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ボールから飛び出す、二匹のモンスター。
片やメラルバ、もう片方はニョロモであった。
「ふうん、あらかじめ削っておく、って寸法かな」
鬼火に照らされたことによってあらわになった彼女の表情は、やはりと言うべきか、不敵な笑みを浮かべていた。まるで、敵はいないとばかりに。
――ニョロモ。これといった特徴がないポケモンで、しいて言うなら、少々「すばやい」という事ぐらいだろうか。しかし油断は禁物、タイプの上では当然不利だし、相手は神主。そん所そこらのニョロモとは、鍛え方が違うはずである。
ふむ、筋肉やらは、若干物理主体にしては少ないように感じる――特殊攻撃主体だろう。まあ、レベル等を考えると当たり前か。
「ニョロモ、【みずでっぽう】」
「【ニトロチャージ】、回避して!」
三連発。
放たれた水の弾丸を、メラルバは全身を燃え上がらせて回避――そしてその勢いのまま、ニョロモに肉薄。
真正面に、しっかりと見据えながら――。
……しかし、その勢いは。
すさまじいスピードは、突如としてメラルバが眠りこけたことによって、失われる。
向こうに目をやると、ニョロモの腹の模様が、怪しげに光り輝いていた――。
「【さいみんじゅつ】……ッ」
「大当たり──
地面を抉る勢いで放たれた鉄砲水。それは派手にメラルバを吹き飛ばし、そして岩でできたコートに叩きつける。
「メラルバッ」
「【マッドショット】!」
──追い討ちをかけるようにして、泥が吐き出される。そのダメージで目覚めはしたが、これで素早さの上昇もチャラだ。
……向こうとこちらの手札を整理しよう。
こちらのメラルバ。
まずは純粋な基礎スペック。しかし素早さに関しては向こうのほうが早い……故にニトロチャージで素早さの上昇を狙ったのだが、それも打ち消されてしまった。しかしまあ、他の全ての能力においては優っている故に、泥試合の乱戦に持ち込めば、勝機はあるだろう。
対して向こう。
メインウエポンであろう、3連発と大火力の撃ち分け可能な【みずでっぽう】。
腹の模様由来の【さいみんじゅつ】。これはかなりの距離じゃないと効果を発揮しないのかな?どちらにせよ真正面からの突貫は愚策だが。
じり、と、メラルバも後ずさる。
まー手札じゃないけどなこれ。
「さ、どうする?」
にたにたと、胡散臭く自信たっぷりに笑うロニエ――いいね、なんとなく腹が立ってきた。
「ま、交代だよね――」
そう言ったのは誰か。
少なくとも、僕が放り投げたボールの
027
「――すごいフィジカルだね、そのラルトス」
「まあね」
今度はこっちが笑う番さ。
ボールから飛び出したのはラルトス――ボールから飛び出すや否や、ニョロモを蹴り飛ばしたのも、当然ラルトスである。そして相変わらずのヤンキー的仕草。
「だけどまあ、あんまりダメージ入ってないんじゃない?」
「……」
図星、である。
そう、このラルトス、ラルトス故に、「すばやく」あれど、大したダメージが入らないのだ。
「ま、特殊攻撃ならそうでもないけどね」
――不意打ちで放たれた光線は、ニョロモの右足を正確に打ち抜き、そして流れるように転倒させた。
「【ねんりき】連打」
そしてそのまま。
その勢いのまま。
念動力を叩き付ける――。
何度も。何度も何度も。
しかし、さすがはジムリーダー。このまま終わるはずはなく、【ねんりき】の隙間を縫って、【マッドショット】が放たれる。粘ついた泥は、正確にラルトスの顔面に直撃し、【ねんりき】の乱打が、強制的に止めさせられる。
「一方的は好みじゃなくてね――撃ち合いと行こうか」
ぷく、と、ニョロモの頬が嫌に膨らむ――。
「【みずでっぽう】!」
再び三連射――否、その数はまだ増える。鉄砲水は際限なく放たれて――。
今【ひかりのかべ】覚えさせてないんだよ!
「【ねんりき】で相殺!」
迫る水弾を、念動力で全て叩き落す――いや、いくつか撃ち漏らしてしまった。一発、直撃する。
「追撃!」
「――回避!回避―ッ!」
まずは三連発――ニョロモは若干疲弊しているな。やっぱ手軽に放てるのは三連発までか――まあいい。
一段目は右にステップ、二段目は身をよじり、三段目は身をかがめてその下をくぐる。そのまま、走って、走って。ニョロモに肉薄する――。
「【さいみんじゅつ】――」
「跳んで!」
そして跳躍。空中で身をひねり一回転、その回転の勢いを殺さず、ニョロモを後ろから蹴りつけた。これにより、【さいみんじゅつ】を躱しながら、低い打撃力を補う――下方向に叩き付けられた衝撃は、ニョロモを吹き飛ばすことなくその場に留める。
「【はたく】!」
しかしカウンターで、尻尾で顔面ではたかれる。もろにクリーンヒット、大ダメージ。【リフレクター】も当然間に合わず――両者【いたみわけ】、どころでは済まない。【みちづれ】だ。
【ラルトスは 倒れた!】
【ニョロモは 倒れた!】
二匹のモンスターは縮小し、それぞれのボールへと収まる。
「ふむ、両者相打ち。あの初見殺しを突破したのは見事だね」
「そりゃどうも――」
突破しただけ、であるが。
ニョロモを倒したのはいいものの、ラルトスは戦闘不能、メラルバも大ダメージ――そしてまだ見ぬ二匹目。きつくないか、これ。
「諦めたらそこで試合終了――いい言葉だよまったく」
「同意だね」
そして再び飛び出す、相棒であるメラルバ。気合は十分――周囲には火の粉が舞っている。
対し向こう――それは宇宙から飛来したと言われる『謎のポケモン』、否【なぞのポケモン】。
水は流れ、命は廻り、そして星は回る。
「ヘアッ!」
【スターミー なぞのポケモン みず・エスパー】
【七色に 輝く コアから 宇宙に 向けて 電波を だし なにかしらの 交信を している】