縫合者、紫雲院利玖のデュエル・スピリット   作:クォーターシェル

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第2話 魔玩具VS竜

カードショップでの初勝利以降、俺は週末になると必ず顔を出すようになった。地元のデュエリストたちも顔馴染みとなり、「利玖くん」と気軽に声をかけてくれる。彼らは俺が持つデストーイカードを見て「珍しいな」と言うものの、「子供らしくないカード」とは言われない。

 

この世界ではデュエルに関する価値観が前世とは大きく異なるようで、子供がどんなカードを持っていても基本的には肯定的に受け入れられるのだ。

 

---

 

そんな日々が続いた小学校5年生のある春の日。

 

「明日からGWだね、利玖くん!」

 

クラスメイトの鈴木君が話しかけてきた。

 

「ああ。何か予定ある?」

 

「ボクは父さんと一緒に東京行くよ。ほら、あの……」

 

「デュエル地区大会か」

 

そう言えば毎年この時期に大きな地区大会があると噂を聞いたことがある。

 

「利玖くんも出るんでしょ?」

 

「え? 俺?」

 

「だっていつも強いじゃん!」

 

思いがけない指摘に動揺する。確かにこの一年半ほどカードショップで鍛えられたが、それはあくまで趣味の範囲内。公式大会なんて考えてもいなかった。

 

「ま、まぁ行ってみようかな……」

 

翌日。首都圏最大の複合施設で開催された小学校高学年の部決勝トーナメント。予想以上の大規模イベントに少し緊張しながらも、一回戦から順調に勝ち進んでいく。

 

「俺のターン! ダンディ・ホワイトライオンの効果で墓地に送りトークンを生成!」

 

「やべぇ! そいつバトルフェイズ時に破壊すれば蘇生効果が消えるぞ!」

 

「させるか! 擬態する人喰い虫のリバース効果発動!」

 

こんなやり取りを繰り返し三回戦を突破したとき、俺は思った。この調子で行けば優勝も夢じゃないかも。とはいえ優勝したところで特典はさほど大きくない。せいぜい賞状と商品券程度。しかし今後の進路を考えるとデュエルアカデミアへの推薦枠が手に入ったりするかもしれないと期待してしまう。

 

四回戦突破を決めた瞬間、周囲がどよめいた。

 

「おい……あれって万丈目じゃないか?」

 

「本当だ。万丈目準だ!」

 

「去年小学5年生なのに全国大会ベスト8だった万丈目か……」

 

「利玖の次の相手はあの万丈目か……これは面白くなりそうだ」

 

知らず知らずのうちに会場中央にあるメインステージへ案内されていた。そこにはすでに万丈目が待ち構えていた。小学生とは思えないほど風格漂う佇まいだ。彼はこちらを見据えながら口を開く。

 

「やっと来たか紫雲院。君が噂の"デストーイ使い"だな」

 

「そういう君は万丈目準か」

 

「ああ。今年は全国制覇を目指してるんだ。そのためには君みたいな新人も徹底的に潰さなくちゃならない」

 

「それは楽しみだね」

 

冗談半分で答えると万丈目は真剣な眼差しで見返してきた。

 

「本気で言ってるのか? 俺は負けられないんだ。今日ここで負けるようじゃ全国なんて夢のまた夢だ」

 

審判役のスタッフが現れ「それでは決勝戦始めましょう!」と宣言した。

 

結論から言うと俺は負けた。やっぱりシザー・ベアー主体のデッキでは限界があるな…。

 

「「ありがとうございました」」

 

デュエルは終わったが、何か万丈目に睨まれてる気がする。何故だ?俺は君とのデュエルで負けたんだぞ?疑問が残る中、地区大会は終わったのだった。

 

地区大会から1週間。俺は日常に戻り、再びカードショップ通いを続けていた。あの決勝戦の敗北はそれなりに悔しいものだったが、元々手加減デッキだったから仕方がない。万丈目には申し訳ないが……

