継ぎ接ぎだらけの少年少女   作:鹿呂久陸

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第十四話:彼岸へ届け、心を込めて火に焚べて 序

026

 

ボールから飛び出す、二匹のモンスター。

片やメラルバ、もう片方はニョロモであった。

 

「ふうん、あらかじめ削っておく、って寸法かな」

 

鬼火に照らされたことによってあらわになった彼女の表情は、やはりと言うべきか、不敵な笑みを浮かべていた。まるで、敵はいないとばかりに。

 

――ニョロモ。これといった特徴がないポケモンで、しいて言うなら、少々「すばやい」という事ぐらいだろうか。しかし油断は禁物、タイプの上では当然不利だし、相手は神主ジムリーダー。そん所そこらのニョロモとは、鍛え方が違うはずである。

ふむ、筋肉やらは、若干物理主体にしては少ないように感じる――特殊攻撃主体だろう。まあ、レベル等を考えると当たり前か。

 

「ニョロモ、【みずでっぽう】」

 

「【ニトロチャージ】、回避して!」

 

三連発。

放たれた水の弾丸を、メラルバは全身を燃え上がらせて回避――そしてその勢いのまま、ニョロモに肉薄。

真正面に、しっかりと見据えながら――。

 

……しかし、その勢いは。

すさまじいスピードは、突如としてメラルバが眠りこけたことによって、失われる。

向こうに目をやると、ニョロモの腹の模様が、怪しげに光り輝いていた――。

 

「【さいみんじゅつ】……ッ」

 

「大当たり──吹き飛ばせ(みずでっぽう)!」

 

地面を抉る勢いで放たれた鉄砲水。それは派手にメラルバを吹き飛ばし、そして岩でできたコートに叩きつける。

 

「メラルバッ」

 

「【マッドショット】!」

 

──追い討ちをかけるようにして、泥が吐き出される。そのダメージで目覚めはしたが、これで素早さの上昇もチャラだ。

……向こうとこちらの手札を整理しよう。

 

こちらのメラルバ。

まずは純粋な基礎スペック。しかし素早さに関しては向こうのほうが早い……故にニトロチャージで素早さの上昇を狙ったのだが、それも打ち消されてしまった。しかしまあ、他の全ての能力においては優っている故に、泥試合の乱戦に持ち込めば、勝機はあるだろう。

 

対して向こうニョロモ

メインウエポンであろう、3連発と大火力の撃ち分け可能な【みずでっぽう】。

腹の模様由来の【さいみんじゅつ】。これはかなりの距離じゃないと効果を発揮しないのかな?どちらにせよ真正面からの突貫は愚策だが。

じり、と、メラルバも後ずさる。

まー手札じゃないけどなこれ。

 

「さ、どうする?」

 

にたにたと、胡散臭く自信たっぷりに笑うロニエ――いいね、なんとなく腹が立ってきた。

 

「ま、交代だよね――」

 

そう言ったのは誰か。

少なくとも、僕が放り投げたボールの()()には何もなく。ニョロモが吹き飛んで――何者かに蹴り飛ばされていたのは、まぎれもない事実である。

 

 

 

027

 

 

 

「――すごいフィジカルだね、そのラルトス」

 

「まあね」

 

今度はこっちが笑う番さ。

ボールから飛び出したのはラルトス――ボールから飛び出すや否や、ニョロモを蹴り飛ばしたのも、当然ラルトスである。そして相変わらずのヤンキー的仕草。

 

「だけどまあ、あんまりダメージ入ってないんじゃない?」

 

「……」

 

図星、である。

そう、このラルトス、ラルトス故に、「すばやく」あれど、大したダメージが入らないのだ。

 

「ま、特殊攻撃ならそうでもないけどね」

 

――不意打ちで放たれた光線サイケこうせんは、ニョロモの右足を正確に打ち抜き、そして流れるように転倒させた。

 

「【ねんりき】連打」

 

そしてそのまま。

その勢いのまま。

念動力を叩き付ける――。

何度も。何度も何度も。

 

しかし、さすがはジムリーダー。このまま終わるはずはなく、【ねんりき】の隙間を縫って、【マッドショット】が放たれる。粘ついた泥は、正確にラルトスの顔面に直撃し、【ねんりき】の乱打が、強制的に止めさせられる。

 

「一方的は好みじゃなくてね――撃ち合いと行こうか」

 

ぷく、と、ニョロモの頬が嫌に膨らむ――。

 

「【みずでっぽう】!」

 

再び三連射――否、その数はまだ増える。鉄砲水は際限なく放たれて――。

 

今【ひかりのかべ】覚えさせてないんだよ!

 

「【ねんりき】で相殺!」

 

迫る水弾を、念動力で全て叩き落す――いや、いくつか撃ち漏らしてしまった。一発、直撃する。

 

「追撃!」

 

「――回避!回避―ッ!」

 

まずは三連発――ニョロモは若干疲弊しているな。やっぱ手軽に放てるのは三連発までか――まあいい。

一段目は右にステップ、二段目は身をよじり、三段目は身をかがめてその下をくぐる。そのまま、走って、走って。ニョロモに肉薄する――。

 

「【さいみんじゅつ】――」

 

「跳んで!」

 

そして跳躍。空中で身をひねり一回転、その回転の勢いを殺さず、ニョロモを後ろから蹴りつけた。これにより、【さいみんじゅつ】を躱しながら、低い打撃力を補う――下方向に叩き付けられた衝撃は、ニョロモを吹き飛ばすことなくその場に留める。

 

「【はたく】!」

 

しかしカウンターで、尻尾で顔面ではたかれる。もろにクリーンヒット、大ダメージ。【リフレクター】も当然間に合わず――両者【いたみわけ】、どころでは済まない。【みちづれ】だ。

 

【ラルトスは 倒れた!】

 

【ニョロモは 倒れた!】

 

二匹のモンスターは縮小し、それぞれのボールへと収まる。

 

「ふむ、両者相打ち。あの初見殺しを突破したのは見事だね」

 

「そりゃどうも――」

 

突破しただけ、であるが。

ニョロモを倒したのはいいものの、ラルトスは戦闘不能、メラルバも大ダメージ――そしてまだ見ぬ二匹目。きつくないか、これ。

 

「諦めたらそこで試合終了――いい言葉だよまったく」

 

「同意だね」

 

そして再び飛び出す、相棒であるメラルバ。気合は十分――周囲には火の粉が舞っている。

対し向こう――それは宇宙から飛来したと言われる『謎のポケモン』、否【なぞのポケモン】。

水は流れ、命は廻り、そして星は回る。

 

「ヘアッ!」

 

【スターミー なぞのポケモン みず・エスパー】

 

【七色に 輝く コアから 宇宙に 向けて 電波を だし なにかしらの 交信を している】

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