キングダム世界でファンタジーチート転生者が傭兵をするだけの話   作:鈴木颯手

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第十六話「韓攻め2」

 等という城は前二つと比べて明らかにでかい城だった。城壁は長梯子でギリギリ届くくらいには高く、城事態が大きい事で守備兵も多く存在していた。当然、侵略者である桓騎軍へのやる気は十分に高かった。

 

「出番だぞ。好きにやっていいから力を見せてみろ」

「ん」

 

 しかし、それは通常の相手であればの話であった。桓騎軍は城を包囲すると攻撃することはせずにたった一人だけ、前に出してきたのである。

 

「隊長! 敵兵が一人近づいてきます!」

「フハハハ!! 馬鹿め! 矢の雨を降らせてやれ!」

 

 格好の的とも言えるその兵士、炎鬼に韓軍は大量の矢を浴びせた。まんべんなく放たれたそれは避ける事が難しい数だったがそれに対して起こした炎鬼の行動は手をかざす事だった。

 しかし、次の瞬間にはかざした手より炎が生み出されて向かってきた矢を全てのみこんだのである。高火力のそれらによって矢は瞬く間に焼き切れていき、炭と化した残骸だけがパラパラと地面へと落下していった。

 

「なっ!? なんだあれは!?」

 

 炎鬼が出てきた城壁の兵士を束ねる隊長は出鱈目な炎鬼の行動に度肝を抜かれるがそれと同時にその正体をようやく理解することとなった。

 韓や魏、趙相手に猛威を振るう戦場の悪鬼。秦に味方し敵対した兵を生きたまま焼き殺すと言われている伝説の怪物であった。まさかこうしてお目にかかる日が来るとは予想もしていなかった。何しろ、こうして戦場と化した城で出会うという事は噂の力が自分たちに向けられる事を意味しており、決して助かる事はないと宣言されているような物なのだから。

 

「や、矢を! 矢をもっと撃て! 城壁に近づけさせるな!」

「遅いね」

 

 狂ったかの如き怒声で指示を出すのと炎鬼が走り出したのは同時だった。慌てて次弾の矢を放とうとした時には炎鬼は城壁の真下まで来ており、高い城壁を見上げていたのだ。

 

「隊長! 落ち着いてください! いくら強くて火を出せようと城壁がある限り相手は手も足も出ないのですよ!」

「っ! そ、そうだな。たった一人が城壁を登れるわけがない。梯子も井闌車もない奴に登れるわけが……!」

 

 通常の人間ならこれだけの城壁は登れない。部下からの言葉でそれを思い出した隊長が落ち着きを取り戻した時、()()を見てしまった。城壁の端から見えた人の手を。それも城壁の外から出てくる方向の手に。

 

「~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!??????」

 

 次の瞬間、炎鬼が飛びあがるように姿を見せた。実際、飛び上がり、兵士たちの頭上を飛び越えて城壁の上部に飛び乗ったのである。

 

「ころ、殺せぇぇぇぇっ!!!」

「「「う、ウオオォォォォォッ!!!」」」

 

 隊長たちの心は一瞬で一つとなった。こいつを逃してはならない。ここで殺さないといけない。でなければ自分たちが殺されると。一斉に槍を向けて目を血走らせて炎鬼に攻撃を繰り出す韓軍だが……。

 

「邪魔」

 

 たった一言、炎鬼が発したその言葉と同時に周囲の敵兵はなで斬りにされた。赤く熱を帯びる刀身を持つ不思議な剣をいつの間にか取り出した炎鬼はそのまま城壁の上で蹂躙を開始した。

 韓を、等を守るために集った兵士たちが次々と殺されていく。切られて焼かれて踏みつけられて、方法は様々なれど等しく死を炎鬼は兵たちに与えていた。まさに無双。そう呼ぶしかない炎鬼の蹂躙劇は僅か10分程度で終了した。彼の回りには焼き焦げ、二つに切られた死体だけがあり、生を感じられる物は何一つとして残されていなかった。

 

「たった一人に、城壁の兵士が全滅した、だと……?」

 

 それは楼閣の上より見ていた隊長でさえ理解できないものだった。この惨状をたった一人の人間が、短時間で行ったと? 信じられるはずがなかった。

 

