キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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第一話「炎鬼」

 転生した。よくある死に方をして、よくある神様に会って、よくある特典を持って転生したのだ。

 正直死んだことに関してはどうでも良いと思っていた。両親は死んで関係が3軒隣の家の人よりも薄い親戚しかいない俺を心配する者はいないだろう。職場もクソみたいな上司のせいで心を病む寸前までいっていた。何度上司の頭を見ては椅子で叩き殺したいと衝動的に思った事か……。

 はっきり言ってしまえば疲れ切った俺にとってこの転生は渡りに船だったのだ。残念ながら転生先は選べなかったが次の人生では誰にも縛られずに好きに生きたいと思う。元々一人でいる事に苦を感じる性格ではないからな。むしろ人とのかかわりが苦痛に感じる質だ。

 

「っ! “炎鬼”が出たぞ!」

「ひぃぃぃっ!!!」

 

 転生先はどうやら古代中国らしく魏だの楚だの秦だのよくわからない国が大量に存在していた。あいにく俺は古代中国に関してはさっぱりだ。ショカツリョーとかケントーシとかゲンコーとかアヘン戦争くらいしか知らない。いっつも争ってるへんな場所というイメージだ。

 そんな世界で俺がやっているのは傭兵だ。元々転生する以上ファンタジーな世界で冒険者でもするかもしれないと戦闘系に全振りしていた。そうすれば死ぬことはないし好きに生きる弊害で国とかに恨まれても問題ないと思ったからだ。そして、それはこの世界でも有用どころかチートであった。

 

「……」

「ぎゃっ!?」

「ぎっ!?」

 

 俺が特典でもらった魔剣を振えば周囲の敵兵が体を真っ二つにされて死んでいく。最初の頃は大変だった。人を殺す事なんて初めてなうえに勢い余って味方ごと切り殺してしまったからな。幸い敵将を殺すことが出来たからお咎めはなかったけどな。

 

「だ、誰かこ奴を止めろ! は、はや……!!」

「飛来様―――!!!」

「敵将が討ち取られたぞ! “炎鬼”に続け!!!」

 

 ここが本当の意味での古代中国らしく今の所俺以外にファンタジー要素はない。精々が強い武将とかがめちゃくちゃでかい上に老人でも平気で武器を振って戦えるくらいだ。弱弱しい老人などただの村人以外で見たことがない。

 そんなわけで俺はいつも戦場で適当に戦うだけで味方を勝利に導く事が出来た。まぁ、敵将を簡単に討ち取るからだけど。おかげで俺の異名らしき“炎鬼”の名は広がってその名を聞くだけで敵が及び腰になるほどだ。

 

「よくやってくれた! 貴殿のおかげで秦はまた勝利をつかむことが出来た! これは今回の褒章だ」

「ん……」

 

 戦闘後、俺は指揮官から大量の金が入った袋を渡された。これだけあれば当分は食っちゃ寝が出来る。それも高級旅館でだ。やはり現代とは違って高級旅館でもない限り俺が満足するような持て成しをしてくれない。食も住も、女も。

 当然といえば当然だがこんな俺でもそういった欲望は湧いてくる。最初の頃は戦に出ていれば性欲を力に変換して戦えたんだが最近は性欲を全て使い切る程の大規模な戦争が起きていないせいで中途半端に溜まっていく一方だった。

 別に俺は前世で童貞だったわけじゃないし高級旅館でサクッと抱いて発散したわけだ。高級旅館は娼館も兼ねている場所も多くて一々場所を変更する必要が無かったのは利点だった。

 

「炎鬼殿、しつこいようだが秦国に仕官する気はないか? 今なら三千将の座は堅いぞ?」

「要らない」

「だが何時までも一兵卒というのも……」

「構わない」

「だ、だが……」

「……」

「……」

「……」

「……わかった。諦めよう。だが、出来れば秦国とは敵対しないようにお願いしたい。貴殿を敵に回すなど悪夢でしかないからな」

「心配はいらない」

 

 かつて商人を助けたことがあるがそいつは今では秦で重役についているらしい。そいつはその時の縁か今も交流がありたまに屋敷に招かれて美味い物をご馳走してくれる。そんな奴がいる秦の敵になるつもりは無い。

