縫合者、紫雲院利玖のデュエル・スピリット 作:クォーターシェル
「丸藤先輩とデュエルしてみたいな」
中庭のベンチに座りながら呟くと、隣にいた菅郎が首を傾げる。
「誰それ?」
「知らないのか? 丸藤亮先輩。中等部三年の優秀なデュエリストだよ」
「へえ……」
「それに……」
俺は少し考える。丸藤亮は近い将来「カイザー」というニックネームで呼ばれるようになる。その片鱗を見られるかもしれない。
「なあ万丈目」
「ん?」
向かい側に座っていた万丈目が顔を上げる。
「三年の丸藤亮先輩って知ってる?」
「丸藤……ああ、知ってるぞ」
万丈目は興味深そうに眉を上げた。
「アカデミア屈指の実力者だ。去年の全国大会でも好成績を収めている」
「やっぱりか……」
俺の言葉に菅郎が目を輝かせる。
「お!何か面白そうじゃん!」
「ただの興味本位ではないんだよね」
俺は少し真面目な顔になる。
「実力を試してみたいというか……」
「なら行ってみるか?」
万丈目が提案する。
「この時間なら三年の講義も終わってるはずだ」
「よし行こうぜ!」
菅郎も乗り気だ。
こうして俺たちはデュエル・アカデミア中等部三年のクラスがある校舎へ向かった。
◇ ◇ ◇
廊下を歩いていると—
「君は……!」
声をかけられて振り返ると、そこには丸藤亮の姿があった。背は高く引き締まった体つき。端正な顔立ちに穏やかな表情。まさに原作通りの佇まいだ。
「こんにちは丸藤先輩」
「君が噂の紫雲院利玖くんか」
亮は表情を和らげる。
「入学以来の実力派だと聞いているよ」
「恐縮です」
「それで俺に何か用かい?」
「実は……」
俺は率直に告げる。
「先輩とデュエルしてみたいんです」
一瞬の沈黙。
「なるほど」
亮の表情は少し鋭くなる。
「理由を聞いてもいいかい?」
「僕は先輩のことを尊敬しています」
俺は正直に言う。
「あなたのような強者と戦えるチャンスがあれば」
亮はしばらく考え込んだ後、意外な提案をした。
「では一つ条件を出させてくれないか?」
「条件ですか?」
「ああ」
亮は頷く。
「デュエル部員全員に勝利できたら、君と正式にデュエルする。どうだい?」
「デュエル部……」
「デュエル部の部長は斉藤締。彼を超えた君とは是非とも戦ってみたい」
「わかりました!」
こうして丸藤亮との約束を取り付け、向かうはデュエル・アカデミア中等部のデュエル部部室である。
「それにしても、デュエル・アカデミアでわざわざデュエル部って何をやっているんだろう?」
「まあ要するにデュエルの強化の為の活動かな。デッキ構築の研究とかデュエル技術の向上とかね。そして実力派の者同士で切磋琢磨するってわけだな」
万丈目は腕組みをしながら説明する。
「そういうわけでこれからデュエル部に向かうぞ!」
「了解!」
こうして俺たちはデュエル・アカデミア中等部にあるデュエル部部室へ足を踏み入れたのだった……。
「すごいな……こんなに大きな施設がアカデミア内にあったんだ」
俺は目の前に広がる光景に圧倒されていた。そこはプロ仕様にも劣らない巨大なデュエルフィールドが複数配置されている空間であった。
「これは……まさにプロ顔負けじゃないか?」
隣にいた菅郎も感嘆の声を上げている。すると部室内を見渡していた万丈目が俺たちを促した。
「おい!ボーっとしている暇はないぞ。さっさと部長を倒して帰るんだ!」
「そうだな。よし行こう!」
そして俺たちはデュエルフィールドへと向かった……。
「おい君たち!ここはデュエル部員しか入れないところだぞ?」
受付にいた部員と思しき男子生徒が俺たちを怪訝そうに見つめている。
「すまない。俺たちはデュエル部に入部するために来たんだが」
俺はちょっと方便を使うことにした。まあ、この後正式に入部するのもいいかもしれないが。
「君たちが?……まあ良いだろう。入部テストを受けてもらうぞ」
「よし行こう!」
菅郎は勇ましくもその部員について行った。俺と万丈目もその後に続いた。そして三人はそれぞれ別々のデュエルフィールドへと案内された。
「君たちの実力は入部テストで見てもらう。頑張って欲しい」
「もちろんです!」
俺たちは揃って返事をした……。
