継ぎ接ぎだらけの少年少女   作:鹿呂久陸

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第九話:戦闘・シンメツ団

017

 

 シンメツ団――あの不吉な男の一団か――!

 

「行けッ、ゴルバット!」

 

「イーブイ、やっておしまい!」

 

 モンスターボールからは、二匹のポケモンが飛び出した。片や蝙蝠ポケモンのゴルバット。もう片や進化ポケモンのイーブイが、彼らのモンスターボールから飛び出した。

 

「ラルトス、引き続き頼む!」

 

「私も手伝おう――育てたいポケモンもいるしな!ミカルゲ!」

 

 サンカのボールから飛び出したのは、108の魂を取り込むことで顕現すると言われる、ミカルゲであった。しかし、その姿は、僕が知るものと大きく違った。

 その魂を縛り付ける要石は透き通る氷で出来ていて、渦巻く霊魂は不健康な青色であった。

 

【ミカルゲ(コチキタのすがた) ふういんポケモン こおり・ゴースト】

 

 原種ミカルゲの、独特な反響音のような鳴き声とはまた別の、水琴窟のような鳴き声をあげた。

 

「珍しいポケモン持ってるじゃない、ガキンチョのくせに――!」

 

「そっちこそ、イーブイはなかなか見ないぞ」

 

 バチバチと、サンカと女の間に火花が散っている気がする。

 

「育てたい、だなんて舐めた口きいてくれちゃって――かみつく!」

 

「こおりのつぶて!」

 

 勝手に始めたバトルを横目に、こちらも男と向き合う――。

 男はへらへらと、不敵に笑っていた。

 

「あーあ、あの女終わったな。キレるとこえーんだよ、あいつ」

 

 ゴルバットも、愉快そうにケラケラとしている。ま、いいやと、男はこちらに向き直った。

 

「サクッと終わらせようか、お坊ちゃん――こっちも”かみつく”だ!」

 

「サイケこうせん!」

 

 ゴルバットが口を開け襲い掛かるが、ラルトスがその大口めがけて光線を放ち迎撃。しかし、やはり練度が低いのか、まだまだ向こうは余裕そうである。

 

「はっはー、弱点技なのにぜんぜん応えてないぜ?エアカッターだ、切り裂いちまえ!」

 

「ひかりのかべ!」

 

 空を裂きながら飛来する風の刃を光の壁で弾く――。不味いな、完全な硬直状態だ。サイケこうせんは耐えられるか、エアカッターで引き裂かれるだろう。そして向こうの攻撃こそ弾く事が出来るが、向こうは進化ポケモンだ。スタミナは向こうの方があるだろう。

 メガトンキックか……躱されるだろうな。

 うーむ……。一つ、面白そうな発想が思いついた。ラルトスの身体能力を顧みれば、うまくいくのではないだろうか。

 

「ラルトス、リフレクターを多数展開!」

 

 ラルトスの角は、煌煌と輝いている。僕の意図を呼んでくれたのだろう、様々なところに、点々と物理障壁が展開された。

 男は怪訝な顔をしたが、それでも不敵な笑みを崩さない。

 

「何しようとしてるかわかんねえが――とっととぶっ潰すに限る!どくどくのキバァ!」

 

 猛毒を伴った牙を携えながら、リフレクターの隙間を縫いつつ、ラルトスに接近する。

 

「多少動きづらくしたところで、うちのゴルバットは止まらねえよ!」

 

 ――だろうな。

 多少の、しょうもない特技であるが、僕はポケモンを見れば、どれくらいの連度か、どのように動くか、多少はわかる。そして、そのゴルバットに多少の妨害をしたところでやすやすと潜り抜けられるのはわかりきっている――!

 故に狙いは妨害ではない。

 

「は?」

 

 ――ラルトスが、消えた。

 ように見えるだろう。

 迫るゴルバットを目前に、ラルトスは、リフレクターを蹴り、ゴルバットの頭上に移動していた――!

 

「メガトンキックだッ!」

 

 鈍い音を立てて、ゴルバットの脳天にラルトスの細い足が突き刺さる。しかし、多少怯んだぐらいで、ゴルバットはまだ戦闘が継続できる――から、連続で叩きこむ。

 再びラルトスは姿を消し、今度はゴルバットの側頭部に蹴りを叩き込む。大量に展開されたリフレクターを蹴りあげ、縦横無尽に空間を駆け回る――!