 この世界には中国に7つの国があるんだ。秦以外の戦争に参加する等簡単な事だ。最近じゃ目立ちすぎて敵対した国では活動しないようにしている。

 

「分かった。次も出来れば頼むぞ」

「ん」

 

 因みに、俺は転生してから暫く一人で行動したせいか会話が苦手になってしまった。だから短い単語で簡潔に伝える癖が出来てしまったが今の所困っていないし問題は無いだろう。問題が起こった時は……、その時になってから考えればいいんだしな。

 

 

 

 

 

「……恐ろしい人物ですね、“炎鬼”は」

「ああ。あれがどこの国にも仕える事無く傭兵でいるという事実に恐怖するよ」

 

 炎鬼と呼ばれる傭兵を見送った千人将は副官の言葉に同意するように言葉を吐いた。彼が炎鬼を配下にして戦うのはこれで4度目だ。実は彼とは長い付き合いであり、最初は伍長時代に伍の一人として率いたのが始まりだった。

 

「今でも思い出す。あの強烈な戦いぶりを……」

 

 炎鬼はそのころから単独行動をする人物であり、気づけば最前線で戦っている人物だった。彼が持つ剣は呪いでもかかっているかの如く熱を持ち、切り裂く相手を燃やしてしまう死の魔剣だった。そしてそれを操る男も一騎当千の実力者であり、千人将は当時は将軍が身分を偽って戦いに来ているとさえ錯覚するほどだった。

 その戦いで男は“炎鬼”の異名で呼ばれるようになり、名をとどろかせていくことになった。そして、千人将は炎鬼の活躍で百将まで一気に登りつめる事が出来たのだ。これは炎鬼が勲章には興味を示さず、金だけを欲した為に率いていた伍長に全ての勲章がいったためだった。

 

「今回の戦い、相手は魏でも名のある将軍だったのですがね……」

「炎鬼がいる時点で勝てるとは思っていたがまぁ、普通は信じられないだろうな」

 

 今回、炎鬼は大した戦争ではないと感じていたが実際は違う。秦は千人将の1000人しかいないのにも関わらず相手は魏軍1万2000と戦力は12倍差だったのだ。勝てたのは単に炎鬼がさっさと将軍を討ち取ってしまったためである。そうでなければ彼らは負けていただろう。

 

「昭王は炎鬼を召し抱えたいと考えていると噂になっていますが王の命令でもいう事は聞きそうにないですね」

「その場合は嫌になって趙や楚に行ってしまわないかが心配だな」

 

 現状、指揮官の中では最も炎鬼とかかわっている千人将は炎鬼の事を漠然(ばくぜん)と理解していた。彼は何かに縛られるような生き方を好まないと。自分の知らない所で利用するのは良いが見ている範囲でそれをしようものなら敵味方関係なく殺しつくすだろうと。

 

「とにかく、だ。たとえ傭兵であっても秦にいる限り我らが負ける事はない。それで満足するべきだろうな」

「そうですね。あれが敵に回るとか私は勘弁ですので」

 

 炎鬼は現状に満足している。彼が秦を去るときは秦が炎鬼にとって過ごしにくいと思える国になった時だろう。そうならないように微力ながら千人将と副官は努力しようと心に誓うのだった。

 




主人公設定
名前:なし(必要な状況がなかったせいでズルズルと)
異名:炎鬼
年齢:始皇帝即位時で36歳(第一話時点で25歳。なお、特典により見た目は20代前半)
身長:175㎝
得物:魔剣レーヴァテイン
好きな事:食事、酒
嫌いな事:使われる事、命令される事、ただ働き
転生特典:ファンタジーらしいステータスとスキル
以下は第一話時点で持っているスキル
・『成長限界突破』
・『無限成長』
・『毒完全無効』
・『体力無限』
・『体力自動回復』
・『傷自動修復』
・『暗視』
・『超筋力』
・『気配察知』
・『気配遮断』
・『危機察知』
・『千里眼』
・『火属性魔法』
etc
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