俺は特に苦労もなくデュエル部の部員達を蹴散らしていった。何しろみんな一年生だったからね。そして最後はデュエル部部長、斉藤締が残るのみとなった。
俺はデュエルフィールドに入る。対峙するのは三年生の斉藤締……。うん。この時代の三年生って、前世の記憶的に言えば丸藤亮と同年代。他には天上院吹雪や藤原優介といった人物がいるが、逆に言うとその3人以外は特に目立った描写は無かった。藤原優介はある事情によってアカデミア関係者の記憶から消えていたという事情はあるにせよ、天上院吹雪については原作でそれなりの扱いがあったと思う。
つまりその2人以外に有力なデュエリストが中等部時代からいるとは考えにくいのだ。しかしそうなると……斉藤締とは一体……?うーむ、原作では丸藤亮の世代にあまりスポットが当たっていたとは言い難く、このデュエル部部長さんも原作で描写されていなかっただけかもしれない。
「君が噂の紫雲院利玖君か。丸藤もとんだ道場破りを寄越したものだな」
斉藤締は少し呆れ気味で俺を見る。彼の見た目は身長180cm近い長身茶髪のツーブロックの青年だ。
「斉藤先輩ですね。早速ですがデュエルをお願いします」
「分かったよ。では始めようか」
「行きましょう!」
「ああ」
俺と斉藤締は互いにデュエルディスクを構える。
「「デュエル」」
――ターン1――紫雲院利玖
利玖「先攻は俺か。ドロー!」
利玖 手札5→6
利玖「俺は手札のファーニマル・ベアの効果発動!このカードを墓地に送って、デッキからトイポット1枚を手札に加えます」
ファーニマル・ベアがデッキからトイポットを持ってくる。
利玖「でもって今サーチしたトイポットを発動して、効果を使用!手札を1枚捨てて、デッキから1枚ドローしてお互いにそのカードを確認します。俺は手札のファーニマル・ウィングを捨ててドロー!」
カプセルマシンが出現し。コインが入れられたことで起動する。
斉藤「引いたカードは……」
利玖「パッチワーク・ファーニマルです。これにより手札からモンスター1体を特殊召喚できます。俺はファーニマル・ドッグを守備表示で特殊召喚!」
ファーニマル・ドッグ 守備力1000
利玖のフィールドにファーニマル・ドッグが現れた。
利玖「ファーニマル・ドッグの効果を発動!デッキからエッジインプ・シザーを手札に加えます」
利玖 手札4→5
利玖「墓地のファーニマル・ウィングの効果発動!このカードと墓地のファーニマル1体を除外して1枚ドローします」
利玖 手札5→6
利玖「ファーニマル・ウィングの更なる効果により俺のフィールドのトイポットを墓地に送って、更に1枚ドロー!更に墓地に送られたトイポットの効果でファーニマル・ドルフィンを手札に加えます!」
利玖 手札6→8
斉藤「手札を一気に増強したか」
利玖「そういうことです!俺は手札から装備魔法カード、魔玩具注文を発動!」
魔玩具注文(デストーイ・オーダー)(オリカ)
装備魔法
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
① EXデッキからレベル7以下のデストーイ融合モンスター1体を融合召喚扱いで守備表示で特殊召喚し、このカードを装備する。このカードを装備したモンスターは表示形式を変更できず、このカードがフィールドを離れた場合破壊される。
利玖「俺はデストーイ・チェーン・シープを融合召喚扱いで、守備表示で特殊召喚し魔玩具注文を装備する!」
デストーイ・チェーン・シープ 守備力2000
チェーン・シープが利玖のフィールドに現れる。
利玖「更に俺は手札から融合を発動!フィールドのデストーイ・チェーン・シープと手札のエッジインプ・シザーを素材として融合召喚を行う!現れろ、捕食植物ドラゴスタペリア!」
チェーン・シープとエッジインプ・シザーが融合し、ドラゴンの様なシルエットを持つ植物族モンスターが現れる。
捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700
斉藤「デストーイではない……!?」
利玖「俺の使う融合モンスターはデストーイだけではないって事です。俺はカードを2枚伏せてターンエンドです」
利玖 LP4000 手札4
・モンスター
