キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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第十四話「野盗達」

 誇り高きスレイプニルの一体であるフレアはある日突然召喚された。いずれこのような日が来ることは覚悟していたがだからと言って生半可な相手であれば蹴り殺してやろうと考えていた。

 神話に登場する気高き神獣と呼ぶべき自らに騎乗する人物は神話に出てくるような強者でなければならないと思っていたからだ。果たして自らを呼び出す相手はどんな人物なのか? 世界に武名を轟かせる英傑か? 一振りで百の敵を薙ぎ払う武人か? それとも国家を黄金期に至らせる手腕を誇る文官か? それとも見る者聞く者全てを魅了し虜にする文化人か?

 

「ん。来た」

 

 そして、視界にその人物を捉えた時、彼女は自らの主人を一瞬で悟った。体中から溢れるは強者のオーラそのものであり、決して敵対する事は許されないと本能に訴えかける怪物の如き人物だった。

 それはまさに自らに跨り、伝説を打ち立てるに相応しい人物であり、そんな人物の脚となれる事は至上の喜びだと理解させられたのだ。

 

「……? 大人しい」

 

 こちらから仕掛けてきても返り討ちに出来る準備はしていたのだろう。大人しいフレアに目の前の人物、炎鬼は意外そうな顔をしながら顔を触ってくる。ゾクゾクとした官能がフレアを襲うが決して嫌ではなかった。むしろもっと触って欲しいと自らすり寄っていく。

 

「スレイプニルは従順なのかな? とりあえず主従契約を……」

 

 そう言って炎鬼が主従契約をしようとしてくるが無論彼女はそれを断る気はない。馬として足となれる事と想像するだけで下腹部に熱がこもるくらいである。発情期でもないのに官能的な気分にさせるご主人は誘っているというのだろうか? と思ってしまうくらいにはメロメロになっていた。別に炎鬼にそんなスキルはないがそれだけ生物としての格の違いを見せつけていたのだ。

 

「契約は完了。名前は……フレアでいっか。炎だし」

 

 ウイルスが無ければコロナと悩んだだろうなんとも安直な名前であったがそれでも彼女は主人からつけられた名を気に入っていた。というか炎鬼から与えられる全てがうれしく、興奮する材料となっていた。

 

 そんな彼女は目立つ姿も相まって召喚されるまでは元の世界ばかりにいる。戦場での活躍などこの前の戦が初めてであり、その時には思わず興奮しすぎてあられもない状況に陥ってしまったほどであり、炎鬼が気づいたらドン引きしていただろう。

 それでも神話の生物らしく高いスペックを生かして主人の行動を理解・先読みし、最善の中の最善の行動を瞬時に取っていき、炎鬼が敵陣で大暴れをする補助を見事にこなしていた。

 空を飛べるペガサスや純潔しか乗せないという変態ユニコーンや淫乱バイコーンごときには出来ない力強い動きで炎鬼を支え続けた。尤も、人の顔で例えればア〇顔の如き人には見せられない表情をしていたが。

 

 そのように主人を深く愛するフレアは主従関係を結んだ事で伝わってくる主人の行動に嫌気がさしていた。彼は現在フレアという身近なメスには目もくれずに呂不韋とか言うブ男が用意したクソビ〇チを抱いているのである。呂不韋は最高の娼婦と言っていたが所詮は人間。自らの美貌には遠く及ばないとフレアは憤っていた。無論、スレイプニルとはいえ馬である彼女に炎鬼が興奮するわけがないのだが。

 フレアは自らが馬である事を今日ほど嫌だと思った事はないだろう。せめて人の姿をしていれば思う存分主人をくら……主人のお供を出来るというのにとフレアは悲しくなっていた。

 流石の神話の生物と言えど人の姿を取るには相当の努力と才能を要求される。特に最上級の美貌となれば難易度は一等の宝くじを当てる並に難しいだろう。

 しかし、それでもフレアは人になれるように密かに努力を開始した。全ては愛する主人をくらうため……夜のお供も熟せるようにする為に。

 ちょっぴり? エッチなスレイプニルは今日も今日とて努力をするのだった。

 

 

 

 

 

 前回の魏との戦から年が明け、再び秦は戦を始める事となった。相手は韓であり、総大将はでかいおじいちゃんだ。ステータスを見ると筋力は化け物級だが他が凡庸な人だ。弱くはないが強くもないような人だ。詳しいことは俺も知らん。

 んで、俺は副将の一人の部隊に配置される事となった。話によるとこのおじいちゃんは弱いが副将が強い為にここまで出世できたらしい。それで俺が配置されるのはその中でやばい方の部隊らしい。

 

「お前が炎鬼か。意外と見た目は普通の人間だな」

「盗賊王だ」

 

 俺の目の前には秦の兵士とは思えない様相をした人がいる。鎧にファーを付けたお洒落な奴だ。というかここの奴らは皆それだ。

 彼は副将の一人であり、元盗賊らしい。それで凄いのが盗賊時代に城を落として城内の人間を自ら切り殺していったらしい。そのせいで恐れられているのだとか。

 そんな盗賊王だけど中々いびつなステータスをしていらっしゃる。知能は高く戦術や戦略に理解があるがその一方で普通の戦らしいことは苦手のようだ。

 

「俺んところは堅苦しい軍律だなんだはねぇ。きちんと行軍していりゃ何も言わん」

「自由にしていいと?」

「ああ。何なら別行動でもいいぜ。明日城の前に居ればな」

 

 元盗賊という事もあって他の軍では見ない独特な部隊のようだ。これはこれでやりやすいしいいかもしれない。

 

「炎鬼って一人で1000人も切れるやつなんだろ?」

「こんなヒョロヒョロに出来るとは思えねぇな!」

「おい炎鬼。一体どんな手使ってだましたんだ?」

 

 うーん。だけど、この絡みはうざったいな。盗賊王の下にいる連中も盗賊みたいなガラの悪い奴等ばかりだ。少し黙らせるか。

 

 

「だまれ」

 

 

「「「「「……っ!!??」」」」」

 

 盗賊ならば上下関係は徹底的に教えてやるよ。『威圧』スキルを最大限だ。対象は盗賊王含めたこいつら全員。心が弱いと発狂死するレベルだが身の程を教えるには丁度いいだろう。

 

「……つまらないヤジは嫌い」

 

 それだけ言って『威圧』スキルを解除する。周りを見れば盗賊達は水を浴びたような汗を流しており、中には失神している者もいた。だが、そんな彼らがこちらを見る目には恐怖しか写っていなかった。これなら絡まれることはないだろう。こう言った連中は強い相手には絶対に手を出さないからね。

 

「……?」

 

 ふと、後ろからの視線が気になり振り返ればかの盗賊王がこちらを見ていた。しかし、その目には恐怖はなく、むしろ面白そうな感情を浮かべながら笑っていた。

 ……盗賊を纏め上げ、秦の将軍の副将まで上り詰めるだけの事はあるようだ。侮って良い相手ではないな。

 

「……」

 

 とはいえ今の俺たちは味方。敵ではない以上何かをしてくることはないだろう。俺はモーゼの如く俺を避けて道を作った盗賊兵たちの中を進みながら戦に備えるのだった。

 




馬陽に行くと思った? 残念蒙驁将軍による韓攻めに参加します。
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