縫合者、紫雲院利玖のデュエル・スピリット 作:クォーターシェル
ある日、俺達はデュエル・アカデミア中等部学生食堂にて各々の注文をしていた。そんな中、万丈目は俺に席の確保を頼むと、食堂の隣の購買に向かった。なんでも今日はデュエル・アカデミアの限定品であるアルティメット・プリンを食べたい気分らしい。アルティメット・プリンは高人気、高価格、高カロリーと三拍子揃ったウルトラレアスイーツである。
「すまん!ちょっと待っててくれ」
万丈目が席を立って購買に向かう。
「ゆっくりでいいよ」
「ありがと!すぐ戻る!」
菅郎は相変わらず熱心にメニューを見つめている。
「うーん……AランチにするかBランチにするか……」
「悩みすぎだろ」
「でも迷うんだよな~。利玖はどっちにするんだ?」
「Bランチかな」
「じゃあオレもそれで!」
菅郎が注文しようとカウンターに向き直ったとき—
「きゃあっ!」
悲鳴と共に購買部から混乱が伝わってきた。
「何だ?」
菅郎が立ち上がる。
「行ってみよう」
俺も続いて立ち上がった。
~購買部前~
「なんで譲れないんだ!」
「アタシが先に取ったんだよ!」
「先に金を払ったのは俺だ!」
万丈目と制服姿の赤い髪で背の低い女子生徒が激しく言い争っている。彼女の手には確かにアルティメット・プリンの箱が握られている。
「君は……安田里亜か?」
俺は思い出して口にする。確か新入生のクラス分け表にその名前があった。
「あっ」
彼女は振り返る。
「君は紫雲院利玖君だね?噂は聞いているよ」
「噂?」
「小学生時代に万丈目君と張り合ってたっていう話だよ」
万丈目が割り込む。
「そんなことよりプリンだ!最後の一個を買いに来たのに!」
安田は毅然とした態度で反論する。
「アタシも食べたかったんだよ!1日に30個しか販売されない希少品だし」
「だが順番は俺だろ!」
「同時に取ったんだよ!」
周囲の生徒たちが遠巻きに見ている。どうやら膠着状態だ。
「こういう場合の解決方法は……」
万丈目が腕を組む。
「デュエルで決めよう」
「えっ?」
菅郎が驚いて振り向く。
「いいよー」
安田はにやりと笑う。
「アタシの実力を見せつけてあげるよ」
「デュエルで決めようって……」
菅郎が呆れたように言う。
「そんなことで争うなよ……」
「そんなことじゃない!これは重大案件だ!」
万丈目が強く否定する。
「このアルティメット・プリンは週に一度しか売られない幻の一品!価格は2,000円!入手難易度SSS級だ!」
「万丈目のやつ……食い意地張りすぎだろ……」
菅郎が小声で呟く。
安田も興奮した様子で続ける。
「しかも期間限定フレーバー!アタシだって譲れないよ!!」
「だったらなおさらだ!デュエルで白黒つけようじゃないか!」
「いいね!」
安田が即答する。
「ちょ……ちょっと待て」
俺は慌てて介入する。
「二人とも落ち着いて。せっかくの仲間なのに—」
「アカデミアの掟は知っての通り」
万丈目が真剣な表情で言う。
「勝者の要求は絶対だ」
「そうだよ」
安田も同意する。
「それにアタシも負ける気はないしね!」
こうしてアルティメット・プリンをかけた公式デュエルが始まった。
俺と菅郎はデュエルフィールドに移動し、万丈目と安田のデュエルを見守ることにした。
「まさかアルティメット・プリンごときで万丈目がデュエルを挑むとは……」
俺は驚きを隠せない。万丈目は確かに食いしん坊だが、ここまで執着するとは思わなかった。
「まぁまぁ。でも面白そうじゃん!」
菅郎はニコニコしながら言う。
「オレも早くデュエルしたいなぁ……」
そんなことを話しているうちに万丈目と安田は準備を整え、お互いに向かい合った。
「「デュエル!」」
――ターン1――万丈目準
万丈目「俺の先攻、ドロー!」
万丈目 手札5→6
万丈目「俺は手札から魔法カード、おろかな埋葬を発動!デッキからコドモドラゴンを墓地に送る!」