ファーニマル・ドッグ 守備力1000
捕食植物ドラゴスタペリア 攻撃力2700
・魔法・罠
伏せカード×2
――ターン2――斉藤締
斉藤「俺のターン、ドロー!」
斉藤 手札5→6
斉藤「(ドラゴスタペリア……、確か相手モンスターの効果の発動を封じる効果を持つと聞く。だがこの手札なら……)俺は重装武者-ベン・ケイを召喚!」
斉藤のフィールドに多数の武器を背負う戦士が降り立つ。
重装武者-ベン・ケイ 攻撃力500
利玖「そのカードは……」
斉藤「知っているなら詳しい説明は不要だな。俺は手札から装備魔法、団結の力と魔導師の力を重装武者-ベン・ケイに装備!」
ベン・ケイが装備魔法の力で強化される。
重装武者-ベン・ケイ 攻撃力500→1300→2300
斉藤「更に俺はカードを1枚伏せる。これにより魔導師の力の効果でベン・ケイは更にパワーアップする!」
重装武者-ベン・ケイ 攻撃力2300→2800
利玖「ドラゴスタペリアの攻撃を上回れた!」
斉藤「バトルだ!重装武者-ベン・ケイで、捕食植物ドラゴスタペリアを攻撃!」
ベン・ケイが様々な武器を駆使してドラゴスタペリアを攻撃する。
重装武者-ベン・ケイ攻2800VS捕食植物ドラゴスタペリア攻2700
ドラゴスタぺリアはそのまま戦闘破壊された。
利玖「くっ!」
利玖 LP4000→3900
斉藤「ベン・ケイは通常の攻撃の他に装備しているカードの数まで追加攻撃できる!重装武者-ベン・ケイで、ファーニマル・ドッグを攻撃!」
重装武者-ベン・ケイ攻2800VSファーニマル・ドッグ守1000
ファーニマル・ドッグもベン・ケイの攻撃の前になすすべなく破壊される。
利玖「この瞬間!罠カード、魔玩具補償を発動!」
魔玩具補償(デストーイ・カンペンセーション)(オリカ)
通常罠
① 自分フィールドの表側表示の「デストーイ」、「ファーニマル」、「エッジインプ」モンスターのいずれか1体が破壊された場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローし、その後このターンのエンドフェイズまで自分の受ける全てのダメージは半分になる。
利玖「魔玩具補償の効果で俺はデッキから1枚ドロー!」
利玖 手札4→5
利玖「そしてこのターン俺の受けるダメージは全て半分になる」
斉藤「重装武者-ベン・ケイでダイレクトアタック!」
重装武者-ベン・ケイ攻2800
ベン・ケイが弓で利玖を射る。
利玖「うっ!?」
利玖 LP3900→2500
斉藤「俺はこれでターンエンドだ」
斉藤 LP4000 手札2
・モンスター
重装武者-ベン・ケイ 攻撃力2800
・魔法・罠
団結の力(ベン・ケイに装備)
魔導師の力(ベン・ケイに装備)
伏せカード×1
――ターン3――紫雲院利玖
利玖「俺のターン、ドロー!」
利玖 手札5→6
利玖「俺は手札から魔法カード、融合回収を発動。墓地の融合とエッジインプ・シザーを手札に加える」
利玖 手札4→6
利玖「でもって手札からファーニマル・ドルフィンを召喚!」
利玖のフィールドにイルカのファーニマルが現れた。
ファーニマル・ドルフィン 攻撃力1600
利玖「ファーニマル・ドルフィンの効果発動!墓地のトイポットをフィールドにセットして、デッキからファーニマルまたはエッジインプ・シザーを墓地に送る。俺は2体目のファーニマル・ウィングを墓地に送る!」
ファーニマル・ドルフィンは墓地からトイポットをセットする。
利玖「魔法カード、融合を発動!手札のエッジインプ・シザーとフィールドのファーニマル・ドルフィンを素材に融合召喚する!来い、デストーイ・シザー・タイガー!」
利玖のフィールドにハサミが飛び出た虎のデストーイが現れた。
デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力1900
利玖「デストーイ・シザー・タイガーの効果と融合素材になったファーニマル・ドルフィンの効果を発動!先ずはデストーイ・シザー・タイガーの効果!このカードの融合素材としたモンスターの数までフィールドのカードを対象とし、そのカードを破壊する!俺は貴方のフィールドの重装武者-ベン・ケイと伏せカードを選択!」
