オグリキャップとリュウレンジャー
「お腹が、、空いたな、、、」
お腹を空かせ、フラフラと歩くウマ娘が一人。
地元笠松を離れ、中央はトレセン学園へと通い、日々トレーニングへと励む葦毛のウマ娘。
オグリキャップ、通称オグリである。
今日もトレーニングのため、学園が休みなのもありロードワークへと繰り出していた。
しかし、たまには気分を変えようといつものコースから離れたのが失敗だった。
ようするに、迷子になったのである、、、
「うう、、もう限界だ、、、」
オグリの特徴として、かなりの大食いウマ娘として知られている。
朝食はしっかり(いや、かなり)食べてきたのだが、オグリはすぐにお腹が空く。
それに加えて迷子、それによる不安から空腹は増すばかり。
トレーニングのため、財布も携帯も持ってはいない。
「あぁ、、タマ、、最後にタマのたこ焼きが食べたかった、、、」バタリ
ついには力尽き倒れこんでしまった。
「ふんふふんふふ~ん♪ って?!えぇー?!ちょ、ちょっとお嬢ちゃん大丈夫!?」
「う、ううん?」
神は彼女を見捨ててはいなかったようだ。
鼻歌交じりに自転車をこいでいた壮年が、倒れたオグリに気づき声をかける。
「お、お腹が、、」
「お、お腹?おなかが痛いのかい?ならすぐに救急車を!」
「お腹が、、、空いた、、、」ガクリ
「は?!お、お腹が空いた?そ、それで倒れてたの、、?」
まさかの理由に驚くも呆れる壮年なのであった。
「あっはっはっはっは!それでお腹が空いて力尽きて倒れてたんだ!」
「むう、わ、笑うな//」
「ごめんごめん!で、どう?空腹の時に食べるうちの餃子は?」
「最高だ!」
ここは壮年が経営する中華料理店、いわゆる町中華である。
あの後、さすがに道端に放置もできず、ひとまず自分の店へと連れて行った。
そして空腹のオグリに、看板メニューである餃子をふるまってくれていた。
念のため多めに作った餃子であるがすでにすべてオグリのお腹の中だ。
落ち着いたところで、あらためて話を聞いてみれば、
迷子になったあげく行き倒れていた事を聞き、つい笑ってしまった。
「しかし、まさか全部食べるなんて、そんなにお腹空いてたんだ。」
「ああ、まだまだ全然食べられるぞ。」
「マジか、、ごめんね、夜のお客さんに出す分がなくなっちゃうよ、、」
「むう、、、」
オグリの食欲に絶句する壮年。そしてオグリキャップよ、少しは遠慮しなさい。
「あらためまして、俺は亮。ここ赤龍軒で店主をしてる。お嬢ちゃんは?」
「オグリキャップだ、よろしく頼む。」
「オグリちゃんね、よろしく。さて、迷子ってことだけどトレセン学園から来たのかい?」
「ああ、コースを変えてあちこち走っていたら迷ってしまって、、」
「じゃあ近くまで送っていくよ、ちょうどトレセン学園の近所まで出前の器取りに行くから」
「いいのか!助かる!」
亮からの申し出に感謝するオグリ。何とかトレセン学園に帰れそうだ。
「ここからならもう大丈夫だ。本当に助かった、ありがとう。」
「どういたしまして、それじゃ気を付けてね。」
「ああ、またお店に食べに行かせてもらってもいいだろうか?」
「もちろん!これ、うちの店のチラシね。ここに地図ものってるから今度は迷子にならないできてね。」
「むう//も、もう迷わない!」
「あはは!あ、それと来る前の日とかにチラシにのってる番号に連絡してよ。
餃子いっぱい仕込んどくから。」
「本当か!必ずする!!」
「うん、本当に頼むよ、、それじゃね!」
「ありがとう!」
トレセン学園の近くへと無事に帰れたオグリ。
亮の餃子を気に入ったのか、また来店する約束をして別れた。
また赤龍軒へ行くのを楽しみに、自分の寮へと帰っていく。
「オグリ!どこ行ってたんや!!昼にも帰らんとこんな時間まで!!」