 

「ちょっと利玖くん」

 

ある日、カードショップで出会ったのは、同じ小学校のクラスメイトだった。

 

「何か?」

 

「これ、預かったんだけど」

 

手渡されたのは一枚の招待状。そこには万丈目の名前と住所が記載されている。

 

 

『紫雲院利玖殿

我万丈目準の名において正式に再戦を申し込む。

〇月×日 午後3時 虎ノ門デュエル会館にて待つ。

貴殿の本気をこの目で見極めたい。

 

万丈目準』

 

「……やっぱり来たか」

 

---

 

指定された日。虎ノ門デュエル会館という普段あまり使われない小さな施設に到着すると、すでに万丈目が待ち構えていた。傍らには側近のような友人が2人いる。

 

「よく来たな紫雲院」

 

「ああ。ところで君に一つ聞きたいことがある」

 

「何だ?」

 

「なぜ僕に再戦を挑んだ?」

 

万丈目は一瞬眉をひそめたが、すぐに平静を取り戻す。

 

「簡単な話だ。大会でのお前のデュエルには違和感があった」

 

「違和感?」

 

「明らかに力を隠していた。その態度が許せない」

 

なるほど。やはりバレていたか。

 

「俺達のデュエルは常に真剣勝負。互いの全てを賭けるべきものだ。それを貴様は……」

 

「待ってくれ万丈目君」

 

俺は彼の言葉を遮った。

 

「君の言いたいことはわかる。だが僕にも事情があったんだ」

 

「事情だと?」

 

「小学生の僕が万丈目君みたいな有名なデュエリストと並ぶほどの実力を見せたら、どういう扱いを受けると思う?」

 

万丈目の表情がわずかに曇った。

 

「なるほど……」

 

「それに、単純に君を倒すことだけが目的じゃない。楽しむことも大切だろう?」

 

「ふん、建前を並べ立てても無駄だ」

 

万丈目は冷たく言い放つ。

 

「お前の真意は知らない。ただ一つ言えるのは――」

 

彼は懐からデッキケースを取り出した。

 

「今回は容赦しない。お前が本気を出すまで何度でも挑む」

 

「了解した。ならば――」

 

俺もデッキケースを取り出す。これは通常のショップ用デッキではない。本気の融合デッキだ。

 

「見せてあげよう。これが本当に僕のデストーイデッキだ」

 

「「デュエル!!」」

 

――ターン1――万丈目準

 

万丈目「俺のターン、ドロー!」

 

万丈目 手札5→6

 

万丈目「俺は手札からサモナー・ドラゴニュートを召喚!」

 

サモナー・ドラゴニュート 攻撃力100

 

サモナー・ドラゴニュート(オリカ)

効果

星4/闇属性/ドラゴン族/攻100/守1800

① 1ターンに1度、メインフェイズに攻撃表示のこのカードを守備表示にして発動できる。デッキからレベル4以下のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。

 

万丈目のフィールドに杖を持った竜人が現れる。

 

万丈目「サモナー・ドラゴニュートの効果発動!自身を守備表示にしてデッキからレベル4以下のドラゴン族1体を呼び出す!俺はデッキからレアメタル・ドラゴンを攻撃表示で特殊召喚!」

 

サモナー・ドラゴニュートが守備表示になり呪文を唱えると、杖の先から魔法陣が展開されそこから四足歩行のドラゴンが現れた。

 

レアメタル・ドラゴン 攻撃力2400

 

利玖(レアメタル・ドラゴン…、下級モンスターとしては破格の攻撃力を持つけど通常召喚ができない変わったモンスターだったな)

 

万丈目「俺のフィールドにドラゴン族が2体存在することで、手札から魔法カード、ツイン・ドラグドローを発動!俺はデッキから2枚ドローする!」

 

ツイン・ドラグドロー(オリカ)

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

① 自分フィールドのモンスターがドラゴン族の効果モンスター2体のみの場合に発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。

