継ぎ接ぎだらけの少年少女   作:鹿呂久陸

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(カス)の性癖フルコース スープ:中二的ネーミング
前菜は前話参照。


第二話:その地には神々が住む

 003

 

 ずん!と。

 ハガネールの長大な尾が氷の大槌と成り、白い大地に叩き付けられる。きめ細かな雪が舞い上がるが、サンカと僕はそれぞれ別の方向に躱す。

 

 恐らくあの技は【アイスハンマー】。氷タイプの物理技で、威力が高く、命中力もある程度担保されている。効果としては、この技を使用すると素早さが一段階下がるというもの。

 原種の話ではあるが、ハガネールの進化前であるイワークの攻撃力は、あの図体に反してポッポクラスである。それに準じ、ハガネールの攻撃力もそれほどではない。しかし、あのサイズと重量から繰り出される物理技は協力無比なものである――油断はできない。

 

「サンカ、あのハガネールのタイプは!?」

 

「こおり・じめんタイプだ!通常の個体よりサイズが大きい、攻撃力ポッポなどとは言ってられないぞ!」

 

「知ってるよ――メラルバ、ニトロチャージ!」

 

 肩からメラルバが飛び出し、炎を纏いながらハガネールに肉薄する。メラルバの炎は、本気を出せば鉄板も焼き切る。ハガネールの額に激突し、くるくると回転して着地した。

 

「ヴアアアア!」

 

 そして悲鳴をあげながら、のた打ち回る。それだけでも立派な脅威であるが、その様子を見るにダメージは入ってるようである。

 

「私たちも続こう!ガチグマ、【ドレインパンチ(張り倒せ)】!」

 

 あれは、大方生物が出していい音ではなかったと思う。

 とにかく、凄まじい轟音とともに、そのとんでもない重量を持つ巨体は、ガチグマの格闘エネルギーを秘めた張り手によって派手に吹き飛ばされた。

 しかし、その巨体はまだ縮小していない。攻撃力ポッポと揶揄されることはあっても、その防御力はすさまじいものだ。

 「ゆき」が降っていることも手伝って、防御力が増しているのだろう。サンカも歯噛みしている。

 

「今日は火炎玉を持たせていないからな……!」

 

「普段から持たせてるほうがこえーよ……」

 

 なんて。そう話していると、ハガネールは自身の体を、球状に丸め始めた。

 あのポケモンは野生でこそあるが、シンオウ地方では必要に応じてロックカットを行うハガネールがいるという――。

 そしてあの構えから繰り出される技と、下がった素早さを考慮して放たれる技はただ一つ!

 

【ハガネールの ジャイロボール!】

 

 ジャイロボール。

 素早さが遅ければ遅いほど、威力が増すという鋼技。

 ハガネールと言うポケモンは、元来そこまで素早くはない、加えてアイスハンマーの効果で、素早さが一段階下がっている。

 すさまじい勢いで回転しながら突っ込む対象は――。

 

「僕ぅ!?」

 

 こちらであった。

 しかもそのサイズは、雪を巻き込みながらさらに肥大化している。

 

 ガチグマの特性の一つに、【ぼうだん】というものがあり、その特性ならばジャイロボールもノーダメージで受け止めることが可能だが、先程のサンカの発言からして、その特性は【こんじょう】だろう。

 

「わぎい!」

 

 ――しかし、その予想に反して。僕とメラルバの間に割って入ったガチグマはハガネールを受け止め、しかもその様子から見るに、ほとんどダメージが入っていないようであった。

 

「一体どんなカラクリが――」

 

「気合いだが?」

 

 ――ただ肉体派なだけであった。それともあれだろうか。レベルが高いのだろうか。確かに鍛えられているように見えるが。

 

「そのまま投げてしまえ!」

 

「わぎああああああ!」

 

 ガチグマが吼えながら、力いっぱいぶん投げる。

 高速で投げられたハガネールは、はるか遠くまで、星の様になるまで見えなくなった――。

 

004

 

「いやあ、災難であったな」

 

 僕らは今、ガチグマの背に載って移動している。その道中、サンカがそう口を開いた。

 

「コチキタにはあんなのが跋扈しているのか……」

 

 げっそりと、先の思いやられると思っていたのだが、サンカがそれは違うと言った。

 

「あのレベルの野生ポケモンはかなり珍しいぞ。しかもハガネールは野生で出現しないはずなのだが……ならば考えられるのはトレーナーが逃がしたという線だが、あそこまで育てたポケモンを逃がすだろうか?」

 

 そもそもジャイロボールはレベルアップでは覚えないしな、とも、彼女は付け加えた。

 

「なるほど……」

 