「ああ、タマただいま」
「ただいまやあらへん!どれだけ心配したと思ってるんや!」
寮の前でオグリを待っていた小柄で葦毛のウマ娘、彼女はタマモクロス。
オグリのルームメイトである。
どうやら全然帰ってこないオグリを心配して寮の前で待っていたらしい。
「すまない、実は迷子になってしまって、、」
「迷子?!なにしとねんもー!!とにかく色々話きかせてもらうで!」
「ああ!タマに聞いてほしいことがいっぱいあるんだ!」
無事に帰り着いたオグリキャップ。
しかし彼女に待ち受けているのは、お話という名のお説教であることは彼女はまだ知らない。
「いらっしゃーい!ああ、オグリちゃん来たね」
「亮、今日も来たぞ。いつものを頼む」
「餃子50皿ね、ちょっと待ってて」
「ああ、それと麻婆豆腐と唐揚げと春巻きも大盛で頼む」
「え?!ちょ、ちょっと時間かかるよ?」
「かまわない、よろしく頼む」
あの迷子事件から数週間、オグリは赤龍軒の常連客となりつつある。
初めて店を訪れた日から、放課後や休みの日にちょくちょく食べに来ていたオグリ。
かならず頼む餃子はもはやいつもので通じるレベルである。
ちなみに50皿というのは、オグリの食欲に対して店側が定めた上限一杯の量である。
オグリもせっかくできたお気に入りの店を出禁にされたくはないので、渋々ながら納得している。
まあ今のようにそれ以外のも頼むことは禁止されていないため亮は苦労を禁じ得ない。
「ごちそうさまでした、今日もうまかったぞ!」
「そう言ってもらえると料理人冥利につきるよ、くたくただけどね、、」
かなりの量であったがそれを見事に食べきったオグリ。
ちょうど店もお客は彼女一人のため、亮との会話を楽しむ。
「すまない、、亮の中華はおいしいから、、」
「ごめんごめん、気にしないで!自分の料理をおいしそうに食べてくれるのを見るだけで疲れなんて吹っ飛ぶから!」
「なら追加で餃子を後50!」
「ごめんそれは無理」
オグリキャップよ、遠慮という言葉を調べて意味をしっかり覚えたまえ。
「むう、、、ん?亮これはなんだ?」
オグリは店に張られたポスターに気づき亮へと尋ねる。
「ああ、これね。商店街でやるイベントの告知だよ。いろんなお店が出店を出すんだ、もちろんうちもね」
「おお!何を出すんだ?」
「当然餃子だよ、餃子の屋台として参加するよ。」
「な、なあその屋台、私にも手伝わせてもらえないだろうか?」
「え?」
「じ、実は、、迷子になったところを助けてもらい餃子をごちそうしてもらったお礼をまだしていないと思って、、」
「そんなこと気にしなくてもいいのに」
「いや!やはり受けた恩義にはしっかりと報いなければ!それとも、迷惑だろうか、、?」
「め、迷惑だなんて?! じゃ、じゃあ、お手伝いお願いしてもいいかい?」
「ああ!よろしく頼む!!」
思わぬオグリの提案に驚いた亮、彼女の真剣な思いを受け手伝いを頼むことにした。
頼もしい?かはまだ分からない彼女の協力も受け、イベントの当日を迎える。
「亮、餃子2人前追加だ!」
「はいよ!4人前できてるからお会計お願いね!」
「わかった! 待たせたな、4人前で1400円だ」
「ありがとうございます!」
「いやー、まさかあのオグリキャップが売り子してるなんてびっくりだ」
「「おウマのおねーちゃんありがと~!」」
「いっぱい食べるんだぞ!」
イベント当日、赤龍軒の屋台は大好評である。
オグリキャップもオーダーから会計にと大忙しである。
屋台設営や機材・食材搬入の際にはウマ娘パワーを最大限に発揮していたオグリ。
接客もこなせるのは嬉しい誤算である。
子供たちにも大人気なようだ。
「ふう、、つかれた、、、」
「お疲れ様、はいこれバイト代の餃子ね」
「いただきます!」