斉藤「俺は伏せてあった永続罠、デュアル・アブレーションを発動!この効果により手札を1枚捨てて、俺はデッキからデュアルモンスター、フェニックス・ギア・フリードを特殊召喚する!」
斉藤 手札2→1
斉藤「来い、フェニックス・ギア・フリード!」
斉藤のフィールドに炎属性の剣士が現れる。
フェニックス・ギア・フリード 攻撃力2800
デュエル部部員A「出た!部長のエースモンスターだ!」
その後、シザー・タイガーのハサミによってベン・ケイとデュアル・アブレーションが両断された。
利玖「ファーニマル・ドルフィンの効果で墓地の融合をデッキに戻します。そしてデストーイ・シザー・タイガーの効果で俺のデストーイの攻撃力はファーニマルモンスター及びデストーイモンスターの数×300アップします」
デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力1900→2200
利玖「更に俺は手札から魔法カード、魔玩具補綴を発動!その効果で俺はデッキから融合とエッジインプ・チェーンを手札に加えます」
利玖 手札2→4
利玖「俺は魔法カード、融合を発動!手札のパッチワーク・ファーニマルとエッジインプ・チェーンを融合素材として融合召喚!現れろ、デストーイ・デアデビル!」
悪魔のぬいぐるみといった外見のデストーイが利玖のフィールドに現れる。
デストーイ・デアデビル 攻撃力3000
斉藤(フェニックス・ギア・フリードを上回る攻撃力のモンスター!)
利玖「デストーイ・シザー・タイガーの効果で攻撃力アップ!」
デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力2200→2500
デストーイ・デアデビル 攻撃力3000→3600
利玖「バトルだ!デストーイ・デアデビルでフェニックス・ギア・フリードを攻撃!」
デストーイ・デアデビルがフェニックス・ギア・フリードに対し、三又槍を振るう。
デストーイ・デアデビル攻3600VSフェニックス・ギア・フリード攻2800
フェニックス・ギア・フリードは剣で攻撃を受け止めようとするがそのまま戦闘破壊されてしまう。
斉藤「くっ!」
斉藤 LP4000→3200
斉藤(このままデストーイ・シザー・タイガーの直接攻撃を受けてもライフは残るが…)
利玖「この瞬間デストーイ・デアデビルの効果発動!このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した場合に相手に1000ダメージを与える!」
斉藤「何!?」
デストーイ・デアデビルが目からビームを放ち斉藤を攻撃する。
斉藤 LP3200→2200
利玖「デストーイ・シザー・タイガーでダイレクトアタックです!」
デストーイ・シザー・タイガーが斉藤に爪を振るう。
デストーイ・シザー・タイガー攻2500
斉藤「ぐわあっ!?」
斉藤 LP2200→0
◇ ◇ ◇
こうして俺はデュエル部部長に勝った。
「斉藤先輩、ありがとうございました」
俺は斉藤先輩に礼をした。
「デュエル部全員に勝ったことで俺は丸藤先輩に挑戦できます」
すると、
「全員?まだ、君が戦っていない部員が居るぞ」
「何ですって!?」
斉藤先輩の話によると、デュエル部部員はこの場の面子が全員ではなく二年生の美戸礼子という女子生徒がいるらしい。
「その美戸先輩は何処に…?」
「彼女はデュエル部唯一の2年生部員だ。そしてその実力は……」
「デュエル部の中でも最強クラスということですね」
「そういうことだ」
斉藤先輩は続ける。
「それに丸藤もそれを期待しているのかもしれない」
「亮先輩がですか?」
「ああ。丸藤はおそらく君の実力を確かめたくて今回のことを仕組んだのだろう」
「なるほど……」
確かに言われてみれば納得できる点はある。
「分かりました。その美戸先輩を探してみます」
「その必要はないわ」
その言葉に振り向くと、ローブを着たまるで絵本の魔法使いの様な恰好をした少女がそこに立っていた。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想等お待ちしております。