にあり、これを便宜的にベクターウィルスと呼称する。ベクターウィルスは感染した細胞、組織を再構築し、新たな形質を獲得させる極めて特異な能力を有している。またウィルスは膨大な量の遺伝子情報を保持しており、状況に応じて必要な形質をエイリアンの肉体に提供している。ロサンゼルスの戦いにおいて、エイリアンが人類の様々な攻撃手段に適応、無力化していった背景には、エイリアンとベクターウィルスの共生関係があったのである。
ベクターウィルスの人間への感染例も少数ながら確認されており、ベクターウィルスの持つ肉体の再構築、ジーン導入能力が地球上の生物に対しても発現することが報告されている。ただし現時点では生存例は確認されていない。近く動物実験を予定。
つまるところ、俺たちはエイリアンが持ち込んだウィルスに身体を改造されて生まれたって訳だ。
アメリカではこの後、リンダウィルスによる大規模なバイオハザードが発生して、そこら中でミュータントが暴れ回って大騒ぎになった。それが原因でアメリカ大陸の統一政権が崩壊したんだが、要するに「エイリアンには勝てるけどゾンビには勝てない戦前映画に出てくるアメリカ」がそのまんま現実になっちまったって訳だ。
そして、パクス・アメリカーナの崩壊は世界の関節をグチャグチャに外しちまった。まず欧州で幅を利かせていたパン・アーリア主義が中東地域への軍事侵攻として現れ、それに対抗した新ソ連とインド連邦が中東に派兵を開始、そして印ソ同盟を背後からぶん殴るために中共が核をぶっ放して、その中共のケツを蹴り上げるためにASEAN諸国も宣戦布告して、もう地獄の玉突き事故だ。
で、局外にあった筈の日英同盟も「交戦状態にないフリーハンドの列強国」という存在を許容できなかった各国から先制核攻撃を叩き込まれてエラい事になった。これが第三次世界大戦だな。
まあ大惨事大戦の事は関係ないから置いといてだ。ゾンビパニック真っ最中のアメリカで、極めて特殊なミュータントの出現が確認された。
Information 03: Similarities between the mutant captured in Las Vegas and the Alien Queen(Lynda O'Brien 2046)
ラスベガスで発見された特異型ミュータント個体は、その形態と特性にエイリアンのQueen個体と類似する点が多数確認されている。大柄な体躯、多数の触手、巨大な脳、強力な通信能力など、これらは全てQueen個体の特徴と一致する。また、当該ミュータント及び周辺に展開していたミュータント群は明らかに思考、経験を共有しており、エイリアンと同等の完全な真社会性を有していた。
興味深いことに、ラスベガス近郊で確認されたミュータントの多くは感染前の身元が確認できなかった。そして決定的な事実は、コロニー制圧時に回収された無数の卵の存在である。それらはラスベガスの個体群が既存の生物が感染によって変異した存在ではなく、初めからミュータントとして誕生していたことを明らかに示している。(中略)これはリンダウィルスの地球環境への適応が更に発展していることの証左である。
オブライエン博士も気の毒だよな、研究の第一人者ってだけで頭のおかしい人類エイリアン化ウィルスに自分の名前をつけられるとか。
リンダウィルスは恐らく、地球上の生物でも特に高度な認知機能を持つ人類を母体として、その遺伝子に改造を施すことでかつての宿主を再現しようと試みているんだろう。
いや、ウィルスと宿主とは言うが、実際にどちらが主でどちらが従だったのかは疑わしいところだ。エイリアンの遺伝子プールはほぼリンダウィルスに依存していた訳だし、庇を貸して母屋を取られるって奴か? いや全然違う気がするな。
そうだゼフ、『利己的な遺伝子』ってもう読み終わったか?
ちゃんと自分でノートに要約しろよ? 疑問点もまとめて、リストを作って、それから他の文献に当たって自分で答えを見つけるんだ。学びとは常にDiscoveryを体験することでその価値を増す。
俺はもうすぐ死ぬから、一人でも出来るようになっておけ。その年頃に身につけた学びの技術は、お前を生涯支えてくれる財産になる。
お前は、知る事を喜べる人間になれ。
話が逸れた。それに、あの本ともまた少し違う話か。
それじゃあ、そろそろババアの、いや、リリス先生の話をしようか。
だが酒が切れそうなので今日はここまでにする。さっきから指と話題が滑って仕方ねぇ。
情けねぇなあ3000文字かそこらで。でも飲み過ぎると頭が回んねぇ。この匙加減が難しいんだ。
H.O.P.E.: お疲れ様でした。少々文体が乱れているようです。AIによる自動修正を適応しますか?
いらねぇ。俺はもう寝る。続きは明日だ。
H.O.P.E.: 了解しました。仮のタイトルを生成してここまでの進行を保存し、H.O.P.E.を終了します。ごゆっくりお休みください
H.O.P.E.: H.O.P.E.を終了中。あと10秒でシャットダウンします。おやすみなさい