少し落ち着いたところで休憩する二人、腹ごしらえのようだ。
「本当に助かったよオグリちゃん、手伝ってくれてありがとうね」
「(ごっくん)いや、私も楽しかった!それにありがとうやおいしかったと言ってくれて嬉しかったぞ!」
いつも食べ物を食べる側だったオグリキャップ、食べ物を売る側になってその大変さや楽しみを知ったようだ。
「そうそう!その一言や食べた人の笑顔、そういうのが一番嬉しいんだよね!」
「ああ!」
「俺の餃子や、商店街の仲間が準備したお店でみんなが喜んでくれてる。この光景を見たくて俺たち商店街はこのイベントを続けてるんだ。」
「その気持ち、いまならわかる気がするぞ」
最初は恩返しのつもりで手伝いを申し出た。
今は手伝わせてくれた亮に感謝している。
イベント会場では多くの人たちが、友人や家族で楽しんでいる。
そんな様子を見て、オグリはこのイベントに参加できて本当に良かったと思った。
しかし、そんな幸せな光景を踏みにじるやつらが現れた。
「「「きゃああああああ!!」」」
突然大勢の悲鳴が聞こえる。
「「?!」」
突然の悲鳴に驚く二人。何事かと見てみると、信じられない光景が目に飛び込んできた。
「「「「「キシャアアアアアアアア!!!」」」」」
「か、怪物?なんだあいつらは?!」
人間でもウマ娘でもない、まるで怪物のようなやつらが人々を襲っている。
「ゴーマ族!生き残りか!」
「ゴーマ族?亮あいつらを知っているのか?!」
「話は後!早く逃げろ!」
「あ、ああ、、 ん?あ、あれは?!」
亮の言葉が気になったものの、彼の言う通り逃げようとするオグリ。
しかし、そんな彼女の目に入ったのは
「キシャアア!」
「「た、助けてーー!!」」
「あの子たちは!」
餃子を買って、ありがとうと言ってくれた兄弟が、怪物に襲われている。
それを目にした瞬間オグリは駆け出していた。
ウマ娘のスピードは時速70kmを超える、その勢いのまま兄弟を襲う怪物へと向かう。
「キシャアア!」
「「うわーー!!」」
「それ!!」
「キシャア?!」ドゴーン!
「大丈夫か二人とも?!」
兄弟を襲っていた怪物へ強烈なドロップキックを放つオグリ。
以前にとあるウマ娘が自身のトレーナーにしていたのを見様見真似でやってみた。
ウマ娘の脚力から放たれたキック、怪物といえど吹っ飛ぶ。
「さあ早く逃げr?!」
「「「キシャアアアア!!」」」
仲間をやられ怒ったのか怪物たちがオグリの周りを取り囲む。
背中に兄弟たちを隠し守ろうとするオグリ、そんなオグリに怪物の攻撃が迫る。
「キシャアア!」
「くっ?!」
「ハイーーー!」
「キシャ?!」ドガン!
「りょ、亮?」
「まったく、急に飛び出すなんて何考えてるの」
自分に襲い掛かる怪物を、亮がその拳で倒した。
そのことに驚いているとさらに驚くべきことが。
「ハッ! ウマ娘の! フン! 足は! ハイ! そんなことに! ハイヤ! 使うものじゃないでしょう! ハァアア!」
「「「キシャアアア?!!」」」
オグリたちを取り囲んでいた怪物たちを、亮は次々と倒していく。
「きりがないな、、やっぱり素手じゃきついか、、」
「亮、なんでお前はそんなに強いんだ?なんなんだこいつらは?!」
とてつもない光景にオグリは亮へ叫ぶ。
「こいつらはゴーマ族、妖力を武器に暗黒の世界を作ろうとしていた、その生き残りたちだ。」
「ゴーマ族、、」
「「「「「キシャアアアア!!!」」」」」
「仕方がないか、、、オグリちゃん!俺が道を作るから二人を連れて走れ!」
「は?!み、道?」
「ウマ娘の足なら逃げ切れる!頼んだ!」
「わ、わかった!」
疑問はたくさんあるが、亮の言う通りに二人を抱え走る準備をする。
「よし!いくぞ!!」
「気力・転身!オーラ・チェンジャー!!」
チュインチュインチュイン!!!