 

万丈目 手札4→6

 

万丈目「更に俺は魔法カード、竜の霊廟を発動!デッキから神竜 ティタノマキアを墓地に送らせてもらう」

 

万丈目「俺はカードを2枚伏せ…」

 

利玖「ちょっと待った!俺は手札のエッジインプ・サイズの効果を発動!手札のこのカードを相手に見せ、このカードを含む手札・フィールドのカードを素材にデストーイの融合召喚を行う!」

 

万丈目「こちらのターン中に融合だと!?」

 

利玖「俺はエッジインプ・サイズと手札のファーニマル・ペンギンを素材に融合召喚!現れろ!デストーイ・クルーエル・ホエール!」

 

鎌型のエッジインプとペンギンのファーニマルが融合し、利玖のフィールドにシャチのデストーイが現れた。

 

デストーイ・クルーエル・ホエール 攻撃力2600

 

利玖「デストーイ・クルーエル・ホエールの効果発動!融合召喚に成功したことで、お互いのフィールドのカードを1枚づつ選んで破壊する!」

 

利玖「俺が選ぶのはお前の伏せカード1枚とクルーエル・ホエール自身!更に墓地のエッジインプ・サイズの効果!自分のデストーイ融合モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこいつを除外できる!つまり破壊されるのはお前のカードだけだ!」

 

デストーイ・クルーエル・ホエールが斬撃を飛ばし、万丈目の伏せカードを破壊する。

 

万丈目「崩界の守護竜が…!」

 

利玖「更に融合素材になったファーニマル・ペンギンの効果!俺はデッキから2枚ドローして、手札を1枚捨てる。俺はエッジインプ・チェーンを捨てる」

 

利玖 手札5→4

 

利玖「でもって今捨てたエッジインプ・チェーンの効果発動!デッキから魔玩具補綴を手札に加えさせてもらうよ」

 

利玖手札4→5

 

万丈目「(まさか俺のターン中、それも先攻1ターン目でここまでするとは…!これがこいつの本気なのか!?)…俺はこれでターンエンドだ」

 

万丈目 LP4000 手札3

 

・モンスター

サモナー・ドラゴニュート 守備力1800

レアメタル・ドラゴン 攻撃力2400

・魔法・罠

伏せカード×1

 

――ターン2――紫雲院利玖

 

利玖「俺のターン、ドロー!」

 

利玖 手札5→6

 

利玖「先ずは手札から魔法カード、魔玩具補綴を発動!デッキから『融合』とエッジインプモンスター1枚づつを手札に加える!サーチするエッジインプモンスターは、エッジインプ・シザーだ!」

 

利玖 手札5→7

 

利玖「でもって、今手札に加えた融合を発動!フィールドのデストーイ・クルーエル・ホエール、手札のエッジインプ・シザーとファーニマル・ラビットを素材に融合召喚!現れろ!デストーイ・サーベル・タイガー!!」

 

利玖のフィールドに刃物が飛び出た虎のデストーイが登場する。

 

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力2400

 

利玖「デストーイ・サーベル・タイガーの効果!融合召喚に成功したことで、墓地のデストーイモンスター1体を蘇生する!甦れ!デストーイ・クルーエル・ホエール!」

 

クルーエル・ホエールが墓地から蘇生した。

 

利玖「デストーイ・サーベル・タイガーの更なる効果!俺のフィールドのデストーイモンスターの攻撃力を400アップさせる!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力2400→2800

デストーイ・クルーエル・ホエール 攻撃力2600→3000

 

利玖「融合素材になったファーニマル・ラビットの効果!墓地のファーニマルモンスターまたは、エッジインプ・シザーを手札に加える。俺はファーニマル・ペンギンを手札に加える」

 

利玖 手札4→5

 

利玖「俺はファーニマル・ペンギンを召喚!」

 

ファーニマル・ペンギン 攻撃力1600

 

利玖「ファーニマル・ペンギンの効果発動!手札からファーニマル・ペンギン以外のファーニマルモンスター1体を特殊召喚する!来い、ファーニマル・ドッグ!」

 

ファーニマル・ドッグ 攻撃力1700

 

利玖「ファーニマル・ドッグの効果発動!デッキからファーニマル・ベアを手札に加える」

 

利玖 手札3→4

 

万丈目(モンスターを4体も出したのに、それに対して手札がほとんど減っていない…、何だこの展開力は!?)