万丈目「墓地に送られたコドモドラゴンの効果発動!手札からドラゴン族1体を特殊召喚できる!俺は手札から、タイラント・ドラゴンを攻撃表示で特殊召喚!」
タイラント・ドラゴン 攻撃力2900
万丈目のフィールドに正統派な見た目の巨竜が現れる。
観客A「1ターン目から最上級モンスターを呼び出すのかよ!?」
万丈目「コドモドラゴンの効果を発動したターンはバトルフェイズが行えないが、どのみち先攻1ターン目だから問題は無い。更にカードを1枚伏せてターンエンドだ」
万丈目 LP4000 手札3
・モンスター
タイラント・ドラゴン 攻撃力2900
・魔法・罠
伏せカード×1
――ターン2――安田里亜
里亜「アタシのターン、ドロー!」
里亜 手札5→6
里亜「アタシはカードを5枚伏せてターンエンドだよっ!」
万丈目「何?」
菅郎「手札事故でも起こしたのか?」
里亜 LP4000 手札1
・モンスター
なし
・魔法・罠
伏せカード×5
――ターン3――万丈目準
万丈目「俺のターン!ドロー!」
万丈目 手札3→4
万丈目「(あれは本当に手札事故なのか?それとも安田の戦略…?)俺は手札から、サモナー・ドラゴニュートを召喚!」
サモナー・ドラゴニュート 攻撃力100
万丈目のフィールドに杖を持った竜人が現れる。
万丈目「サモナー・ドラゴニュートの効果発動!自身を守備表示にしてデッキからレベル4以下のドラゴン族1体を呼び出す!俺はデッキからガンナー・ドラゴニュートを攻撃表示で特殊召喚!」
サモナー・ドラゴニュートが守備表示になり呪文を唱えると、杖の先から魔法陣が展開されそこから銃を装備した竜人のモンスターが現れる。
ガンナー・ドラゴニュート 攻撃力1700
ガンナー・ドラゴニュート(オリカ)
効果
星4/炎属性/ドラゴン族/攻1700/守600
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
① このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分フィールドに存在する表側表示のドラゴン族モンスターの数×500のダメージを相手に与える。
万丈目「ガンナー・ドラゴニュートの効果発動!こいつの特殊召喚に成功したことにより、相手に俺のフィールドのドラゴン族の数の500倍のダメージを与える!」
ガンナー・ドラゴニュートが里亜に銃を構えて銃を連射した。
里亜「きゃあ!?」
里亜 LP4000→2500
万丈目「俺は手札から魔法カード、ギャラクシー・サイクロンを発動!相手の伏せカード1枚を破壊する。俺は君のフィールドの真ん中の伏せカードを破壊だ!」
里亜「ちょっと待った!アタシは罠カード、偽物のわなを発動するよっ!私の罠カードが破壊される場合、このカードを代わりに破壊するよ。破壊される筈だったカードは永続罠、死霊ゾーマだから確認してね!」
ギャラクシー・サイクロンはダミーの罠を破壊する。万丈目は破壊される筈だった罠カードを確認する。
万丈目「死霊ゾーマか。確認した(あのカード、彼女のデッキは罠カード主体のデッキか?)」
里亜「更にこのタイミングで私は死霊ゾーマを発動して死霊ゾーマをモンスターとして守備表示で特殊召喚するよっ!」
死霊ゾーマ 守備力500
里亜のフィールドに永続罠カードでありモンスターでもある死霊が現れる。
万丈目「死霊ゾーマ……、確か戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与えるカードだったか……。だがそれくらいで臆しないぞ!バトル!ガンナー・ドラゴニュートで死霊ゾーマを攻撃!」
ガンナー・ドラゴニュートが死霊ゾーマに発砲する。
ガンナー・ドラゴニュート攻1700VS死霊ゾーマ守500
ガンナー・ドラゴニュートの攻撃で死霊ゾーマは破壊される……
