キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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蛇甘平原はこれでおしまいです。


第十二話「蛇甘平原5」

 気難しそうなおっさんが丘の上に到達したらしく旗が落ちていた。どうやら決死隊は無事に役目を果たしたらしい。ボロ布君も無事ならいいが。

 

「まだやる?」

「ひぃ……!」

「む、無理だ……! 勝てねぇ……!」

 

 俺は周りにいる魏軍に対して短く問いかけた。どれほど切ったのかは分からないが多分だが5千は確実に切っている。おかげで魏軍の士気は地を這っていて何かきっかけさえあれば完全に崩壊する所まで来ていた。最早俺に槍を向ける奴すらいない。久しぶりに戦場でフレアに跨ったせいか気が昂ってしまったようだ。呂不韋の元に行っていい女でも紹介してもらおう。その辺の情婦相手じゃ発散できそうにない。

 

「ん!?」

 

 っ! あれは……、王騎将軍? 戦場で見かけるのは何年ぶりだ? まさか参戦していたのか? 『気配察知』にも結構な数の兵士が引っ掛かっている。王騎将軍直属の兵士達だ。

 

「お、王騎!? 王騎だぁぁっ!!」

「怪鳥が出て来たぞ!!!」

 

 あーあ。崖を降りてきた王騎将軍の登場で最後に残されていた魏軍の士気が完全に崩壊したな。しっかし、流石は六大将軍最後の生き残りだ。フレアによる突撃と同等の突破力を見せてくれる。

 

「炎鬼殿! 本陣より指令です! 我らは丘を駆けあがります! どうかご一緒に!」

「ん」

 

 俺に気づいた騎兵が声をかけてきた。どうやら丘を奪い取れという命令らしい。ボロ布君たちによって丘は取れたからそれを万全な状態にするためだろう。

 

「ンフフフ。炎鬼さん。お久しぶりですねぇ。戦場での悪名はしっかりと届いていましたよぉ」

「ん。王騎将軍久しぶり。腕は全然衰えていないね」

「ココココ。数年戦場に出ない程度で落ちる程我が武は低くはありませんよぉ!」

 

 互いに話しながら丘の上を目指していく。相変わらず副官がついている所も含めて何も変わっていないな。……変わらなさ過ぎて逆に怖いかもしれない。

 

「おやぁ? そちらはもう丘を降りるのですか?」

「んな!? 誰だ!?」

 

 丘の上では複数の敵兵の死体と中心部で何やら騒いでいるボロ布君達がいた。やはり無事だったみたいだな。

 

「信! この方は秦国大将軍の王騎将軍だ! 王騎将軍、この度の加勢、誠に感謝いたします」

「構いませんよ。私も丘の上から戦の流れを見たかっただけなので」

 

 ボロ布君は知らなかったようだ。まぁ、この時代異名は広がっても顔まで知られる事は無いからな。実際に見ないと分からないだろう。

 どちらにせよ、だ。ここからどうするかだが……うはぁ。敵の本陣が動いて下にいるじゃん。やば。

 数も数だし熱血おじいちゃんでもこれは厳しいんじゃないか? 逃げるか?

 

「ンフフフ。どうやら麃公さんも動き出したようですね」

「? ……ああ、そういう事」

 

 どうやら熱血おじいちゃんは戦を決して諦めているわけではないらしい。よくよく見れば熱血おじいちゃんが兵を率いて本陣に突っ込もうとしているのが見えた。それに気づいた魏軍が動き出しているけど止める事は出来ないだろう。

 

「終わったね」

「おやぁ? まだ分かりませんよ?」

「分かる」

 

 もう戦は終わりだな。苦戦こそすれど魏軍で熱血おじいちゃんを止められるとは思えない。別に今更出る必要も無いな。

 

「……どうやら今回の戦は相当ため込んだようですね」

「疲れた」

 

 他人を庇いながら戦うのが想像以上に面倒だった。前に燕との戦いで敵将討ったのに負けたから守るように動いたけどいつも通りに敵将を殺していった方が速かったな。

 

「おい」

「うん?」

「あの薬はお前が作ったらしいな」

 

 そう思っていたら縁の下さんが話しかけてきた。顔色が悪いけど一体どうしたというのだろうか?

 

「信という小僧が持っていた薬のおかげで助かった。礼を言ったら炎鬼からもらったと」

「ああ、そうなんだ」

 

 あー、ボロ布君あの薬他人に使ったんだ。別に上げたもんだしどうしようと構わないけどさ。

 

「小僧が言うには半分くらいでなんでも傷が完治すると言っていたが慌てていた為に全てを使ったと言っている」

「ふーん」

 

 だからか。トレードマークの左頬の古傷も無くなっていて一瞬誰だか分からなかったよ。全部使うと古傷すら治せるのか。いいことを知ったな。

 

「行かないの?」

 

 気づけば上位モブが兵を率いて熱血おじいちゃんの加勢に言っている。ボロ布君も王騎将軍と何やら話していたが馬をもらって駆けて行った。今この場には馬の軌道についていけない歩兵と王騎将軍の配下の兵しか残されていない。

 

「先ほどから力が入らん。めまいも半端ではないが薬の影響か?」

「血が足りないんだよ」

 

 そりゃ薬は傷をふさぐのであって血を再生するわけではない。血を流しすぎれば貧血にもなるだろう。

 

「……貴様は、秦の兵となる気はないのか?」

「ない」

 

 自由気ままに。それが今世の俺のモットーだ。多少それから逸れる事はあっても変わることはない。

 

「貴様がいれば安心であるのだがな」

「国の興亡に興味はない」

 

 いずれは中国も統一されて平和な世の中になるだろうしそうなったら西に行ってみてもいいかもしれない。ヨーロッパなら国がいっぱいあるし戦争もいっぱい起きてそうだからな。後はヨーロッパの料理とかも食べてみたいし白人の美人さんも抱いてみたい。……うん、そのうち行ってみようかな。

 

「あ、終わった」

「将軍は負けないからな」

 

 本当に、いつの間にか熱血おじいちゃんが顔面真っ白の敵将を討ち取っていた。敵の士気は完全に死んだしこれでおしまいかな。まぁ、城攻めをするかもしれないけどこちらも可なりの損害を受けたみたいだしそこまではしないでしょ。

 

 実際、その通りに進み、戦はここで終わりとして帰国することになった。名のある将は討てていなかったらしいけど敵軍相手に無双していた事を称されて結構多めに報奨金をもらえる事が出来た。これなら豪遊しても暫くは大丈夫だろう。

 ボロ布君とは会えなかったけどそのうちどこかで会えるでしょ。死なない限りは。……さて、それよりも問題は。

 

「誰? 切るよ?」

「……」

 

 ずっと後ろをついてきていた白い服の少年、彼への対処から考えましょうかね。

 




ぶっちゃけ壁たちと一緒に丘を下ってもいいかなと思いましたけど下手に信とかの手柄奪ったら不味いかなと思ってやめました。飛信隊には原作通りに昇進していって欲しいので。
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