キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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なんかふと見たら総合2位になっててビビりました。
主人公の行動とかで色々と思う所があるかもしれませんがここまで視聴してくれてありがとうございます。頑張って更新を続けていきたいと思います。


第十一話「蛇甘平原4」

 麃公将軍配下の千人将である縛虎申は前線の惨状に驚きを隠せなかった。それは隣にいる千人将の壁も同様であり、騎馬隊を率いていたのに思わず立ち止まってしまったほどだ。

 魏軍が戦車隊を投入してきたという報告は後方で待機していた彼らの元にも届いたがそれに対して本陣からの、つまり麃公将軍からの指示は待機だった。砂塵で隠れた最前線で兵士たちが殺されていくだろう姿を想像した壁が指示に反して突撃しようとする等のハプニングこそあれど彼らは魏軍の歩兵が再び出てきたことを受けて突撃命令が下された。

 

-麃公将軍を動かしたのはこれか……。

 

 残骸となり転がっている戦車隊の残骸はとても多かった。それは歩兵だけで返り討ちにしたという事であり、それほどの力があったことに驚愕していた。

 

-参加しているのは聞いていたがこれはそれ以外も理由にあるな。

 

 縛虎申は炎鬼が参戦している事は知っていた。その実力は噂通りであることも。しかし、戦場という何が起こってもおかしくはない場所で活躍は限られる為に過度な期待はしていなかった。

 故に、彼はこの状況をいち早く理解する事が出来ていた。現実とは思えない8本足の馬に跨り、歩兵たちと共に何かを話している炎鬼。そして同様に馬に乗るみすぼらしい少年。それ以外にも戦車隊から身を守ったであろう死体の防壁等、歩兵たちが生き残った理由が散見されている。

 

-生真面目な千人将め。頭の回転はいいが、まだまだだな。

 

 隣では壁が防壁に気づいて歩兵たちに戦車隊の新手に備えさせている。炎鬼という明らかに注目するべき対象以外にも見ている事は縛虎申の評価を上げさせていたが麃公将軍に長年仕えている縛虎申はまだまだだと内心で吐き捨てた。

 

「(将軍の真意はここから丘を奪取する事!)縛虎申歩兵隊、整列!」

 

 故に縛虎申は自らの歩兵を呼び出すと敵兵を突破する事を決意した。その結果として自らの命が果てようとも、歩兵が全滅しようともそれが勝利につながると信じて。

 

 

 

 

 

-炎鬼、この目で戦う姿を見るのは初めてだな。

 

 騎馬を率いて魏軍に突撃した壁は騎馬に交じって攻撃を始めた炎鬼を見て内心でそう呟いた。王弟反乱時には何もできず、本来は関係のない下僕の少年たちとかつて交流があった山の民の力で反乱を制したことで力不足を感じた壁は上官である昌文君からの言葉を思い出していた。

 

-炎鬼が自軍の配下にいるのなら何も命令するな。本陣の守りにも利用するな。奴は自由にさせてこそ最大の力を発揮する。

 

 壁は最初こそその意味が理解できなかった。戦場において兵は指揮系統がしっかりしているからこそ戦えるのだ。それをしない等あり得ないと感じていたが実際に炎鬼の戦う姿を見て昌文君の言葉は正しかったのだと痛感していた。

 

「え、炎鬼だぁ!」

「ひぃ!?」

「逃げろ! 殺される!」

 

 騎乗した炎鬼の活躍はまさに縦横無尽だった。たった一人で魏軍の内部に入り込み陣をずたずたに破壊していく事で騎馬隊の攻撃はあり得ない程に決まっていく。数万の軍勢に2千にも満たない騎馬隊でどこまで出来るかと壁は考えていたがこれならば、と感じていた。

 

「っ!? あれは!?」

 

 その時、視界の端で突出する部隊が見えた。深く入り込みすぎて他の隊との連携が取れなくなっている。あれでは全滅も時間の問題だと。

 

