その漢、本名はアリス   作:お手元ポテト

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隣村の若い衆のリーダー、リューカとの因縁についてお話ししようか。

アッくんを応援してあげてくださいね。


2話目 リューカというメスガキ

 

隣村にはリューカというメスガキがいました。

このメスガキは隣村の若い衆をまとめているリーダー的存在で何かにつけてはアッくんにちょっかいをかけるメスガキでした。ひねり潰すぞ。

 

実はこのメスガキ—リューカは隣村のベイル村村長の娘で幼い頃近隣の村の共同地である森で迷子になっていたところを可憐な頃のアッくんに助けられた過去があるのでした。

 

森はそこまで広くないものの幼いリューカにとっては森で1人ぼっちで帰り方がわからなくなるのはとても恐ろしいことでした。

そこに現れたのがアッくんだったのです。

 

アッくんは森で迷子になっている幼女の手を優しく引いて森から帰還しました。

アッくんの村まで連れ帰られたリューカはそこから彼女の村まで自警団が送って行きました。

 

 

 

10歳の頃、アッくんとリューカは再会しました。

アッくんとライトニアが共同地の森の空き地で鍛錬をしていた時、リューカは取り巻きを引き連れてきました。

 

「今日からこの空き地は私たちベイルランダーズが使うからあんたら場所譲りなさいよ」

 

突然そんなことを言うのです。

口下手なアッくんは黙っていましたので、隣のライトニアが前に出て口を開きました。

 

「突然そんなこと言われても…私たちは隅でやってるから空いてるところを使いたまえよ」

 

ライトニアが汗を光らせながらそう言うとリューカの取り巻きはほぅっとライトニアに見惚れます。

しかしリューカはしかめっ面のまま言うのです。

 

「今から子どもの部4村対抗ソフトボールの秘密訓練したいの!あんたどこ村よ!」

 

4村対抗ソフトボールとは森を共同地としているフェンダー村、ゾーン村、ベイル村、オシ村が合同で行う興行スポーツ大会で各村の球場に村外からの観戦客の来るイベントでした。

 

「…フェンダー村」

 

ここでアッくんが口を開きました。

リューカはアッくんを見てハッとして数瞬固まりました。

 

この頃のアッくんは背が伸びはじめ、多少筋肉が付きはじめ、可憐な見た目も合わさって10歳とはいえ乙女ゲーでいう攻略対象ではないけど人気投票があったら上位に食い込み、ファンディスクでファン待望の攻略対象昇格になるレベルのイケメンでした。かっこいいね。

 

リューカがライトニア、アッくんを交互に見て言います。

 

「ふ、ふーん。…ア、…アッくん、久しぶりだね。か、カッコよくなったね。ご、ごめんね空き地使ってもイイかな?」

 

リューカはアッくんのことをバッチリ覚えていたのです。

そして、彼女はイケメンなアッくんに対し、わずかにメス出ししていました。仕方ないね。

ライトニアはそんなリューカを冷めた目で見ていました。

アッくんはというと、

 

「……誰?……ライト、行こう…」

 

そう

言ってライトニアの手を引きました。

 

「え…?」

 

その様子を見てリューカは固まりました。

アッくんに優しく手を引かれて空き地をあとにする、ライトニアの勝ち誇った顔。

遠ざかるアッくんの背中。

リューカは自分がどんな顔をしているのか分かりませんでした。

 

「…は?」

 

 

それからでした。

リューカ率いるベイル村の若い衆がアッくんたちフェンダー村の若い衆にちょっかいかけるようになりました。

 

 

ソフトボールの試合で暴投球、月イチの合同バザーで場所の占拠、道端で肩がぶつかっただのガンつけられただの、挙げ句の果てには空き地で殴り合いになることもありました。

 

そして、最終的にはアッくんをだせと言うのです。

仕方なしにアッくんが出向くとリューカが出てきてふたりで一言二言交わして場が鎮まるのでした。

 

村の大人たちが仲裁に入ることもありましたがベイル村の若い衆はたいてい、

 

「お嬢の目を覚まさせてぇんだ」

 

とのたまうのです。

これには大人たちも、まぁ思春期にはよくあるべ、と静観するのでした。

 

 

 

アッくんはリューカが幼い頃助けた幼女だとは気づいていないようです。

幼い頃のリューカは舌足らずな話し方だったため自分のことをルーちゃんと言っていたからでした。仕方ないね。

 

リューカの呼び出しだということでそれに応じたアッくんはいつものように森の空き地に出向きました。

ライトニアも同行しています。

 

森の空き地にはパンイチで木の板に縛り付けられたシュー君(13歳♂)とそれに立ち塞がるリューカの取り巻きたち6人がたむろしていました。

 

「…シュー!…」

 

「アッくん、ごめんよ捕まっちまった…」

 

「…今行く」

 

「きやがったなアリスゥ」

「今日こそオメーを…」

「…ちっ!」

「はぁ~俺帰りてぇ…」

「お嬢のためだ」

「行くゾ」

 

 

取り巻きの6人はアッくんの姿を確認して、首や肩や拳を鳴らしながら立ち上がりました。

アッくんが一歩一歩進む度にズシンズシンと幻聴が聴こえるような感覚になります。

6人は覚悟を決めてアッくんに殴りかかりました。

 

アッくんは一人一人の拳をいなしながらボディブローを叩きこみます。

その度に6人はそれぞれ身体をくの字に折り白目を剥いて地に沈みました。

口からお昼に食べた焼きそばがリバースしている者もいますが村人は頑丈ですのでこれくらいでは死なないので大丈夫です。

 

やがてアッくんはシュー君の元へたどり着きました。

黙々とシュー君を縛ったロープを外していくアッくん。かっこいいね。

ライトニアはというと倒れた6人に回復魔法をかけていました。

 

「君たちは毎度毎度懲りないねぇ」

 

「…あ、ありがとうライトニア」

「き、効くぅ…」

「だから俺は嫌だって毎回…」

「…いつもすまんな」

「…(好きだ)」

「…おえ、アバラ逝ってないこれ…?」

 

シュー君を助け出し、6人を介抱していると空から小柄な女の子が飛行魔法により降り立ちました。

勝ち気そうなつり目で赤髪サイドテールの少女です。

 

「ア、ア、その…アッくん、その…」

 

彼女こそが隣村の若い衆のリーダー、リューカでした。

 

 





シュー君(13歳♂)
フェンダー村の少年。
ベイル村の若い衆によく捕まる。
特にベイル村の少女たちによっていたずらされることが多い。

取り巻きたち(16〜18歳♂)
リューカをお嬢と慕っている者たち。
アッくんの拳を受け続けて身体は頑丈になった。

4村対抗ソフトボール
子どもの部(U−15)と大人の部がある。
4村はそれぞれ球団を作り練習に励んでいる。
フェンダーカッツ、ゾーンレイクス、ベイルランダーズ、オシアイアンズ。

回復魔法
ライトニアは回復魔法が使える。

飛行魔法
リューカは飛行魔法を習得している。
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