 確かに、原種のハガネールも野生で出現するのはごく一部の地域のみである。どうやらそれはコチキタ地方でも変わりないようだ。

 ……謎は深まるばかりであるが、考えていても仕方ない。そうこうしているうちに、目的地である、本来の集合場所であった空港――【コチキタ空港】に戻ってきたのであった。まあ、集合場所と言っても、その事実を知らなかったのであったが。

 

「【振出しに戻る】で進むことがあるのだな」

 

「それはそうだな……」

 

 ずいぶんとやんちゃなメラルバである。これ以上悪戯めいたことをさせない様に、きっちりとボールに戻す。

 ……戻り際、なぜだッ!?という顔をしていたが、残念でもないし当り前である。

 

「ようこそ【コチキタ地方】へ、と言ったところだな。ようやくであるが」

 

 と、サンカは苦笑する。

 

「さて、君はこれからどうするのかな?もちろん旅をするというのだから、最低限の下調べや目的は決まっているのだろう?」

 

「……」

 

「……まさか、決まっていないのか?」

 

 図星である。

 学校をやめた直後の僕は、抜け殻のようであったと思う。そこでメラルバに会い、多少は改善されたのだが、その前におじいちゃんから旅をしたらどうかと言われた。正直あの土地を離れたい気持ちはあったし、特に逆らう理由もなくうなずいたが、同時に積極的になる理由もなかった。目的もない。

 

「ふむ……私も『孫の旅を手伝ってほしい』と言われただけでな。君の目的は聞いていなかったのだ。まあ、決まっていないというならば、おすすめするなら【いせまいり】――ほかの地方で言うところのジム巡りだな」

 

「――ごめん。本当に下調べも何もしてないから、一から説明してほしい」

 

「何とも珍しい旅行客だな……任せてくれ。説明は得意なほうだ」

 

 ――とは言っていたが。

 正直言って、はっきり言わず、オブラートに限りなく包んで言うが、その、彼女の説明は、少し聞き取りづらかったと思う。

 単純に僕の理解力が及んでいない可能性があるが……その後、うまく説明できていないことに気が付いたサンカから勧められたサイトの情報の方がはるかにわかりやすかった。

 

 曰く、この地方には十柱の【カミ】――アローラ地方等で言うところの【ぬし】――と、それぞれを祀る()()の【じんじゃ】があるそうで、それを巡るのが【いせまいり】と言うらしい。

 十柱の神に対して、じんじゃが八つなのは、二匹の例外がいるからだそう。

 

 ――【荒神:イザナミノミコト】

 

 ――【鎮神:イザナギノミコト】

 

 こんな名前であるが、これは個体名のようなもので、種族としての名前もあるそうだ。これら二匹は、すべてのじんじゃの管轄だそう。しかし不思議なのは、サンカの前でカミのことを”匹”と呼ぶことを咎められた点である。

 

「カミと呼ばれているが、実際に会うことはできるぞ。ただし、もう二度と”匹”などと呼べなくなるだろう。呼『ば』ないのではない、呼『べ』ないのだ」

 

「そういうもんかね」

 

 その後、空港からバスに乗り、どうやらこの地方の研究所がある街に行くそう。

 

「旅のお供がメラルバと、君のおじい様のポケモンだと不安だろう。その、なんだ、君のおじい様のポケモンは知っているが、使い勝手は良くないだろう」

 

「よく知っているな」

 

「私は少し前までいろんな地方を旅していたんだ。そこで助けられてな、ポケモンバトルも師事してもらったし、しばらくお世話になったのだ」

 

「そんなエピソードが」

 

 僕が通っていたのは中高一貫校で、寮制だったのだ。おそらくその間にいたのだろう。おじいちゃんは、一応、と言うか本職が研究者なのであるが、その実バトルも相当に強い。

 

「今となっては懐かしいな……話を戻すが、そこで提案があるのだ。この地方の博士から、ポケモンを貰ってみてはいかがかな?」

 

 なるほど。確かに、八つのジム、いやじんじゃか。じんじゃを巡るのに、二匹だけだと心もとないだろう。

 

 メラルバを捕まえて以来、手持ちはしばらく増えていない。

 

 少しわくわくした気持ちでいると、バスがどうやら目的地に着いたようだ。この手に握りしめていた小銭を運転手に渡し、バスから降りる。

 

 ――【サラユキタウン 雪に踏み跡はない】




サンカ
年齢:17
性別:女
手持ち
ガチグマ
【名称不明】
【名称不明】
【名称不明】
【名称不明】
【名称不明】

備考:今見えている手持ちはガチグマのみであるが、とてもよく鍛え上げられている。まだ見ぬほかのポケモンも、おそらく強力であろう。


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