キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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第十話「蛇甘平原3」

「魔獣召喚-スレイプニル」

 

 秦の兵士たちが防壁を作る傍らで俺はスキル『魔獣召喚』を用いて馬を呼び出す。この召喚術は転生後に獲得できたもので俺の実力に等しい生物を呼び出す事が出来る。ただし、召喚後に術者契約をしないとこちらの言う事を聞いてくれない上に魔獣によってはこちらに危害を加えてくるらしい。

 その点、俺が呼び出すのは神話に出てくるスレイプニル。オーディンという神が乗っていたとされる馬で呼び出した際には俺を主と認めてくれたようですんなりと術者契約に成功した。

 

「ん。久しぶり」

 

 召喚したスレイプニル……フレアを撫でれば嬉しそうに鳴く。一応雌馬のようだがそんなのは全然分からない程ガタイが良い。

 因みに、どうやらオーディンの馬とは違うようだ。何しろ黒い体毛に鬣が炎のように赤く揺らめいているのだ。更に蹄の部分からは炎を噴き出している。スレイプニルの亜種のようで名づけるならばファイヤースレイプニルと言ったところだろう。この辺鑑定でも分からないから俺では調べようがないけど問題は無いだろう。

 

「え、炎鬼殿。その馬は……」

「俺の。防壁出来たから攻勢に出る」

「えっ!? わ、分かりました……」

「戦車が来たら足元に盾とか投げたり車輪に槍とか入れて。戦車倒せるから」

「はっ!」

 

 フレアに跨りながら伍長に対抗策を教える。情報の伝達速度が致命的に遅いこの時代だ。一般兵、それも徴兵された奴らは知らない事が多い。これで多少なりとも犠牲者は減るだろう。

 

「行くよ」

 

 フレアは本当にいい馬だ。俺がそういうだけでこちらの意図をくみ取ってくれる。普通の馬では出せない速度で一気に前線に向かう。前線ではいくつもの防壁が出来上がり、戦車隊に備えていた。これなら兵力は温存できるだろう。

 

「あ、ボロ布君」

「っ!? お、お前! 生きてたのか! それにその馬……!」

「俺の馬。……上げないよ?」

「いらねぇよ! それよりもお前戦車に攻撃する気か!?」

「楽勝。もうすぐ来るからボロ布君も防壁に逃げた方が良いよ」

「お、おう。それと俺は信……」

 

 最後なんか言っていた気がするけど更に前線に出る。やはり戦車隊が近くまで来ていた。先程とは比べ物にならない数だが問題は無い。

 

「ヌハハハ!! たった一騎で何が……!」

「邪魔」

 

 何か言っているけど戦車自体を両断する。魔剣レーヴァテインに掛かれば炎によって刀身を伸ばすことも造作もない。そしてその炎は鉄すら両断する威力を誇る。よって、戦車の両断等簡単なのだ。

 

「う、うわぁぁぁぁっ!!??」

「化け物だ!」

「ど、弩でころ……」

 

 適当に振り回すだけで周りの戦車が次々と破壊されていく。流石に全部を倒すことは出来ないがこれでも十分だろう。最後尾まで突き抜ければ反転して背を追いかけるように追撃する。

 フレアはオーディンが軍馬として使ったスレイプニルだけあってその辺の馬程度で引き離される程軟弱ではない。あっという間に追いつき次々と葬っていく。

 

「え、炎鬼!? 前! 前!」

「ん。問題ない」

 

 そうしていればボロ布君の防壁が目の前に迫っている。ぶつかる事を想定して何やら騒いでいるが何度も言うようにこいつはただの馬ではないのだ。

 

「あいきゃんふらーい」

「う、うそ、だろ……!?」

 

 フレアが大きくジャンプし、防壁を軽々と飛び越えていく。その様子に防壁にいたやつらも迂回した戦車隊の面々も唖然としてみている。フレアはそんな人間たちを見てご満悦のようだ。

 ドスンと強い衝撃と共に着地するがフレアの脚にダメージはない。4本の前足できちんと着地できたのもそうだが楽々と飛べるという事は着地する自信があるからこそできるのだ。

 

「やぁ」

「ぎゃっ!」

 

 そして直ぐに戦車狩りを再開する。恐らく総数は6割くらいまで減らせただろう。特に指揮官っぽい奴等が乗る戦車は優先して破壊している。指揮系統を崩壊させるのは重要だからな。

 

「俺も負けられねぇ!」

「あ、ボロ布君」

 

 と、気づいたらボロ布君も騎乗していて槍を車輪に突っ込んで破壊している。ボロ布君、馬にも乗れたんだ。意外だな。どこで習ったのやら。

 

「逃げられた」

 

 戦車隊は予想外の被害を出したことで撤退していった。最終的に半分以上は倒せただろう。伍の所に戻れば全員無事だったようだ。

 

「大丈夫?」

「あ! 炎鬼殿! 炎鬼殿のおかげでこちらに来た戦車隊は少数で全員倒せましたぞ!」

「助かりました! ありがとうございます!」

「良いよ」

 

 確かに3台ほどの残骸が転がっている。対抗策を知っていて少数ならば出来て当然だが嬉しそうだし問題は無いだろう。

 

「敵の戦車隊は撤退したからまた歩兵出てくると思う。気を付けて」

「勿論です! おい! 周辺の生き残りを集めろ! 少数で散らばっていては各個撃破されておしまいだ! 集まって抵抗するぞ!」

 

 この伍長も無能ではないようだ。千人将にまでは成れないが百人将までならなれそうな人だ。それ以上は確実に破滅をもたらすな。

 

「……ん?」

 

 後方で何か動きがある? これは……ああ、そういう事ね。どうやら俺たちの奮戦は熱血おじいちゃんの直感に引っ掛かったらしい。

 

「後方に注意して」

「後方? まさか敵がまだ!?」

「違う。味方の馬に殺されないようにね」

「味方の、馬……!? それはつまり……!」

「うん。騎馬隊が動くよ」

 

 熱血おじいちゃんは本当にこういう時の行動力がすさまじいね。期待させてもらうよ。

 




フレア
主人公の愛馬。炎属性のスレイプニル。雌馬。主人公に召喚されて一目ぼれして以来主人公に従順。主人公の思考を先読みして最善の行動をとることが出来る。炎属性の為に火炎放射が撃てる。空は飛べないけどやばい大ジャンプが出来る。
元々は気高き馬として誰も背に乗せる気はなかったが主人公に一目惚れして以降は主人公に乗ってもらって使ってもらえる事に快感を覚えている(主人公は気配は読めど感情は読めない為にこのことは知らない)。いずれは性的な意味でも自分に乗って欲しいと考えるやばい奴。成長すれば人間になって夜這いを仕掛けてくるかもしれない。

魔獣召喚
その名の通り古今東西様々な魔獣を呼び出す事が出来る。が、基本的に1体しか召喚出来ない為に戦力として数える事は出来ない。また、呼び出される魔獣は全てが本物ではなくその亜種であり、本物ではない。
召喚した魔獣は召喚者と契約する事で主従関係になる事が出来る。出来ないと従ってくれない。召喚した魔獣は何時までもいる事が出来るが死んだとき、主従両方が願った時には消える。無論、もう一回発動すれば万全の状態で再召喚できる。
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