 

利玖「バトルだ!デストーイ・クルーエル・ホエールで、レアメタル・ドラゴンを攻撃!」

 

デストーイ・クルーエル・ホエール攻3000VSレアメタル・ドラゴン攻2400

 

クルーエル・ホエールはレアメタル・ドラゴンを切り裂く。

 

万丈目「くっ」

 

万丈目 LP4000→3400

 

利玖「デストーイ・サーベル・タイガーでサモナー・ドラゴニュートを攻撃!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー攻2800VSサモナー・ドラゴニュート守1800

 

サーベル・タイガーの刃によってサモナー・ドラゴニュートは両断された。

 

利玖「ファーニマル・ドッグでダイレクトアタック!」

 

ファーニマル・ドッグ攻1700

 

万丈目「させるか!罠カード、戦線復帰を発動!神竜 ティタノマキアを守備表示で蘇生する!」

 

万丈目のフィールドに三つ首のドラゴンが現れる

 

神竜 ティタノマキア 守備力2000

 

利玖「残りのモンスターじゃ突破できないか…。俺はファーニマル・ドッグの攻撃を中止してメインフェイズ2に入る。俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

万丈目「この瞬間神竜 ティタノマキアの効果を発動するぞ。俺のデッキの上から俺のフィールドのドラゴン族モンスターの数だけカードを墓地に送る」

 

墓地に送られたカード:コドモドラゴン

 

万丈目「墓地に送られたコドモドラゴンの効果発動。手札からドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。来い、パンデミック・ドラゴン!」

 

万丈目のフィールドに触手を持ったドラゴンが現れる。

 

パンデミック・ドラゴン 攻撃力2500

 

利玖 LP4000 手札2

 

・モンスター

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力2800

デストーイ・クルーエル・ホエール 攻撃力3000

ファーニマル・ペンギン 攻撃力1600

ファーニマル・ドッグ 攻撃力1700

・魔法・罠

伏せカード×2

 

――ターン3――万丈目準

 

万丈目「俺のターン、ドロー!」

 

万丈目 手札1→2

 

万丈目「俺はパンデミック・ドラゴンの効果を発動!ライフ2000ポイント支払ってこのカード以外のモンスターの攻撃力をライフを支払った分だけダウンさせる!」

 

万丈目 LP3400→1400

 

パンデミック・ドラゴンがウイルスをまき散らした。

 

神竜 ティタノマキア 攻撃力3000→1000

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力2800→800

デストーイ・クルーエル・ホエール 攻撃力3000→1000

ファーニマル・ペンギン 攻撃力1600→0

ファーニマル・ドッグ 攻撃力1700→0

 

病に感染したモンスター達は力を失う。

 

万丈目「パンデミック・ドラゴンの更なる効果!このカードの攻撃力以下のフィールドのモンスター1体を破壊する!俺はデストーイ・クルーエル・ホエールを破壊!」

 

利玖「デストーイ・クルーエル・ホエールの効果発動、EXデッキからデストーイ・ホイールソウライオを墓地に送り、デストーイ・サーベル・タイガーの攻撃力をターン終了時まで元々の攻撃力の半分だけアップさせる!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力800→2000

 

パンデミック・ドラゴンは触手を振るい、クルーエル・ホエールを破壊した。

 

万丈目「俺は神竜 ティタノマキアをリリースして手札からストロング・ウィンド・ドラゴンをアドバンス召喚!」

 