「くっ! 兵士を上に送れ! 出ないと城壁の守りが……!」

「あ……」

 

 声で気づいたのだろう。隊長たちの楼閣を向いた炎鬼がおおざっぱに剣を振うと同時に隊長たちは体に熱さによる痛みを感じると同時にぐらりと体が揺れてその場に崩れ落ちるようにたおれこんだ。後ろに倒れた隊長は何が起こったのかと視線を向ければそこにはジュウ、と嫌な音を立てる切り落とされた自らの下半身が移っていた。周囲を見れば他の者達も同じようになっており、隊長のように意識を保っている者はいないようだった。

 

「ごっ、れ……!」

 

 これが炎鬼の力なのかと吐血してまともに声も出せなくなった体でそう思った隊長は急速に薄れゆく意識の中炎鬼の強さに絶望しながら息絶えた。それを見届けたかのように炎鬼の一撃で柱を切られた楼閣が崩れ、隊長たちの死体を押しつぶしながら倒壊した。その様子は他の城壁からでも確認でき、城壁の一つが陥落した事を現していた。

 

「少し、暴れようかな」

 

 そして、それを成した炎鬼は何の感慨気もなく次の標的を仕留めるべきその肉体を宙へと投げ出し、下で恐怖の表情で見上げる兵士たちに襲い掛かったのだった。

 

 

 

 

 

「こ、これほどとは……!」

 

 構えた本陣内で全軍の指揮を執る摩論は炎鬼が見せた想像以上の戦果に驚きを通り越して固まっていた。本陣は炎鬼が攻め込んだ東側に設置され、炎鬼の戦いぶりを観戦する気でいた。

 とはいえ彼らも流石に炎鬼に出来る事はないだろうと考えていた。実際、普通の人間ならこの城壁を突破する事など不可能であり、何かしらの物を用いると考えていたが炎鬼はなんと()()()()()()()()使()()()()()()()()()のだ。その動きに一瞬の迷いもなく、まるで上から引き上げられていると言わんばかりにあっという間に登り切ったのだ。

 そこからは蹂躙と呼ぶに相応しい攻撃が行われ、城壁の上にいた兵士は全滅。隊長らしい指揮官がいた楼閣は丸ごと破壊されてしまっていた。炎鬼は次の標的を下の兵士に定めたために見えないが代わりに内部から聞こえる阿鼻叫喚の叫び声が響き渡り、不気味さを際立たせていた。

 

「摩論。急がねぇとあいつに全部食われぞ」

「っ! そ、そうですね。厘玉さんと朱摩さんに突撃の準備を! 四方の部隊は梯子で城壁を攻めるように!」

 

 面白げに笑っている桓騎の言葉で復活した摩論が桓騎軍全体に指示を飛ばす。とはいえ今からでは出来る事は限られているのは誰の目から見ても明らかであり、今回はまともに戦う事は無さそうだと摩論は感じていた。

 

「ま、今回の件はあいつの実力を知るきっかけになったな。摩論。分かっていると思うがあいつは自由にさせろ。下手に縛っても力の半分も発揮できねぇだろうからな」

「ええ、そうですね。彼の力は一人の時に発揮するようです」

 

 桓騎も摩論も炎鬼が自分達とは違う意味で軍隊には向かない存在という事を理解していた。自分達こそがはみ出し者である為に炎鬼の事も彼らなりに理解できていたのだ。そして、その結果として呂不韋と並ぶほどに彼の正しい扱いを理解できた存在と言えるだろう。

 

「摩論。今日は大変だぞ。聞いた話じゃあいつは料理にうるさいらしい。満足できる飯を作れなきゃ切り殺されるかもな」

「そうですね……え? 私が作るのですか!?」

「うちで一番料理できんのはお前だろ」

「……」

 

 いきなりの事で顔が引きつる摩論を他所に指示が行き届いたことで桓騎軍が攻撃を開始していた。

 そして、攻撃開始から数時間もしないうちに等は降伏を宣言。桓騎軍は僅か半月ほどで城を3つも落とす快挙を成し遂げる事に成功したのだった。

 




城壁を登れることは山の民が証明しているので主人公も当然のようにできます。
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