里亜「この瞬間!死霊ゾーマの効果発動だよっ!君のライフにガンナー・ドラゴニュートの攻撃力分のダメージを与えるねー」
万丈目「ぐっ!?」
死霊ゾーマの怨念が万丈目を包み込み、ダメージを与える。
万丈目 LP4000→2300
万丈目「ならばタイラント・ドラゴンでダイレクトアタックだ!」
タイラント・ドラゴンが火炎の息を吹こうとする。
里亜「この瞬間っ!アタシは永続罠カードのカース・オブ・スタチューとアポピスの蛇神と宮廷のしきたりを発動するねっ!」
里亜は一気に3枚の伏せカードを発動する。
里亜「カース・オブ・スタチューとアポピスの蛇神をそれぞれモンスターとして守備表示で特殊召喚!」
カース・オブ・スタチュー 守備力1000
アポピスの蛇神 守備力1800
里亜のフィールドに石像と蛇の罠モンスターが現れる。
里亜「アポピスの蛇神の効果を発動するね!デッキから澱神アポピスをフィールドにセットするよ!」
里亜「攻撃は巻き戻しになったけど、一応言っておくけど宮廷のしきたりの効果でアタシの永続罠カードは破壊されないからね!つまり、永続罠である私の罠モンスター達は戦闘でも効果でも破壊されないよー!」
万丈目「ちっそれでは、攻撃する意味がない!俺はバトルを終了してターンエンドだ」
万丈目 LP2300 手札2
・モンスター
タイラント・ドラゴン 攻撃力2900
サモナー・ドラゴニュート 守備力1800
ガンナー・ドラゴニュート 攻撃力1700
・魔法・罠
伏せカード×1
――ターン4――安田里亜
里亜「アタシのターン、ドロー!」
里亜 手札1→2
里亜「アタシはアポピスの蛇神をリリースして、邪帝ガイウスをアドバンス召喚するねっ!」
アポピスの蛇神が生贄になり、威風堂々とした雰囲気を纏う悪魔が現れた。
邪帝ガイウス 攻撃力2400 守備力1000
里亜「邪帝ガイウスとアポピスの蛇神の効果を発動するよ!先ずは墓地に送られたアポピスの蛇神の効果!デッキからアポピスの化神1枚を手札に加えるよ!」
里亜 手札1→2
里亜「そして邪帝ガイウスの効果!フィールドのカード1枚を対象に除外するよ!対象にするのは君のタイラント・ドラゴン!」
ガイウスがその手から漆黒の球体を作り出し、タイラント・ドラゴンに向けて放つ。
万丈目「ならば、タイラント・ドラゴンをリリースし、君の邪帝ガイウスと宮廷のしきたりを対象にして罠カード、崩界の守護竜を発動!対象のカードを破壊する!」
球体が当たる直前にタイラント・ドラゴンが姿を消し、衝撃波が里亜のフィールドを襲おうとする。
里亜「だったら!永続罠、澱神アポピスを発動するよ!このカードをモンスターとして特殊召喚して、更に自分の他の永続罠の数だけターン終了時まで相手の表側表示カードの効果を無効にするんだ!君の崩界の守護竜の効果を無効にするね!」
澱神アポピス 攻撃力2000
衝撃波は里亜のカードに届く前に蛇のモンスターが発した波動の前にかき消された。
万丈目「何っ!?」
里亜「カース・オブ・スタチューを攻撃表示にしてバトル!先ずカース・オブ・スタチューでガンナー・ドラゴニュートに攻撃!」
カース・オブ・スタチューが目から怪光線を発射してガンナー・ドラゴニュートを攻撃する。
カース・オブ・スタチュー攻1800VSガンナー・ドラゴニュート攻1700
ガンナー・ドラゴニュートは怪光線をまともに受けて破壊された。
万丈目「くっ!」
万丈目 LP2300→2200
里亜「澱神アポピスでサモナー・ドラゴニュートを攻撃するよ!」
澱神アポピスが剣をサモナー・ドラゴニュートに振るう。
澱神アポピス攻2000VSサモナー・ドラゴニュート守1800
サモナー・ドラゴニュートはそのまま剣で切り裂かれた。
万丈目「この瞬間、手札の異界の棘紫竜の効果発動!自分フィールドのモンスターが破壊されたことによりこのカードを特殊召喚できる!異界の棘紫竜を守備表示で特殊召喚!」