ティタノマキアが生贄になり筋骨隆々のドラゴンが現れる。

 

ストロング・ウィンド・ドラゴン 攻撃力2400

 

万丈目「ストロング・ウィンド・ドラゴンの効果!このカードの攻撃力をリリースしたドラゴン族モンスターの元々の攻撃力の半分アップさせる!」

 

ストロング・ウィンド・ドラゴン 攻撃力2400→3900

 

万丈目「バトルだ!ストロング・ウィンド・ドラゴンでファーニマル・ペンギンを攻撃!ストロング・ハリケーン!」

 

ストロング・ウィンド・ドラゴンがその翼で旋風を巻き起こしてファーニマル・ペンギンを攻撃する。

 

利玖「させるか!罠カード、和睦の使者を発動!これによりこのターン俺のモンスターは戦闘では破壊されず、俺の受ける戦闘ダメージは0になる!」

 

旋風は障壁に阻まれて消えた。

 

万丈目「…俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

利玖「じゃあエンドフェイズに罠カード、融合準備を発動。EXデッキのデストーイ・チェーン・シープを君に見せて、デッキからエッジインプ・チェーンを手札に加えて墓地の融合を手札に加えるぞ」

 

利玖 手札2→4

 

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力2000→800

 

万丈目 LP1400 手札0

 

・モンスター

パンデミック・ドラゴン 攻撃力2500

ストロング・ウィンド・ドラゴン 攻撃力3900

・魔法・罠

無し

 

――ターン4――紫雲院利玖

 

利玖「俺のターン、ドロー!」

 

利玖 手札4→5

 

利玖「俺は魔法カード、融合を発動。手札のエッジインプ・チェーンとフィールドのファーニマル・ペンギン、ファーニマル・ドッグを素材に融合召喚!現れろ、デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー!!」

 

利玖のフィールドに巨大な禍々しい西洋人形の様なモンスターが現れる。

 

デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー 攻撃力2000

 

利玖「融合素材になったファーニマル・ペンギンの効果発動!デッキから2枚ドローして1枚捨てる。この効果で捨てた魔玩具厄瓶の効果発動!相手フィールドの表側表示モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで半分にする。俺はパンデミック・ドラゴンを選択!」

 

パンデミック・ドラゴン 攻撃力2500→1250

 

利玖「そして墓地に送られたエッジインプ・チェーンの効果でデッキから魔玩具融合を手札に加える」

 

利玖 手札4→5

 

利玖「デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリーの効果!自分のターン中このカードの攻撃力は墓地の悪魔族・天使族モンスター1体につき300アップする!今墓地にいる悪魔族・天使族の数は8体!2400ポイントアップ!」

 

デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー 攻撃力2000→4400

 

利玖「更にデストーイ・サーベル・タイガーの効果で攻撃力は400アップ!」

 

デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー 攻撃力4400→4800

 

万丈目「攻撃力4800!」

 

利玖「バトルだ!デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリーでパンデミック・ドラゴンを攻撃!」

 

ナイトメアリーが髪を伸ばしてパンデミック・ドラゴンに攻撃する。

 

万丈目「くっ!罠カード発動!次元幽閉!相手の攻撃モンスター1体を除外する!」

 

利玖「デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリーの効果!フィールドのこのカードを対象とする相手の効果が発動したことで、EXデッキのデストーイ・シザー・ベアーを除外してその効果を無効にする!」

 

万丈目「なにい!?」

 

ナイトメアリーが次元の裂け目に飲み込まれようとしたが、ナイトメアリーは波動を発して罠の効果を打ち消した。そしてそのまま攻撃を再開する。

 

デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリー攻4800VSパンデミック・ドラゴン攻1250

 

万丈目「ぐわあっ!?」

 

万丈目 LP1400→0

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

デンジャラス・デストーイ・ナイトメアリーの一撃が万丈目のLPをゼロにした瞬間、静寂が場を支配した。

 