「どこの隊だ!? 突出しすぎだぞ!」

「壁、気にするな。縛虎申の隊だ」

 

 思わず声を張り上げた壁の疑問に答えを出したのは昔からの友人であり、同じ千人将の尚鹿だった。麃公将軍の下で戦う事は初めての壁とは違い、幾度となく縛虎申とも共闘した尚鹿は縛虎申の狙いを的確に把握していた。

 

「おそらく丘を奪い取る気だろう。何時もの事だ。放っておけばいい」

「そんなことは出来るか! 壁隊! 錐行隊列で縛虎申隊を援護しろ!」

 

 壁としては縛虎申の行動に思う所がないわけではない。しかし、だからと言って援護をしないのは違う。丘を狙うというのなら出来る限りその援護をすると縛虎申が思った生真面目さをしっかりと発揮して援護を開始した。

 

「……」

 

 その一方で炎鬼もまた縛虎申の動きを把握していた。魏軍の内部で暴れちらし、陣形をずたずたに引き裂いている炎鬼は動きを変えて縛虎申の援護を開始した。

 

「……! お前は……!」

「抜けるまで手伝う」

「良いだろう! やれ!」

「ん」

 

 分厚い敵軍を突破するまでとはいえそこまで援護があれば十分と縛虎申はニヤリと笑みを浮かべた。炎鬼は縛虎申隊の左方につくと遠慮なく炎を生み出して魏軍に放っていく。

 

「ぎゃぁぁぁっ!? あ、熱い!? 熱いいいい!!!」

「ひ、火が、火がぁぁっ!!」

「水をくれ! 水を……!」

 

 水をかけても延々と燃え続ける魔力の込められた炎に魏軍が混乱に陥っていく。普段であれば味方を気にして使わない手も縛虎申隊以外は敵兵しかいないこの状況でなら関係ない。魏軍にとっては地獄の戦場が作り上げられていった。

 

「っ! つぇぇ!!」

 

 そんな炎鬼の無双を歩兵の援護をしている信は驚愕の表情で見ていた。強いことは知っていた。常人とは違う事も理解していた。今の自分では歯牙にもかけない事も本能で分かっていた。

 だが、それでも、あれほどの活躍が出来るとは完全に予想を上回っていた。田舎で下僕として一生こき使われていたのでは知らない光景がそこにはあった。

 

「やっぱり戦場じゃないと分からない事もあるんだな!」

「ぐあ!」

 

 信は右から迫ってくる敵を切り捨てながら体の奥底から感じる興奮に笑みを浮かべた。天下の大将軍を目指す身としては“武”の面において目指すべき光景にはそこにあったのだ。それに興奮しないでどうするとその衝動に身を任せて信は敵を切っていく。

 

-絶対に超えて見せる。きっと、あいつを倒せるくらいの力があれば天下の大将軍と呼べる奴になる!

 

 信は本能から感じるその直感を糧にまずはやるべき敵軍突破を果たすべき剣を振い続けるのだった。

 

 

 

 

 

「……わお」

 

 少しして、炎鬼は遠く離れていく縛虎申隊の後姿を見送った。そう、無事に敵軍を突破したのである。炎鬼の援護により100人以上が生き残った彼らに炎鬼は内心でエールを送る。

 そんな彼の回りでは焼き殺され、無惨な死体を晒す魏軍が転がっており、そんな所業をした炎鬼をかなり離れた所から包囲しながら恐怖の表情で見ている魏軍がいた。最早彼らに炎鬼に攻撃する余裕はない。圧倒的な力を持つ相手を前に魏軍の戦意は完全に消え去っていたのだ。

 

「……援護に戻ろうかな」

 

 そんな彼らを炎鬼は気にせずに前線へと戻っていく。悲鳴をあげ、恐怖で顔を固めた彼ら等炎鬼の目には入っていない。まるでモーゼの如く避ける魏軍の中を炎鬼はフレアと共に駆け抜けるのだった。

 




次回あたりで蛇甘平原は終わりにします。
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