 

「嘘だろっ、速すぎる――!?」

 

「〆だ――!」

 

【ラルトスの メガトンキック!】

 

 空中からの蹴り降しライダーキック

 それは美しく、ゴルバットの眉間に突き刺さり、そのまま昏倒させた――。そのまま、リターンビームがゴルバットをボールに収める。

 

「ラルトスのフィジカルじゃねえだろ……ッ!おい、こっち手伝――!?」

 

 サンカの方を見ると。彼女はイーブイのしっぽを片手で持っており、女の方も、縄で全身が縛られていた。容赦ないな、あいつ。

 

「む、終わったのか」

 

 と、余裕そうな様子でこちらに話しかけてきた。

 

「さて、女の方はこの通り機能停止。仮にお前にポケモンがいたとしても、二対一だ――どうする?」

 

 

「は、はは――」

 

 サンカはぎろりと、威厳たっぷりににらみつけるが、それでも男は、不敵な笑みを崩さず。懐からリモコンを取り出し、キコキコと操作した――そうすると、キュラキュラと、キャタピラが駆動するような音が鳴り響く。

 そうして、木々をなぎ倒しながら現れたのは、キャタピラを搭載した、鉄の檻で――そこには、肩幅が以上に肥大化したリングマが、閉じ込められていた。

 

「苦労して捕獲した、オカシラのリングマだ――」

 

「やっておしまい!」

 

 なんで縛られてんのに強気なんだよこの女――!

 そう思う暇もなく、リングマは一直線に、こちらに向かって走り出していた。

 

「ガチグマッ!」

 

 サンカがとっさに繰り出したガチグマが、リングマを抑え込む――が、抑え込むだけにとどまっている。膠着状態、である。

 サンカのガチグマは、かなり鍛え上げられている。しかしあのリングマは、単独でそれを抑え込んで――ッ!

 

 女の縄は、もうすでに男が解いていて、やいやいと元気そうに野次を飛ばしていた。

 

「はっはー、あのリングマは凶暴でな、ボールにも入りゃしねえ!」

 

「だけど矛先を敵に向けてあげれば、頼もしいものよッ!」

 

 ん?

 んん?

 

 ――ボールに入らず。指示も聞かない。

 

 それならばどうして、自分を痛めつけたであろう人間男と女を真っ先に襲わない?

 

 二人の方を見ると、どちらも腰に、金色のスプレー缶を装備していた――。なるほど。ここはひとつ、試してみる価値がありそうだ。

 僕は今度こそ、メラルバをボールから出して、ラルトスにも指示を出した。

 

「やっちまえリングマ―!」

 

「そこだ――ッ!?」

 

 二人に、大量の水が浴びせかけられる。

 いったい誰が。どうして、何で――。

 

「って言うか、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「はいビンゴ」

 

 

 

 再び二人に、水が――雪解け水が、浴びせかけられた。その水はどこから湧き出たのか――二人はこちらを向いた。

 

「メラルバが氷を溶かして――」

 

「ラルトスがそれを掛ける!?」

 

「そんでゴールドスプレーの匂いを消す――だ!なんでリングマがそっちに行かないか気になってさ、よーく観察してみたら、ゴールドスプレーの缶が腰にぶら下がってっからさあ!」

 

 リングマが、二人の方を振り向く――。

 

「矛先を向けてやれば頼もしい、だっけ。本当にその通りだな全く――!」

 

「サンプルとか言ってられないなあ!」

 

「逃げろーっ!」

 

「覚えてろーっ!」

 

 ぴゅー、と。ひと昔前のアニメさながらに、二人は走って逃げだし、リングマもそれを追いかけていった。

 

018

 

「しかし、よく気が付いたな」

 

 サンカが肩を回しながら、話しかけてきた。

 

「何が?」

 

「ゴールドスプレーの事だよ。まったく気が付かなかった」

 

「いんや、ちょっと観ただけだよ、サンカでもいずれ気が付いたんじゃないか?」

 

 実際その通りである。ポケモンバトルは観察と分析――と、おじいちゃんも良く言っていたっけ。しかし、サンカは予想に反する答えを返してきた。

 

「私はあのテの発想が出来なくてな。いつもフィジカルで押すばかりだ――それに、ゴールドスプレーに気が付いたとしても、手持ちで雪解け水を作ろうなんて発想にはならなかったさ」

 

 そこまで褒められると、少しこそばゆい。

 

「ありがとう」

 

「私も見習いたいばかりだな」

 

 僕らは、再びカカクタウンに向けて歩き出した。

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