キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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ストックが尽きました。明日から毎日投稿できないかもしれないです。
それと皆さんのおかげでお気に入り数が3000を越えました。正直ここまで伸びるとは思っていなかったのでかなりビビっています。


第十三話「蚩尤」

 中華において伝説となっている刺客一族、蚩尤の出身である羌瘣はとある人物を殺すために里を出てきていた。その際にひと悶着あり、里に帰ることは不可能となってしまっていたが里に思い入れはほとんど残っていない羌瘣はそれでも良いと感じていた。

 そんな彼女が初めて参加した戦争でとてつもない存在の気配を感じる事となった。それは圧倒的な武を持ち、自身では絶対に勝てないと思わせる程の圧を放つ彼には羌瘣は死を感じる程だった。

 同じ伍になった者達の話からその人物が“炎鬼”と言い、数々の武名を轟かせている事を知った。そのどれもがあれだけの強さであれば、と納得できる物ばかりであり、そんな人物が味方にいる事に安堵と同時に恐怖も感じていた。

 羌瘣にとって殺したい相手が魏にいるという事でその道中で参戦しただけで秦に忠誠を誓っているわけではない。炎鬼も同様であり、いつ裏切ってもおかしくはない相手だったのだ。いくら秦を優先しているとはいえ秦に仕えているわけではないのだから。

 

-そんなことはどうでもいいがな。

 

「何の用?」

 

 それよりも、と羌瘣は思考を切り替える。自分でもなぜかは分からないものの、気づけば羌瘣は炎鬼の後を追っていた。参加した分と活躍によって袋から溢れんばかりの金を受け取った炎鬼はそのまま近くの都市に向かう道を歩いていた。視界に入ったから、で終わってしまう程理由なき追跡。故に炎鬼に問いかけられても羌瘣も何と返事をすればいいのか分からなかったのだ。

 

「……」

「……」

「……」

「……?」

「……」

「……本当に、何か、よう?」

 

 ズッ、と炎鬼が持つ圧力が増した。体が地面にめり込むような力を持っているそれに羌瘣は危険本能からか咄嗟に下がり背に担ぐ自らの武器である緑穂を抜こうとした。しかし、その瞬間に炎鬼の姿は消え、同時に腹部に強烈な痛みが襲ってきた。下を向けばいつの間にか炎鬼が羌瘣に肘打ちをしており、深々と自身に突き刺さっていた。明らかに内臓を潰し、骨を折っていそうな程であった。

 

「ぐっ、は!」

 

 それを理解すると同時に体内の空気が全て吐き出される。胃をやられたのか胃液と血が喉まで上がってくる。

 

「殺し屋? 子供なのにね」

「そう、じゃ……!」

 

 最後まで話すことは出来なかった。あまりにも強烈な痛みは羌瘣の意識を飛ばすには十分であり、視界が暗闇に覆われていく。体から力が抜けて立っている事も出来なくなった。

 

「……あ、やりすぎた」

 

 最後に聞こえたのは間の抜けた炎鬼のそのような言葉だった。

 

 

 

 

 

「……んう?」

 

 次に目を覚ました時、あたりはすっかり暗闇に覆われていた。夜空には光り輝く星々が浮かんでおり、周囲を鈍く照らしている。

 

-……痛みが、ない?

 

 そして次に気づいたのは意識を失う前に感じた痛みがなくなっていた事である。腹部を触ってみても痛みさえなく、いつも通りの自分の肉体がそこにあるだけだった。

 

-……夢だった?

 

 一瞬そう考えるがそれにしてはあの強烈な圧と痛みは脳裏に焼き付いて離れない。とてもではないがあれが夢であったとは思えなかった。

 ゆっくりと立ち上がりながらあたりを見回す。気配にも視界にも人の姿はない。最後に覚えている景色と比べても暗くなっており、かなりの時間が経過したのは確実だった。

 

「……」

 

 羌瘣は自分の軽卒な動きを反省しつつ自身の不可解な行動に改めて困惑した。彼女にとっても何故こんなことをしたのかどれだけ考えても分からなかった。しかし、一つだけ言えるのは自分はまだ生きているという事である。

 炎鬼は何を思って殺さなかったのか分からないが生かされた事だけは事実だった。不意打ちだったとはいえ視界で追えない程の速度で一瞬で迫り、死ぬかもしれないと思う程の激痛を与えられる人物なのだ。止めを刺されなかった時点で生かされたと思うのは当然と言えるだろう。

 

「……」

 

 しかし、その理由までは皆目見当もつかなかった。自分の跡を追い、ちょっとしたことで剣を抜こうとした人物なのだ。普通の人間でも怪しいと感じるレベルだ。そんな自身を放置? あり得ないと羌瘣は考えた。

 

……クゥ

 

 そこまで考えた時、小さく羌瘣のお腹が鳴る。戦場に出ていたこととその後に気絶させられたことで半日以上何も口にしていなかった。腹の虫が鳴くのも仕方のない事だろう。

 結果、羌瘣の意識はそちらに向かった。炎鬼の事は後回しにして今はただ空の腹を満たす事だけを考え、近くの街へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 最近の若者は強い者がいっぱいだな、何てコメントをすれば爺臭いかもしれない。まだ30代だし、そこまで歳を取ってはいないはずだ。前世を含めればおじいちゃんに片足突っ込む年齢である事は変わりないだろうが。

 あの少年、白布君のステータスを覗かせてもらったがボロ布君並に高い数値を叩き出していた。速度では完全にボロ布君を上回っており、スピードタイプの剣士と言ったところなのだろう。前世で見たデスゲームのレイピア使いみたいだと一瞬だけど思ってしまった。向こうは女性でこっちは少年だけどな。

 でも、面白いのは彼が持つスキルだった。実はスキルは基本的に誰もが持っている。とはいっても『剣術』とか『筋力上昇』のような物であり、上昇値は俺には遠く及ばない物ばかりだった。

 そんな中で彼が持っていたスキルの一つに『巫舞』というものがあった。『鑑定』では説明文のような物が出ない為に名前から察する事しか出来ないのだがそれを見た瞬間に俺はゾワァっと謎の悪寒を感じた。得体の知れない、深く踏み込んではいけないものだと本能に訴えかける物であり、俺は『鑑定』を止めてステータスを閉じたのだ。

 

「……」

 

 だが、彼はボロ布君の近くでいた記憶がある……おそらく。多分、味方だった、かもしれない。敵ではない、と良いな。薬使っちゃったし敵だったらもったいない事をしたからね。

 ……本当に味方だったよな? あれ? いたよね? ……いなかったかもしれない。

 とりあえず戦場で会った時に考えよう。味方ならそれでよし。敵、だったのならばで殺せばいいんだから。

 




主人公は羌瘣が戦場にいたかどうか分かっていないです。死体の防壁に関しては澤圭さんが言っていたし戦車の車輪を狙うように指示するシーンはそもそも存在しないので。
丘を登る際には下で無双していたので知らないし丘を登ってからは羌瘣が離れたところで休んでいたので見てすらいないです。
巫舞をスキルにしました。当然この作品の独自設定です。理由に関してはその方が良いかもという安直な理由からです。
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