「リュウレンジャー!天火星・亮!」
「天に輝く五つ星! 五星戦隊、ダイレンジャー!」
「な、なな、、な?!」
亮が掛け声と共に両手のブレスを合わせたと思ったら、一瞬にして赤い戦士のような姿へと変わった。
目の前で起きた衝撃的な光景に唖然としているオグリ。
「りょ、亮なのか?なんだその姿は?」
「ダイ族の子孫にしてゴーマ族と戦う戦士、ダイレンジャーだ!」
「ダ、ダイレンジャー、、?」
「天火星・稲妻炎上破!」
「「「「「キシャアアアア?!」」」」」
「走れ!!」
「?! いくぞ!!」
オグリが啞然としている中、リュウレンジャーはゴーマ族へと強力な技を放つ。
そのすきをついてオグリは兄弟を抱え駆け出す。
「よし、後はこいつらだけか」
「「「キシャアアア、、」」」
オグリたちが駆け抜けたのを見届け、敵に目を向ける。
「まとめて終わらせる! 天火星・稲妻火炎破!」
「「「キシャアアアア!!」」」ドカーン!!
残りのゴーマ族にリュウレンジャーの攻撃。
敵の一掃を確認し、転身を解く。
「ふう、、久しぶりの転身は身体にくるねー、、」
「りょ、亮、、」
「あ、オグリちゃん、、えっと、こどもたちは?」
「あ、ああ、、安全な場所まで走って、お父さんたちに送り届けてきた、、」
「そっか、よかった、、」
気まずい空気が二人を包む。
「りょ」
「ごめんオグリちゃん!こんなことに巻き込んで!片づけは俺がやっておくから!それじゃ!」ダッ
「あ、亮!」
オグリが何かを言うのを遮り背を向けて走り出す。
彼女の言葉を聞くことなく逃げ出してしまった。
仲良くなった常連さんに何を言われるか怖かったのかもしれない。
転身し戦う自分の姿、ゴーマ族の残党の存在。
それらを目の当たりにし命の危機にさえ陥った。
そんな彼女からの言葉を怖くて聞けなかったのだ。
「ありがとうございましたー!」
あのイベントから数ヶ月が経ち、赤龍軒は変わらぬ営業を続けていた。
変わったことといえば、数日に一度は訪ねてきていた大食いのウマ娘が来なくなったことくらいだ。
それはそうだろうと店主は思う。
あんなことがあったんだ、もうここに来ることはないだろう。
そうは思っていても、つい多くの餃子を仕込んでしまう店主である。
ガラガラ
「あ、いらっしゃいま、せ?!」
「ああ、亮!久しぶりだな!」
「オ、オグリちゃん!?」
新たに訪れたお客、
あれ以来姿を見せなかった大食いウマ娘、
オグリキャップの姿がそこにはあった。
「オ、オグリちゃん?!どうしてここに?!」
「どうしてもなにも、ご飯を食べに来たんだが?」
「え、いや、え?!」
「あ!で、電話をするのを忘れていたな、、す、すまない、、」
「いや、それはいいんだけど、あ、あれ以来来なくなったからもう来ないかなって」
「? ああ!たしかにあれは驚いたがそれでなぜ来てはいけないんだ?」
「いけなくはないけど、あんな思いをしたし怖くてもう会いたくないんじゃないかって」
「なぜ怖がる?亮は私たちを守ってくれたじゃないか、怖がる必要なんてまったくないぞ」
「そ、それは、、そうかもだけど、、」
「ああそうだ!あの時は助けてくれてありがとう、また助けられたな!
そう言おうとしたら急に走って言いそびれていたんだ。」
「え、ええ、、」
亮の考えていたことなどオグリはまったく気にしていなかったのだ。
それなのに逃げ出し、今日まで引きずっていたのかと思うと、情けない話である。
「すまないが、餃子をもらえるだろうか?お腹が空いてな、、、」グウゥゥ
「あ、ああ!餃子だね!今日はいくらでも食べていいよ!」
「本当か!」
「ああ、いっぱい準備してたからね!ちょっと待っててね!」
「楽しみだ!ずっとここの餃子が食べたかったんだ!」
「あれ?そういえばどうして来なくなったの?」
「ちょうど合宿やレースが重なっていてずっと学園を離れていてな、やっと戻ってきたんだ。」
「な、なるほど、、よーし!いっぱい食べな!」
「もちろんだ!」
こうして、ひとりのウマ娘とひとりの店主の関係は続いていくのであった。
おまけ
「おかわり!」
「ご、ごめんオグリちゃん、、お店の中もう空っぽ、、、」
「そんな?!」
オグリキャップよ、遠慮という言葉を調べて意味をしっかり覚えたまえ。
この二人あったらこうなるかなっていう妄想を、何とか形にしてみました。
つたない文章で申し訳ない。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。