「…………」

 

万丈目は呆然とした表情でフィールドを見つめている。側近たちも言葉を失っていた。

 

「な……なんて……」

 

万丈目が震える声で言った。

「なんていう力だ……」

 

「これが僕のデストーイデッキの真骨頂だよ」

 

俺はカードを片付けながら淡々と答える。

 

「普段はこんなモンスター使わないけどね」

 

「普段は……だと?」

 

万丈目は顔を上げた。その目には怒りと驚きが入り混じっていた。

 

「なぜ隠していた?」

 

「言ったでしょう。子供同士の遊びで本気出すのは大人げないって」

 

俺は肩をすくめる。

 

「でも君が真剣勝負を望むなら応えなければ」

 

万丈目はしばらく黙っていたが、やがて口元を歪めて笑った。

 

「……フッ。面白い奴だ」

 

「え?」

 

「認めよう。俺はお前に完敗した」

 

「万丈目君……」

 

「ただし!」

 

突然彼は声を荒げる。

 

「次は俺が勝つ! 絶対にだ!」

 

「もちろんだよ」

 

俺は微笑む。

 

「楽しみにしてる」

 

---

 

その日以来、不思議なことに万丈目との交流が始まった。最初は彼からの一方的な誘いだったが、徐々にお互いの家を行き来するようになる。

 

「またお前の家に行くぞ。あのカードを見せるんだ!」

 

「えー、また?」

 

「何が『えー』だ。貴様には俺の特訓相手としての義務がある」

 

いつしか俺の家は万丈目の第2の道場となっていた。親たちは「将来有望な友達ができた」と喜んでいるが、当の本人同士はライバル以上の関係になっている。

 

---

 

ある日曜日。万丈目が珍しく落ち込んだ様子で現れた。

 

「どうしたんだい?」

 

「……兄貴たちが帰国した」

 

「ああ……例の兄さんたち?」

 

「そうだ。また始まったよ……『お前は何もできてない』『弟だから甘やかされる』『俺たちとは比べものにならない』と」

 

万丈目はソファに座り込み、テーブルに突っ伏した。

「あの二人は何でもできるんだ。勉強もスポーツも何でも……唯一俺が勝ってるのがデュエルだけだったのに……」

 

「なるほど」

 

俺は紅茶を淹れながら聞く。

 

「それで『全国制覇』に拘るんだね」

 

「馬鹿にするな!」

 

突然彼は起き上がる。

 

「俺は……俺は兄貴たちを超えたいんだ!」

 

「馬鹿にしてなんかいないよ」

 

俺は紅茶を差し出す。

 

「君は強い。僕を本気にさせた数少ないデュエリストだ」

 

万丈目はカップを受け取りながら俺をじっと見た。

 

「お前はどうなんだ? 家族のこととか……」

 

「僕?」

 

自分自身について聞かれるとは思わなかった。

 

「普通の家だよ。父親は商社勤務で母親は専業主婦。妹が一人いるけど……」

 

「妹!?」

 

「うん。まだ幼稚園児だけどね」

 

「それなのにそんな強さなのか……」

 

「兄さんのようにできなくてもいいんじゃないか?」

 

俺は窓際で空を見上げながら言った。

 

「兄さんたちは兄さんたち。君は君だ」

 

「……簡単に言うなよ」

 

万丈目はため息をつく。

 

「兄貴たちは常に俺より優秀だった。母さんも父さんも『なぜ万丈目家の三男なのに』って……」

 

「じゃあ教えてあげようか」

 

俺は彼の前に座り直す。

 

「僕だって万丈目君のようにはできない」

 

「お前……、俺に勝ったのにそう言うのか?」

 

「デュエルだけね」

 

俺は肩をすくめる。

 

「勉強は万丈目君の方が上だし運動だってそうだ。それに……君は家族を愛してる。それが一番大事なことだよ」

 

万丈目はハッとした表情になる。

 