異界の棘紫竜 守備力1100
紫色のドラゴンが守備表示で出現する。
里亜「だったら邪帝ガイウスで異界の棘紫竜を攻撃するよ!」
邪帝ガイウス攻2400VS異界の棘紫竜守1100
ガイウスは腕を振るい、異界の棘紫竜を殴り飛ばした。
里亜「うーん……、決められなかった……。カードを1枚伏せてターンエンドにするね」
里亜 LP2500 手札1
・モンスター
カース・オブ・スタチュー 攻撃力1800
邪帝ガイウス 攻撃力2400
澱神アポピス 攻撃力2000
・魔法・罠
宮廷のしきたり
カース・オブ・スタチュー
澱神アポピス
伏せカード×1
――ターン5――万丈目準
万丈目「俺のターン!ドロー!」
万丈目 手札1→2
万丈目「俺は墓地のギャラクシー・サイクロンの効果発動!墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの表側表示の魔法・罠カード1枚を破壊する!俺が破壊するのは宮廷のしきたりだ!」
万丈目の墓地から旋風が現れ、宮廷のしきたりを破壊した。
里亜「あっ、宮廷のしきたりが!でもまだアタシの方が優勢だよ!」
万丈目「それはどうかな?俺は魔法カード、龍の鏡を発動!墓地のコドモドラゴン、タイラント・ドラゴン、ガンナー・ドラゴニュート、サモナー・ドラゴニュート、異界の棘紫竜を素材に融合召喚を行う!」
里亜「それって……!」
万丈目「融合召喚!来い、F・G・D!!」
万丈目のフィールドに5つの頭を持つ巨大なドラゴンが降り立った。
F・G・D 攻撃力5000
万丈目「バトルだ!F・G・Dでカース・オブ・スタチューを攻撃!ドラゴンキング・ウェーブ!!」
F・G・Dがそれぞれの頭からブレス攻撃を放った。
F・G・D攻5000VSカース・オブ・スタチュー攻1800
里亜「きゃあああ!?」
里亜 LP2500→0
◇ ◇ ◇
アルティメット・プリンを賭けた決闘の結果は万丈目の勝利に終わった。
「ははは!これでアルティメット・プリンは俺のものだな!」
「うえーん……。負けちゃったよう」
ウソ泣きする安田を尻目に万丈目はアルティメット・プリンを手に取る。なんか……、
「小さい女の子から無理やり強奪したみたいな絵面だな……」
俺は思わず呟いてしまった。菅郎や他の見物人もちょっとその図に引いているようだ……。万丈目はそんな周りの反応を気にも留めずに上機嫌だ。
「さぁて味わって食べるぞー!」
「万丈目……、プリンは逃げないからもう少し我慢しなよ」
「それにしても、安田が小学生くらいに見えるからなんか万丈目が極悪人に見えるぜ……」
菅郎のそのセリフに、
「ふっ、デュエルで勝ったんだからいいだろう。今度同じ状況になったら安田が全力で戦えばいいだけだ。まあ、その時も俺は負けるつもりはないがな」
万丈目はそう言って、アルティメット・プリンの蓋を開ける。すると中からクリームが溢れ出し、香ばしい匂いが辺りに広がった。万丈目は嬉しそうに一口食べる。
「んー!美味しいぃ〜♪」
「よかったなぁ。万丈目。でも良かったのか?アルティメット・プリン1つでそこまでムキになって」
「何を言う!アルティメット・プリンを求めて何千何万ものデュエリスト達が毎日殺到しているのだぞ!この美味しさの為ならどんな手段を使ってでも手に入れたいと思わないか!?」
「いや別に……。それより早く食えよ」
「そっか!危ない危ない。さぁいただきまーす!」
万丈目は再び幸せそうな表情でプリンを食べる。俺と菅郎はそんな万丈目を見て苦笑いした。一方安田は落ち込んでいたがすぐに気を取り直し、次の機会に向けて気合を入れ直していた。
「次こそは絶対に手に入れてみせるんだから!」
その後俺達は普通に食事を済ませ教室に戻ったのだった……。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等お待ちしております。