「家族を……」

 

「もし君が兄さんたちを超えたいなら」

俺はデッキケースを示しながら続けた。

 

「ここに答えがある。誰かと比較することじゃない。自分がどれだけ成長できるかだ」

 

沈黙のあと、彼は小さく笑った。

 

「紫雲院……お前って本当に変な奴だな」

 

「変か?」

 

「ああ」彼は立ち上がり窓際に寄った。「でも嫌いじゃない」

 

---

 

万丈目との交流はさらに深まった。彼は兄たちへのコンプレックスを乗り越えつつあり、以前よりも明るくなったように見える。

 

「利玖! このデッキどう思う?」

 

夏休みのある日、彼は自信満々で新構築のデッキを見せてくれた。

 

「良く練られてると思うよ?万丈目君最近色んなデッキを試してるけど、どれもそつなく使いこなしてるのは流石だね」

 

「当然だ。俺は兄さんたちに負けないために努力してきた」

 

「でも無理は禁物だよ」

 

「わかってる」

 

彼はデッキケースを握りしめたまま言った。

 

「来年は絶対に全国制覇する。そして……」

 

「そして?」

 

「デュエル・アカデミア中等部に入るために推薦状をもらうんだ」

 

「推薦状?」

 

「ああ。全国大会の成績が良ければ校長直々に推薦してくれるらしい」

 

「なるほど……」

 

実は俺もそれが狙いだった。ただ彼に正直に言うのは躊躇われる。万丈目準という男は負けず嫌いでプライドが高い。そんな彼が目指す目標に自分も便乗しているとなれば……

 

「利玖は?」

 

突然尋ねられビクッとする。

 

「え?」

 

「利玖はデュエル・アカデミア目指してるのか?」

 

「う……うん」俺は慌てて答える。「でも僕は一般入試で」

 

「嘘つけ」

 

彼は鋭い眼光で見つめてくる。

 

「お前の実力なら推薦を狙えるはずだ」

 

「それは……」

 

「正直に言え」

 

「……推薦狙ってるよ」

 

彼はニヤリと笑った。

 

「だと思った。実は俺もまだ確約を得ていないんだ」

 

「え?」

 

「父さんの知人がアカデミアの理事長と面識があるらしくてな」

 

万丈目は苦笑いする。「俺が『兄さんたちを超える』と言ったら推薦の件を進めると約束してくれたんだ」

 

「それって……」

 

「ああ。条件付きだ」

 

彼は拳を握りしめる。

 

「必ず全国大会で優勝すること。それが条件だ」

 

「そっか……」

 

「お前はどうする?」

 

「うん。でも万丈目君と競争になるけど……」

 

「当たり前だろ!」

 

彼は胸を張る。

 

「俺とお前が推薦を争うなら……それはそれで燃えるじゃないか」

 

「そうだね」

 

俺は思わず笑ってしまった。万丈目は真剣な顔で続ける。

 

「利玖、一緒に特訓しよう。全国大会もアカデミアも目指して」

 

「もちろん」

 

俺たちは握手を交わした。いつの間にか立場は変わっていた。最初は単なるライバルだったのに、今は共に高め合う友人になっている。

 

「でもね万丈目君」

 

「ん?」

 

「アカデミアに入っても過度な期待はしないほうがいいよ」

 

俺は少し警告する。

 

「どうしてだ?」

 

「アカデミアは……まあ色々あるからさ」

 

前世の知識を活かしすぎてはいけないと思い濁す。

 

「色々?」

 

「うん。でも素晴らしい場所だとも思う」

 

「なんだよそれ。意味わからん」

 

「いずれ分かるよ」

 

こうして俺たちの共同目標ができた。全国大会優勝とデュエル・アカデミア中等部への推薦入学。

同時に俺の中で新たな決意が生まれていた。

GX編での出来事に巻き込まれることを避けつつ、大切な友人である万丈目を支えようと―。

 




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